この闇と光 (角川文庫)

  • 角川書店 (2001年8月24日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (304ページ) / ISBN・EAN: 9784041785041

作品紹介・あらすじ

父王が失脚し、森の中の別荘に幽閉された盲目の姫君・レイア。父と召使いのダフネだけがレイアの世界の全てだった。ところがある日、レイアがそれまで信じてきた世界は、音を立てて崩れ去ってしまう――。

みんなの感想まとめ

テーマは、盲目の姫君レイアが幽閉された生活の中で経験する真実と幻想の交錯です。彼女の周囲には優しい父と冷たい侍女が存在し、彼女の世界は限られていますが、物語はその狭さを超えて広がりを見せます。作中では...

感想・レビュー・書評

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  • 思ったよりもという言葉があるように、想像は現実を凌駕してしまうことがあります。
    それは良い方向にも悪い方向にも転ぶのだと感じました。

    「「概念」とは簡単にいうと「分ること」だという。」
    「神の意志はランダム!」

  • 本作、ファンタジーだとばかり思っていた。隣国との戦争に負け、隣国の支配を受ける小国。国王と盲目の王女レイアは冬の離宮に軟禁され、レイア(5歳の幼女)は、厳しく監視され脅されながらも、父王の愛を受け、文字を習い、物語を語り聞かされて成長していく…。

    ところが、第二章でなんと、レイアは少年の誘拐監禁事件の被害者怜であると明かされる。救出された少年怜は、目の手術を受けて視力を回復するが、9年間の異常な監禁生活によって精神が歪められ、現実の世界にすっかり馴染めなくなっていた。

    大どんでん返しのミステリーだった。全く想定していなかったので、ちょっとのけぞった。いやはや、そうきたか。

  • 起こった事実のみ書けばエゲツない話なんだけど、書き方一つでこんなにも美しい物語に変わる。昔読んだ小池真理子『無伴奏』や倉橋由美子『聖少女』同様の衝撃を受けた。

    幼い頃からどこか城の一室に幽閉されるような状態で育った盲目の少女レイア。母は覚えてない頃に死に、彼女を褒め讃える優しい父はいるものの、一方で身の回りの世話をする侍女ダフネは彼女に冷たく「死ねばいい」と言う。
    しかしレイアの描写する日常を読んでいくと、父は車で出かけていくし、父が買い与えてくれる本やCDなど、さほど昔ではない現代だということが読む方にもわかってくる。
    で、途中でネタばらしがあり、それがいわゆる衝撃的ではあるのかもしれない(そういう紹介で私自身読んでみたいと思った)。
    が、この作品の本当の面白さはそのネタが割れた後にあるのではないかと思った。彼女にとっての「真実」は後に知らされた現実なのか…それとも。最後の章「ムーンレイカー」にうまく書かれていたと思う。

  • すごい。
    この流れるような美しい主人公の心の動きに感嘆のため息がでました。
    幼い主人公のコロコロと変わる心情もドキドキして読み進め、途中で違和感を感じ
    怒涛の第二章以降……
    この作品はすごい。

  • 読み終わると、タイトルから意外と深いなと感じる作品。この闇と光。
    文章表現がとても綺麗で、主人公が感じているものがとても美しく思える。
    話の展開は前半は耽美的でファンタジーのよう。後半、一転してシリアスというかミステリーというか…引き込まれた。
    オチも好みだった。どちらとも取れる、終わり方。読む人によって、だいぶ感想が違いそう。その説明され過ぎない考える余地がとても気持ちいい。
    (14/1/8)

  • 不思議なゴシックミステリー。
    言葉のひとつひとつに作者の拘りを感じる。
    全て主人公の視点から語られる情報を、主人公と共に想像していくのは面白かった。
    なぜ男は誘拐したのか。その真相が明らかになることはなかったものの、残る独特の余韻はまるでダフネの香りのよう。
    美しい作品だった。

  • 幽閉された盲目の姫君。長い髪、シルクのドレス。季節ごとの花々、優しい父王、そして姫を虐待する侍女。一度踏み込んだら抜け出せない、物語の迷宮へようこそ-。

    初めての服部まゆみsan。

    どこの王国かなぁと考えながら、姫・レイアが、意地悪な侍女・ダフネとできるだけ出会わなくて済みますようにと祈りながら、読み進めました。

    1章「レイア 一」が長く、正直、後半は少し予想できてしまいました。ただ、、2章「囚われの身」から5章「十五歳、夏」、特に盲目の世界で過ごした”悲劇”の9年間と、帰還した後の”幸せ”な世界との葛藤、6章「レイア 二」の”おとうさま”の独白、最終章「ムーンレイカー」の別荘訪問まで、予想を超えた展開にドキドキしながら、一気に読み終えました。

    魅惑的な謎と優美な幻影とが折り重なり、とっても好きな世界観です。
    続きは、闇と光の神-アブラクサスに託します!

