- 角川書店 (2007年2月24日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (544ページ) / ISBN・EAN: 9784041835142
作品紹介・あらすじ
地方。小さな町。閉鎖的なあの空気。
班。体育館の裏。制服。
渡り廊下。放課後。
痛いほどリアルに蘇るまっしぐらな日々--。
給湯室。会議。パーテーション。
異動。
消し去れない痛みを胸に隠す大人達へ贈る、
かつてなかったピュアロマン。
恋とは、「堕ちる」もの。
感想・レビュー・書評
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恋愛小説だと思いますが、単なる恋愛小説ではありません。高校生や大学生が読む恋愛小説ではなく、ある一定以上の時間を社会に出て過ごし、さまざまなことに疲れを少しでも感じたことがある年齢になったときに読む恋愛小説だと思います。10代の人が読むのと、30代後半の人が読むのでは、この小説の主人公と彼、あるいは周囲の人たちの心の動きについての感じ方がまったく違うと思います。個人的には30代後半になってから読むのが良いかと思います。ただ、いろいろな人がいますので、10代の人が読んでも考えさせられることも多くあるのではとも思います。
作品の内容は学生と教師の恋愛、恋というものを心と体で覚えていく主人公のお話です。ちょっと興味深い部分は、視点が主人公だけではなく、登場するすべての人々の視点で話が進んでいく部分です。ちょっと分かりにくいと感じる部分もありましたが、いろいろな人の切ない胸の内が感じられました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
最後のページを読み終えたとき、「なんだ、この話?」と思った。
つまらなかったのではない。面白かった。すごく。
そう思ったのは話の展開が全く読めず、どこへ連れて行かれるのか分からず、
最後は予想もできない着地点で、予想もできない感情に心が支配されたから。
小学2年生の、とあるクラスの様子から始まり、
ひとりひとりのキャラクターや関係性が丁寧に書き込まれる。
中でもひときわ底意地の悪い女の子が登場するので、
「彼女が主人公か?」と思ったりする。
でもスポットの当る子が次々変わり、「あぁ、群像劇か。」と思いきや、
中盤に差しかかる頃、ぼんやりと主人公が浮かび上がってくる。
彼らは成長して、高校生になっている。
教師とつき合う主人公・隼子。
だけどそこには恋愛は無く、あるのはただ肉欲だけ。
人の道に反したこの二人に嫌悪感を抱くのだが、
徐々に恋愛感情が生まれ、心底隼子にハマってしまった教師が、
人間らしさを取り戻す別れのシーンはグッときた。
それから数年後、運命の再会。そしてラストシーン!
切なかった。心を掻き乱すほどに。
あの隼子に100%共感する自分がいた。
最後の文章「それが恋というもの」を読んで「完」の字が目蓋に浮かび、しばし茫然。
そこから現実に引き戻された時、前述の感情が浮かんだ。
不安定な気持ちをグイッと掴まれ、ぐるんぐるんと振り回して放り投げられ、
落ちたところは甘美な世界。なんだこれ?みたいな。
いやぁ、やられたなぁ。姫野さん、すっかり持って行かれましたよ。 -
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comuchiさん、お久しぶりです。
comuchiさんのレビューで興味を持ち、読んでみました。いや〜面白かった。
解釈はその通りだと思...comuchiさん、お久しぶりです。
comuchiさんのレビューで興味を持ち、読んでみました。いや〜面白かった。
解釈はその通りだと思います。河村は隼子を墜落させたけど、自分の気持ちを封じ込め、
這い上がるための示唆を与えた、あの別れのシーン最高でした。
素晴しいレビュー有難うございました。
2014/05/11
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生徒と先生の禁断の恋のお話。
姫野カオルコさんの“彼女は頭が悪いから”を読みたかったので、先に一冊読んでおこうと思ってこの作品を読んでみた。
終わり方が今まで読んだ恋愛を主題としている作品の中で1番好み。恋愛ものの本をおすすめするなら真っ先にこの作品をおすすめする。
姫野カオルコさんの独特な言い回しや比喩がすごく好きで、この表現どうやって思いついてるんだろうと感心しながら読む場面が多かった。また、多分この言葉は今後の人生の中で何度も思い起こされるんだろうなという言葉もあり、少しの絶望感をもらえる。
高校という小さな小さな社会の中、何も知らないピュアな主人公の鮮明なリアルさがすごく心に響く。
