この闇と光 (角川文庫)

著者 :
制作 : 鈴木 一誌 
  • 角川書店
3.94
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レビュー : 137
  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041785041

感想・レビュー・書評

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  • 読み終わると、タイトルから意外と深いなと感じる作品。この闇と光。
    文章表現がとても綺麗で、主人公が感じているものがとても美しく思える。
    話の展開は前半は耽美的でファンタジーのよう。後半、一転してシリアスというかミステリーというか…引き込まれた。
    オチも好みだった。どちらとも取れる、終わり方。読む人によって、だいぶ感想が違いそう。その説明され過ぎない考える余地がとても気持ちいい。
    (14/1/8)

  • 起こった事実のみ書けば、エゲツない話なんだけど、書き方一つで、こんなにも美しい物語に変わる。昔読んだ、小池真理子『無伴奏』や倉橋由美子『聖少女』同様の衝撃を受けた。

    幼い頃からどこか城の一室に幽閉されるような状態で育った盲目の少女レイア。母は覚えてない頃に死に、彼女を褒め讃える優しい父はいるものの、一方で身の回りの世話をする侍女ダフネは彼女に冷たく「死ねばいい」と言う。
    しかし、レイアの描写する日常を読んでいくと、父は車で出かけていくし、父が買い与えてくれる本やCDなど、さほど昔ではない現代だということが読む方にもわかってくる。
    で、途中でネタばらしがあり、それがいわゆる衝撃的ではあるのかもしれない(そういう紹介で私自身も当作を読んでみたいと思った)。
    が、この作品の本当の面白さはそのネタが割れた後にあるのではないかと思った。彼女にとっての「真実」は後に知らされた現実なのか…それとも。最後の章、「ムーンレイカー」にうまく書かれていたと思う。

  • 失脚した父王と共に、小さな別荘に幽閉されている盲目の姫君、レイア。美しいものに囲まれた世界で、父はレイアを「光の娘」と呼ぶ。満ち足りた、おとぎ話のような日々。しかしレイアが成長するにつれて、完璧だったはずの世界は少しずつ歪んでいく。

    文章でしか表現できないものもある、ということを改めて教えてくれた一冊だった。初挑戦の作家さんだったけれど、他の作品も気になる魅力を感じた。余韻が残るラストも好み。私には「闇」とされていたほうが、むしろ「光」の世界に思えた。

  • 小さな別荘に失脚した父王と一緒に幽閉されている盲目のレイア姫。
    1Fには兵士がいるから、降りてはいけない。
    盲目の人は魔女とみなされ、殺されてしまうという。
    侍女のダフネは、父がいないときにはレイアに冷たくあたる。
    「死ねばいいのに!」と言いながら、時には手をあげる。
    3歳の時に失明して、それから9年間は暗闇の中だったけど
    父といるだけでレイアは幸せだった。
    ところが、後半から世界はがらりとかわります。
    突然襲い掛かる混乱の嵐。前半との対比がお見事です。
    そして最後に待っているのは混沌だと思う。
    いや・・・恐怖か?
    闇と光の意味を改めて考えてしまいましたよ。

  • 闇と光の二つを合わせ持ってこそ、人間であると思う。

    失脚した父王とともに幽閉されているとおぼしき盲目の姫君、レイア。
    侍女のダフネに殺されるかもしれないとの不安を抱えながらも、美しい花や豊かな物語、芸術に囲まれる日々。
    清く成長していくレイアは、果たしてこの世界を受け入れることが出来るのか。

    ミステリとしての驚きは普通だったが、幼きレイア姫が父王との会話により色を覚え文字を覚え、次第に世界を獲得していく様子がとても面白かった。そしてまばゆいばかりの光を内に抱くゆえに、強烈に闇を意識せざるを得ない苦しみが痛ましく、そこが読みどころでもあった。

    この本に興味を持った方は、出来るだけ早く入手してお読みになる方がいいだろう。

    僕はこの物語に神々しくも妖しい堕天使の姿をみた。

  • 前半部分は不思議なファンタジーのようで"美しく造られた"物語が展開していきます。
    それは時々奇妙な"違和感"を感じさせながらもゆったりと流れていきます。