  • 美しい世界で育てられた盲目の姫の物語。全てが覆る時あなたはきっと眠れなくなる!寝不足必須の1冊です。半分くらいまでは、若干退屈しながら読み進めました。この物語はどこへ向かおうとしているんだろう、大丈夫かな・・・と心配したほど(笑)でも半分まで来た時、物語は一気に展開を迎えます。それまでの半分を全て覆すような展開に頭がついていかないくらいです。とにかく読んで大正解!読んで良かったと思える作品でした!

  • 失脚した父王と共に、小さな別荘に幽閉されている盲目の姫君、レイア。美しいものに囲まれた世界で、父はレイアを「光の娘」と呼ぶ。満ち足りた、おとぎ話のような日々。しかしレイアが成長するにつれて、完璧だったはずの世界は少しずつ歪んでいく。

    文章でしか表現できないものもある、ということを改めて教えてくれた一冊だった。初挑戦の作家さんだったけれど、他の作品も気になる魅力を感じた。余韻が残るラストも好み。私には「闇」とされていたほうが、むしろ「光」の世界に思えた。

  • 小さな別荘に失脚した父王と一緒に幽閉されている盲目のレイア姫。
    1Fには兵士がいるから、降りてはいけない。
    盲目の人は魔女とみなされ、殺されてしまうという。
    侍女のダフネは、父がいないときにはレイアに冷たくあたる。
    「死ねばいいのに!」と言いながら、時には手をあげる。
    3歳の時に失明して、それから9年間は暗闇の中だったけど
    父といるだけでレイアは幸せだった。
    ところが、後半から世界はがらりとかわります。
    突然襲い掛かる混乱の嵐。前半との対比がお見事です。
    そして最後に待っているのは混沌だと思う。
    いや・・・恐怖か?
    闇と光の意味を改めて考えてしまいましたよ。

  • 闇と光の二つを合わせ持ってこそ、人間であると思う。

    失脚した父王とともに幽閉されているとおぼしき盲目の姫君、レイア。
    侍女のダフネに殺されるかもしれないとの不安を抱えながらも、美しい花や豊かな物語、芸術に囲まれる日々。
    清く成長していくレイアは、果たしてこの世界を受け入れることが出来るのか。

    ミステリとしての驚きは普通だったが、幼きレイア姫が父王との会話により色を覚え文字を覚え、次第に世界を獲得していく様子がとても面白かった。そしてまばゆいばかりの光を内に抱くゆえに、強烈に闇を意識せざるを得ない苦しみが痛ましく、そこが読みどころでもあった。

    この本に興味を持った方は、出来るだけ早く入手してお読みになる方がいいだろう。

    僕はこの物語に神々しくも妖しい堕天使の姿をみた。

  • 文学や教養は殆どない私だが、読んでいると凄く美しく感じた。
    表現がというよりは、描写が入り込みやすく、
    どんでん返しである部分に関しては、完全に予想できてしまったものの、
    独特の読後感で非常に良かった。
    どこまでを信用し、どこまでを疑うのかが難しく感じたが、
    最後はリドル・ストーリー的で余白のあるいい物語でした。

  • 急展開に驚いた。
    何もかもがよくわからないまま、少しだけ明かされて終わる。
    釈然としない。
    けど、面白い。

  • レイア姫の身に起きたすべてが圧倒的で美しくて悲しくて、大いなる闇に身を囚われながら、光を追憶し、そしてまた歩き出してほしいと願う。

    結末……
    スキ……
    もう放り出された、レイアと同じ気持ち……

  • こうくるのか、と思い、さらにこうきたのか、となる。前半は少し退屈なくらいだけれど、その分暗闇の中にいる主人公に入り込め、後半との対比が面白い。善悪や美醜、光と闇はその境界が難しいのだなと思った。
    2017/2/9