痛いけど痛いと言えない。やりたくないのにやりたくないと言えない。現代はそういうことが多すぎる。それを痛く、目を背けたくなるほど突き刺してくる作品だった。
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読んでいる時は、まるで自分が学生になったみたいに、気持ちがざわざわする。いいことばかりじゃなくて、黒歴史みたいなものを思い出させてくれる。
田舎の子供で、子供だから、田舎だから、世界が狭くて。同級生はずっと顔ぶれが変わることもなく、親同士の噂話も普通に入ってくる。
その中で異質に感じるものは、誰かがクローズアップして、異質なものを受け入れられない声の大きな保守派から吊し上げられる。
以前読んだ時は、もっと「恋は、するものじゃなくて、落ちるもの」というところばかり読んでいた。今読むと、恋に落ちた後のこと、見守る大人の目線になっている。美術の小山内先生のいなし方が好きだ。
恋に落ちた2人の、別れの会話がとても切なくていい。別れなくちゃいけないことはわかってるのに、でも、でも。
恋してる人も、恋、お久しぶりの人も、ぜひこのヒリヒリした感じを味わってほしい! -
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すごくステキな感想ですね
もう一度、読み返した気持ちになります
ホントに、誰かと似ているような気持ちになって
閉めたはずのあの頃の記憶の蓋が...すごくステキな感想ですね
もう一度、読み返した気持ちになります
ホントに、誰かと似ているような気持ちになって
閉めたはずのあの頃の記憶の蓋が開いちゃいますね。2022/06/16
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関西のどこか。小学生たちは集い、反発し、人を好きになり、中学生へ、高校生へと成長してゆく。多くの小学生の中で、スポットライトが当たるのは、森本隼子。もっと美形の子はいるのだけれど、なぜか人気がある。隼子は上級生と付き合いながらも、教師河村と関係を持ってしまう。そう禁断の恋。その恋と前と最中と後を濃密に描く。
うーむ。面白い。面白すぎる。
最初は多数の小学生が登場し、中学生になってゆくが、誰が誰のこと好きでとか、仲が良いとか悪いとか群像劇的に描かれる。
その中から森本隼子が飛び出してゆくのだが、彼女、教師、周囲の心の機微が、尋常でないほど絶妙なタッチで表現される。あー、なんでおらの中学時代のごどごんなにわがんのだー、と思わず故郷の言葉が出てしまった。
【男と女はちがう、こうちがう、と展開する随筆が、なかば世界の伝統芸的に人気があるから、すでに先人がのたまわれているだろうか。女は下半身の煩悩をほかの女と共感するより、上半身のそれを共感することで友情を感じ、男は上半身のそれより、下半身のそれをほかの男と共感するとき、友情を感じる、と。】
うーむ。たしかにそうかもしれない。
【以前からあまり教師のことはよく言わない三ツ矢が意外にも河村を褒めたので、末摘花(外見)の六条御息所(性格)に、さらにルクレチア・ボレジア(技術)が加わった。】
末摘花の外見に六条御息所の性格!なるほど。
【交換とは、実に発音のとおり、交歓である。指輪よりもノートをかわしあうほうが、「たかだか中学生」だったときのこの交歓のほうが、「たかだか」でなくなった年齢になっておこなった交歓よりもはるかに熱く官能的だったではないか。】
作内では「交換ノート」になっているけれど、我が中学生時代の「交換日記」の甘酸っぱい記憶を思い出してしまった。嗚呼どうして女の子はいつも(以下省略)
単なる少女ビカム大人の女ばなしではないし、禁断の恋オンリーでもない。「恋愛大河小説」といった感じ。最終章で明らかになる、その後がまたすごく良かった。 -
誤解していた。
この本は若い子向けだって。
敬遠していた。
けど、あとがきと解説に書いてあった。
この作品を最もよく理解出来るのは、40代以上の大人でしょう、と。
最初から違う。本当に途中まで、誰が主人公なのかわからない。
だけど、懐かしくて堪らない。あの頃はそうだった。同級生達が全員、誰かと重なる。
そして、一人浮かび上がってきた隼子。
何を隠そう、私も早熟だった。海外アーティスト相手の妄想。英語の歌詞を訳して、勝手に自分への応援ソングにしてみたり。
とにかく、隼子に関しては入り込んで読めたよ。
初めてのシーンの河村先生は良いね♪23歳の男が余裕をなくし、「だめだ。俺、こいつにまいってる。」なんて。
そして、墜落した二人は犯ってヤって犯ってヤって…やりまくって、体重減るまで(笑)
それでも、純愛。お互いを思いやり、潔く別れを選ぶ。お互いを守るため、嘘をつき通す。
こんなにも胸が痛い小説だったとは!
