この闇と光 (角川文庫 は 10-4)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 856
感想 : 150
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  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041785041

感想・レビュー・書評

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  • 思ったよりもという言葉があるように、想像は現実を凌駕してしまうことがあります。
    それは良い方向にも悪い方向にも転ぶのだと感じました。

    「「概念」とは簡単にいうと「分ること」だという。」
    「神の意志はランダム!」

  • 前半部分は不思議なファンタジーのようで"美しく造られた"物語が展開していきます。
    それは時々奇妙な"違和感"を感じさせながらもゆったりと流れていきます。

    敵国との戦いに敗れ、幽閉された父王と王女。
    教養豊かで優しい父王と敵意をむき出しにする粗野な下女。
    たびたび起きていく"暴動"

    それらの意味するものは何なのか。

    物語の後半部分は急転直下。
    魔法がとけた世界が描かれ、当初光輝いていた世界は次第に色あせ、無味乾燥で嫌悪感に満ちた世界へと変容していきます。

    その中で織り上げられた物語の結末は・・・。
    目に見えるものだけが見えることだけが、幸せな世界を作り上げるものではないという意味では残酷なお話なのかもしれません。

  • 文学や教養は殆どない私だが、読んでいると凄く美しく感じた。
    表現がというよりは、描写が入り込みやすく、
    どんでん返しである部分に関しては、完全に予想できてしまったものの、
    独特の読後感で非常に良かった。
    どこまでを信用し、どこまでを疑うのかが難しく感じたが、
    最後はリドル・ストーリー的で余白のあるいい物語でした。

  • 【2024年41冊目】
    おわーっ!なんかおかしいなぁとは思ってたけど、そう来たかー!なゴシックミステリー。

    囚われの身である盲目のレイア。彼女が寄る辺にしているのは、父王の存在だけ。たっぷりとした愛情を注がれ、成長を重ねるレイアだったが、ある日幸せな日常は音を立てて崩れ去り――。

    美しいのに、何かがおかしい。何かがおかしいと思うのに、何がおかしいかははっきりと言えない。それでも先に行くにつれ、違和感はどこか肥大していき、ぱっと弾けたように物語は急展開を見せる…!これ以上は言えない!けど騙される率9.5割だと思います。してやられました。

  • 盲目の姫・レイアは塔の中で、外に出ることなく生きている。塔にいるのは、父王と侍女のダフネのみ。父王はレイアを溺愛。侍女のダフネはレイアに冷たくあたるが、レイアは父王の愛を受けて、満ち足りた生活を送る。

    という何やら中世を思わせる世界感だが、少しずつ崩れていく。話すことばが日本語ということが分かったり、「嵐が丘」が出てきたり、自動車がでてきたり。一体、いつの時代の話で、ここはどこなんだろう。どんどん混乱していく。そして、レイアが実は!というところから後半が始まる。

    「レイア」は手術で目が見えるようになる。新しい世界は光にあふれているが、人間性の闇の部分も見え隠れする。自由ではあるが、決して幸せではない生活。「レイア」は「父王」を探し求め、再会し、闇と光の世界の入り口に立つことになる。

    トリック自体に新奇性はなく、どんでん返しがあるということを聞いていただけに何となく想像はつく。だけど、少しずつ世界感がくずれていく感じ、映像にノイズがまじっていく感じ、これを描き切る筆力がすごい。後半の対比、そしてラスト。まさに何が闇で、何が光かがわからなくなる。自分にとっては、かなり新鮮なミステリだった。

  • 幽閉された父王と召使のダフネだけの閉じた世界で生きるレイア。世界観に引き込まれてその場にいるかのように読み進めていくうちに感じる違和感。最後にはああ、そういうことだったのか…!とため息をついた。記憶を消してもう一度読みたい類の本。ネタバレ厳禁。図書館 2016/07/

  • 見えないものは美しく、見えるものは醜い世界。特に前半がたまらない。グールドを聴きながら読んでいたら作中にも登場して嬉しかった。

  • 失脚した王である優しい父とともに、
    小さな別荘に幽閉されている盲目の姫レイア。
    そして意地悪な侍女のダフネ。
    これは中世ヨーロッパのお話し?と思いながら、
    正直あまり好みの世界観ではなくて、
    ダラダラとなかなか読み進まない状態が何日も続いた。
    惰性で読んでいたが、半分より少し進んだあたりで、
    世界観も内容も急展開!!
    え?!ええ?!そうだったのかーーー!!!(驚)
    詳しくレビューを書いてしまうと、ネタバレになるのでやめておきます。(笑)
    私のように、何の予備知識もない状態で読むのがおススメ。

  • 同人小説を読んだ心持ち。厨二くさいのかな。

  • 銅版画家という作者ならではの、耽美に満ち溢れた、神話的で独特な世界です。前半は、盲目の少女の一人称で展開するので、聴覚、触覚、嗅覚を中心に描かれ、薄気味の悪い外国のおとぎ話という感じです。
    後半は、物語の地盤ががらっと変わり、本当に驚かされます。見えるようになった主人公が見たものは何か。見えてしまった世界はどんな場所だったか。
    目が見えなかった頃は、美しい想像の中で愛に満たされ、楽しく暮らせました。彼女にとっての世の中というのは、自分で触れる身の回りと、父が話してくれる物語や文学、音楽だけで構成されていました。見えなかったからこそ、闇の中だったからこそ、見えたものがあったのです。
    前半は、冗長で退屈で、何度も投げ出してしまおうと思いました。でも、ここをガマンして読み進むと、後半はドキドキの展開となります。さらに、終わり方は含みがあり、もどかしさもあり。
    他には無いタイプの本ですから、たくさんの本を読んできた人にも新鮮だと思います。

著者プロフィール

1948年生まれ。版画家。日仏現代美術展でビブリオティック・デ・ザール賞受賞。『時のアラベスク』で横溝正史賞を受賞しデビュー。著書に『この闇と光』、『一八八八 切り裂きジャック』(角川文庫)など。

「2019年 『最後の楽園 服部まゆみ全短編集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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