帝都物語 第1番 (角川文庫 あ 10-20)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (441ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041690246

感想・レビュー・書評

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  • 明治の帝都を舞台に、陰陽道を操り帝都崩壊を
    目論む加藤の姿を追う伝奇シリーズ。

    想像していたよりずっとスペクタル。
    おまけに完全な非現実味溢れる伝奇と思いきや
    史実・政変もしっかり絡める上、陰陽道はじめとした
    民俗学・歴史的知識もスゴイ。
    綿密な調査と練りに練って書かれた熱を感じます。

    この一冊ですでに明治~大正への時代をまたぐ数年を描きますが
    これからのプロローグにしか感じられなくらい。
    壮大だけど尻込みしない、続きが気になる。
    登場人物の視点がころころかわるので、
    「これだれ?誰が主役なの?」と前半はあわあわしてましたが、
    慣れるとその人の網目も面白い。

    何より魔人・加藤のインパクトは強烈過ぎる。
    敵役ながら彼が出てくると、不思議と沸き立ちます。

  • 無条件で楽しめます。無粋な言い方やけど山田風太郎の豪放さと江戸川乱歩の大仰さを持つ設定が現代の作品らしい細やかさで描かれてるという感じかも/帝都改造(霊的改造含む)が計画される/計画にも関わっている軍人、加藤保憲がなんらかの目的のために辰宮由佳理を手中にしようとするのを土御門家の陰陽師らが阻止しようとする(人柱?)/渋沢栄一、織田完之、森鷗外、寺田寅彦、森田正馬ら著名人が絡む。特に幸田露伴大活躍。/ずっと以前数巻読んでたけど途中やめになってたのを今度は新装版で最初から読み直すことにしました。この巻は「神霊篇」と「魔都(バビロン)篇」が一冊に。

