キッチン (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041800089

感想・レビュー・書評

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  • 時代や環境は、時が経てば変わりうるもの、それによって、共感できない人も出てくるだろう、それほど、時代や環境というものは、人にとって、大きい

    でも、人の感情、心というものは、それに比べたら、ものすごく、不変だ
    愛すること、食べること、眠ること、喪失すること
    人はきっと、それを繰り返す
    そこには、悲しみと苦しみがつきまとう
    渦中にいる時は、優しさには気づきにくい
    気づいた時には、後悔と罪悪感に押しつぶされそうになる
    それでも生きてゆくこと、それが、強さなのだろうか

    自分が前に進もうとしているのか、過去と決別したいのか、はたまた過去にしがみついているのか、わからない時に読みました

    人の死は、いくら過去にしがみつこうとも、その人は戻ってこない
    前に進まざるを得ないのだ
    でも、そんなに、すぐには進めない。そんな繊細なこころの動きを、一つ一つ丁寧に描く
    そして、最も死を意識するその瞬間に、ググッと、背中を押す
    まるで、自転車の練習をしている時に、今だ!というタイミングで背中を押してもらって、前に進んで、自転車に乗れるようになった、そんな感覚
    カツ丼のシーンだ

    全てに共感できたかと言われたらそうではない
    けれど、またいつか、読み返すであろう作品だ
    生と死の空気が、ゆらゆらと波のようにたゆたっている作品
    次に読みたいと思うのは、わたしが何を想う時だろう

    今のわたし、つまり、自分が前に進もうとしているのか、過去と決別したいのか、はたまた過去にしがみついているのかわからないわたしは、そのどれでも、生きてゆくのだ
    どうなってもいい覚悟で、なるようになる覚悟で、生きてゆくのだ

  • 独特のリズムを持つ文体で、大切な人を失い続ける主人公の物語が綴られています。タイトルにもなっている台所が、物語の随所に舞台として登場するのは、大切な人を失い世界がどれだけ変容しようとも、相変わらず人はものを食べ、日常を送って生きることを続けていかねばならず、その「食べること」や「日常」の象徴として台所が描かれたのかなとぼんやり思いました。好みの分かれるテンポの文体が、個人的にはとても心地良かったです。

  • 読み終わっても時々読みたくなるし、美味しいものを食べたくなる本でした。

  • かけがえのない人を失ってしまった主人公が、「孤独」「死」と隣り合わせの日常の中で、人の淋しさ、優しさに触れ、心を潤わせていく物語。

    1.2編のキッチンは、たわいない日常の中で、雄一、えりこさん …様々な人と繋がり、固まった心が少しずつ息を吹き返していく。じんわりとストーリーに吸い込まれていき、読みやすかった。
    3編のムーンライト・シャドウは、「死」の精神世界が、ファンタジーっぽく展開し、私にはちょっと馴染みにくかった。

    生きなければいけない、前を向きたい、そんな時にオススメしたい1冊でした。

  • ムーンライトシャドウはただただ悲しい。

  • どーでもよくって、強く生きていける気がした。
    生きて、そばにいてくれる人が、いとおしく感じた。

  • 吉本ばななの作品を久しぶりに読んだけど、ところどころ日本語の順序とかがすんなり入ってこなかったりして、何度も文章読み直して修飾関係整理しないといけなかった。作品の内容に関しては死ってのが根底にあるけど、それを安くは扱ってないとこが良かった。

  • 3本の短編集。
    それぞれの主人公は、家族や身近な人の死を経験し、喪失感や虚無感に襲われながらも生きていく。

    詩的な感じで、村上春樹に若干似ている。
    わりとオーソドックスな純文学。

  • ばななさんの作品で初めて読んだのはTUGUMI 。
    いつもハートフルストーリーばかりを読んでいた私にとって、TUGUMI は私の本に対する考え方をビビッと変えてくれた大切な作品です。

    そして今回はキッチン。
    死にまつわるお話が二編。どちらも素晴らしかったですが、やはりキッチンが気に入りました。

    主人公のみかげと一つ年下の男の子雄一。二人とも孤独を痛いほど知っているからこそ、身近な人を失う恐怖は計り知れないほど恐れていた。いつしかみかげは「雄一さえいればなにもいらない。」と思うほどに、自分が雄一を必要としていることに気づく。このシーン、このみかげの言葉は一番印象に残っている。二人は、友達にも恋人にも当てはまらない、雄一はみかげのことを家族だ。と作中では言っていたけど、私は雄一とみかげは家族にも属さない、もっと複雑な関係なんじゃないかなと思った。

  • あまりに有名で読んでなかった本。

    よしもとばなな氏のあとがきがぐっとくる。感受性の強さがもたらす痛みを作家として言語化することで誰かと想いを共有する、感性というものが見えるならば「キッチン」のように柔らかく温かくでも唐突で鋭くもあり芯がしっかりした、そんなものになるのだろう。

    個人的には好みの作品ではなかったが、イタリアを代表として世界中で愛される作家であるのがよくわかる。

著者プロフィール

吉本ばなな(本名:吉本 真秀子 よしもと まほこ、旧筆名:よしもと ばなな)
1964年、東京都生まれの作家。日本大学芸術学部文芸学科卒業。卒業制作の「ムーンライト・シャドウ」が日大芸術学部長賞を受賞。また「キッチン」で第6回海燕新人文学賞を受賞、デビュー作となる。
1989年『TUGUMI』で山本周五郎賞を受賞。1996年イタリアのフェンディッシメ文学賞(35歳以下部門)、1999年イタリアのマスケラダルジェント賞文学部門を受賞。2000年『不倫と南米』でBunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。その他代表作に、映画化された『アルゼンチンババア』などがある。
海外での評価が高く、著作が多くの国で翻訳されてきた。

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