レオナルドのユダ (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041785065

作品紹介・あらすじ

神に選ばれし万能の天才-画家にして彫刻家、科学者、医師、音楽家でもあったレオナルド・ダ・ヴィンチ。気高く優雅な魅力を放つ彼の周りには、様々な人々が集っていた。貴族の跡取り息子でありながら、レオナルドに魅せられて画房の弟子となったフランチェスコ。絶世の美青年だが、傍若無人なふるまいで周囲を混乱させるサライ。そして、レオナルドの才能を決して認めようとしない毒舌の人文学者パーオロ。天才レオナルドの魅力を真摯に描き、彼が遺した『モナ・リザ』の謎に迫る、著者渾身の歴史ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 分厚いからおもしろくないと辛いな…と思いながら読んだら、とてもおもしろかったので読み終わるのがあっという間でした。

    万能レオナルドダヴィンチを軸とした弟子ジャンとフランチェスコの視点と、認めないパーオロの視点からそれぞれ描かれているがわかりやすかった。
    途中からレオナルドのユダの正体が浮かび上がってきます。
    悩めるジャンはどこか不憫で憎めない。

    服部さんの別の本も読みたいと思います。

  • おもしろかった!!1888切り裂きジャックがとてもお気に入りなので、本作も読んでみたのだけど、こちらもとても良かった。好きな女性作家さんを聞かれた時、これまではこの人!と言える人がいなかったのだけど、これからは服部まゆみさんと言おう。

    弟子たちから語られる、まるでイエスのようなダヴィンチ。まさか最後の晩餐のモデルがサライという男性だったとは知らなかった(一説ではあるが)
    そしてジャンとフランチェスコをはじめ、登場人物全員に息が吹き込まれている感じがして良かった。

    読んでる時は、登場人物たちは服部まゆみさんの創作だと思っていたので、
    ジャンはイエスの12使徒の1人であるペテロで、パーオロジョーヴィオは絶対パウロを意識しての名前だと思ってた。
    パウロはイエスのことを迫害していた側だったけれど、イエスの死後、イエスの幻をみたことから心を改め改心し、キリスト教の伝道師となる人だけど、パーオロジョーヴィオもダヴィンチの絵を見て改心してダヴィンチの伝道師になるのかと思ってた笑

  •  ハリー・ポッターシリーズの合間に読んでいたので、なかなか読み進められなかった。テンポがゆったりなのと思っていたほど歴史ミステリ色が強くなかったため退屈に感じたが、最終的には面白かった。レオナルド・ダ・ヴィンチを知らない人は居ないだろうが、彼の人柄や人間性についてのエピソードを全く知らなかったので新鮮に感じた。『モナ・リザ』のモデルにそんな説もあったのか。レオナルドを崇拝するあまり互いに反目し合う弟子・ジャンとフランチェスコと、レオナルドに反感を抱くパーオロの章が交互に展開し、掴めそうで掴めない人物像にやきもきさせられた。

  • 絵画の表現が凄かった。実際に見てみたくなりました。レオナルドにとってのユダが結局誰だったのか、ジャンは自分がユダだと思っているけど実はフンチェスコだったと言うことなのか。。解釈があっているのか分からないけど、面白かった。

  • レオナルド・ダ・ヴィンチと彼の弟子たちのお話。
    レオナルドは絵画や彫刻のみならず、音楽、建築、天文、物理、医学に数学…と全てに精通しているまさに万能の天才。
    おまけに見目麗しく物腰は優雅な人格者。如何に素晴らしい人物であったかということを弟子たちは口々に語るわけで。
    でも本当のレオナルドを誰も知らない。彼の心の内はわからない。
    あれほどの尊敬と崇拝を集めていながらどこか闇を抱えている。それがまた魅力となっているのかもしれないけれど。

    師に盲目的な愛情を捧げるフランチェスコが主人公と言えると思うが、読んでいて最後まで好きになれなかったなぁ。
    最初は性格悪いと感じたパーオロの方が段々と好きになったし共感できた。この人が一番レオナルドの実像に近付けそうな気がしただけに、もっと真実を解き明かしてほしかった。
    ところで、サライが例の肖像画のモデルという展開に驚き。でも案外ありえる、かも。

  • 読み終えて何かを感じる、というよりも、読んでいるその瞬間をただただ幸せに感じられる、そんな作品だった。

    服部まゆみさんに出会えた幸運をあらためて感じることができた作品。

  • 面白かったです。
    目眩めく絵画の描写はさすが…知っている作品も知らない作品も見てみたいです。
    殆ど神格化されているレオナルド・ダ・ヴィンチを取り巻く愛憎。誰がレオナルドにとってのユダだったのか。。
    いけ好かないやつ、と思ってたパーオロが最終的に一番好きでした。何とかしてレオナルドを貶めてやろうと悶々としていても、実際に絵画に接するとこの人が一番的確で饒舌に賞賛していて人間臭くて良いです。
    フランチェスコは見目麗しいかもしれないけれど…ユダはやっぱりこの人かなと思いました。ジャンはとことん不憫。
    でもレオナルドの光が強すぎて、周囲は全て影に入ってしまうのかもしれない。師を超えられる弟子を育てられなかったのも。
    歴史ミステリーにしてはミステリ部分が少ない気がしますが、歴史小説として楽しみました。

