黒猫遁走曲 (角川文庫―角川ミステリーコンペティション)

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著者 : 服部まゆみ
  • 角川書店 (1993年12月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041785034

黒猫遁走曲 (角川文庫―角川ミステリーコンペティション)の感想・レビュー・書評

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  • 出版社を定年退職した翠の最愛の猫・メロウが脱走。必死に探すが見つからず、方々に協力を頼む。一方、向かいの部屋に住む劇団員の昭平は、口論の末に妻の幸子を殺してしまい、途方に暮れていた。そこに迷い込んできたのは、1匹の黒猫……。
    タイトル通り、猫が絡んだミステリ。舞台を観ているかのような臨場感溢れる文章が素晴らしい。コメディなのに真面目、シェイクスピアの喜劇のよう?

  • 定年退職した翠の飼い猫メロウが失踪する。
    隣の古いアパートの昭平は妻幸子を殺したばかり。死体をバラバラにして、隣の建設現場のコンクリートに埋める。メロウは昭平のアパートに住みついていた。
    狂ったようにメロウを探し続ける翠。その姿は、事情を知らない昭平には自分を監視しているように見える。いまいましい老婆。
    実は、翠の仕事仲間瑠璃が、酔っ払った翠に愛想をつかし、メロウをベランダから放り投げたのであった。瑠璃の妹も翠といい、あまり仲が良くない。どころか憎悪している。もう故人。
    翠も妹の茜と仲良くない。姉妹って大変なんだねー。でも容易に想像つく。
    この方の小説って、イヤな男多いね。昭平も美青年設定だが、すぐキレて劇団も仕事も辞めるくせに、自尊心ばかり増徴している男。
    イヤな男と変な女が出てくる物語。

    てか、老女にステキな物語かも。
    やっと去ってくれるかとまわりに思われて定年退職して、
    でも翻訳の仕事の引き合いはあって。
    愛するネコともっともっと一緒にいれて、
    土地持ちで歯科医の初老の男性に見初められて。
    翠の老後はハッピーなのかも。

  • 服部まゆみ第4作目。

    「この人コメディかけるのか!」と目からうろこの1冊。
    いや、本人は実に真面目なんだろうけどね。
    そのまじめっぷりが実に面白い。

    うん、面白いサスペンスでした。

  • 出版社を退職し、翻訳家として再スタートを切った翠。
    その矢先に愛猫メロウが行方不明に。
    一方、口論の末に妻を殺してしまった昇平。
    メロウは、昇平の部屋にまぎれこんでいた。
    必死にメロウを探す翠と妻の死体を始末しようとする昭平。
    一匹の黒猫を軸に二人が出会ったとき、事件は起こる…。

    翠の猫へののめり方は、滑稽を通り越して狂気じみたものがあって怖い。また、昇平のナルシスティックな上昇指向の狂気ぶりも、翠に劣らずすさまじい。

    軽めの語り口だが、崩壊へと向かう電波な登場人物達の切実さが重い。

    最後まで読むと、ミステリというよりもホラーサスペンスな印象が強かった。

  • 本作は有栖川氏の『ダリの繭』同様、角川ミステリ・コンペティションの参加作品で文庫書下ろしで刊行された作品。
    一読して驚くのは、非常に読みやすい文体と内容になっていることだ。ゴシック趣味溢れる『時のアラベスク』や『罪深き緑の夏』の同一作者とは思えないほど、普通のミステリとなっている。恐らく読者の人気投票で優秀賞が決まるというこの企画に即して、自らの持ち味をあえて殺し、普段本を読まない人でも読めるように意図したのではないだろうか。

    出版社を退職し、翻訳者として第2の人生を歩むことに意気揚々としていた森本翠は女性編集者の瑠璃と祝杯を上げたその夜、愛猫の黒猫メロウが行方不明になり、心境穏やかでなくなる。
    一方、近所のアパートでは駆け出しの役者鳴海が妻を殺害し、バラバラに解体していた。底に現れた1匹の黒猫。黒猫を必死に探す翠と、瑠璃、そして鳴海の人生が交錯しようとする。

    退職した独身女性で唯一の家族が黒猫という60歳の女性、翠の思考がなんだか痛々しい。独り身の寂しさの拠り所が猫というのは、私も飼っていたので猫に対する愛情については理解できるが、やはり常人とはどこかずれていて、狂気さえ覚える。鳴海もボタンの掛け違えのような瑣末な事から起こしてしまった殺人を、どこか夢の中の出来事のように第三者的に捉えながら、その実、自覚せずにどんどん狂気の井戸の底に落ちていく。
    そしてまた2人の狂人の緩和剤として挿入された瑠璃もまた、常識人とはちょっと違った特異な考え方を持っている。つまりこれは1匹の黒猫を軸にした3人の狂人たちの遁走曲なのだ。

    作者の故服部氏は猫好きとしても有名だったので、どうしても翠と作者がダブって仕方がなかった(ちなみに作者は既婚)。
    中身はごく普通のミステリで、結末も皮肉が利いている。前2作の雰囲気が好きな人にはあっさりとしすぎて物足りなさを覚えるだろうが、私は全く逆の立場だったので本作は服部氏の作品では最も評価が高い。

    昔のミステリマガジンで猫ミステリの特集が組まれていた。その中にいくつか猫ミステリ作品が挙げられていたが、本書はその選から洩れていた。長らく絶版になっており、本書もまた忘れられていく一冊になるのだろう。そんな消えゆく作品を少しでも誰かの記憶にとどめて欲しいために私はこんな風に感想を書いているのかもしれない。

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