- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041800089
作品紹介・あらすじ
家族という、確かにあったものが年月の中でひとりひとり減っていって、自分がひとりここにいるのだと、ふと思い出すと目の前にあるものがすべて、うそに見えてくる-。唯一の肉親の祖母を亡くしたみかげが、祖母と仲の良かった雄一とその母(実は父親)の家に同居する。日々のくらしの中、何気ない二人の優しさにみかげは孤独な心を和ませていくのだが…。世界二十五国で翻訳され、読みつがれる永遠のベスト・セラー小説。泉鏡花文学賞受賞。
感想・レビュー・書評
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これは雰囲気を感じるお話だなぁ。肉親との別れ。辛さ、迷い、そして願いや希望に向かってゆく過程の気持ち。きっと、読む年齢によっても感じ方がかわってくるのだろう。あたりまえのようで特別のようでもあり、言葉にするのが難しい淡い感動や
、美しい記憶の、やさしい文章が素敵だと思いました。
特に大きな出来事が起きるわけでなく。ありえない設定や展開の部分もあって、その辺りはファンタジーと捉えて受けとめられる。
台所から立ち込めるてくるその家独特の匂いや、ピカピカでなくても、散らかっていても年季の入った使い込まれた道具への愛着。自分が毎食ごと立っているキッチンを思い返してみる気持ちになった。どんな時も美味しい食事をすれば元気になれた。食べて生きていかなきゃいけない。
えり子さんの名言が刺さる。いやなことがめぐってくる率はかわらない。自分では決められない。だから他のことはきっぱりとめちゃくちゃ明るくしたほうがいい。明るく、楽しく。一歩先に進めそうなお話でした。他の作品も読んでみたいです。 -
心の畑に水やりをしたかのような気持ちになりました。丁寧な文章に丁寧な気持ちで向き合えた気がします。
ただそれだけに、今回は世界観に上手く浸れなかったのが悲しい。これは作品とのタイミングが合わなかっただけだと思うので、またいつかのタイミングで必ず読み返したいと思った。 -
⚫︎感想
ハッとする表現や上品な言葉遣いに、苦く、悲しく、そして優しい気持ちになれる名作だった。みかげと雄一には彼らだけの幸せをみつけてほしい。
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
私がこの世でいちばん好きな場所は台所だと思う――。同居していた祖母を亡くし途方に暮れていた桜井みかげは、田辺家の台所を見て居候を決めた。友人の雄一、その母親のえり子さん(元は父親)との奇妙な生活が始まった。絶望の底で感じる人のあたたかさ、過
ぎ去る時が与える癒し、生きることの輝きを描いた鮮烈なデビュー作にして、世界各国で読み継がれるベストセラー。「海燕」新人文学賞・泉鏡花文学賞受賞作。 -
どんな人生を歩んでいても、誰もが大切な人をなくす痛みを経験するものだと思う。
そんな時そっと寄り添ってくれるような小説。また大切な人をなくした自分の大切な人に、この小説のように寄り添ってあげれるような人になりたい。
また読み返したい。
「本当に暗く淋しいこの山道の中で、自分も輝くことだけがたったひとつ、やれることだと知ったのは、いくつの時だろうか。愛されて育ったのに、いつも淋しかった。--いつか必ず、誰もが時の闇の中へちりぢりになって消えていってしまう。そのことを体にしみ込ませた目をして歩いている。」
「その人はその人を生きるようにできている。幸福とは、自分が実はひとりだということを、なるべく感じなくていい人生だ。」
「なぜ、人はこんなにも選べないのか。虫ケラのように負けまくっても、ごはんを作って食べて眠る。愛する人はみんな死んでゆく。それでも生きてゆかなくてはいけない。」
「人生は本当にいっぺん絶望しないと、そこで本当に捨てらんないのは自分のどこなのかをわかんないと、本当に楽しいことが何かわからないうちに大きくなっちゃうと思うの。」
「私は彼女の早とちりも、恋にだらしないことも、昔は営業マンで、仕事についてゆけなかったことも、みんな知っているけれども…今の涙の美しさはちょっと忘れがたい。人の心には宝石があると思わせる。」
「私はもうここにはいられない。刻々と足を進める。それは止めることのできない時間の流れだから、仕方ない。私は行きます。ひとつのキャラバンが終わり、また次がはじまる。また会える人がいる。二度と会えない人もいる。いつの間にか去る人、すれ違うだけの人。私はあいさつを交わしながら、どんどん澄んでゆくような気がします。流れる川を見つめながら、生きねばなりません。」
