キッチン (角川文庫)

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レビュー : 1538
  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041800089

作品紹介・あらすじ

家族という、確かにあったものが年月の中でひとりひとり減っていって、自分がひとりここにいるのだと、ふと思い出すと目の前にあるものがすべて、うそに見えてくる-。唯一の肉親の祖母を亡くしたみかげが、祖母と仲の良かった雄一とその母(実は父親)の家に同居する。日々のくらしの中、何気ない二人の優しさにみかげは孤独な心を和ませていくのだが…。世界二十五国で翻訳され、読みつがれる永遠のベスト・セラー小説。泉鏡花文学賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 死 をとりまくお話が、2編。
    はじめて読んだか、中学生以来に読みました。(あまりおぼえていない)
    「ムーンライト・シャドウ」で泣いてしまった・・・
    とても、とてもつらいこともあるけれど、しっかりと前を向いて生きていこうとする登場人物たちの強さが、伝わってきました。
    吉本ばななは、切り取って部屋に飾っておきたい文章ばかり書くなあ。

  • 言葉がきれいでひとつひとつ連なって文章になっている感じ。ムーンライトシャドウ、本当に自分が大切な人を失ったみたいな気分になった。時間が経ってもその感覚が抜けなくて、今の自分の状態が普通じゃない幸せなんだと思った。相手のちょっと嫌なとこなんて、そこにいてくれるんならそれでいいと思えた。会いに行けば抱きしめてくれる、それで充分。吉本ばななさんもっと読もう。

  • 生きることと愛すること,食べることと,失うこと.

    初めて読んだのは高校一年生の時,学校の推薦図書に指定されていたからだった気がする.その時もすっかり気に入ってしまって,最初は図書室で借りていたけれども,すぐ本屋さんに走った.大学生になって塾講師のアルバイトをしていたとき,たくさんの生徒に読んでもらいたくて塾に寄贈した.
    そして最近,もう一度買うか迷って,電子書籍を買った.ハイライトが引けるのはいいものですよね.便利な時代になったもんだ.

    こうやって振り返ると,やっぱりこの本は私の原点というか,根幹に近いものなんだなあとすごく思う.こんなに長い年月を経て,繰り返し読む本は,この本以外には存在しない.だいたいのストーリーはもう頭に入っているのに,それでもこの本を開くのは,この文体に込められた空気を,とても愛おしく思うからだと思う.

    幸い親戚もまだ皆元気だし,近しい友人や恋人を亡くした経験は私にはないけれど.だからこの本の真価が分かるのも,当分先なのかもしれない.それでも,みかげの考え方ひいては著者の感受性がとても好きだ.みかげや雄一の誠実さ,こんなに人間臭いのに空虚なところが,相手のことを考えて突発的に行動してしまうところも,本当に大好きだ.

    好きな本は?と聞かれたとき,すぐにこの本が浮かぶけれども,いざ説明しようとするとどうしてもうまく伝えることが出来ない.
    文体が好き?雰囲気が好き?空気が好き?ってなんなんだよってなる.
    でも空気を見つめることが出来ないように,私はこの本への愛をもしや一生,言い表すことが出来ないのかもしれない.

  • 独特のリズムを持つ文体で、大切な人を失い続ける主人公の物語が綴られています。タイトルにもなっている台所が、物語の随所に舞台として登場するのは、大切な人を失い世界がどれだけ変容しようとも、相変わらず人はものを食べ、日常を送って生きることを続けていかねばならず、その「食べること」や「日常」の象徴として台所が描かれたのかなとぼんやり思いました。好みの分かれるテンポの文体が、個人的にはとても心地良かったです。

  • あとがきを読んでそうだったのかと思った。
    いわゆる感受性が強い人間というのは、沢山はいないんだそうだ。私は大体の人間の感受性はとっても強くて、だから『北の国から』を観て泣くし、お笑いを観て笑うし、不条理な交通事故をニュースで知って悲しむし、見知らぬ人から失礼なことをされたら怒るものなんだと思っていた。しかし、それはどうやら思い違いだったらしいのだ。

