N・P (角川文庫)

  • 角川書店 (1992年11月6日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784041800034

作品紹介・あらすじ

アメリカに暮らし、48歳で自殺した高瀬皿男の97本の短編集「N・P」。未収録の98話目を訳していた風美の恋人・庄司も自ら命を絶つ。激しい愛が生んだ奇跡を描く傑作長編。

みんなの感想まとめ

この作品は、難解なテーマを扱いながらも、読者を引き込む力を持っています。主人公の風美や彼女を取り巻くキャラクターたちの複雑な関係性が描かれ、特に自殺という重いテーマが、まるで空気のように自然に語られて...

感想・レビュー・書評

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  • 吉本ばななさんの本は本作で5冊目。今まで読んだどの作品も「大事な人の死と向き合うこと」をテーマにしていたので、翠も乙彦も生きていくことを選ぶ予感がしていた。賛否がありそうな話だったが、個人的には楽しむことができた。

    本能のままに生きることは難しいからこそ、翠やその父のような人間に、みんなが惹かれてしまうのが分かる。

    翠の性格や複雑な生い立ちなどから、江國香織さんの「落下する夕方」と何処となく雰囲気が似てるように感じた。本作が気に入った方には是非こちらもおすすめしたい。

  • 現在でも色々タブーなことを、この物語の中ではまるで空気のようにさらっと語られていて、進んでいく。ほんとは全然、さらっとでもないのだけど、主人公の受け止め方、関わり方が絶妙なのだと思う。
    だから萃も乙彦も咲も惹かれて、いつの間にか頼ってしまうのだと。  難しいテーマなのに、嫌悪感もなく不思議とすんなり溶け込んでいくのは、文章の美しさ、純粋さ、夏という暑くて熱い季節の描写のせいなんだと思う。何度読み返しても、新しい気付きがありそうです。

  • 20数年の時を経て、2度目の読了。
    読み返してもほぼ内容に記憶がないのですが、当時ものすごく心を揺さぶられたような。
    でも今回はあまり心にくることがなくて、これは私の心が疲れすぎているのかもしれない。
    また、もう少し心の余裕を作って読んでみたい。

  • N・Pという小説を書いて自殺した小説家の父をもつ3人の子どもらと、その小説の翻訳をして自殺した男の恋人だった主人公とのつながりを描く。

    高校生の時に何回も読み直した本。
    そのわりにストーリーを覚えていなかったため、約20年ぶりに再読。
    なぜかレズの話だと思い込んでいたのだが、そういうわけでもなかった。ただ、主人公の風美を振り回す萃という女性は、あやうげながらも魅力的で、小説N・Pを象徴する人物。二人のやりとりは、友情よりも濃厚なもの。それは、共通の自殺した恋人を持つ者同士、N・Pを心に持ち続ける者同士としての、共鳴というか。
    高校生で読んだ時には、それを単純に恋愛だと解釈してレズというイメージを持ったのかもしれない。
    咲、乙彦という人物も魅力的。

    久々に読んだ感想としては、こんなに散文的だっけ?と思った。短い場面が断片的に、詩集のように繰り返される。きれいな情景で切り取られたそれらは、思春期の子には刺さるんだろうなぁと思うが、きれいすぎるんじゃないか?と思って読んでいた。

    でもラストになって「ああ、ここで今までのことを思い出してたから、こんな書き方してたのか」と合点がいく(と私は解釈しました)。ただの散文で終わらず、ラストの乙彦との焚火の前での会話が読後の余韻をひろげていく。言葉にならない感情を、言葉にせずに表現していて、好きだなと思う。

  •  イメージの中で、よしもとばななさんの本に出てくる登場人物はいつも人が聞いたら心配せずにはいられないような境遇にいることが多い気がします。彼らはそのもがくしかないどうしていいかをまだ考えられないような間、本当に落ち込んで、落ち込んでいるけれど突発的に泣きそうになったり人と思いがけず繋がって生活をしています。でも、あまりに苦しいので、あるいは外部的な要因により仕方なく、死にそうになる。そうした物語の終盤は追いかけるこちらも堪らなく思います。こころの機微がキラキラ散りばめられた文章の中で一層逃れられないような感じがします。
     けれど、n.pでも、その他の作品でも(私が読んだ作品では)彼らは奇跡的に死を回避したりギリギリのところで死を選ばなかったりします。その底にあるエネルギーにいつも人間の美しさを魅せられるようです。

