終業式 (角川文庫)

  • 角川書店 (2004年2月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (352ページ) / ISBN・EAN: 9784041835111

作品紹介・あらすじ

きらめいていた高校時代。卒業してもなお、あの頃のことはいつも記憶の底に眠っていた――。同級生の男女4人が織りなす青春の日々。「あの頃」からの20年間を全編書簡で綴った波乱万丈の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 高校時代を共に過ごした4人の男女。卒業してから20年もの間途切れずに続く彼らの絆を、交わされた手紙、FAX、メモなどだけで綴る物語。


    高校時代の同級生4人とその関係者たちが交わした文章のやり取りだけで20数年の軌跡を追う一風変わった形式の小説です。「手紙」だけで展開するわけではないですが、一種の書簡体小説と言えるのでしょうか。

    特定の対象しか読まない事を前提とした、秘密のやり取りを盗み見ているようでちょっとドキドキします。
    今は誰もが携帯を持つようになり、こまめな手紙のやり取りや授業中に友人にメモをまわしたり、交換日記などもそうそうやったりはしないのかもしれませんが、私とは年代がずれているとはいえ、こういった密やかな交信、文章ならではの口語とは違うすこしふざけた、あるいは格好をつけた独特の空気感は学生の頃を思い出して何だか懐かしかったです。

    読者に提示されているのは、誰かが文章におこした部分でしかないので、具体的な出来事などは明確にはわかりません。推察による部分がとても広い小説だとは思いますが、だからこそ色々考えられて心に残るのかな。

    個人的には、優子が好きでした。頑張り屋で自立し、芯があるようでいて、どこか自分を押し殺し屈折している所のある女性。幸せになってほしいですね……。

  • 解説にもある通り、姫野作品としては極めて普通な登場人物達の物語である。普通に恋をし、普通に別れ、進学し、就職し、結婚し、子を産んで離婚する男女の人間模様を、お互いが交わす手紙やFAXで構成する。
    それぞれの人物、特に女性がお互いをどう見るのか、その視点と感情の妙が読みどころだろう。
    登場人物達はバブル期に20代なだけあって、多くは肉食的である。そうじゃないタイプでも、人生が恋愛を中心に回っているとの揺るぎない感覚は著者を含むこの世代特有のものではないかと改めて感じた。

  • 高校生の男女4人組。
    それからの20年、彼彼女たちは別々の道を歩んでいく。
    その間、お互いの思いを手紙(ハガキ、FAX)などでやりとりしながら、付かず離れず、いや、くっ付いたり離れたりして、人生を歩んできた。

    その過程を全編、すべて文章のやりとりだけで構成された異色の作品。
    書き損じ、或いは書きながらも投函できなかった手紙なども含め、登場人物の思いが読者に伝わってくる。
    青春時代から、中年の時代になるまでの足跡。
    高校時代、卒業、就職、結婚。
    1970年代、80年代頃の時代に流行した懐かしい音楽やその時代の風俗も思い出させてくれる貴重な物語。
    十年以上も前に書かれた作品だが、今読んでもその面白さは十分に伝わってくる。

  • これほど、描かれてない部分がひき立つ小説はない。

  • 手紙だけの小説。これは誰が誰に書いた手紙なんだろうと最初は考えて、途中からは多分この人の手紙だと思えるようになりどんどん面白くなった。 学生生活から同じ人物を手紙で読むことができて、大人になってからも変わってない部分と変わっている部分が見えてそれもまた面白かった。

  • どん、と強い衝撃を、何度も受ける一冊。
    痛かったり、恥ずかしかったり、羨ましかったり、色々な種類の衝撃を不意討ちで、喰らいます。

    「地の文」が一切なく、登場人物が他の登場人物に宛てた手紙だけで物語は進みます。

    主人公が高校2年生であった時を起点にした、約20年間が描かれています。

    同級生への淡い恋心、先生の悪口、同級生の噂話、受験、進学…
    そんなことで埋め尽くされていた手紙の内容は登場人物達が年齢を重ねると共に変化していきます。

    別離、結婚、不倫、奪取、離婚…。
    彼らに起きた様々な出来事が、変化する手紙の内容から、推察されます。

    手紙というのは、ある程度自分を客観視していたり、
    少なくとも自分の気持ちを文章にできる程度に整理できていないと書けないもので、その上でどうしても他者に伝えたい気持ちが詰まったものなので、出来事の受け止め方や、人の心について、核心をついている表現が多く、そういう意味で、色々な種類の衝撃を受けたのだと思います。