    ここ半年ほど、私は宇宙人のような人物と連絡を致し方なくキープ・オン・ザ・タッチ(継続)しなければならなかった。しかも現在進行形である。断っておくが、相手が宇宙人というわけではなく、立派な地球人である。私は別にNASAの人間ではない。ただ、向こうとのコミュニケートがひっじょうに取れない。キャント・コミュニケートである。不可能に近い。どうしてこちらが「〇〇してよろしいでしょうか?」に対する応答が「どうしてそういうこと聞くんですか?」なのだ。気に障って難癖付けるのを百歩譲って受け流すとしても、せめて質問に対する返事が必要だろう。とにかく新人類、もしくは宇宙人に遭遇してしまったとしか思えないのだ。
    おかげで精神的にずっと滅入っている。周囲の解読班(宇宙人的相手をなんとしても攻略せんがために家族、友人、先輩などなどを巻き込んだ連絡内容解読&返信内容作成班を結成したのであった)は「こんな人、気にするなよ」と気安く言ってくれるが、そうもいかない。あと半年もあるのだ……。
    それを「オマエは気にし過ぎ」と指摘してきた人がいた。そうか、気にし過ぎなのか。今までずっと他人の進路や人間関係、はたまた見知らぬ人の服の裾がほつれているところまで気にしていた私は、いささか気にし過ぎていたらしい。
    感受性とこれを同様のものとみなすのは、なんだか語弊があって不味いかもしれないのだけれど、似たようなもんかなとも思う。変な偏りがある人に響くよう、『キッチン』は編まれたのだと思いたい。

    台所、母親の象徴。そこに母はいない。母性はあれど、母はいない。家族を失うということ。それも二度。なかなか嫌なものだろう。一回で御免だ。でも、実際はどうなのか知らない。知りたくないけどね。
    だが、考えてみれば人間というのは基本的にたいてい一、二回家族を持つことになるようだ。一回目は生まれた家。二回目は自分が作った家。それ以上となると、まあ複雑でややこしい面倒な事情でもあるのだろう。そして、それだけの回数自分の何かを失う日があるのだ。それが一体何なのかは分からない。一部と言ったって何一つ欠けたところは無いし、心も元気が無いだけで失ったわけではない。空間が出来てしまっただけ。
    私もいつか大切な家族を失った時に、キッチンと仲良く夜を明かすかもしれない。ソファで寝るかもしれない。すぐに元気になることは無理だけど、流れていく自分の月日をうんざりするぐらい思い知って、どうにかこうにか動いていけたらいいなと思う。

  •  読み終わってすぐキッチンを片付けて、ごはんを作りたくなった。 食べることを大切にすることは、自分を大切にすることだと思った。

  • 家族を無くした人生の孤独を感じました。
    でもそんな孤独の中で、しっかりと自分を保って、プラトニックな関係を温めていくみかげと雄一がただただ羨ましい。

    みかげさんはスクールに料理を習いにきた女の人たちを見て、『幸せを生きている人たちは本当に楽しいことを知りはしない』みたいなことを言うけれど、人生の楽しみや充足に本当とか本当じゃないとか、そんなことあるのかなと思ったりもした。
    寂しい想いをしてきた分、私は彼女たちより本当の楽しみを知っているんだ、って。そういったところに顔を出すちょっとしたささくれみたいなものが、綺麗過ぎなくて好きだけれど。

    えり子さんの手紙では、人の気を引こうとして、人の嫌がることをしてしまう人のことが書いてあって、何だか自分のことを言われているようで、胸を突かれました。

    この作品を通して感じたのは、やっぱり人間が最終的に行き着くところは、恋とか愛みたいに情熱をもって語られるものじゃなくて、家族的な穏やかさなのかな、ということでした。

