新興宗教オモイデ教 (角川文庫 お 18-2)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041847022

作品紹介・あらすじ

1カ月前に学校から消えたなつみさんは、新興宗教オモイデ教の信者になって再び僕の前に現れた。彼らは人間を発狂させるメグマ祈呪術を使い、怖るべき行為をくりかえしていた-。狂気に満ちた殺戮の世界に巻き込まれてゆく僕の恋の行方は?オドロオドロしき青春を描く、著者初の長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 人生ってかんじです

  •  僕と同級生のとなりの席のなつみさんが発狂するって、もの凄くインパクトがある。そしてある日、彼女はカルト教信者として僕の前に現れるのだった。それだけの情報で読む価値ありと判断した。内容はこれ以上でもなくこれ以下でもない、この情報以外は枝葉にすらなっていない、わたしは、もっとなつみさんについて知りたいのである(笑

  • 大槻ケンヂ初読み。読み始めて数行でキャラクターに引き込まれた。やらなきゃいけないことをほっぽって読了。エログロナンセンス新興宗教洗脳超能力etc…。前半は面白かったけれど後半はうーん。結局メグマ師同士の対決かあ。それでも勢いで読ませる力強さがあった。ライトノベルっぽく主人公が潜在的に最強設定っていうのがちょっとつまんない。中間が一番好き。図書館 2016/07/26

  • 中間とゾンの演じる「自分BOX」、
    ふたりの造詣が最高に面白かった。
    作中のほとんどは中間の語りであり、ゾンへの想いがバックに流れている。
    それに比べたら黒幕であるはずのトー・コンエがいかにも小物。
    寂しさを残す幕引きだった。
    かなりの傑作。

  • 基本的に皆狂ってるというのに、オーケンが書くとどうしてこうも爽やかな青春小説になるのだろう。最後は結局今までと変わらない日常に元通り…という辺りは非常にオーケンらしい。読んでるうちに自分もメグマにやられてるのかなーなんて思ったり。中間とゾンのエピソードが際立ちすぎて主人公の影が若干薄めなのが残念。ゾンのライブパフォーマンス等にはモデルがあると後書きにあったが、そのモデルのメンツを見て激しく納得。そりゃ主人公負けるって…。

  • 新興宗教を舞台に、狂気と電波と性欲が入り混じる。
    誘流メグマ祈呪術の使い手同士のサイキックバトルと電波が飛び交う描写は奇抜だが、登場人物の誰も彼もが他人に依存せずにはいられない、脆い人々だった。
    主人公のジローだけは、最後になつみを見限ることで依存せずに自立出来たのが救いではある。

  • 丸尾先生の絵が表紙の本作は、大槻ケンヂ初の長編小説です。私の友人曰く、「ときどき思い出して無性に読みたくなる」作品らしいですが、それはなにも本作に限った話ではなく、往々にして彼の小説には謎の中毒性があります。『ステーシーズ』とか『ゴシック&ロリータ幻想劇場』とかは、えも言われぬ感慨さえあります。

    さて、本作で通底しているのは「この腐った世界をぶっ壊したい」という殺伐とした、僻みともとれる観念で、主人公の「僕」をはじめ、中間、ゾンなどのメインキャラは、みなこの思想を持ち合わせています。そこに国を動かす程のおどろおどろしい力、誘流メグマ祈呪術が絡むことによって、単純ですがスペクタクルな物語が動き出して行くのです。全体が軽い感じなので鈍感になりますが、ある意味エヴァンゲリオンとやってることは変わりません。スプラッターな描写もサラッとありますが凄まじいものがあります。
    しかし、ただただメグマ祈呪術で「悪しきもの」を無双していく(狂わせていく)わけではなく、「僕」の懊悩や中間とゾンの関係などに焦点があてられ、ここに想像以上のカタルシスがあります。「この世界を壊すということは、自分がこの世界から居なくなることと同じだ」と気づいてしまう「僕」が、突如覚醒して強大な力を手に入れた時、なつみさんのお願いを断って狂ったように走るシーンには心を衝くものがありました。

    結局2時間くらいでバーッと読んでしまいました(笑)。他の作品にも手を伸ばすかもしれません。

  • ロックバンドのボーカル、大槻ケンヂの処女作

    妻子持ちの教師を好きになった同級生のなつみさんが、
    精神的におかしくなり、入院したものの、
    高校を退学し行方をくらました。
    1か月後、新興宗教オモイデ教の信者として、
    僕の前に現れたなつみさんは、特別な能力を披露して、
    入信を勧めてきたところから始まる不思議なおオカルト的青春物語。

    特別ここが良いとかいう感想は、
    ネタバレしてしまうので語れませんが、
    出てくるそれぞれの人物に対して、
    あとがきを読むことで、モデルがいたことを知り、
    こんな奴が当時いたのかっていうところに、驚きを感じた。

