罪深き緑の夏 (角川文庫)

  • 角川書店 (1991年3月7日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784041785027

みんなの感想まとめ

甘美で耽美な世界観が広がる物語は、非日常の夏休みを舞台に、蔦が生い茂る洋館と白いドレスの美少女が印象的です。登場人物たちの複雑な人間関係や、心の病みが大きな謎となり、単なるミステリーとは異なる深いテー...

感想・レビュー・書評

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  • 『罪深き緑の夏』というタイトルと、天野喜孝氏のイラストが鮮やかなカバー。そして、著者は服部まゆみ。これだけでも、一体どんな耽美な物語が待ち受けているのか、期待が高まる。非日常の夏休み、蔦が生い茂る洋館、白いドレスの美少女――。出だしから心を掴まれる。

    内容は「謎解き」を含むものであるが、ミステリとカテゴライズするのは違うように思う。人物描写や人間関係に重点が置かれているから、というだけでなく、「誰の心が最も病んでいるのか」というところが大きな謎になっているから。

    業の深いというか、ひと癖もふた癖もある人物や芸術家ばかりが登場する。彼らが織り成す昼ドラさながらのどろどろ劇が、服部まゆみさんの手にかかると美しく妖しいものに。

  • 甘美な、耽美な世界観に、どっぷり浸かれて、蒸せかえるような華々の香りが厭と言うほどしてきます。

    謎解きは、一瞬よく分からなくて読み返したりしたのだけれど、何と無くでしか理解できず、否、そういうものなのかと思い直しました。
    何だか僕には複雑で、絡まった糸を解す余裕もないまま終わってしまって(苦笑)

    最後あたりの"あんなものが何になろう……"って言葉が痛々しくて、甘くて、すき。

  • 熱海の山中の蔦屋敷と呼ばれる洋館で出逢った美しい少女:百合。12年後の夏、画家となった「僕」は彼女と再会する。
    いばら姫、ラプンツェル、青髭、洋館の塔のフレスコ画、愛憎。
    火事や幼児の失踪といったミステリはほんのちょっとした味付け。
    本書に登場するバーン・ジョーンズの絵のような妖しく美しい世界を堪能するための物語。

    近藤史恵さんの「薔薇を拒む」を読み、洋館の美少女という共通点から10年ぶりに再読。
    「……」の多さが気にならなくもない。

  • 服部まゆみ第2作。

    1作目より随分と文章は読みやすくなり、イメージが鮮やか。
    「筋読めてるよね? 切るよ」と言われているような、ばさりと切り捨てられたであろう枝葉末節を読んでみたい。

  •  服部まゆみ追悼読書の第二弾。むせるような夏草の匂い、幼いころ心奪われた洋館の美少女、白皙で異端の作家、ジル=ド=レイ、そしていばら姫とラプンツェル、、、。背徳の妖しい香りがたちこめる、ただただひたすらに耽美で妖艶なゴシック・ロマン。謎解きの要素が用意されてはいるものの、そんなのは些細なこと。作者の美意識がそこかしこに散りばめられた人工的な美の世界に、酔いしれればいい。好き好き大好き。  なぜ私が服部まゆみ作品が好きなのかと言うと、結局は、私も大好きなものがたくさん詰まっているからなのだと、この作品を読んで悟ったわ。ああ、服部さん、、、、涙。その服部さんが今はもういないなんて、、、、涙。 たぶん私、服部作品でこの作品が一番好きだわ。

  • その文体と世界観に、何度も時代設定を見誤りながら読んでいた。
    なんというか、世界観や雰囲気ばかりがものすごく迫ってきて、肝心のミステリー部分に目がいかなかった。
    初の服部作品。
    他のも読んでみよう。

  • 天野喜孝×服部まゆみ、妖美さのハーモニー~

  • 読み終わったけどラストが???なので、よみなおし

  • 遠く、夏にいるような、いたような、すぐそばにあるような。でも、別の世界の事のような。絵画の事を齧っていれば、猶更、内容の美しさに深く入り込めるはず。

  • 文が綺麗ですね。おもしろかったです。

  • (((( ゚Д゚)))ガクガクブルブル

  • これもなかなか好きな話でした。兄弟愛憎物。
    テレビゲームをするシーンはない方が良かった気がします。
    服部さんの著作はここまでが好きかも。
    「キマイラ」から微妙になり、「この光と闇」の落ちで大爆笑(すみません)しちゃったので、もう私は駄目かも。
    だって!ダフネって!!

