この闇と光 (角川文庫 は 10-4)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 854
感想 : 150
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  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041785041

作品紹介・あらすじ

父王が失脚し、森の中の別荘に幽閉された盲目の姫君・レイア。父と召使いのダフネだけがレイアの世界の全てだった。ところがある日、レイアがそれまで信じてきた世界は、音を立てて崩れ去ってしまう――。

感想・レビュー・書評

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  • 本作、ファンタジーだとばかり思っていた。隣国との戦争に負け、隣国の支配を受ける小国。国王と盲目の王女レイアは冬の離宮に軟禁され、レイア(5歳の幼女)は、厳しく監視され脅されながらも、父王の愛を受け、文字を習い、物語を語り聞かされて成長していく…。

    ところが、第二章でなんと、レイアは少年の誘拐監禁事件の被害者怜であると明かされる。救出された少年怜は、目の手術を受けて視力を回復するが、9年間の異常な監禁生活によって精神が歪められ、現実の世界にすっかり馴染めなくなっていた。

    大どんでん返しのミステリーだった。全く想定していなかったので、ちょっとのけぞった。いやはや、そうきたか。

  • 思ったよりもという言葉があるように、想像は現実を凌駕してしまうことがあります。
    それは良い方向にも悪い方向にも転ぶのだと感じました。

    「「概念」とは簡単にいうと「分ること」だという。」
    「神の意志はランダム!」

  • 起こった事実のみ書けば、エゲツない話なんだけど、書き方一つで、こんなにも美しい物語に変わる。昔読んだ、小池真理子『無伴奏』や倉橋由美子『聖少女』同様の衝撃を受けた。

    幼い頃からどこか城の一室に幽閉されるような状態で育った盲目の少女レイア。母は覚えてない頃に死に、彼女を褒め讃える優しい父はいるものの、一方で身の回りの世話をする侍女ダフネは彼女に冷たく「死ねばいい」と言う。
    しかし、レイアの描写する日常を読んでいくと、父は車で出かけていくし、父が買い与えてくれる本やCDなど、さほど昔ではない現代だということが読む方にもわかってくる。
    で、途中でネタばらしがあり、それがいわゆる衝撃的ではあるのかもしれない(そういう紹介で私自身も当作を読んでみたいと思った)。
    が、この作品の本当の面白さはそのネタが割れた後にあるのではないかと思った。彼女にとっての「真実」は後に知らされた現実なのか…それとも。最後の章、「ムーンレイカー」にうまく書かれていたと思う。

  • 読み終わると、タイトルから意外と深いなと感じる作品。この闇と光。
    文章表現がとても綺麗で、主人公が感じているものがとても美しく思える。
    話の展開は前半は耽美的でファンタジーのよう。後半、一転してシリアスというかミステリーというか…引き込まれた。
    オチも好みだった。どちらとも取れる、終わり方。読む人によって、だいぶ感想が違いそう。その説明され過ぎない考える余地がとても気持ちいい。
    (14/1/8)

  • すごい。
    この流れるような美しい主人公の心の動きに感嘆のため息がでました。
    幼い主人公のコロコロと変わる心情もドキドキして読み進め、途中で違和感を感じ
    怒涛の第二章以降……
    この作品はすごい。

  • 失脚した父王と共に、小さな別荘に幽閉されている盲目の姫君、レイア。美しいものに囲まれた世界で、父はレイアを「光の娘」と呼ぶ。満ち足りた、おとぎ話のような日々。しかしレイアが成長するにつれて、完璧だったはずの世界は少しずつ歪んでいく。

    文章でしか表現できないものもある、ということを改めて教えてくれた一冊だった。初挑戦の作家さんだったけれど、他の作品も気になる魅力を感じた。余韻が残るラストも好み。私には「闇」とされていたほうが、むしろ「光」の世界に思えた。

  • 小さな別荘に失脚した父王と一緒に幽閉されている盲目のレイア姫。
    1Fには兵士がいるから、降りてはいけない。
    盲目の人は魔女とみなされ、殺されてしまうという。
    侍女のダフネは、父がいないときにはレイアに冷たくあたる。
    「死ねばいいのに!」と言いながら、時には手をあげる。
    3歳の時に失明して、それから9年間は暗闇の中だったけど
    父といるだけでレイアは幸せだった。
    ところが、後半から世界はがらりとかわります。
    突然襲い掛かる混乱の嵐。前半との対比がお見事です。
    そして最後に待っているのは混沌だと思う。
    いや・・・恐怖か?
    闇と光の意味を改めて考えてしまいましたよ。

  • 闇と光の二つを合わせ持ってこそ、人間であると思う。

    失脚した父王とともに幽閉されているとおぼしき盲目の姫君、レイア。
    侍女のダフネに殺されるかもしれないとの不安を抱えながらも、美しい花や豊かな物語、芸術に囲まれる日々。
    清く成長していくレイアは、果たしてこの世界を受け入れることが出来るのか。

    ミステリとしての驚きは普通だったが、幼きレイア姫が父王との会話により色を覚え文字を覚え、次第に世界を獲得していく様子がとても面白かった。そしてまばゆいばかりの光を内に抱くゆえに、強烈に闇を意識せざるを得ない苦しみが痛ましく、そこが読みどころでもあった。

    この本に興味を持った方は、出来るだけ早く入手してお読みになる方がいいだろう。

    僕はこの物語に神々しくも妖しい堕天使の姿をみた。

  • 前半部分は不思議なファンタジーのようで"美しく造られた"物語が展開していきます。
    それは時々奇妙な"違和感"を感じさせながらもゆったりと流れていきます。

    敵国との戦いに敗れ、幽閉された父王と王女。
    教養豊かで優しい父王と敵意をむき出しにする粗野な下女。
    たびたび起きていく"暴動"

    それらの意味するものは何なのか。

    物語の後半部分は急転直下。
    魔法がとけた世界が描かれ、当初光輝いていた世界は次第に色あせ、無味乾燥で嫌悪感に満ちた世界へと変容していきます。

    その中で織り上げられた物語の結末は・・・。
    目に見えるものだけが見えることだけが、幸せな世界を作り上げるものではないという意味では残酷なお話なのかもしれません。

  • 美しい世界で育てられた盲目の姫の物語。全てが覆る時あなたはきっと眠れなくなる!寝不足必須の1冊です。半分くらいまでは、若干退屈しながら読み進めました。この物語はどこへ向かおうとしているんだろう、大丈夫かな・・・と心配したほど(笑)でも半分まで来た時、物語は一気に展開を迎えます。それまでの半分を全て覆すような展開に頭がついていかないくらいです。とにかく読んで大正解!読んで良かったと思える作品でした!

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著者プロフィール

1948年生まれ。版画家。日仏現代美術展でビブリオティック・デ・ザール賞受賞。『時のアラベスク』で横溝正史賞を受賞しデビュー。著書に『この闇と光』、『一八八八 切り裂きジャック』(角川文庫)など。

「2019年 『最後の楽園 服部まゆみ全短編集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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