そして20年後…こうなったらいいなぁ、を裏切らない結末。
苦笑い出来たら大人の証拠らしいですが、泣き笑いはどっちですか?-
「胸が痛い小説だったとは!」
表紙写真とタイトルに惹かれて購入したら、、、ブ厚さにメゲテお蔵入り中。。。
胸が痛いと聞いたら、ますます読めな...「胸が痛い小説だったとは!」
表紙写真とタイトルに惹かれて購入したら、、、ブ厚さにメゲテお蔵入り中。。。
胸が痛いと聞いたら、ますます読めなくなりそう2013/04/16 -
コメント、いっぱいありがとうございます!!
実は、私、本を読むの凄く早いんです。だから、この本位はラクラク。
速読術をマスターした訳...コメント、いっぱいありがとうございます!!
実は、私、本を読むの凄く早いんです。だから、この本位はラクラク。
速読術をマスターした訳じゃないけど、長年の読書の賜物かな!?
話が逸れましたが、この小説は胸が痛くなるけど、そのままじゃ終わらない強さ(都合の良さ?)があるから、安心して読んでみて下さい(^^)
登場人物も多いので、誰に一番感情移入したのか聞きたいですし…。
2013/04/17 -
「長年の読書の賜物かな!?」
素晴しい!
私は、行き帰りの電車(片道10分)で読むのが殆どなので、どうしても長いのは後回しになっています。ま...「長年の読書の賜物かな!?」
素晴しい!
私は、行き帰りの電車(片道10分)で読むのが殆どなので、どうしても長いのは後回しになっています。まぁGWには長めの本を読むつもりなので、、、
「そのままじゃ終わらない強さ(都合の良さ?)が」
何だろう気になるなぁ(面白そう)2013/04/24
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どこかで暮らす誰かのお話だと思ってしまうほど、仕舞い込んでいた心の奥を一瞬で蘇らせてきます。久々に読み返したくなって、2日で一気に読み終えた。やっぱり変わらぬ面白さ!はじめて読んだときは前半の長さに読むのをやめたくなったけど、読み進めていくと心を全部持ってかれる!恋愛小説とくくるには幅広く、多角的で、年月の重みも重い、もはやヒューマンドラマ。ていうか、みんなそれぞれの登場人物の誰かに共感する部分があるのではないでしょうか…。わたしはこの子みたいなこと思ってたなぁ…とか思いながら読みました。ラストをぼやっ…とあんなことあったメモリー的な雰囲気で終わらせるのではなく、ちゃんと結末を描いてピリオドが打たれているのも気持ちよかったです。この作品のあとに書かれた、お話の続きやもう少し掘り下げて描かれた短編集「桃」もとても印象的で、よかったのを覚えています。
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面白い!姫野カオルコで一番じゃないかと思う。
あとがききもあるように、ほんとに読んでるうちにいつのまにか自分の過去の話しを同級生としているような感覚になってくる。
そうそう!それあったよねー!
いたいた!そういうやついた!