     また時間が経ったらどんな風に思うのかと、次回読む機会が楽しみです。

  • 自我と感性が剥き出しだった思春期と吉本ばななさんのデビューが重なってしまった宿命で、キッチン以来すべての本を読み続けている。
    NPはそんなに読み返す事もない本で、そういえばどんな話だっけな、と数十年ぶりに本棚から手に取った。そして驚いた。一字一句、気持ち悪いくらいに覚えていたのである。
    当時、どれほどの貪欲さでこの本を読んでいたのか自分で引く……

    強烈な夏の印象。ビニールバックに原稿をいれてショートパンツでコピーを取りに行った記憶まで鮮やかに残っている。
    翠と確かに過ごした夏。

  • 友達に読んでみて、と貸してもらった。初めて吉本ばななさんの作品を読んだ。終始淋しい、という感想。でもなんだかその中にもキラキラしたものがあったなぁ。

  • あらすじ読んで面白そうーむかし実家にあったなー。
    と思って読んだら、いやこれ読んでたわ。多分高校生くらいの頃…

    リリカルな少女漫画みたいな美しさがあるな。
    ばななの文章はみずみずしいなあ。

  • 再読。ばななさんの初期作品は、なぜこんなに圧倒的にその世界へ引き込まれてしまうのか。ある真夏の空間で、刹那的な翠の存在に、あっけらかんとした咲の明るさに、静かだけれど「起こったことのすべてが、なにもかもが美しい」ラストに、やられてしまった。

    • moochoffさん
      同感です。独特の雰囲気に私も引き込まれました。いつか再読すると思います。
      同感です。独特の雰囲気に私も引き込まれました。いつか再読すると思います。
      2017/03/16
  •  毎年夏が来ると必ず読み返してしまう。哀しいような切ないような、夏が始まってから秋が始まるまでのひとつの物語。
     自分について、自分が今感じていることについて、家族の歴史について、一冊の本について、移り変わる季節について、傍らにいる者について、失ってしまったものについて…。人は、一瞬一瞬、様々なことを考えながら、時を重ねていく。そのことを意識化し再確認するために、毎年この物語を私は読み返すのかもしれない。そしてまた、夏という特別な季節が私にそうさせる、のかもしれない。

  • 悔しいんだけど、最後まで、リズムが合わなかった。読み終わった後に、夢だったのかな?って感じ。ただもしリズムがピタッとハマったら、この本が、ずっと大切に抱きしめていたい本になるんだろうなというのもわかった。
    でもいいんだ、吉本ばななさんの本いつか読んでみたかったから!

  • 斜め読みの境地。
    訳がわからない夏のひとときを自分も風美一緒に過ごした感覚で、読後の訳のわからなさが妙に、
    ”わたしがこの夏体験した不思議な出来事”感を増していて、なんだこの小説は、ってなった。
    小説なのに永遠と詩を読み続けたような感覚。
    いろんな思考が混沌としたかんじ。
    で、あとがきを読んで、ばななさんが、
    『オカルト、宗教、テレパシー、シンパシー、近親相姦というこれまでやってきたテーマをすべて織り込んでみたけど、うまく書けなかった』と記載あり、本当にそのとおり、と感じた。

    だけどやっぱり、訳がわからないのに、描写がぼんやりとやわらかく浮かぶところにばななさんの描写の繊細さを感じずにはいられない。
    あとは、絶対に惹かれる登場人物がひとり、ちゃんと出てくる。読後もしっかり尾を引きずってくるような女の子。

