終業式 (角川文庫)

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レビュー : 91
  • Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041835111

作品紹介・あらすじ

かけがえのない、高校生だった日々を共に過ごした四人の男女。テストにやきもきしたり、文化祭に全力投球したり、ほのかな恋心を抱いたり-。卒業してからも、ときにすれ違い、行き違い、手さぐりで距離をはかりながら、お互いのことをずっと気にかけていた。卒業から20年のあいだに交わされた、あるいは出されることのなかった手紙、葉書、FAX、メモetc.で全編を綴る。ごく普通の人々が生きる、それぞれの切実な青春が、行間から見事に浮かび上がる-。姫野文学の隠れた名作。

感想・レビュー・書評

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  • 高校生の男女4人組。
    それからの20年、彼彼女たちは別々の道を歩んでいく。
    その間、お互いの思いを手紙(ハガキ、FAX)などでやりとりしながら、付かず離れず、いや、くっ付いたり離れたりして、人生を歩んできた。

    その過程を全編、すべて文章のやりとりだけで構成された異色の作品。
    書き損じ、或いは書きながらも投函できなかった手紙なども含め、登場人物の思いが読者に伝わってくる。
    青春時代から、中年の時代になるまでの足跡。
    高校時代、卒業、就職、結婚。
    1970年代、80年代頃の時代に流行した懐かしい音楽やその時代の風俗も思い出させてくれる貴重な物語。
    十年以上も前に書かれた作品だが、今読んでもその面白さは十分に伝わってくる。

  • これほど、描かれてない部分がひき立つ小説はない。

  • 行間を読むということがこんなにも面白い本に出会ったのは初めてです。特に投函しなかった手紙がミソですね。ある種推理小説のような側面もあり、読み返しつつだったので読了までに時間はかかりました。私は優子と似たところがあり、そんな優子を励ます都築らの言葉に涙しそうになる場面も少なからずありました。構成も斬新で、物語全体に厚みがあり、そして懐かしさを感じさせてくれた本でした。

  • 夏休み、さて何を読もうかと各社の夏のキャンペーンの小冊子を貰って帰って考える。
    今年は角川のフェアに惹かれるものが多く3冊注文、その内の3冊目。夏休みに読み切れず今頃読了。
    作者は私より2つ年下で、丁度その作者が歩んできた時代を舞台に、全編をノートや手紙、FAXの文章で構成した物語。
    今ならば、さしずめメールかラインのやり取りとなるのでしょう。その頃でもこんなに手紙は書かないと思うけど、まあ、いいや。
    端々に出てくる小道具はその時代を良く表しており、そこのところは同じ年頃に同じ時代を過ごした者としてくすぐられる。
    普通にかわいくてまあまあ頭も良くてエレクトーンが弾けて男子に対しては控えめでという悦子を中心に友人・優子と多少気になる男の子・宏の高校時代から大学、社会人となって結婚と離婚あたりまでが描かれる。当時ありがちな女性が歩んだありがちな人生を語り方の妙で読ませたという感じ。
    この作者には「ツ、イ、ラ、ク」という傑作があり、あの切なさにはとても及ばないけれど、こちらも私らが若かった頃の恋愛を語って結構機微なところを突いているなぁと思った。

  • 自分は青春小説が好きだ。
    社会人となった今の自分に嫌気が指している訳ではない。
    学生時代のかけがえのない時間を思い出すことが出来るし、浸りたい時があるからだ。

    思い出は後になるほど美化されるものとは良く言うが、学生時代が特にそうではないかと感じる。
    著者はあとがきで、「あのころ。なんて単純で、なんて、一日一日が新鮮で、なんでもドキドキしてたんだろう。…」
    と記しているが、この文章に非常に共感した。
    なんで体育祭の優勝があんなに大事だったか。夜まで教室に残っている日がなんて特別な日だったか。
    当時の自分も全く気づかなかった。
    もっとも、気づけなかったから思い出に浸るのかもしれないが。

    自分は20代半ば。
    この小説では第二章といったところか。
    三章以降は自分にとって将来のことになるが、人それぞれ、別の道を歩んでいってもこの手紙のように縁が途切れることなく続けていきたいと思う。

    最後に一章で数学の教師の当て方を数列で解明するシーンがあるが、懐かしい。
    学んだばかりの数列の知識を使って規則性を発見する…自分もやったなぁ。。
    こんな些細な事から当時の記憶が色々蘇る。ありがとう。

  • 男女4人の高校生のその後の人生が、
    恋模様を中心に手紙やFAXのやりとりのみで描かれる。
    高校時代の同級生との恋、大学の先輩との恋、社会人になり取引先の人との恋、
    年上の女性との愛のレッスン、結婚後の不倫など、いろんな形の恋が詰まっている。
    恋に心を囚われるのは、即ち青春なんだなぁ。

    姫野カオルコらしからぬ、どこにでも転がっていそうな普遍的な恋愛モノで、
    だからこそ共感を呼ぶのだろう。
    真面目だったあの都築クンが、変わってしまったのが残念。
    どんなにカッコイイこと言っても、もはや性欲のしもべとしか思えない。

  • この本の中の4人は高校の同級生
    わたしより、ちょっと年上かな
    なので、高校生のときに流行ったもの
    流行歌、アイドル、なんだか懐かしい
    そして、高校生のころの
    いま思うと愚かで、でも一生懸命だったことなど
    ちょっと笑っちゃう
    縁がずっと細く繋がっていき
    それぞれの事情が変わり、新しい出会いがあり
    間違えて、つまづいて、苦しんで、
    出した手紙、出せなかった手紙
    メモ、FAX、4人以外の人たちのものも含めて
    とても変わった小説形態だと思いますが
    結構、楽しく読みました

