レオナルドのユダ (角川文庫)

著者 :
制作 : 鈴木 一誌 
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 120
レビュー : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041785065

作品紹介・あらすじ

神に選ばれし万能の天才-画家にして彫刻家、科学者、医師、音楽家でもあったレオナルド・ダ・ヴィンチ。気高く優雅な魅力を放つ彼の周りには、様々な人々が集っていた。貴族の跡取り息子でありながら、レオナルドに魅せられて画房の弟子となったフランチェスコ。絶世の美青年だが、傍若無人なふるまいで周囲を混乱させるサライ。そして、レオナルドの才能を決して認めようとしない毒舌の人文学者パーオロ。天才レオナルドの魅力を真摯に描き、彼が遺した『モナ・リザ』の謎に迫る、著者渾身の歴史ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 復刻版ということで。京都の書店さんでしか買えないのかしら?そんなことはないと思うけど。
    かの天才、レオナルド・ダ・ヴィンチにまつわる人物たちの群像劇。あるものは身分と盲信を持ち師に傾倒し、あるものは身分に悩みながらも信奉する。寵愛を受けるもの、なんとか批評し、貶めようとするもの。
    語り手はみな男なのだけど、その愛憎劇はとても女々しい。大嫌い、大嫌い、でも大好き。みたいな少女漫画。いや、そういうの別に嫌いじゃないし面白いからいいのだけど。
    そう、面白い。レオナルド・ダ・ヴィンチとかあんまり興味はないし、最後の晩餐くらいはなんとなくシルエット思い浮かぶ程度で、ルネサンスあたりのイタリアも世界史受験勉強以来ほとんど忘れているような人でも面白くは読めるのだ。文章が美しく、場面を思い浮かべられる描写。未だ顔も知らない大嫌いなアイツに会えるのか?そして終盤のミステリー。間違いなく面白い。
    のだが、なにぶん長い。上記程度の知識と熱量だと多少冗長と感じると思う。終盤のミステリー部分のような物語を駆動させる要素があるとより読みやすかったかなぁ。
    服部まゆみさんてもう亡くなられているのだね。悲しい。

  • 大垣書店限定復刻https://twitter.com/mystery_ogakiということで去年(2016)11月に10年ぶりに再版。大垣書店ってどこにあるのよと調べたら、なんと京都拠点の本屋さん。しかも実家の最寄駅にも出店してるではないか!というわけで、年末年始の帰省中にゲット。

    服部まゆみなので安定の分厚さ。しかし本作はミステリー要素はほぼなくて、あくまでレオナルド・ダ・ヴィンチを取り巻く人間模様、彼に関わった人たちの葛藤を中心に描いており、レオナルド自身の苦悩は主観的には描かれない。語り手はレオナルドの弟子となるジャンピエトリーノと、同時代の著述家パーオロ・ジョヴィーノが交互に担当。生真面目で素朴、一途に師を慕うジャンと、傲岸不遜で皮肉屋、レオナルド嫌いのパーオロの視点は対照的で面白い。

    前半は、無駄にエラそうなパーオロよりも素直なジャンに共感しながら読んでいたのだけど、後半はひたすらレオナルドを聖人君子にしておきたいジャンたちよりも、シニカルながら真実を知ろうとするパーオロのほうに共感しながら読んだ。弱点や欠点があったほうが人間は魅力的だし、だからこそ愛せるというパーオロの言い分のほうが、まるでレオナルドに性欲などないかのように扱いたがるジャンやフランチェスコよりも人間味があるもの。

    そういう意味では、レオナルドの不肖の弟子、ものすっごい美形だという以外になんの取り柄もないサライのほうが、お人形のような美少年だけど潔癖で面白みのないフランチェスコより私は好きだった。フランチェスコはある意味、真の主人公ではあるのだけど、なぜ彼がそこまでしてレオナルドを神聖視したがるのかはあまり理解できなかった。

