愛してる (角川文庫 さ 24-2)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041853023

感想・レビュー・書評

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  • 物語は、【ファッサード】という夜の店
    そのお店を中心に若者の様子を描いた作品

    お店の雰囲気、登場人物の細かな表現は、読んでいる側の想像を膨らませる

    酒のにおいがしてきそうな感じが自分の中で大きく感情を膨らませる。


    気が許せる場所、自分でいられる場所、または、生きている証の場所

    心情と感情、切なさが絡む連作、16編

  • 登場人物や舞台が地続きのオムニバス形式の物語。なんとなく時系列も順番になっている(と思う)ので、ぼんやりとひとつの長編と捉えてもいいという気がする。

    「思ったり感じたりした者の勝ちだ」

    とりあえず明日が来るとして。

  • 鷺沢 萠の【愛してる】を読んだ。

    1話読みきりの連作短編集。

    「ファッサード」という名のクラブに集う若者たちと主人公である「私」が織り成す人間模様の物語。

    若者が持つ、「それぞれの事情」や「やりきれない思い」が到る所に散りばめられた、かけがえのない青

    春の1ページのような物語だ。

    私はもちろん、ジュニアやヒロアキ、アキオ、ハンニバルと言った愛すべきキャラクターが若者特有の苦

    悩と情熱を抱えながら「生きて」いく。

    青春物語と言っても、元気ハツラツなわけでもなく、清々しく、若々しいわけでもない。

    どちらかといえばアンダーグラウンドな世界。僕も似たような経験をしてきているので、読んでいて懐か

    しさで胸が熱くなってしまった。

    どこに向かうわけでもなく、出口の見えないような時間を仲間とともに過ごし、時には道を誤り、落ちて

    いく仲間を助けることも出来ず、自分が生きていくのに精一杯な時間を過ごしていく。

    その時間の中で本当の仲間の大切さや、人の優しさなんかを学んでいくのだ。

    この作品を鷺沢 萠が書き始めたのが21歳の時だというから、その才能には驚くばかりだ。

    こう言ってはなんだが、近年目立つ作家の若年化とは次元の違うところにいる本物の作家であったように

    思う。

    彼女の遺した作品に更なる興味を持つきっかけとなった作品だった。

  • あまりに繊細な。

  • わたし。
    夜毎“ファッサード”で遊び、友達と飲んだくれたり、落ち込んだり、有益で無意味な日々が続いていく。
    ジュニアは街を離れ、タカヒロは同居しているアキオの部屋を出た。
    息苦しくなって、眠れなくなって。
    それでも、日々は過ぎていく。
    と、まぁ、上手く言えないけど、日常のフィクションを集めた、短編連作集です。
    作中“わたし”は、落ち込んでしまった友達の世話を焼き、苛々して駄目になりかけ、優しい人間達に笑いを飛ばす。
    『思ったり感じたりした者の勝ちだ』と、冒頭にあるのがよくわかる。
    そうそう、そんな感じの日常なのだ。
    精神的退屈を持て余し、現実世界から目を背けたくなった時に読むといい。
    特に『オムレツを食べよう』はいい。
    取り敢えず明日も生きていこうかなって気になる。
    この辺の詩的な表現が上手な著者にあって、こうあるべくの結末。
    今は亡き鷺沢。
    かえすがえすも残念でなりません。

著者プロフィール

鷺沢萠(1968.6.20-2004.4.11)
作家。上智大学外国語学部ロシア語科中退。1987年、「川べりの道」で文學界新人賞を当時最年少で受賞。92年「駆ける少年」で泉鏡花賞を受賞。他の著書に『少年たちの終わらない夜』『葉桜の日』『大統領のクリスマス・ツリー』『君はこの国を好きか』『過ぐる川、烟る橋』『さいはての二人』『ウェルカム・ホーム!』など。

「2018年 『帰れぬ人びと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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