っていう。記憶の片隅にこびりついてた過去の出来事を拾い集めて本にした。そんな一冊で、小説の中に入り込むというよりは、いつのまにか小学生の、中学生の自分に戻って机に座って勉強してた。そんな錯覚に陥りそうになる本です。
タイムマシンで過去に旅したい人は是非。
そして、突然顔は思い出したけど名前が出てこない同級生やら、多分私しか覚えてないだろうな、、っていう出来事やら懐かしくそして愛おしい気持ちにさせてくれる不思議な一冊です。 -
読むのは5回目。直木賞受賞を機にまた。
同じ所でまた泣く。 -
この本がキッカケで、学生時代に歳の差ものや禁忌愛ものを読み漁ってしまった恥ずかしい過去があるんやけど、おばちゃんになってから読んでもやっぱりこの作品だけは好きです。でも自分の娘が先生と恋に落ちたら即逮捕してもらいます。
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以前から気になっていた作品。ようやく図書館で借りました。
近畿地方の田舎町・長命市を舞台にしたお話。
長命小学校二年二組の児童が登場人物。
たかだか小二でも、恋愛感情みたいなものは持っているし、持っていなくても、そういうものがあると知っている。
自分より恵まれているか、優れているか、そういう尺度でクラスメイトを見ることもできるし、見る子がいるということも、何となく知っている。
登場する女子児童数名は境遇も容姿も様々で、作品の序盤では彼女達の様子が、バラバラと描かれていきます。
バラバラと描かれているようで、二年生から三年生へと時間が進むにつれ、各登場人物の個性ができあがっていきます。
そして中学生。読み手のこちらには、男子も含め、各登場人物の個性はハッキリと確立し、動き出します。
性に憧れると同時に、嫌悪する年代特有の様々な言動、慣わし、事件が田舎町の中学生という、狭いコミュニティを舞台に描かれていきます。
そして、登場人物の中のある男と、ある女が、自分達も驚くほどの勢いとタイミングで、おちていきます。
抗えないほどの力で吸い寄せられるように。
その恋の結末は、たまらなく切なくて、ドラマティックなのに、陳腐でよくあるもの。
これが、イイです。
作中の、
「恋とは、するものではない。恋とは、落ちるものだ。どさっと穴に落ちるようなものだ。
御誠実で御清潔で御立派で御経済力があるからしてみても、あるいは御危険で御多淫で御怠惰で御ルックスが麗しいからしてみても、それは穴に入ってみたのであて、落ちたのではない。
『アッ』。
恋に落ちるとは、この『アッ』である。
こんなことはめったにないのである。めずらしく落ちても、かたほうだけが落ちているだけで、その人間を落とした相手は落ちていないことが多い。
ふたりして『アッ』と落ちるなどということはまずあるものではない。」
この数行がとても好きです。
大人になると、理由をつけて「穴に入ってみ」ることや、相手が落ちてくれた「穴に入ってみ」ることが増えて、「どさっと穴に落ちる」ことは稀。
この数行を読んで、
「あぁ、あの恋愛はそうだったのだな」と振り返り、嬉しかったり、がっかりしたり、苦しくなったりしました。
中学生だった自分に読ませてあげたい一冊でした。
そうすれば、当時の私はきっと楽になれたと思います。
姫野作品、他にも読んでみようと思います。
文体なども、とても好きでした。 -
私自身の学生時代にも、主人公・隼子のような女子生徒がいました。大人びていて、群れから離れて自分の時間を過ごしている人。平凡な群れの一員の私は密かに憧れ、何を考えているのか知りたかった。けれど、近寄ることは出来なかった。まして友達と呼べる関係になど…。この本を読んで、その彼女を知ることができた気がします。自分にとって大切なものは何かを本能的に知っている人。そして、それに向かって、まっすぐに気持ちを向けられる人。必要なもの以外は要らない人。そのせいで、他者を傷つけ、自分も傷だらけになるのに、そういうふうにしか出来ない人。やっぱり憧れます。自分には出来ないからなおのこと。
私はじゃがいも桐野先輩に傍にいてほしいです。まっすぐで、ホッとするもの。 -
著者初読み。
普段はほぼミステリーしか読まないので、たまには恋愛小説でも…と思い、読んでみた作品。
本当は小池真理子の「恋」のような大人の恋愛を求めていたのだけど、読んでみたら、ほぼ小中学生の話。しかも、いつの時代の話なのか、背景も分からないし、視点がコロコロ変わるし、何の脈絡もない比喩も多過ぎて、すごく読み難い。
それでも、ブクログの評価が高いので、最後まで読んでみたが、他の人が言うようなラストの感激もなく…
小説の中の中学生のように、ほとんどの中学生がこんな欲望まみれだったら、怖すぎる…それとも私が世間知らずなだけなのだろうか… -
良かった…数日嵌り込んでしまった。
切なくてどうにかなりそうだった。
私もこのほんにツイラクした。 -
長編小説としては、一九九九年に新潮社から刊行された「整形美女」(新潮文庫2002/10/01)以来四年ぶりに書き下ろされた作品です。