あとがきより 吉本ばなな
「感受性の強さからくる苦悩と孤独にはほとんど耐えがたいくらいにきつい側面がある。それでも生きてさえいれば人生はよどみなくすすんでいき、きっとそれはさほど悪いことではないに違いない。もしも感じやすくても、それをうまく生かしておもしろおかしく生きていくのは不可能ではない。そのためには甘えをなくし、傲慢さを自覚して、冷静さを身につけた方がいい。多少の工夫で人は自分の思うように生きることができるに違いない。という信念を、日々苦しく切ない思いをしていることでいつしか乾燥してしまって、外部からのうるおいを求めている、そんな心を持つ人に届けたい。」
「愛する人たちといつまでもいっしょにいられるわけではないし、どんなすばらしいことも過ぎ去ってしまう。どんな深い悲しみも、時間がたつと同じようには悲しくない。そういうことの美しさをぐっと字に焼きつけたい。」 -
母が大好きな吉本ばななさんの作品を初読み。大切な人を失った悲しみは簡単には消えなくて記憶の中に残り続けるけれど、それをずっと引きずることなく自分なりに次に進んでいく必要があると感じた。文体、雰囲気が凄く好みだったので他の作品も読んでみたい。
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1988年に発行された本。(今から35年前)
再読です。
手に持っているのは単行本です。
装丁にもとても惹かれていたのを思い出します。
どんな内容だったかな~と、思い出しながら読み進めました。
意外と内容は朧げですが、所々覚えていました(笑)
文章は淡々と書かれていて、すらすらと、さらさらと、す~と流れていくように読めました。
そんな中、じんわりと温かく感じることがありました。
設定は、今でこそ多様性で受け入れらていますが、当時は少々、奇抜だったのでは?と思いました。
少し変わった形の家族の話でした。 -
結構明るい本だと勘違いして読んでしまいました(´;ω;`)でも内容もしっかりしていて、いいお話でした。表紙がバナナなところがいいなぁ・・・
(о´∀`о) -
時代や環境は、時が経てば変わりうるもの、それによって、共感できない人も出てくるだろう、それほど、時代や環境というものは、人にとって、大きい
でも、人の感情、心というものは、それに比べたら、ものすごく、不変だ
愛すること、食べること、眠ること、喪失すること
人はきっと、それを繰り返す
そこには、悲しみと苦しみがつきまとう
渦中にいる時は、優しさには気づきにくい
気づいた時には、後悔と罪悪感に押しつぶされそうになる
それでも生きてゆくこと、それが、強さなのだろうか
自分が前に進もうとしているのか、過去と決別したいのか、はたまた過去にしがみついているのか、わからない時に読みました
人の死は、いくら過去にしがみつこうとも、その人は戻ってこない
前に進まざるを得ないのだ
でも、そんなに、すぐには進めない。そんな繊細なこころの動きを、一つ一つ丁寧に描く
そして、最も死を意識するその瞬間に、ググッと、背中を押す
まるで、自転車の練習をしている時に、今だ!というタイミングで背中を押してもらって、前に進んで、自転車に乗れるようになった、そんな感覚
カツ丼のシーンだ
全てに共感できたかと言われたらそうではない
けれど、またいつか、読み返すであろう作品だ
生と死の空気が、ゆらゆらと波のようにたゆたっている作品
次に読みたいと思うのは、わたしが何を想う時だろう
今のわたし、つまり、自分が前に進もうとしているのか、過去と決別したいのか、はたまた過去にしがみついているのかわからないわたしは、そのどれでも、生きてゆくのだ
どうなってもいい覚悟で、なるようになる覚悟で、生きてゆくのだ-
嗚呼、月がきれいだ、
てやつですよね。
かつ丼のシーンは大好きですね。
それらの抒情を、このようなレビューで言語化できてい...嗚呼、月がきれいだ、
てやつですよね。
かつ丼のシーンは大好きですね。
それらの抒情を、このようなレビューで言語化できているのが、素晴らしい。
うんうん、と、頷きながら、読みました。
私とは全く違う言葉の体形で、同じような景色を綴っているように見えて、とてもシンパシーを感じます。
2020/06/27
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