    敵国との戦いに敗れ、幽閉された父王と王女。
    教養豊かで優しい父王と敵意をむき出しにする粗野な下女。
    たびたび起きていく"暴動"

    それらの意味するものは何なのか。

    物語の後半部分は急転直下。
    魔法がとけた世界が描かれ、当初光輝いていた世界は次第に色あせ、無味乾燥で嫌悪感に満ちた世界へと変容していきます。

    その中で織り上げられた物語の結末は・・・。
    目に見えるものだけが見えることだけが、幸せな世界を作り上げるものではないという意味では残酷なお話なのかもしれません。

  • こうくるのか、と思い、さらにこうきたのか、となる。前半は少し退屈なくらいだけれど、その分暗闇の中にいる主人公に入り込め、後半との対比が面白い。善悪や美醜、光と闇はその境界が難しいのだなと思った。
    2017/2/9

  • 初読みの作家さん、故人であった。

    どんでん返し系作品にカテゴライズされており、集中して読む。仕掛けはなんとなく気づくことができた。読了後思うことは2つ、以下ネタバレになります。
























    1にこの誘拐という事件背景に既視感を覚えた、「八日目の蝉」である。出自は「闇と光」が先であり、内容も異なるものの誘拐犯の精神の意味不明さに同じ匂いを感じた。蝉においてはその意味をカタチ作ろうという意志を読み取るとるができたが、今作はそこに敢えて意味を持たすことを避けたように思えた。

    2に、解説で皆川博子氏が論じられていたことである。作者の審美眼こそが今作であり、その意味ではミステリ的私小説とでも言えるか?様々な小説、音楽、絵画が蘊蓄とともに登場し、自分の興味は未知であるそれらのものに向けられることが多かった。結末がなんとも微妙なカタチになっており、読者を選ぶ作品である。個人的にはゴシック調の世界観は好むものであり、他の作品も読んでみようと思った。

  • 各章によって違った風景に見えるトリックアートのような作品だった。最初は“王”“姫”が登場する、おとぎ話か童話と思わせる導入。でも何だか不穏だし何だか違和感を抱きつつ、次の章でミステリーに突き落とされる。主人公は盲目の幼少期を過ごしたが、読み手にも何も見えていなかったのだと知る。主人公は過去もこれからも、父王と過ごす闇の中でこそ光を感じられるのか。(本書の解釈に「少女革命ウテナ」が引用され、ヘッセの「デミアン」と「少女革命ウテナ」の関係を説いた解説が面白かった)

  • 国王である父と共に、小さな別荘に幽閉されている盲目のレイア姫。優しい父が教えてくれる文字や言葉の知識と、読み聞かせてくれる古今東西の物語、熊のぬいぐるみのプゥとオーストラリアン・シルキー・テリアのダーク。恐ろしい侍女のダフネ。それらが彼女の生活の、世界の全てであった。やがて彼女が成長し、13歳になった頃、世界は歪み始め――。

    著者の作品は初めて読んだが、とても面白かった。レイア姫が成長するまでの過程を描く「『レイア 一』」の章がとても美しい。言葉のセンスも、盲目のレイアが感じる色の描写も。

    そして物語の中盤を過ぎてから明かされる真実。実はレイアが男の子なのではないか、ということには、「父」がズボンを買い与える場面で何となく気づき、「生理」の場面で決定的にわかっていた。言語が日本語で、実は舞台が日本であることも。そこまでわかれば誘拐の事実にも気づいてよさそうなのだが、その可能性にはあえて目を背けながら読んでしまった。それくらい美しい物語だった。

    そして、本書の驚きはそれだけでは終わらない。実は「『レイア 一』」と「『レイア 二』」の章は怜が創作したストーリーだったと言うのだから。それを、誘拐犯と目した作家・原口孝夫に突きつける章で物語は終わる。だが、結局原口が犯人だったのかどうか、もしかしたら原口の言う通り怜の思い込みなのか、それがわからないまま終わるのにも圧倒させられた。

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