市立長命小学校に通う森本隼子。彼女が二年二組の級友らとともに成長をしてゆく過程を描いた長編恋愛小説です。
熱中して一気に読み終わりました。
隼子が恋に落ち、別れるまでの短い期間がハイライトだと思うのですが、この箇所は本当に面白かったです。
「恋は理屈では無い。」頻繁に耳にする言葉です。では「理屈では無い」とはどういう事でしょうか。説明するのは難しいように思います。でも、この小説で隼子が恋に落ちる様子は、読者である僕がそれを恋だと意識出来ないほど理屈抜きの落ち方で、つまり、タイトルどおり「ツ、イ、ラ、ク」していました。
二年二組の級友を含め、多数登場する脇を固めるキャラクター達もそれぞれ個性的です。僕は、統子の直情的な生きざまや、小山内先生の微妙なキャラクターが好きです。
読書の途中では、それらの類型=ステレオタイプの誰に好感が持てるか、僕はどのタイプか、などと考えていました。でも、読み進むうちに気付くのは、彼らの言動や感情は、それぞれ僕が感じる一部であったり、知り合いの一部であることです。つまり、彼らは何かの類型として描かれているのではなく、僕たちに普遍的な感情や衝動を少しずつ、同じように持っている人たちだと言うことです。
同じ著者の近作「特急こだま東海道線を走る」(文藝春秋2001/10/30)や「サイケ」(集英社2000/06/30、集英社文庫2003/06/25)は、著者と同年代の主人公が子供の視点で時代や、大人達を見つめていた作品でした。これらの作品でも、恋愛に限らない人を愛おしむ心の普遍性が語られていましたが、舞台背景が特定されるため、例えば「特急こだま……」では、「電気洗濯機や水道、電気が普及する以前は、洗濯って大変だったんだなぁ。」と、著者が幼少時代を過ごした年代(と、書くほど、僕は著者と年齢が離れているわけでは無いのですがσ(^◇^;))の苦労を思ったりして、楽しみが増える一方、主題(と僕が考えるのは、人を慈しむ普遍性)が明快さを欠く嫌いがありました。この点で、本作品は今までの作品と一線を画しています。時代や、舞台となる地域を限定せず、恋愛に的を絞った直球勝負の面白さがありました。
つまり、普遍性を追求した作品として楽しめたわけです。そして、僕は久々に熱中して寝不足に陥りました。
奥付の前のページ=編集部作成著者紹介から深読みすると、この作品はキリスト教で言う「原罪」を背負って生きる人の生きざまを描いているようにも思えます。
それを意識している人、意識せずに生きる人、双方に、それでも幸せを掴めと励ましている小説と言えるのではないかと思います。ここに、もう一つ、著者が今まで描いていた作品とは違う新たな視点が感じられました。
主人公や級友たちの恋愛は、必ずしも倫理的では無く、もちろん模範的でもありません。しかし、だからといって罰が当たるとか、正直者が損をするなどの教訓を描くのでもありません。そのような倫理をテーマにしているのではなく、一期一会、タイトルの通り墜落するような恋に落ちる機会は、一生の中でも度々訪れるものではなく、その貴重さを描き、過去に固執することなく前へ、前へと進むように、励ましているように感じられました。
つまりこの作品は、倫理観の先にある、人の業を描ききった会心の一作であると感じられました。
いわゆる不倫の恋愛とは異なるのですが、決して倫理的では無い主人公の恋愛と、それを捨てる決心をした若さの描き方が会心の一作だと、僕が思う所以です。
思えば、二十歳を過ぎた頃から、いつでも僕は「歳を取ったな。」と思っています。数年前を振り返れば「若かったな。」と思っています。では、今思う「歳を取ったな」は数年経てば間違いだったと気付くはずです。いったいこの間違いは何歳になったら終わるのでしょうか。こんな僕の繰り返し、つまり若さとは何かを、整理して教えてくれたようにも思えました。
余談になりますが、道徳的でない登場人物達の恋愛を、法律用語で言うところの破廉恥犯罪と明確に区別し、近年の世相に配慮している点は、著者の持ち味である丁寧な筆致と合わせて、今までの作品と一線を画しながらも、オリジナリティーを失わない=姫野カオルコの作品らしい味わいがありました。 -
ものすごく、よかった。姫野カオルコ初めて読んだ。たぶん直木賞取らなかったら一生読まなかった。直木賞とったから、本屋に平積みされてた「ツ、イ、ラ、ク」を買って読んだ。読んでよかった。
小学生から大人になるまで、必要な部分は丁寧に、飛ばしていいところは駆け足で描かれている。読み終えて、そうどなあ、こういうのだったなあ恋、と思う。別にいまだってしてるけど、恋。改めて。
そばで見ているような気持ちで、主人公のジュンコを応援してしまう。息を潜めて。応援といっても、いまだいけ!とかそういう分かりやすい応援は彼女にはできなくて、じっと、祈るよう感じで見守る。
いい小説だった。この物語に出てくるのはわたしたちだと思った。誰もが、この物語の中にかつての自分を見つけると思う。
著者プロフィール
姫野カオルコの作品