  • 故人であることが惜しまれます。『この闇と光』に魅了されて、服部さんの著書を読み始めました。また違った背徳感。お互いに想いあう兄妹と嫉妬を募らせる兄弟。何もかもを持っていると思われていた兄の本心とは。粘りつくような空気の中、夢中で読み進めました。のめり込んだ作品ほど感想に困ってしまい、この思いをうまく文章に起こせない。好きな作品です。

  • 主人公の独白を交えて進むストーリー。著者特有の流麗な文体は変わらない。また「女」「父」と言った単語が誰を指すのか分かりづらい場面が多い。他の方のレビューにもある通り複数の伏線や謎が回収、解明されないまま終了。読者の想像に委ねるということなのかもしれないが、個人的に少々キャパオーバーでした。シメールもそうだったけど正直消化不良な作品。ただゴシックな時代背景、雰囲気を味わうにはうってつけかも。

  • 横溝正史賞受賞後第1作の本書はなんとも幻想味溢れるミステリ。

    熱海にある「蔦屋敷」と呼ばれる洋館をひょんなことから訪れた画家の山崎淳はそこで百合という美少女に出会う。12年後、淳の腹違いの兄の婚約者として百合と再会して以来、奇怪な事件が続発する。画廊で火事が起こり、淳の絵が焼失し、画廊の主人が焼死してしまう。さらに百合の兄はドライヴ中に事故を起こし、百合を半身不随にしてしまう。

    全編貫かれるのはデビュー作『時のアラベスク』の世界観を更にもっとディープに耽美の方向へ推し進めた幻想的なミステリ。『時の~』はちょっとBL系の香りが漂っていたが、本作ではロリコン趣味を巡る兄弟の狂気の愛という味わい(すみません、こっち系の世界は疎いので、独断と偏見で書いてます。大いに勘違いしていたらゴメンナサイ!)。
    森に佇む洋館にそこに住まう美少女という設定からして禁断の匂いを感じさせるし、その彼女に恋する腹違いの兄と父親の弟子と主人公の三つ巴というのも既にカタストロフィの予兆の足音が聞こえてくるのが解る。一種毒気ともいえるこの怪しい世界はなんとも現実離れしている。綺麗なバラには棘があるというが、本書はまさにそれ。

    こういうのが好きな人には本書は堪らないかもしれない。秘密の果実の味わいに加えて、ミステリとしての謎と真相が盛り込まれているのだから、没頭すれば没頭するほど、陶酔感とカタルシスが得られるだろう。
    しかしやはり私はこういうのはダメ。どうにものめりこめなく、生理的に受け付けない。好きな作家トレヴェニアンでさえ、同趣向の『バスク、真夏の死』は受け付けられなかった。
    従って本書の評価は完全に私の趣味と嗜好の違いによる物だ。

    本書の表紙も天野氏であるが、既に絶版である。私も既に売ってしまい、手元にない。作者もすでに亡くなっている事から、本書もまた出版界の奔流に飲まれて消え去る1冊になっていくだろう。もし持っている方がいれば、もはや手に入らない1冊なので、私の評価を参考せず、新しい目で読むことを願っている。

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著者プロフィール

1948年生まれ。版画家。日仏現代美術展でビブリオティック・デ・ザール賞受賞。『時のアラベスク』で横溝正史賞を受賞しデビュー。著書に『この闇と光』、『一八八八 切り裂きジャック』(角川文庫)など。

「2019年 『最後の楽園 服部まゆみ全短編集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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