ばるぼら 上 (角川文庫 ん 11-31)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 244
感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041851326

感想・レビュー・書評

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  • 【あらすじ】
    耽美主義の小説家・美倉洋介が、新宿駅で行き倒れ寸前のフーテン娘・バルボラを助ける。そこから二人の奇妙な同棲生活が始まる。飲んだくれでうす汚く、厚かましくておせっかいなバルボラだが、美倉洋介はなぜか彼女に惹かれてしまう。彼女に導かれるように、美倉の心の旅は続いていく。(133文字)

    【感想】
    おもしろかった。
    とにかくミューズであり、ファムファタールでもあるバルボラが魅力的だった(「蠱惑的」の方があってるかも)。あらすじにも書いたように、「飲んだくれでうす汚く、厚かましくておせっかい」という様々な側面のあるキャラクターで、主人公の美倉が惹かれるのも納得がいく。「耽美」について正確に理解できていないが、バルボラこそ、まさに「耽美」と呼べるかもしれない。
    バルボラ以外にもたくさんの女性キャラクターが登場するが、そのキャラクターたちが軒並み美人。それぞれのキャラクターの立ち姿がとても印象的。ベッドに寝ころがるよりも、スウッと立っている方が魅力を感じる。
    手塚治虫で言えば、『ブラック・ジャック』と似た構成で、男女二人の主要キャラが話ごとに、各地を訪れたり、ゲストが訪問してきたのを迎えたりするという構成になっている。もしかしたら、ピノコはバルボラを元のアイデアにしてるのかも。ただ『ブラック・ジャック』と違う点は、それぞれの話がすべて主人公についての話だということ。『ブラック・ジャック』でも主人公についての話はあるが、基本的には話ごとに登場するゲストキャラが話の中心となる。しかし『ばるぼら』では、すべての話が主人公の美倉についての話である。夢と現実が混濁するところも多く、パラノイア的な不穏さが全体に通っている。
    好きだった話は、第5章の「砂丘の悪魔」。パラノイア的な恐さが、アツいものに転化され、最後にサラッとしたオチがつき、とてもおもしろかった。
    下巻はまだ読んでないが、下巻も楽しみ。(648文字)

    【メモ】
    人物名としては「バルボラ」とカタカナなのに、どうしてタイトルは「ばるぼら」とひらがななのだろう。作中でもカタカナとひらがなで使い分けされているが、どんな基準で使い分けされているかはわからかった…。下巻ではこれについて考えながら読もう。(117文字)

  • 映画を先に見て、いったいどんな原作なんだ!と読んでみたくなって。二階堂ふみが演じたバルボラは薄汚れ感も含めて女体のなまめかしさがあったが、漫画のバルボラはもっと少年のようで、どこか人のよさが漂うフーテンだった。「砂丘の悪魔」「黒い破戒者」など、白昼夢を見ているような内容にゾクゾク。「デパートの女」は映画に軍杯。「複製」も映像化したら面白そう。美倉のたたずまいや街の様子に感じる昭和が新鮮だ。下巻も楽しみ。

  • 【下巻のネタバレも含みます⚠️】

    物語前半と後半でかなり印象の異なる、黒手塚の問題作。

    上巻はまだブラックジャックとピノコの駆け引きを眺めているような、ほっこりした感慨があったが、これが下巻になると明らかな悪魔主義、オカルティズムの傾倒へと崩壊を見せ始め、おぞましい儀式や呪い人形が登場したり、魔女という概念がすんなりと受け入れられていることなど、ただただ読者を困惑に陥れるアバンギャルドな作風へと変貌する。

    上巻冒頭でいきなりばるぼらがヴェルレーヌの詩を口ずさんだり、主人公美倉洋介自身も異常性欲持ちの耽美主義作家で、作中にも様々な文化人の名前や言葉が登場してくるあたり、そして結局はこの『ばるぼら』が美倉洋介の遺作であることから考えても、『ばるぼら』は衒学的でいっそ幻想的とも形容できる(事実、手塚は『ホフマン物語』からインスピレーションを得たと語る)。ばるぼらとは何者か、彼女は実在したのだろうか……。謎は沢山残るものであって、それがいい。

    だからこそ、『ばるぼら』を世に出せば付きまとうであろう世間の評価を手塚治虫は既に予想しており、作品各中に見られる「芸術とは何か。狂気と芸術の差異とは」などの問題提起も忘れていない。私はこの問いかけを手塚治虫がしてくることに衝撃を受けたが納得したし、いわゆる漫画界の神様とまで言わしめた手塚の才能と苦悩をも、『ばるぼら』では微細でありながら大胆に感じ取ることができる。

    いい意味で裏切られた作品だった。『奇子』と並んで評価される所以である。

  • 寄贈された漫画。バルボラちゃんがとても魅力的。手塚さんの描く女性って、シンプルな描かれ方なのにとても蠱惑的?な気がする。

  • 2013.04

  • わかりにくいし異常さが多いけど
    なによりばるぼらが魅力的。

    2012.4.3読了

  • ばるぼらだーいすき。高校生のころ初めて読んで「手塚治虫がヨッパライを描いている!」となんとも興奮しました。

    ダメな人たちが支えあいながら、それでもふらふらよろけて頭のおかしい事件を引き起こしたり巻き込まれたりするのはもういっそホラーだし、実際読んでいて気味が悪いなあと思うんだけどなんとなくあったかくて救われちゃうんだよねえ。マトモな人間なんていないの。みんなアタマおかしい。

  • 前半の読み切り型の展開が好き。
    あらためて見ると女性の体の描き型に現実的な美しさがあると思う。足は長くないし、お尻は丸くて大きい。当時はこういう体型が好まれていた?