    ■帝都についての簡単なメモ

    【牛込の協会】→碑文協会
    【エンデ・ウント・ベックマン事務所】ベルリンの建築事務所。東京改造計画の立案に尽力した。また、新日本橋の設計をした妻木頼黃が教えを受けた。
    【大蔵省】頻繁に火事に襲われるのは祟りのせい。
    【大河内正敏/おおこうち・まさとし】寺田寅彦の実験の相棒。エリート。寺田寅彦は「殿さま」と呼ぶが実際に旧藩主の家柄で家族年鑑になを連ねている。
    【織田完之/おだ・ひろゆき】碑文協会を主宰し平将門と佐藤信淵と二宮尊徳の三人の名誉を明治政府に認めさせようとしている。帝都改造計画では将門に霊的守護を任せ、全国の学校に二宮尊徳像を設置する計画を持っている。元大蔵官僚。
    【カール・ハウスホーファー】ドイツの軍人で学者。作中では加藤を介して三合会に入会する。
    【鏡】いろいろヤバいアイテム。
    【加藤保憲/かとう・やすのり】陸軍の将校。威圧感があり気味が悪いほど顔が長い。東洋の卜占のほとんどすべてを身につけた超人。帝都改造計画に参加しており渋沢栄一の秘密会議にも参加している。中国の秘密結社三合会にも参加している。和歌山の龍神出身。父親は吉備の人らしい。
    【賀茂】土御門家の代表として渋沢栄一の秘密会議に招かれた。
    【哥老会/かろうかい】中国の秘密結社。
    【神田明神】平将門を祀っている。
    【木立/きだち】中央気象台の官吏。陰陽師をバカにしている。
    【吉備】太古には朝廷にまつろわぬ民だった。
    【奇門遁甲】諸葛孔明が発明し吉備真備が日本に持ち帰ったらしい魔術。地政学に似ている。
    【金烏玉兎集/きんうぎょくとしゅう】安倍晴明が編んだとされる土御門家最大の秘伝書だが行方不明。
    【金曜の星】赤く不吉。虚星。
    【空海】東洋錬金術の道士でもあった。
    【工藤】渋沢栄一が主宰した秘密会議に陸軍参謀本部より招かれた。東京を小さな集落型にし円形高層要塞都市にすべきと進言した。
    【幸田成行/こうだ・しげゆき】幸田露伴。かつて東京改造論を展開した。
    【洪鳳/こうほう】鳴滝が知り合った女性。生まれも育ちも日本。天道教の道員。療養中の辰宮由佳理を世話することになった。
    【蠱術】おなじみのちょっとイヤな感じの魔術。毒を使うらしい。
    【佐藤信淵/さとう・のぶひろ】江戸時代の経世家。思い切った思想だったらしい。
    【三合会】香港を中心としたいわば超巨大な犯罪組織。
    【三本脚の烏】金烏は太陽を表し、その三本脚は太陽黒点を表す。
    【式神】おなじみの使い魔。土御門家は烏の形を好んで使うらしい。
    【渋沢栄一】将門雪冤運動の重鎮だがそちらはどちらかといえば織田が進めている。帝都改造計画のための秘密会議を開く。自分自身はかつて水上都市計画を抱いていたが失敗した。
    【将校】将校には年齢がない。人間と言うものは、将校になったとたん、年齢に関係なく「世界」との対峙のしかたを身につける。たった一人で「世界」に挑む力と勇気とを、かれらは将校の肩書きを得た瞬間から、自分のものにする。(p.19)
    【新日本橋】加藤保憲はこの橋に殺気を感じる。設計者は妻木頼黄。
    【孫文】二人の孫のうちの一人。
    【孫秉煕/そん・へいき】天道教初代教主。
    【平将門】東京最大の祟り神。
    【辰宮由佳理/たつみや・ゆかり】洋一郎の妹。憑かれやすいタイプだったがそれ故に加藤に狙われた。
    【辰宮洋一郎】大蔵省の官僚。秀才タイプ。
    【妻木頼黃/つまき・らいこう】新日本橋の設計者。
    【緑公所/デイ・グリュン・ロジェ】三合会、哥老会、天道教が集まっている。対日本の活動をしている。
    【帝都改造計画】都市計画とともに風水や奇門遁甲やらで霊的な改造もほどこそうとしている。
    【寺田寅彦】長岡半太郎が「天才」と宣言した帝大物理学講師。地震等の災害対策にも関心がある。渋沢栄一主宰の秘密会議では地下都市計画を開陳する。
    【天道教】朝鮮の秘教集団。東学党が日本の手先に使われたことを正すため誕生した。
    【天文暦法】陰陽道とセットになって陰陽師たちが司っていた天の変異により地の変異を読み解く技術。
    【ドーマンセーマン】五芒星の護符。その名は安倍晴明と蘆屋道満が合体したものらしい。
    【土砂加持】斬り落とされた加藤の腕を復活させた業。
    【長岡半太郎】鳴滝の恩師。帝大物理学。研究に熱を入れて日露戦争があったことも知らなかったという噂が立つタイプ。《わが輩だって俗物だよ。》第一巻p.80
    【鳴滝純一/なるたき・じゅんいち】東京帝国大学理科大学実験物理学科。辰宮洋一郎の友人。由佳理を憎からず思ってるようだ。おおような優男。
    【二宮尊徳】織田完之が復権をめざした人物。
    【覗く】覗くという行為は、見たいと念じていたものを実際に肉眼で見てしまうための秘儀みたいなものだから。(第一巻p.235)
    【一言主】どんなことにも一言で答える神様?
    【秘密会議】渋沢栄一が主宰した会議に参加していたのは加藤保憲、辰宮洋一郎、織田完之、陰陽師の賀茂、中央気象台の木立、陸軍の工藤参謀、寺田寅彦。
    【碑文協会/ひもんきょうかい】織田完之が主幹。牛込の協会とも呼ばれる。
    【平井保昌/ひらい・やすまさ】土御門家の陰陽師。奇門遁甲の術に長じる。
    【風水】今ではおなじみの自然エネルギーを利用した建設・土木技術。
    【腹中虫】そんなもん、飲むなよと言いたくなった。由佳理さん不幸の始まり。
    【舞剣謄空の術】洪鳳が使った業。呪歌により剣を持って舞いテンションが上がれば宙に浮くこともできる。
    【ミルン】ジョン・ミルン。英国の学者。日本の地震学の基礎を築いた。妻は日本人のトネ。
    【明治四十年】物語のはじまりの年。
    【森田正馬/もりた・まさたけ】医師。長く巣鴨病院に勤務していた精神医学の若き権威。
    【森林太郎】森鷗外。陸軍軍医監察官。近頃幸田成行との交流が途絶えがちなのが気になっている。
    【ユタ子/寛子】寺田寅彦の妻。名前の通り心の寛い女性。
    【依童/よりわら】巫女的な存在らしい。
    【林覚】緑公所のメンバー。美貌の青年。《中国独立のため闘うこの美青年には、どういうわけか、悲壮感やら緊張やらといった張りつめた雰囲気が見当たらない。その爽やかさ、無邪気さが、いつも加藤の救いであった。》第一巻p.289

  • 長い。
    実在の人物がたくさん出てくるので相当調べた上での作品なのだろうけれども、皇国礼賛というか、かなり危ない思想が盛り込まれている小説だった。
    関東大震災でデマによる朝鮮半島系の人々が虐殺された史実を考えると、クライマックスのあたり、読後暗い気分にならざるを得ない。

  • 2022/04/07-04/10

  • 概ね史実で、概ね実在人物なのに、圧倒的にオカルト。ワクワクする。ドーマンセーマン、陰陽道、式神、地脈、霊的にも守られた最強の都市・東京を創る…。

    加藤が怖くて気持ち悪くていいかんじ。
    この兄は「ブラック労働染まり野郎」なので、妹は放っておいていい。
    妹が大変なことになっているのに、兄はシゴト漬け、いい感じだった兄の友人も奔走するものの最終的には疎遠、精神病院に送られて「ヒューマンロスト」な感じになっている妹が不憫でならない。