  • 初読みの作家さん、故人であった。

    どんでん返し系作品にカテゴライズされており、集中して読む。仕掛けはなんとなく気づくことができた。読了後思うことは2つ、以下ネタバレになります。
























    1にこの誘拐という事件背景に既視感を覚えた、「八日目の蝉」である。出自は「闇と光」が先であり、内容も異なるものの誘拐犯の精神の意味不明さに同じ匂いを感じた。蝉においてはその意味をカタチ作ろうという意志を読み取るとるができたが、今作はそこに敢えて意味を持たすことを避けたように思えた。

    2に、解説で皆川博子氏が論じられていたことである。作者の審美眼こそが今作であり、その意味ではミステリ的私小説とでも言えるか?様々な小説、音楽、絵画が蘊蓄とともに登場し、自分の興味は未知であるそれらのものに向けられることが多かった。結末がなんとも微妙なカタチになっており、読者を選ぶ作品である。個人的にはゴシック調の世界観は好むものであり、他の作品も読んでみようと思った。

  • 国王である父と共に、小さな別荘に幽閉されている盲目のレイア姫。優しい父が教えてくれる文字や言葉の知識と、読み聞かせてくれる古今東西の物語、熊のぬいぐるみのプゥとオーストラリアン・シルキー・テリアのダーク。恐ろしい侍女のダフネ。それらが彼女の生活の、世界の全てであった。やがて彼女が成長し、13歳になった頃、世界は歪み始め――。

    著者の作品は初めて読んだが、とても面白かった。レイア姫が成長するまでの過程を描く「『レイア 一』」の章がとても美しい。言葉のセンスも、盲目のレイアが感じる色の描写も。

    そして物語の中盤を過ぎてから明かされる真実。実はレイアが男の子なのではないか、ということには、「父」がズボンを買い与える場面で何となく気づき、「生理」の場面で決定的にわかっていた。言語が日本語で、実は舞台が日本であることも。そこまでわかれば誘拐の事実にも気づいてよさそうなのだが、その可能性にはあえて目を背けながら読んでしまった。それくらい美しい物語だった。

    そして、本書の驚きはそれだけでは終わらない。実は「『レイア 一』」と「『レイア 二』」の章は怜が創作したストーリーだったと言うのだから。それを、誘拐犯と目した作家・原口孝夫に突きつける章で物語は終わる。だが、結局原口が犯人だったのかどうか、もしかしたら原口の言う通り怜の思い込みなのか、それがわからないまま終わるのにも圧倒させられた。

  • 前半の世界観、そして後半の崩壊。
    ジャンル的にはミステリでは無いですが、「騙された」感よりは、全てが瓦解する感じが味わえました。
    素晴らしかったです。

    ずっと気になってきた作品で絶版なのを取り寄せて読んで正解でした。
    西洋美学大好きなのでそういう意味でも世界に浸ることが出来ました。
    さらに西洋文学も好きならなお面白いかと思います。
    前情報無しで是非読んで貰いたいです。

  • どんでんが最後にくるタイプの話ではないけど、
    仕掛けがきた時、世界の色彩がザッと変わる面白さがある。
    神であり悪魔である『アブラクサス』を初めて知った。
    何と魅力的な存在か。
    この本を読む前にヘルマン・ヘッセのデミアンを読んでおくと尚良い。

  • だいぶ昔に読んで、おそらく10年ぶり3度目の再読。
    最初の衝撃こそ受けないが、
    知っているからこその面白さ、
    知っていてもなおの面白さがあって、
    一気に読んでしまった。

    何がきっかけだったか忘れたけど、
    この小説に出会えてよかった。

    ミステリー好き、
    耽美な世界観好きにぜひ読んでほしい。

    普段、読む文章で脳裏に映像を浮かべるんだけど、
    この作品に限っては主人公が最初から盲目なので、浮かぶ映像が不思議だった。
    第三者目線で想像しつつ、
    主人公視点の文章がうますぎて時折景色が見えなくなり、
    嗅覚が敏感になった気分になり。
    作者の表現力というか文章力がすごい。
    読み終えてもしばらく世界観から抜け出せず、頭がフワフワしてしまう。

    また10年後あたりに、
    きっと読むだろう。

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著者プロフィール

1948年生まれ。版画家。日仏現代美術展でビブリオティック・デ・ザール賞受賞。『時のアラベスク』で横溝正史賞を受賞しデビュー。著書に『この闇と光』、『一八八八 切り裂きジャック』(角川文庫)など。

「2019年 『最後の楽園 服部まゆみ全短編集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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