遠き雪嶺 (上) (角川文庫)

  • 角川書店 (2005年10月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (304ページ) / ISBN・EAN: 9784041701027

作品紹介・あらすじ

世界の屋根たるヒマラヤは東洋の盟主日本人が征服するーー。昭和21年、ナンダ・コートの北壁に果敢に挑んだ日本人山岳隊の壮絶なドラマ。

感想・レビュー・書評

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  • 数々の山岳小説を物してきた谷氏が今回取り組んだテーマは戦前の立教大学山岳部を扱ったドキュメンタリー小説。上の粗筋にも書いたが日本人で初めてヒマラヤ登頂を成功したチームの物語である。

    これは当時TVで流行っていた『プロジェクトX』を髣髴とさせる内容だ。しかし決定的に違うのはこれは小説であるという事だ。したがってあのTVの手法をそのまま小説に持ち込めばなんとも味気ないものになる。そしてこの作品はそれをやってしまって、全体的に淡白な印象を受けるのだ。

    事実を扱ったドキュメンタリーであっても、小説家のフィルターを通れば自然、物語に熱を帯びてくるものだが、本作においてはそれが見られない。
    立教大学山岳部の成り立ちと初のヒマラヤ登攀挑戦に向けての数々の苦難、ようやくヒマラヤに着いてからの未知の世界・習慣に対する戸惑い、そしてやはり世界の屋根ヒマラヤが持つ、他の山々の追随を許さない過酷な環境。
    これら一通りの事は語られるのだが、非常に淡々としており、苦労が真に迫ってこないのだ。

    物語を面白く材料は多々ある。
    やはり立教大学山岳部の個性豊かな面々、特に本作の主人公ともいえる最年少登頂者浜野の親友であった「雷鳥」こと中島雷二のエピソード、そして部外者ながらもヒマラヤ登攀グループの一員に加わる事になった毎日新聞社の竹節記者、金持ちの出の奥平。彼らがヒマラヤ登攀の選抜隊に加わるか否かのやり取りなど、もっと色濃く描写できたはずである。
    しかしこれが素っ気無い。
    例えば、竹節の参加を巡っての諍いとか、財政面でどうしても参加できなかったメンバーが「いっそ子供と女房と別れてまでも参加しようと思った」とか「参加できるお前が正直憎い」といった人間の内面をむき出しにするドラマがここにはない。みな紳士で、優しく、お行儀がいいのだ。つまり読者の心にあまり振幅をもたらさない。
    これが物語としての熱がないという意味だ。
    (下巻の感想に続く)

  • 巧みな文章で物語に引き込まれた。

  • 【本の内容】
    <上>
    世界の屋根たるヒマラヤは東洋の盟主・日本人が征服する―。

    昭和11年、ヒマラヤ処女峰ナンダ・コート初登頂に夢を賭けた日本遠征隊。

    立教大学山岳部の堀田弥一隊長率いる総勢5名。

    だが、遠征準備は苦難に満ちた。

    資金集め、装備、ベースキャンプへの物資輸送、シェルパの雇用などすべて手探りであった。

    そして、栄光の頂上を目指し、ヒマラヤの麓へ出発…。

    日本山岳小説に燦然と輝く、渾身の超大作900枚。

    <下>
    「これを登るのか…」真正面にナンダ・コートの北壁が立ちはだかる。
    悪絶な様相をみせる北壁は背筋が冷たくなるほどの凄みがある。

    堅雪にピッケルを突き立て堀田隊長は息を呑んだ。

    苦しんでいるのは他の隊員も同じだ。

    極度の疲労、氷のように冷え切った体。

    凍傷で手足の先が切り裂かれるように痛む。

    猛吹雪、雪崩、病状の悪化、予想外の事態…。

    栄光の頂上は近い―。

    取材・構想10年、壮大な実話に基づいた日本山岳の小説の大作。

    [ 目次 ]
    <上>


    <下>


    [ POP ]
    こんなに肩に力の入った読書は久しぶりだ。

    この小説がヒマラヤ処女峰ナンダ・コート初登頂に賭けた、日本遠征隊の実話を基にした話だからだ。

    ときは昭和11年である。時代も時代だし、遠征の準備だけで想像をはるかに超える大変さだ。

    資金の調達から始まって、人選や装備を整えるのも一苦労。

    人間同士ゆえの駆け引きやしがらみによる悲喜こもごももある。

    人間も物資も資金を少しでも節約するため、はるばる船で運ぶのだ。

    現地に着いたら、今度は異国でのシェルパの雇用による混乱や困難が待つ。

    この辺りはインド文化を知る読み物としても、かなりの読み応えがあって面白い。

    しかし当然圧巻はここからだ。

    ヒマラヤの厳しさは隊員たちに容赦ない勢いで襲いかかる。

    猛吹雪、雪崩、凍傷、高山病、思わぬ事態の連続に、読んでる側もページをめくるだけなのにめまいがしてくる。

    とうとう登頂が成功して私も心底ほっとした。

    というわけで、読了後は肩ごりごり。

    疲れますが、実話だけに読み応えは十分。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 山関係の本は、読書であってもひやひやして手に汗にぎる。昭和10年頃の装備って、寒かっただろうな〜

  • 昭和11年立教大学山岳部の一隊が日本人初のヒマラヤ峰の登頂をめざす。日本での厳冬期登攀を経験したもののアルパインは未経験。資金集めから躓き、数々の困難を抱えつつ出発する。欧米から数十年遅れをとっている日本の登山隊にヒマラヤの夢は叶うのか?谷甲州さんの山岳小説は大好きですが、このようにリアリティあふれる遠征計画も興味深いものでした。

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著者プロフィール

1951年兵庫県生まれ。青年海外協力隊などを経て作家デビュー。SF小説、冒険小説、山岳小説など広い分野で高い評価を得ている。96年「白き嶺の男」で第15回新田次郎文学賞を受賞。主な著作に「航空宇宙軍史」シリーズ、「覇者の戦塵」シリーズ、『白き嶺の男』などがある。

「2019年 『硫黄島航空戦線』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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