    こういう小説こそ、意外とクセになって、何年か後に読み返してみたりするんだろうな。

  • 高校生の頃に読んだ吉本ばなな作品をアラフォになった今みた読みたくなった。

    一番記憶に残っていて、一番好きな作品。

    萃という魅力的だけど危うい女性。そうとは知らず父親と関係を持ち、父親の死後には異母兄弟の乙彦と交際。そして乙彦の子供を妊娠し、自殺を思い止まり別の男性と結婚。


    萃は魅力的だけど危うい女性。そうとは知らず父親と関係を持ち、父親の死後には異母兄弟の乙彦と交際。

    彼女は機能不全家庭で育ち、ただ親や家族の愛情を求めていたように思う。父親と関係を持ってしまったがために?乙彦とも男女の関係でしか繋がれなかったのではないかと。

    今度は自分が親になり子供から無償の愛をもらい欠けた心も満たされるといいな。

    最後は主人公の風美と乙彦が海で焚き火をしながら良い雰囲気になって終わるけど、その二人がくっついてもずっと萃の姿がチラついて不健全じゃない?と老婆心ながら心配。


  • 夏に夏を感じた。

  • 吉本ばななのことを尊敬している。一冊読むと必ずいくつか好きだなと思う文章がある。しかも感情表現の時に多い。僕は、他の作家の惹かれる文章だと、情景描写が多い。

    真夏の1、2週間は不思議だ。永遠に変わらないような陽射しの中で、いろんなことが進展していたりする。人の心や、出来事。そうしているうちに、秋が牙をといでいる。時間がたたないなんて錯覚だったというふうに、ある朝突然冷たい風や高い空で思い知る。

    覚えておきたい。真夏をこんなふうに感じられたら、その夏はちゃんと過ごせたと思える気がするから。
    吉本ばななの小説の主人公は、いつもちゃんと見ている。そこが好きだ。
    N・Pでも主人公の語りが好きだった。けれども他の小説に比べて、主人公自体にあんまり動きがなかった気がする。それがイヤだったということではない。ただ僕には莢という女性が、流れ星のように、ふっと目の前をいなくなってしまった気がするのだ。そのまま小説が終わりを迎えたことに淋しさを感じた。

  • 「TSUGUMI」に似ているような感じ。すごく強い何かを放っているのと同時にすごく死とも近い人物が、ばななさんの本にはよく出てくる。最後のスイの手紙が好き。

  • 夏になるたびに読んでしまう本。
    夏の描写が素晴らしくウキウキする。
    一番好きなのは銀行のATMの場面。
    サキが健康的で好き。

  • 大好きな本。何度読み返したかわからない小説です。

    ある小説家が遺した一冊の小説に惹かれつつも囚われて呪われた4人の物語。英文学研究室で働く主人公の風美、小説家の子どもの咲と乙彦、乙彦の恋人の翠。わくわくするようで、切なくて濃密なひと夏のお話。

    暑くなりはじめた時から、ぎらぎらの夏の日射し、少しずつ涼しくなって終わっていく「夏」の描写がとてもいいです。毎年のようにクーラーの効いた部屋で読む作品。

    飲食の表現も印象深い。夏の夜に道端に腰掛けて飲む大きな缶の麦茶、久々の再会時に分けあって食べるカニサラダ、屋上で飲むワイン、美しいラストシーン、そこに出てくるたき火で炙ったビスケット。

    いつ読んでも面白いのですが、夏に必ず思い出します。

  • 再読。
    ストーリーを全く忘れていた。

    この暗さとエネルギーがたまらない。

  • 10代の頃に読んだ時には、よく分からなかった。
    死にたいという気持ちがそんなに身近にあるなんて、
    想像できなくて、怖かった。

    30代の今は、そういうことも受け入れて読める。

    あの時、私はまだまだ子どもだったし、
    吉本女史も若かったのだと思う。
    文体がとがっている。
    でも、インパクトはでかい。

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著者プロフィール

1964年、東京生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年『キッチン』で第6回海燕新人文学賞を受賞しデビュー。88年『ムーンライト・シャドウ』で第16回泉鏡花文学賞、89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞、95年『アムリタ』で第5回紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞(安野光雅・選)、2022年『ミトンとふびん』で第58回谷崎潤一郎賞を受賞。著作は30か国以上で翻訳出版されており、イタリアで93年スカンノ賞、96年フェンディッシメ文学賞<Under35>、99年マスケラダルジェント賞、2011年カプリ賞を受賞している。近著に『吹上奇譚 第四話 ミモザ』がある。noteにて配信中のメルマガ「どくだみちゃんとふしばな」をまとめた文庫本も発売中。

「2023年 『はーばーらいと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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