    今(2022年)読んでるからそこまでではないものの、
    当時読んでいた人たちは、後の新興宗教による事件や出来事は、
    どのように見えていたのかって思ったり思わなかったり。
    地下鉄〇〇〇事件んとか、〇〇〇〇パット事件とかね。

  • 中間の狂と純のギャップが良かった。

  • 初期の大槻ケンヂ作品は個人的に全部好き

    オーケンの初長編
     今読むと少し違和感のある部分がないでもないが、オーケンワールド全開で最後までテンポ良く読める。これ以降の作品にも登場する人物も出てくるし、その中でも「ゾン」の魅力がハンパない。

     幾度となく再読しているけど、未だに「こうであったら」「もし、これが……」とIFの世界を考えたくもなるし、その後の主人公ジローがどう生きたか考えてしまう。



    以下極力ネタバレ回避しつつ
    ネタバレも多いので読後推奨










    第一章:誘流メグマ祈呪術
     主人公とヒロインの立ち位置、キャラクターがわかりやすく、導入がスムーズ。説明じみた長台詞もオーケンワールドらしく、すんなりと飲み込める。淡々と進みストンと落とす感触が漫画的な表現にも感じて、実に心地いい

    第二章:自分BOX
     宗教団体の人間の立ち位置や教義はもちろんの事こと、いわゆるある程度の集団になると発生する真面目、不真面目、カーストの「あるある」「わかるわかる」の連続。更に前章の「誘流メグマ祈呪術」がどんなものであるかの詳細と、中間さんの語るゾン、そして中間さんの後悔がずっしりと重い。中間さんがゾンに対して持っていた感情が嫉妬であり、恋慕であり、畏怖であり、尊敬である事が隠されずに書いてあるのが愛しい。

    第三章:神猟塚聖陽心霊治療塾
     前章が中間のゾンという同性への心情を書いたものに対し、こちらは聖陽(陽子)のしづという同性への心情を書いている。どちらも性愛としての同性愛を語るわけではないが「大切な同性」に対しての絶対的な感情を描いていて面白い。
     しづの心は実際どこにあったのか判らないが、陽子の見た月が事実であるなら、気持ちはけして一方通行ではなかったのだと信じたい。

    第四章:僕の爆弾
     まだ全てを掴み切れていない主人公。前章で「誘流メグマ祈呪術」を間近で見たが、その力が自分にも使えると言われてもピンときていない。そこにA教という巨大な宗教団体の騒動がニュースになる。
     中間にとって過去の苦い思い出と、修羅場にいたい野次馬根性で騒動の現場へ駆けつける。そこで……この展開は予想できなかったので、最初に読んだ時は本当に胸熱展開だった。とにかく、ガラムが吸いたくなる。
     そこからは怒涛の展開で、主人公ジロー覚醒までが一気に進む。
    ※BL好きな人は、この章だけでも読む価値があるので読むと良いと思う笑

    第五章:中間
     前章の能力戦の件で連日参考人として聴取される中間。失踪するヒロイン。中間のゾンに対する本当の感情、それがなんであるかのバランスが絶妙。
     中間という男の願望と欲望の言語化はあまりにも判りやすく、自分の琴線に触れる。

    第六章:トー・コンエとなつみさん
     前章最後に突如現れたヒロイン。ヒロインは教祖てあるトー様のために主人公に助けを求めに来る。そこからの話はオーケンワールドなので、テンポ良く台詞のみでストーリーはさくさくと進む。
     今まで登場しなかった教祖の正体が明かされるが、実に身も蓋もない。
     そして……ストンと終わるのがオーケン小説の良いところだと思う。
     中間からの電話が救い。しかし、それで良い。そうであるから、オーケンワールド。

    あとがき
     初期のエッセイと同じ軽快なテンポのあとがき。一九九二年……当然ながら、あまりピンとこない笑

    解説/永井豪
     解説が漫画! このスタイルをとったという事が既に面白い。

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著者プロフィール

1966年東京都生まれ。82年ロックバンド「筋肉少女帯」ボーカルとしてデビュー。その後もロックバンド「特撮」でも活動。その特異なキャラクターは音楽だけにとどまらず、映画、テレビ、小説やエッセイなど多岐にわたる分野で人気を集める。著作「くるぐる使い」「のの子の復讐ジグジグ」は2年連続で星雲賞を受賞。また『グミ・チョコレート・パイン』シリーズのほか『ロッキン・ホース・バレリーナ』『縫製人間ヌイグルマー』『いつか春の日のどっかの町へ』など著書多数。

「2022年 『夜の夢こそまこと 人間椅子小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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