    作中にはいくつか、投函されない手紙も登場します。これが非常によい持ち味を発揮しています。

    伝えたいと思って書いた後に思い直して、自分の中に仕舞う感情。
    これが手紙の書き手の本心を表していて、作品全体をぐっとリアルに仕上げています。

    結局投函されなかった手紙の中に
    「なんていうのかな、わがままを言ってくれなきゃ応対できないんだよ、他人は。わがままを、ありったけのわがままをぶつけることが、それが他人を好きになるということなんだ。好きな人にはわがままを言われなければ意味がないんだ。
    こんなことを言ったら相手に悪いとか、こんなことをしたら相手に悪いとか、そういうことを考えることがもう、冷たいことなんだ。」
    という文がありました。強く印象に残りました。

    とても素敵な一冊に出会えました。おすすめ。

  • 高校の同級生、悦子、優子、都築を中心に、高校〜社会人までの主に恋愛を中心とした出来事を綴った青春群像劇。手紙やFAXで構成されたそれは、時に一方通行だったり、タイミングが合わなかったりでもどかしく、しかしだからこそ、その不便さがドラマチックに作用する。現代から見た物語の時代は良くも悪くも前時代的で、感覚的に少しのめり込めないところはあったけど、手紙やFAXといったオフラインによるやり取りは、その余白に起こった出来事を想像する楽しみが用意されてていいなぁ。

    物語の後半は、結婚や離婚などいろいろな出来事を経験し、歳もとってちょっと悟りの境地に達した登場人物たちの哀しくも温かい言葉で手紙が綴られていて、胸に迫るものがあった。
    特に都築が離婚して今は離れて暮らす息子に宛てた手紙は、彼の女性遍歴を思い浮かべながら読むと、一層グッとくるものがあるのだった。

    ひとを好きになるということは、取りも直さずエゴではあるが、相手を思いやるふりをして自分が傷つくことを恐れるがゆえに、それを押し殺して真摯に振る舞うことだけに意味はあるのか。ひとを好きになるということは、自制できなくなるくらい取り乱してしまうことだ、みたいなことが書かれていて、なるほどなぁ、と思う。

    とても面白かった。

  • 行間を読むということがこんなにも面白い本に出会ったのは初めてです。特に投函しなかった手紙がミソですね。ある種推理小説のような側面もあり、読み返しつつだったので読了までに時間はかかりました。私は優子と似たところがあり、そんな優子を励ます都築らの言葉に涙しそうになる場面も少なからずありました。構成も斬新で、物語全体に厚みがあり、そして懐かしさを感じさせてくれた本でした。

  • 夏休み、さて何を読もうかと各社の夏のキャンペーンの小冊子を貰って帰って考える。
    今年は角川のフェアに惹かれるものが多く3冊注文、その内の3冊目。夏休みに読み切れず今頃読了。
    作者は私より2つ年下で、丁度その作者が歩んできた時代を舞台に、全編をノートや手紙、FAXの文章で構成した物語。
    今ならば、さしずめメールかラインのやり取りとなるのでしょう。その頃でもこんなに手紙は書かないと思うけど、まあ、いいや。
    端々に出てくる小道具はその時代を良く表しており、そこのところは同じ年頃に同じ時代を過ごした者としてくすぐられる。
    普通にかわいくてまあまあ頭も良くてエレクトーンが弾けて男子に対しては控えめでという悦子を中心に友人・優子と多少気になる男の子・宏の高校時代から大学、社会人となって結婚と離婚あたりまでが描かれる。当時ありがちな女性が歩んだありがちな人生を語り方の妙で読ませたという感じ。
    この作者には「ツ、イ、ラ、ク」という傑作があり、あの切なさにはとても及ばないけれど、こちらも私らが若かった頃の恋愛を語って結構機微なところを突いているなぁと思った。

  • 自分は青春小説が好きだ。
    社会人となった今の自分に嫌気が指している訳ではない。
    学生時代のかけがえのない時間を思い出すことが出来るし、浸りたい時があるからだ。

    思い出は後になるほど美化されるものとは良く言うが、学生時代が特にそうではないかと感じる。
    著者はあとがきで、「あのころ。なんて単純で、なんて、一日一日が新鮮で、なんでもドキドキしてたんだろう。…」
    と記しているが、この文章に非常に共感した。
    なんで体育祭の優勝があんなに大事だったか。夜まで教室に残っている日がなんて特別な日だったか。
    当時の自分も全く気づかなかった。
    もっとも、気づけなかったから思い出に浸るのかもしれないが。