    タイトルにあるユダ、キリストをレオナルドに、その使徒を弟子たちに置き換えたときに、ユダは誰だったのかというのが物語の鍵になるのだけど、一般的に裏切り者の代名詞とされるユダが本当はキリストを一番愛していた説=一番に愛されないくらいならいっそ憎まれたいという屈折も踏まえてユダという人物を想定したときに、誰がレオナルドにとって真のユダだったのかはなかなか多角的な見方ができて興味深かったです。

    最終的に「モナリザのモデルは誰だったのか」という部分に物語は切り込んでいく。結論自体はとくに新説ではなく昔から言われてる説だけど、そこに至るまでにどういう過程があったか、を膨らませて描くのが、歴史家ではなく小説家の手腕ですよね。力作でした。

  • 大垣書店限定復刊。
    少し前に『この闇と光』の復刊が話題になったが、本書は歴史小説(ミステリ的な仕掛けは最後に少し出てくるので、ミステリだと言えないこともないが……)。
    ダ・ヴィンチを主題にした小説は数多いが、佳作の1編だと言える。但しミステリを期待すると消化不良に終わる。

    色々と復刊しているようなので、この機会に『シメール』を文庫化して欲しいのだが……。

  • 「「幸せ」の入る場所に、嫉妬が待ち伏せしてこれを襲う。そして幸せの去ったあとには苦痛と悔恨とが残る。嫉妬は自分を傷つけるだけのもの」

  • レオナルド・ダ・ヴィンチとその弟子たち、中でも美しいながら道楽者のサライ、貴族の後嗣でありながら一途に愛し、仕えたフランチェスコを中心に、彼を敬愛し弟子となった者と私怨から彼を厭い忌避した者との視点から描いた物語。
    歴史的事実を丹念に描きながらそこに色濃く滲む嫉妬と苦悩。既にレオナルド亡き終盤、叙述者の二人が再会した時、サライが暴漢に殺され、物語は一気にミステリの色を帯びる。
    レオナルドにとって最期の場所、フランスへ伴った弟子サライとはどんな存在だったのか? そして、彼を看取ったフランチェスコは?
    敬愛も献身も、そして負傷さえレオナルドへの愛、それを独占するためなのか? 更には殺人さえも。
    この鮮やかな転換は癖になります。
    但し、歴史小説が苦手な方にはお勧めしません。

  • 万能の天才レオナルド・ダ・ヴィンチの周囲の人々を描いたお話。
    貴族出身の美貌の弟子フランチェスコとその従者ジャンを中心とする群像劇。

  • 読ませる。
    実に読ませるのだが、ここから後ひとおし展開しそうなところがあり、惜しい。

    何よりも、私が読むこの作家さんの最後の作品であることが悲しい。
    服部まゆみの新しい作品が読みたかった。

  • 一応最後のところでちょっとミステリ?ダヴィンチあんまり好きじゃないんですよ。描く顔が好みじゃない。(彼の描いたチェーザレ・ボルジアのスケッチは是非とも見たいが。どこにあるんだ)でもちょっと興味湧きました。今ルーヴル所蔵の「聖ヨハネ」をデスクトップに置いてます。・・・・うーん実に耽美な、官能的な顔・・・・「聖」じゃないよね、と。ちょっとむっちりしてるし。これ読んでアーカイヴから彼のスケッチを検索しましたが確かに尋常じゃない才です。『万能の人」ね。それにしてもこの時代とんでもない人ばかり輩出してますね。

  • 最初は読むのに時間かかるかなーと思ったけど、気がつくと夢中になっていた。外が暗かった。『モナ・リザ』より『最後の晩餐』より、ジャンの描いた『十字架を担うキリスト』が見たい。
    ↑見に行った。

  • イエスのユダがイスカリオテのユダならレオナルドのユダはだれ?

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プロフィール

1948年生まれ。版画家。日仏現代美術展でビブリオティック・デ・ザール賞受賞。『時のアラベスク』で横溝正史賞を受賞しデビュー。著書に『この闇と光』、『一八八八 切り裂きジャック』(角川文庫)など。

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