    不思議な地震とか、加藤の暗躍とか、老陰陽師が最期に残した手紙とか、ワクワクする舞台じかけがいっぱい。
    絶妙なフィクション具合だと思います。

  • 多分本好きなら中学生位で読んどくものなのでしょうが・・・初めて読みました、大変好みでした。
    いや、顔の長い怖い人が、というぼんやりしたイメージと、虚実百物語にちらっと出てきた実物の顔の長い俳優と、その半分、青いのモアイ店長という認識しかなかったのですが。 のっけからもえもえきゅんきゅんなサービスショット?だったため、あ、これこの二人が幸せになんないと嫌なやつや、と思ったのですが、 ゆかりさんが出て来た時点で嫌な予感はしたのです、あれ、これこのまま触れられないで終わるパターンですか?と。違うでしょ、「虞美人草」的?、兄への執着からねちねちゆかりさんにつきまとうパターンでしょ!と至極勝手に思っていますが、どうなるのでしょうかね。

  • 大正時代に起こった関東大震災は、加藤保憲という元陸軍中尉が日本を破滅させるために術を用いて起こした人災だった。

    ……というお話。

    風水とか陰陽五行とか、オカルティックなネタがてんこ盛りでした。
    これは好きな人には好きかもねぇ。

    江戸(本来は「水戸」)に長年残されていた平将門の怨念だとか、葛城の一言主神をはじめとする「まつろわぬ民」の大和に対する怨嗟だとか、大陸や半島の人が日本人を怨んでいる思いだとか、いろいろ入り混じった過去があるようだけど、とにかく加藤さんは日本を滅ぼしたいらしい。

    亥年が1つのポイントになっていて、関東大震災も神戸の大震災も亥年だったことを考えると、来年亥年の今年に読んでおくべきと思って手に取りました。

    「天災は忘れたころにやってくる」は本人のことばではない説もあるけれど、寺田寅彦さんなど実在の人物もたくさん出てきます。

    ちょっと軽い感じもあるけれど、気軽に読めてよさそうな感じ。
    世界観に入り込めれば、とても楽しめそうなお話です。

  • オカルトファンタジー、題材は好きだが、絶版なのか手に入らないので1巻でおしまい

  • 昔から、いつか読みたいなと思っていたのを大人買い。第壱~六番までということは、昔出ていた10巻強のやつを2冊で1冊にくっつけているのであろう。

    有名な話なので内容は割愛するが、将門の首塚というキーとなる場所が旧大蔵省の中庭に存在していたというところにおそらく着想し、陰陽師、霊的現象および、当時の有名人をキャラクター化した作品。

    映画が公開された当時、中高生もこぞって読んでいたわけで、それくらい軽く読めると見て読み始めたのだが、現代口語と文語的表現が入り交じる、次から次へとキャラクターが出てくるという内容も読む方もしっちゃかめっちゃかの展開で、結構時間がかかる。

    しかしまあ、寺田寅彦などの科学者から幸田露伴から、みんなして霊的な知識に長けていたり、短刀を持ってアクションをかましてみたりと、漫画的な表現も多くてなかなか飽きない。

    そのへんは子供向けとして、SF読みからすると、呪術の解説は嬉しいのだが、何でもかんでも魔法で済まされてしまった感は拭えず。

    実のところ、電子書籍で読んでるんですが、結構厚い本ぽいんで、あと5冊か…。気が向いたら次読みます、ということで。

  • 「1・神霊篇」と「2・魔都(バビロン)篇」の新装合本版。今では漫画やらゲームやらでお馴染みになっている魔術用語(陰陽道、蟲術など)も、発表当時は斬新で衝撃的だったんだろうなと思います。史実や実在の人物(幸田露伴、寺田寅彦など)が登場する群像劇的面白さとオカルティズムが相まって独特の雰囲気を醸造してます。加藤最高。

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著者プロフィール

作家・翻訳家・博物学者。京都国際マンガミュージアム館長。
平井呈一に師事、平井から紹介された紀田順一郎とともに、怪奇幻想文学の日本での翻訳紹介に尽力。のち活動の幅を広げ、博物学をはじめとして多ジャンルにわたって活躍。
主な著書に『妖怪少年の日々』、『帝都物語』シリーズ(ともにKADOKAWA)、『世界大博物図鑑』(平凡社)、『サイエンス異人伝』(講談社)、『江戸の幽明』(朝日新書)など。『怪奇文学大山脈』Ⅰ~Ⅲ(東京創元社)を編纂。

「2021年 『平井呈一 生涯とその作品』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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