  • 火の鳥もブッダもさすが!といわせる作品ばかりの手塚作品だが、
    ばるぼらもそれにもれずにすばらしく生きる意味を考えさせられる。
    他の作品よりももしかしたら分かりやすいのかもしれない。

  • 完結。

  • ミューズか悪魔かわからない”ばるぼら”が、魅力的。深い。。。

  • 昭和版シビアなのだめ

  • 誰に貸したのか、部屋中どこを探しても見当たらないので、改めて購入。諸行無常の響き感じる、大好きな作品。

  • 不思議世界すぎる。詩的というのでしょうか。。
    ムネーモシュネーだったかモネームシュネーだったかが
    パンチ効いたキャラ造型ですね!

  • ばるぼらは魅力的だなー

  • 上・下巻所持。

  • 上下巻。
    「人形への恋」を扱った作品あったかな・・・と本棚を探してたら見つけた。
    読み直したら、やっぱりすごいマンガだ、と再評価。


    ある日、流行作家・美倉洋介は駅前でバルボラをひろう。
    都会が何千万という人間をのみ込んで消化し・・・・・・たれ流した排泄物のような女―それがバルボラだ。
    飲んだくれでグータラ、薄汚くて厚かましく気まぐれでおせっかい、そんなバルボラと奇妙な同棲生活を始める美倉。
    実はバルボラは芸術の女神・ミューズ姉妹の末っ子だったのだ。
    芸術家の才能を昇華もさせ、破滅もさせる、バルボラの魅力にとりつかれる美倉。
    いつしか美倉も破滅への道を向かっていた。
    でもたとえ美倉が消えようと、彼の作った芸術は残る。

    このマンガは、芸術の永続性について書いてるん・・・ですよね。
    手塚治虫が死んでも、手塚治虫のマンガを読める幸せ。

    欲を出すと、ミューズはいとも簡単にいなくなる。

    異常性癖をもつ美倉が、第一話目で愛すのがデパートのマネキン人形。
    二話目では、犬。
    芸術家と異常性癖は隣り合わせなんかな。
    この辺、興味あるわ〜
    あとこのマンガ、ヴードゥーとか黒魔術に黒ミサまで出てきて、手塚治虫の興味の広さにびっくりでした。


    ボードレールとかバルザックとヴェルレーヌとかフランス文学からの引用が多くて、ちょっと勉強になった。

  • 手塚治虫の作品には、たまに背筋が凍るような(もしくは悪意が隠されているような)怖い描写や構成から成るものがあるのですが(個人的には、『ビッグコミック』に連載された1970年代前半の作品に突出して多い気がする)、「ばるぼら」もそんな作品のひとつです。悪趣味な魅力とでも言うのでしょうか、登場人物の思想的な偏りかた(?)も相まって、怪談の様相を見せています。

  • ぶっちゃけなにがなにやらっていう漫画なんですが。とりあえず美倉やばい。いろんな意味で。クレイジー

  • 「MW」とこれははずせません。
    自分より後に出てきた才能に、本気で張り合っていたと思しき手塚治虫、政治活動にも無関心ではいられなかった手塚治虫、とどうしたって重なってくる部分がある。

  • ばるぼらは芸術家にとって失ってはならない“何か”のメタファーとして描かれていると思った。成功するまでの純粋で素朴な情熱。成功後の努力と良心。それらを失うことはすなわちばるぼらを失うこと。。

  • 手塚治虫はすごい!
    こんな退廃的な作品も描けちゃうんですね。斬新だった。神様は違うねぇ!

  • 神様の作品。
    名前の通り、わけのわかんない出来。
    でも、読み返すたびに思うとこが必ず出てくる。

  • 上下巻もの。びっくりした。耽美・異常性欲・ブードゥーなんて言葉が出てくるとは。上下巻もので一気に読めます。メルモちゃんやブラックジャックが出たのがなんとなくわかるなぁ

  • 手塚マンがの中で一番好き☆

  • 昨日一気に読んだんですが、内容、あらすじには触れません。
    これは、芸術作品であり、文学作品であり、とびっきりのアート。
    全体に異様で陰湿で独特の空気が漂いエンターテイメントの天才手塚治虫の懐の広さ、守備範囲の広さを堪能できる。その天才のナマの部分が、要所要所にあふれた
    暗黒面がチラリと覗ける問題作。俺の生まれる前の作品ということは、当時の漫画表現としては
    そうとうとんがっておっただろうし、よく出版できたものだなぁと。余計な心配。

  • 異常性癖に悩む幻想作家が、街の片隅で拾ったアル中のヒッピーは芸術の神の娘「ばるぼら」だった。芸術、そしてそれを生み出す芸術家とはどんな存在なのか?膨大な作品群を生み出した手塚治虫が問う。

  • 手塚治暗黒期の最高傑作。

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著者プロフィール

1928年、大阪府豊中市生まれ。「治虫」というペンネームはオサムシという昆虫の名前からとったもの。本名・治。大阪大学附属医学専門部を卒業後、医学博士号を取得。46年、『マアチャンの日記帳』でデビュー。幅広い分野にわたる人気漫画を量産し、『ブラックジャック』『鉄腕アトム』『リボンの騎士』『火の鳥』『ジャングル大帝』など、国民的人気漫画を生み出してきた。

「2020年 『手塚治虫のマンガの教科書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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