  • 誰にでも同じように“判る”作家なんて、まったく魅力がないと思います

    とは、あとがきでの藤田香織さん(この人知らないなあ)のお言葉。まさにその通り。
    その人の人生観、恋愛観、価値観あるいは経験則(恋愛、人間関係などなど)に応じてこの手の物語は何パターンにも解釈され、個人単位で消費されうると思う。

    登場人物たちが交わす手紙という形だからこそ、心に沁みる珠玉の言葉の数々が。

    私個人としては
    都築宏への共感、感情移入が最も深かったです。

    ダメ男と罵られるかもしれませんが
    こういう考え方、生き方を歩んでいく男は少なくないと思います。

    それにしても
    あとがきとか解説の類って本当に的を得ているというか「うんうん!そうそう!それが言いたかったんよ!」とこちらの気持ちを代弁してくれるようなものが多いですよね(なんか上からですいません笑)

    藤田氏が本書の特徴に挙げる、「あの頃」へのトリップ感。曰く、夏の教室の匂い、窓から眺めた秋の校庭、部活で流した汗、卒業式に流した涙―――

    思わずぶるっときました。
    そんなに派手な青春を過ごしたわけではないですが
    思えば目に映る景色ひとつひとつ、全部がなんか“青春”だったなあ、と。

    社会人になって早2ヶ月弱。
    ついこの前まで属していた大学生というコミュニティ、ステータス。
    永遠に続くと思って漫然と過ごしたあの4年間、思えばあの日々も懐かしく恋しい。戻りたい。

    そんなわけでいろいろ考えさせられる興味深い作品でした!

  • 姫野カオルコのお手紙小説。すごいことに、全編が「お手紙」によって書かれている。ポスト投函の郵便ばかりでなく、授業中に交わしたメモや、同級生の交換ノート、ファックス送信なども含まれる。出さずじまい、渡さずじまいの手紙もある。

    これは、ある意味すごい。公開前提の「往復書簡」はともかく、フツーの「お手紙」は、その宛先となる人と自分との間でわかるだけの話が書かれている。つまりは「こないだの、アレが、どうのこうの」の世界。読者からすれば、こないだっていつ?アレって何?ということになる。

    高校時代の同級生が、卒業し、進学し、就職していくなかで、出会い、別れ、人間関係は交差しながら、20年ほどが経つ。その年月を「お手紙」を積み重ねて小説にしてあるのだ。読みはじめたら、おもしろくて、つい最後までイッキ読み。自分のことではないのに、なんか懐かしさも感じる。

    ▼…
     みんな、今はどうしているんだろう。
     あのころ。なんて単純で、なんて、一日一日が新鮮で、なんでもドキドキしてたんだろう。なんて、一年が長かったんだろう。体育祭での優勝がなんて大事なことだったんだろう。夜まで教室に残ってる日がなんて大事なことだったんだろう。体育祭の夜、チャリンコで神社に行って興奮して笑った。宴のあとの興奮をチャリンコを六人でのりまわしてさました。なんて、なんでもないことがきらめいていたんだろう。テストがなんてこわかったんだろう。先生にあてられるのがなんてイヤだったんだろう。そんな時代へ手紙を書きました。今だってきっとまだ「あのころ」は各人のどこかにしまってあるだろうと。  草々

     平成八年三月二十五日
                 あとがきにかえて 姫野カオルコ
    みんなへ
    (pp.342-343)

    「あのころ」が埋め込まれた物語だから、私も懐かしいのかなー。便箋に何枚も書きながら、結局出さなかった手紙は、私にもある。あれほど手紙を出しあったのに、今はもうつきあいがないかつての同級生もいる。「みんな、今はどうしているんだろう」と、こういう小説を読むと、ちょっと考える。

    (1/16了)

  • 直木賞で話題になってたから。
    つかみどころがない物語だったな。
    この人の性格ならこういうところに落ち着くだろうなって結末にしっかり落とし込んできた感じ。

    パソコンや携帯の発達とともに育ってきた世代だから、より一層、メールってものは文学性を奪うものだと思った。
    メールがあったら、この物語も、自分が大好きな秒速5センチメートルも生まれてなかったんだと思うと。
    コミュニケーション手段と青春の関係って数年で大きく変わってしまうなとよく思う。自分たちの2,3歳上の人が中学に入学するときは必ずしも携帯を持っているわけじゃなかっただろうし、Skypeなんてものもなかっただろうし。逆に自分たちの2,3歳下の人は中学入学時には既にTwitterやLINEなんてものが盛んに利用されていて。そんなジェネレーションギャップに少し恐くなる。

    この小説に話を戻すと、FAXの使い方がすごく上手かった。手紙とメールと電話の挟間の不思議な存在を、すごく効果的に利用していた。

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著者プロフィール

姫野 カオルコ(ひめの かおるこ)
1958年、滋賀県甲賀市生まれの小説家。青山学院大学文学部卒業。大学在学中から雑誌ライターとして活動。大学卒業後、画廊勤務や事務員アルバイトを掛け持ちしながら小説を執筆。1990年、持ち込み原稿から刊行された『ひと呼んでミツコ』で単行本デビュー。 
『ツ、イ、ラ、ク』『ハルカ・エイティ』『リアル・シンデレラ』でそれぞれ直木賞ノミネート。そして2013年『昭和の犬』で直木賞受賞。その他代表作として、映画化された『受難』など。

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