    隣に寄り添ってくれる人ってありがたいものだったんですね。
    それを強く感じるのは、失ってしまってからってのが悲しいところです。

    私もいつかそういうものを失ったり、手に入れたりするのかと思うと、時間が止まって欲しいような、進んでほしいような、やりようのない感情がふつふつと沸いてくるのを感じました。

    ムーンライト・シャドウは恋愛の絡んだ話のようだったので、なんとなく、キッチンから受け取った静謐な雰囲気を壊したくなくて、読むのはしばらく後にしようと思ったわけです。
    それくらい、キッチンの読後感が良かったということかもしれません。

    もっと早く出逢えてたらな、と思った作品でした。

    ・追記

    しばらく時間をおいて、ムーンライト・シャドウも読んだら、思っていた話と全然違いました。

    四年間連れ添った恋人との死別を乗り越えるまでの悲しいストーリーに、共感を覚えました。
    離別してみるとその人との時間が急に貴いものに感じたりすることはありますね。
    どうしてもっとよくしてやれなかったんだろう、と後悔したり。
    過去の思い出が甦って心がくすんだようになってしまったり。

    死別ともなれば、相思相愛で引き裂かれるのですからつらさは倍増でしょうね。

    でも、人は皆いつかは誰かとお別れをしなきゃならない。
    すれ違いの中に生きているんだということを強く感じさせられました。

    一生添い遂げる、想い続けるみたいな恋愛がしたいと思った時期もありましたが、そんなのは幻想なのかもしれない、そんな風に思い始めた頃合いに読んだので、とても琴線に触れました。

    後悔を残さないためにも、隣でなんの気なく笑ってくれる人達を大切にしようと思える作品でした。

  • 読み終わると不思議な感覚になる。
    暖かい気持ちになるような、とてつもなく寂しい気持ちになるような・・・。
    どう言葉にするのが適切なのか分からないけど、とにかくすごくよかった。

    分かるような、分からないような。
    希望のような、絶望のような。
    笑いたいような、泣きたいような。

    何だかそんなものを感じました。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「読み終わると不思議な感覚になる。」
      へぇ、、、よしもとばななって、ちゃんと読んだコトがなくて、近々初挑戦?
      「TUGUMI つぐみ」と「パ...
      「読み終わると不思議な感覚になる。」
      へぇ、、、よしもとばななって、ちゃんと読んだコトがなくて、近々初挑戦?
      「TUGUMI つぐみ」と「パイナツプリン」を読もうと思ってます。その次は「キッチン」にしようかなぁ~
      2013/07/31
  • 読まず嫌いで読んでいませんでしたが、とうとう読んでしまった!

    感想→マジメに泣いた。

    すごくイイ。ごめんなさい、私が間違っていました。
    一気にファンになりました。

  • キッチンを読んでみかげが雄一にカツ丼を届けに行ったときにふたりが繋がったって感じました
    勝手にわたしは吉本ばななさんの本に人と人の心が繋がる瞬間を感じるのですが、その吉本ばななさんの本の人と人の心が繋がる瞬間がすごく素敵で大好きです

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著者プロフィール

吉本ばなな(本名:吉本 真秀子 よしもと まほこ、旧筆名:よしもと ばなな)
1964年、東京都生まれの作家。日本大学芸術学部文芸学科卒業。卒業制作の「ムーンライト・シャドウ」が日大芸術学部長賞を受賞。また「キッチン」で第6回海燕新人文学賞を受賞、デビュー作となる。
1989年『TUGUMI』で山本周五郎賞を受賞。1996年イタリアのフェンディッシメ文学賞(35歳以下部門)、1999年イタリアのマスケラダルジェント賞文学部門を受賞。2000年『不倫と南米』でBunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。その他代表作に、映画化された『アルゼンチンババア』などがある。
海外での評価が高く、著作が多くの国で翻訳されてきた。

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