  • 服部さんのファンで、ずっと気になっていたこの作品にようやく手を出したけれど、読み始めてみると何とも読み辛い。服部作品定番の「美少年」や独特の関係性が冒頭からマンネリに感じられてしまったり、登場人物が誰が誰だかわからなくなってきたり、合わないと感じる文章表現が目についたり。
    挫折しそうになったけれど、色々予備知識を蓄えながら挑み、第2章までいくと読みやすくなって中盤以降は一気に加速した。
    まあとにかく、クセの強い作品。
    フランチェスコにあまり魅力を感じられなくて辛かった。ほかの弟子たちの方に興味が向いていたので、少し消化不良な感じ…テーマから反れてしまうので仕方ないのだろうけど。
    私が読んだのは平成15年初版の単行本だったけれど、どうしてこういう装丁にしたのか?(本編のイメージと違う…表示されている文庫版の装丁なら納得)不思議。

  • 復刻版ということで。京都の書店さんでしか買えないのかしら?そんなことはないと思うけど。
    かの天才、レオナルド・ダ・ヴィンチにまつわる人物たちの群像劇。あるものは身分と盲信を持ち師に傾倒し、あるものは身分に悩みながらも信奉する。寵愛を受けるもの、なんとか批評し、貶めようとするもの。
    語り手はみな男なのだけど、その愛憎劇はとても女々しい。大嫌い、大嫌い、でも大好き。みたいな少女漫画。いや、そういうの別に嫌いじゃないし面白いからいいのだけど。
    そう、面白い。レオナルド・ダ・ヴィンチとかあんまり興味はないし、最後の晩餐くらいはなんとなくシルエット思い浮かぶ程度で、ルネサンスあたりのイタリアも世界史受験勉強以来ほとんど忘れているような人でも面白くは読めるのだ。文章が美しく、場面を思い浮かべられる描写。未だ顔も知らない大嫌いなアイツに会えるのか?そして終盤のミステリー。間違いなく面白い。
    のだが、なにぶん長い。上記程度の知識と熱量だと多少冗長と感じると思う。終盤のミステリー部分のような物語を駆動させる要素があるとより読みやすかったかなぁ。
    服部まゆみさんてもう亡くなられているのだね。悲しい。

  • 大垣書店限定復刻https://twitter.com/mystery_ogakiということで去年(2016)11月に10年ぶりに再版。大垣書店ってどこにあるのよと調べたら、なんと京都拠点の本屋さん。しかも実家の最寄駅にも出店してるではないか!というわけで、年末年始の帰省中にゲット。

    服部まゆみなので安定の分厚さ。しかし本作はミステリー要素はほぼなくて、あくまでレオナルド・ダ・ヴィンチを取り巻く人間模様、彼に関わった人たちの葛藤を中心に描いており、レオナルド自身の苦悩は主観的には描かれない。語り手はレオナルドの弟子となるジャンピエトリーノと、同時代の著述家パーオロ・ジョヴィーノが交互に担当。生真面目で素朴、一途に師を慕うジャンと、傲岸不遜で皮肉屋、レオナルド嫌いのパーオロの視点は対照的で面白い。

    前半は、無駄にエラそうなパーオロよりも素直なジャンに共感しながら読んでいたのだけど、後半はひたすらレオナルドを聖人君子にしておきたいジャンたちよりも、シニカルながら真実を知ろうとするパーオロのほうに共感しながら読んだ。弱点や欠点があったほうが人間は魅力的だし、だからこそ愛せるというパーオロの言い分のほうが、まるでレオナルドに性欲などないかのように扱いたがるジャンやフランチェスコよりも人間味があるもの。

    そういう意味では、レオナルドの不肖の弟子、ものすっごい美形だという以外になんの取り柄もないサライのほうが、お人形のような美少年だけど潔癖で面白みのないフランチェスコより私は好きだった。フランチェスコはある意味、真の主人公ではあるのだけど、なぜ彼がそこまでしてレオナルドを神聖視したがるのかはあまり理解できなかった。

    タイトルにあるユダ、キリストをレオナルドに、その使徒を弟子たちに置き換えたときに、ユダは誰だったのかというのが物語の鍵になるのだけど、一般的に裏切り者の代名詞とされるユダが本当はキリストを一番愛していた説=一番に愛されないくらいならいっそ憎まれたいという屈折も踏まえてユダという人物を想定したときに、誰がレオナルドにとって真のユダだったのかはなかなか多角的な見方ができて興味深かったです。

    最終的に「モナリザのモデルは誰だったのか」という部分に物語は切り込んでいく。結論自体はとくに新説ではなく昔から言われてる説だけど、そこに至るまでにどういう過程があったか、を膨らませて描くのが、歴史家ではなく小説家の手腕ですよね。力作でした。

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著者プロフィール

1948年生まれ。版画家。日仏現代美術展でビブリオティック・デ・ザール賞受賞。『時のアラベスク』で横溝正史賞を受賞しデビュー。著書に『この闇と光』、『一八八八 切り裂きジャック』(角川文庫)など。

「2019年 『最後の楽園 服部まゆみ全短編集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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