桃 もうひとつのツ、イ、ラ、ク (角川文庫 ひ 8-14)

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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041835159

作品紹介・あらすじ

近畿地方の田舎町。長命商店街の娘、田中景子は、京美の"グループ"に入りたくてたまらなかった。"可愛い女子のグループ"に。Jみたいな子が入れて、なぜ自分は入れないの?私とJは何が違うの?同級生Jへの嫉妬に苛まれながらも、初恋にときめいたあの頃を景子は回想する。「青痣(しみ)」。『ツ、イ、ラ、ク』のあの出来事を6人の男女はどう見つめ、どんな時間を歩んできたのか。表題作「桃」を含む6編を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 「ツイラク」の後日談というか、スピンオフ作品。国語教師と14歳の女生徒の秘密の関係。ツイラクのときから女生徒はともかく、国語教師がいやらしく思えてあまり好みではない。

    桃の味が、感触が、思い出させるあの頃のこと。

    我が家にはお中元等で桃バブルが訪れるのですが、好きなのに最近桃アレルギーの可能性が浮上して悲しい。キウイ、メロンに続き、桃までも…!?悔しい、コンポートにしてやらう。

  • ツ、イ、ラ、ク好きなら寄っといで!!

    表題作の「桃」は、32歳になった隼子が14歳の頃を思い出すお話。
    切なくて、いやらしくて、キュンキュンしちゃう。

    意外に良かったのは「汝、病めるときも、すこやかなるときも」の頼子ちゃんと塔仁原のお話。
    奥手な感じの頼子ちゃんも、それなりに青春してたんだなぁと嬉しく思えたし。それと、口に出さなかったけど、女の勘がなかなか鋭かったのが驚き。

    あ〜、続編出ないかなぁ♪

  • 「ツ、イ、ラ、ク」のスピンオフにあたる、短編集。

    「ツ、イ、ラ、ク」では当然のことながら恋に墜ちた二人に焦点が当てられているので、その二人が特別であったかのように記憶に刻み込まれますが、この短編集を読むと、彼らの周囲にいた人々にもその人達の個性があり、それぞれ異なる考え方があり、それぞれ異なる視点で、彼ら二人を見ていたことを知ります。

    現実に照らし合わせれば、当然なのですが。

    長命中学校と何らかの関わりを持つ人々が時間を経て、当時の自分を振り返る。その時、「ツ、イ、ラ、ク」の主人公である二人のことも、記憶の一部として語られます。
    主人公の二人の視点で描かれた作品もあります。

    作品中にもあり、あとがきにもありますが、誰もが「とくべつ」であり「ひとりひとりその人にしかない個性で時間の中を生きている」ことを感じ入り、あとがきに、全く同じ事を意図して書かれた事を知り、著者に爽快な気分で白旗をあげました。

    それにしても、この方の描く、墜落した恋には本当に気持ちのいい痛みを覚えます。

  • ツ、イ、ラ、クを読んで衝撃を受けた。
    一度しか読んでなくても、内容を覚えていられるほど。
    なので、これは見つけたとき是非とも読みたいと思った。
    細かいことは忘れているので、スリルは味わえなかったけど、2人の関係を羨ましく思った。
    生活の全てを踏みつけても、会いたいと思えるほど好きな気持ち。
    憎らしく思いながらも、可愛くてたまらないと思ってもらえるほどの少女の魅力。
    全てが羨ましい。

  • 「ツ、イ、ラ、ク」のサイドストーリー。
    主人公2人が墜落していた頃、ささいな仕草や表情で周りの人間は気付いてたんだ。
    隠していても意識してない所にそういうのは出るんだよなぁ。

    夏目の歪んだ性癖の描写が怖いくらい真に迫っていて、
    女性がこういう視点を持っていることに驚く。
    作家というのは選ばれた人のみの職業なのだと改めて思う。

  • 『ツ、イ、ラ、ク』の登場人物たちによる連作短編集。

    『高瀬舟、それから』は『ツ、イ、ラ、ク』の最中の出来事を河村の目線から辿る。
    表題作の『桃』は正直物語として意味不明だったが、32歳になった隼子が河村と再会する前に過ごしている茫洋とした日々を切り出したのだろう。

    この2作以外は、『ツ、イ、ラ、ク』の主人公2人を近くから、遠くから眺めていた人の物語である。

    『青痣(しみ)』は隼子に嫉妬心を抱いている同級生が過去を回想する形で、詩的な表現が多かったが一番等身大で素直な物語だった。

    『ツ、イ、ラ、ク』がどれくらい刺さったかで、この作品の評価は決まるだろう。
    あとがきに書かれているように、読んでいないなら意味がわからない部分が多いと思う。
    あの出来事の裏ではこんなことが動いていたのか、と合わせて読むと鮮やかに感じる。

  • 『ツ、イ、ラ、ク』を読んだ後、それと対になる話があると知って急いで注文した。『ツ、イ、ラ、ク』を読んでいないと本当の意味がわからないのではないかと思うぐらい不親切な話だと思う。なのに魅力的なのは、やはりこの作品が『ツ、イ、ラ、ク』と対になっているからなのだ。

  • 「ツ、イ、ラ、ク」のあの出来事を6人の男女はどう見つめ、どんな時間を歩んできたのか(本編あらすじより)を描いた6編収録。

    「青痣(しみ)」が結構読むのつらい。
    「ツ、イ、ラ、ク」の時にも感じた女子の嫌な生々しさ健在で、
    嫉妬とか性的なものへのぼんやりした憧れとか男子への媚びる気持ちとか、そいういうの全部隠して目を背けて自分は綺麗だと思いこみたいそういう気持ちまで、とてもしっかり描かれております…。
    ああ、ちょうわかる、目を逸らしたい…。

    「世帯主がたばこを減らそうと考えた夜」はホモと噂されていた夏目先生の話。
    解説で男の人が「泣ける!」と言っていたが、この話に共感されると女としては非常に複雑な気持ちになるデスヨ。
    外見キラキラな少女は中身ドロドロで、
    エロの話ばっかりする少年は中身ピュアでキラキラなんね、
    とか思わされる話。
    間違ってない気もするけど、何かそれも悲しい。


    憧れとか夢として描かれるほわほわした恋愛はほぼありませんが、
    時間や肉体関係といったものを避けない生身の恋愛模様が描かれております。
    読もうかな、と思う方は「ツ、イ、ラ、ク」読後にドウゾ。

  • 「ツ、イ、ラ、ク」がとても良かったので、この本も手に取る。
    ただ、「もうひとつの○○」なんて、本編を超えることはないので、あまり期待もしていなかったのも正直なところ。
    だけど、うん、これも良かった。
    『若さを失うということは、恋を期待できたころよりもずっと、焦るほど、恋に酷似した状態を期待するということだろう、おそらく』なんてフレーズは私らの歳になると沁みますね。。。
    作者曰くこの小説集の主役は“時間”だと。
    同じ時間を生きながら、それぞれに通過した時間はそれぞれに違うのだということを改めて知るのだけれど、一方、重ねてきた歳月の重さは誰にでも同じだけの呻吟を与えるのだということも、また思う。

  • ごめんなさい流し読みしてしまった。
    最後の章だけ印象に残っていますが、補足(? 補完? 的な意味合いが割と強かった。

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著者プロフィール

作家

「2016年 『純喫茶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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