    自分は20代半ば。
    この小説では第二章といったところか。
    三章以降は自分にとって将来のことになるが、人それぞれ、別の道を歩んでいってもこの手紙のように縁が途切れることなく続けていきたいと思う。

    最後に一章で数学の教師の当て方を数列で解明するシーンがあるが、懐かしい。
    学んだばかりの数列の知識を使って規則性を発見する…自分もやったなぁ。。
    こんな些細な事から当時の記憶が色々蘇る。ありがとう。

  • 男女4人の高校生のその後の人生が、
    恋模様を中心に手紙やFAXのやりとりのみで描かれる。
    高校時代の同級生との恋、大学の先輩との恋、社会人になり取引先の人との恋、
    年上の女性との愛のレッスン、結婚後の不倫など、いろんな形の恋が詰まっている。
    恋に心を囚われるのは、即ち青春なんだなぁ。

    姫野カオルコらしからぬ、どこにでも転がっていそうな普遍的な恋愛モノで、
    だからこそ共感を呼ぶのだろう。
    真面目だったあの都築クンが、変わってしまったのが残念。
    どんなにカッコイイこと言っても、もはや性欲のしもべとしか思えない。

  • この本の中の4人は高校の同級生
    わたしより、ちょっと年上かな
    なので、高校生のときに流行ったもの
    流行歌、アイドル、なんだか懐かしい
    そして、高校生のころの
    いま思うと愚かで、でも一生懸命だったことなど
    ちょっと笑っちゃう
    縁がずっと細く繋がっていき
    それぞれの事情が変わり、新しい出会いがあり
    間違えて、つまづいて、苦しんで、
    出した手紙、出せなかった手紙
    メモ、FAX、4人以外の人たちのものも含めて
    とても変わった小説形態だと思いますが
    結構、楽しく読みました

  • 誰にでも同じように“判る”作家なんて、まったく魅力がないと思います

    とは、あとがきでの藤田香織さん(この人知らないなあ)のお言葉。まさにその通り。
    その人の人生観、恋愛観、価値観あるいは経験則(恋愛、人間関係などなど)に応じてこの手の物語は何パターンにも解釈され、個人単位で消費されうると思う。

    登場人物たちが交わす手紙という形だからこそ、心に沁みる珠玉の言葉の数々が。

    私個人としては
    都築宏への共感、感情移入が最も深かったです。

    ダメ男と罵られるかもしれませんが
    こういう考え方、生き方を歩んでいく男は少なくないと思います。

    それにしても
    あとがきとか解説の類って本当に的を得ているというか「うんうん!そうそう!それが言いたかったんよ!」とこちらの気持ちを代弁してくれるようなものが多いですよね(なんか上からですいません笑)

    藤田氏が本書の特徴に挙げる、「あの頃」へのトリップ感。曰く、夏の教室の匂い、窓から眺めた秋の校庭、部活で流した汗、卒業式に流した涙―――

    思わずぶるっときました。
    そんなに派手な青春を過ごしたわけではないですが
    思えば目に映る景色ひとつひとつ、全部がなんか“青春”だったなあ、と。

    社会人になって早2ヶ月弱。
    ついこの前まで属していた大学生というコミュニティ、ステータス。
    永遠に続くと思って漫然と過ごしたあの4年間、思えばあの日々も懐かしく恋しい。戻りたい。

    そんなわけでいろいろ考えさせられる興味深い作品でした!

  • 姫野カオルコのお手紙小説。すごいことに、全編が「お手紙」によって書かれている。ポスト投函の郵便ばかりでなく、授業中に交わしたメモや、同級生の交換ノート、ファックス送信なども含まれる。出さずじまい、渡さずじまいの手紙もある。

    これは、ある意味すごい。公開前提の「往復書簡」はともかく、フツーの「お手紙」は、その宛先となる人と自分との間でわかるだけの話が書かれている。つまりは「こないだの、アレが、どうのこうの」の世界。読者からすれば、こないだっていつ?アレって何?ということになる。

    高校時代の同級生が、卒業し、進学し、就職していくなかで、出会い、別れ、人間関係は交差しながら、20年ほどが経つ。その年月を「お手紙」を積み重ねて小説にしてあるのだ。読みはじめたら、おもしろくて、つい最後までイッキ読み。自分のことではないのに、なんか懐かしさも感じる。

