女人平家〈下〉 (角川文庫)

著者 : 吉屋信子
  • 角川書店 (1988年9月発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (371ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041734025

女人平家〈下〉 (角川文庫)の感想・レビュー・書評

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  • <上下巻読了>
     平清盛の継室・時子と、清盛の六人の娘たちを中心に、平家の興亡を描いた歴史小説。
     前半は時子率いる西八条邸、後半は三の姫と六の姫が嫁いだ冷泉家および七条修理大夫家が主な舞台となる。
     専ら女性視点によって進行するため、男性陣の政治闘争や戦闘描写はさわり程度の羅列に過ぎず、その手のものを求める向きにはかなり物足りないものとなっている。
     また、主人公格の三の姫・佑子の完全無欠の才色兼備ぶりへの過剰なまでの賛美など、一昔前の少女漫画を彷彿とさせるところもある。
     何より、作品の根底に度を越した公卿蔑視があって物語が構成されるため、対象となる人物たちが徹底して貶められているのが鼻につく。
     特に冷泉隆房に対する(不可解なほどに)極端な侮蔑が一貫して見られ、平家関連書籍ではあまり為人を描かれる機会が少ない分、この小説だけで隆房卿について負のイメージを植え付けられる読者が出てこないかと案じてしまう。
     ここまで徹頭徹尾、彼を卑しい人間として描く根拠は、後半における六の姫・典子の台詞に集約されている。

     “父君はなぜいたずらに位階のみ高くて節操なき朝臣へ娘たちを嫁がせておしまいなされたのでしょう。位階低くとも富あらずとも高い学問を修められて一見識を持たるる――譬えばあの大江広元さまのような学者をなぜ平家の婿君になさらなかったか、いまさら父君のために惜しまれてなりませぬ”

     おそらくこれこそは作者自身の痛烈な思いであり、究極的にはこの言葉を訴えたいがための作品構想だったのではなかろうか。
     筆者の欝憤を代弁するかのように、典子は作中で舌鋒鋭く、公卿を見下し、嫌悪し、責任転嫁する。
     歴史小説は、ひとえに書き手から史実の人物に対する好悪が出やすいジャンルではあるが、悪い意味でその典型的な小説であると言える。

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