    ▼…
     みんな、今はどうしているんだろう。
     あのころ。なんて単純で、なんて、一日一日が新鮮で、なんでもドキドキしてたんだろう。なんて、一年が長かったんだろう。体育祭での優勝がなんて大事なことだったんだろう。夜まで教室に残ってる日がなんて大事なことだったんだろう。体育祭の夜、チャリンコで神社に行って興奮して笑った。宴のあとの興奮をチャリンコを六人でのりまわしてさました。なんて、なんでもないことがきらめいていたんだろう。テストがなんてこわかったんだろう。先生にあてられるのがなんてイヤだったんだろう。そんな時代へ手紙を書きました。今だってきっとまだ「あのころ」は各人のどこかにしまってあるだろうと。  草々

     平成八年三月二十五日
                 あとがきにかえて 姫野カオルコ
    みんなへ
    (pp.342-343)

    「あのころ」が埋め込まれた物語だから、私も懐かしいのかなー。便箋に何枚も書きながら、結局出さなかった手紙は、私にもある。あれほど手紙を出しあったのに、今はもうつきあいがないかつての同級生もいる。「みんな、今はどうしているんだろう」と、こういう小説を読むと、ちょっと考える。

    (1/16了)

  • 直木賞で話題になってたから。
    つかみどころがない物語だったな。
    この人の性格ならこういうところに落ち着くだろうなって結末にしっかり落とし込んできた感じ。

    パソコンや携帯の発達とともに育ってきた世代だから、より一層、メールってものは文学性を奪うものだと思った。
    メールがあったら、この物語も、自分が大好きな秒速5センチメートルも生まれてなかったんだと思うと。
    コミュニケーション手段と青春の関係って数年で大きく変わってしまうなとよく思う。自分たちの2,3歳上の人が中学に入学するときは必ずしも携帯を持っているわけじゃなかっただろうし、Skypeなんてものもなかっただろうし。逆に自分たちの2,3歳下の人は中学入学時には既にTwitterやLINEなんてものが盛んに利用されていて。そんなジェネレーションギャップに少し恐くなる。

    この小説に話を戻すと、FAXの使い方がすごく上手かった。手紙とメールと電話の挟間の不思議な存在を、すごく効果的に利用していた。

  • 「ツ、イ、ラ、ク」で姫野カオルコさんにやられちゃった私。
    今、一番好きな作家さん。これから全部読破するぞ!!

    高校の同級生(♂2♀2)4人が、在学中、卒業後20年の間の手紙のやり取りを綴った小説。
    手紙の中には、書いた後破り捨てたものや、引き出しにしまったままのものも。その他に葉書、FAX、メモなど4人だけじゃなく、関わった人達も加わり、なかなか面白かった。

    人生いろいろだなぁ♪
    本当におめでとう!!

  • 全て手紙やファックスの中で展開されていくお話で新鮮だった
    人の文通を覗き見して悪いことしているような気分その中から出来事や心情を読み取って読み進めて行くのが初めてで面白かったケータイもない少し前の時代設定だったが、学生時代の恋心、友達関係、学校の話など誰もが経験したことあるような日常がそこにはあった
    学生の頃を思い出させてくれるようなそんなー

  • 手紙やFAXという特定の誰かに書かれたものを第三者が読むには想像をふくらませる部分が多くあって、「え、これ誰のこと?」とか「ああ、多分こんなことがあったんや」とか考えながら読み進めた
    悦子たちの文で、「女はこうあるもの」というその時代の風潮、学生時代で盛り上がる会話など今と変わるもの、変わらないものを感じられるのもおもしろかった
    思うことをそのまま文にしたとしても本当の気持ちとはやっぱり違う部分があったり、感じてほしいようには伝わらなかったり
    読み終わったとき『終業式』というタイトルに改めてぐっときた

  • 手紙形式が斬新!
    高校時代からの友達が大人になっていく様子を手紙を通して描かれている。
    頭で整理しながら読むのが少し大変だった。

  • 高校生のキャピキャピした文面から
    日々を重ね、ゆっくりと大人になっていく
    登場人物たち。

    その変化が、手紙、交換ノート、FAXだけで
    鮮やかに描かれてゆく。
    出さなかった手紙、伝えられなかった言葉が
    こんなふうに表現されることに新鮮さと驚き。

    まるで、この作品の中に生きていて
    私も彼ら彼女らと手紙を交わしていたかのように
    思わせられるのも、文面のイキイキと
    したリアルさゆえだと思う。

    読書中、この世界の中の仲間に加われて
    楽しかった。

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著者プロフィール

作家

「2016年 『純喫茶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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