バイバイ (角川文庫 さ 24-5)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (170ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041853054

感想・レビュー・書評

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  • 人なんて信じるものではない。なんて思考になったショーリだが、大体みんな人を信じているのだろうか?こっ酷く裏切られた事の無い私でも、人は信じるものではないと思っている。裏切らない自信がないからだ。
    嫌われたくない?好かれたい?寂しいから?人に自分の事を解ってもらいたいと思わない?
    解説を読んでもどう捉えればいいのかわからない。

  • 3股男、ショーリの物語。

    はたから見て、ひどい男とされる彼だが
    どうしてもそうは見れない。

    相手の事を観察して、相手が求めている事を感じ
    そのために全力を尽くさなければならなくなってしまった
    そんな男は
    多くの女に気に入られるだろう。
    当たり前だ。
    自分が求めていることをしてくれる人がいたら
    その人といたいと思ってしまうのは。
    人間の正直な気持ちだろう。

    きっと、女たちは素晴らしく幸せな体験をしたことと思う。
    人を信じるというのは確かに快楽かもしれない。
    それを味わわせてもらったという事実だけで
    幸せだと思うんだけどな。

    そんなことは、一般常識では思われないんだろうけれど。
    他に人の感想を見ていても
    納得できない意見のほうが多数だし。

    でも、私は
    ショーリにはその後も
    沢山の女と仲良くなって欲しい気がした。
    朱実を不幸から引き上げたのはショーリだ。
    きっと彼に出会っていなかったら
    彼女は不幸を引きずり続けたことと思う。
    その後、ショーリによってより傷ついたとも言えるけど
    事実、彼女は一時は幸せを味わっている。

    残念なのは、ラスト。
    よくわかんない。
    もっとすっきり終わらせればいいのに、と思ってしまった。

  • ショーリは極端だけども、わたしも、あと今の恋人もたぶん考え方は似ているんだよなあ。
    あとぜんぜん関係ないけどショーリって名前の知人いたな、いまどうしてんだろ。


    人を信じるのは狂気の沙汰だ。ふつうのことではない。ではふつうから狂気の沙汰へと、その一線を人に超えさせるものは何なのだろう。

  • 浮気者の言い訳のお話

  • 誰もが自分が一番で、誰かの一番に自分がなることはない。
    それ以外は簡単にひっくり返るもので、だから人を信じてはいけないのだけれど、だからといって嫌われるのも怖くて、いつも「バイバイ」を言えずに、その場その場を取り繕ってしまう。
    女性にとって、そんな勝利の態度は業腹ものだろうけど、多分、男女関係なく、誰にでもそういうところはあるものだと思う。

  • 同じ著者のエッセイ「ありがとう」で触れられてるのを見て。何年かぶりの再読。幼い頃から親戚をたらい回しにされ、嫌われないことを第一義に掲げ、好意を断れないうちに、嘘を重ね、三人と同時に付き合ってしまってる主人公。人を信じるなんて灰皿を食べるようなものだ、人を信じてはならん、という祖父の言葉どおりに生きてきたが、そんな主人公を信じる、というある種の狂気が強く印象に残り、また一筋の光を感じさせながらの読後感だった。

  • 中学の先輩に当たるかたの著書。母の後輩でもあるので、手に取りました。個人的には好きになれない作品で、気持ち悪い、嫌な感じと思う表現がありました

  • 主人公が自分とは真逆なので、そういう人の心情が細かく描かれていて面白かった。
    人の内面を描くのがうまくて、先が読みたくてあっという間に読み終わりました。

  • 主人公の此の男、やっぱり好きになれないな(一部は同族嫌悪かもしれないけど)

  • 「人に嫌われたくない」けど「人を信じるのは狂気の沙汰」だと思っている主人公。自分の居場所とか立ち位置とか身の置き場がわからないまま、曖昧に浮かんで流されてふわふわしてる、そんな人を書くのがやっぱうまいなあ……

  • 「人は大切な事をいいかげんにしているうちに自分でも知らない自分を作ってしまう」
    …とは解説の引用なのですが、
    これは主人公を通して徐々に見えてくる大筋のテーマのようなものを、
    上手く要約されているなと思いました。

    読み手によっては嫌な話で終わってしまいそうな気配もするのですが、
    鷺沢さんの本を読む度に、人間を描くのが上手だなあとつくづく感じます。

  • 3人の女性と同時に付き合っていた男の浮気?が発覚する話。もてもてなのはいいけど、なんだかねえ

  • サヨナラを言えない、この主人公キライ。でも、ここまで極端じゃなくても、男の人はこういう面がある気がする。

  • もうちょっと若かった頃のレビューから。

    『鷺沢 萠の小説を読むのはこれがたぶん3冊目。
    1冊読むごとに価値観がかなり根底のところから揺すぶられてるような気がして、だからなかなか手が伸びないんだけど・・・
    この本の主人公の男は、ほんとに最悪で、女の敵と言うか、まーネタバレしちゃうのもあんまり良くないし具体的には言わないけど、最悪なことをやってるわけです。
    で、普通だったら絶対そんなやつに感情移入できないはずなんだけど、そこがこの作者のいやらしいところで、こんな最悪なやつにも割と共感できちゃうような書き方をしてて、読み手としては、最悪な男に共感してる自分が嫌になっちゃうわけです。
    他の人がどう読んだかは全然知らないけど、そんなこと思いながら読んでたらこの薄っぺらい小説も結構重たかったです。すぐに読みきれるんだけどね。かなり考えさせられました。』

  • 誰からも嫌われたくない一心で生きてきた勝利は、いつの間にか3人の女性と並行して付き合うようになっていた。崩れ始める関係の中で、少しずつ人を信じることを知っていく。
    鷺沢萠さんは「ウェルカム・ホーム」という作品しか読んだことがなかったのですが、その作品がとても好きだったので、今回も期待して読みました。
    期待通り、読みやすい文章、繊細な心理描写、魅力的な登場人物、そしてどこかほっとするような温かい空気がとても良かったです。
    人を信じるのって実は難しいけど、疑い続けたまま生きるのも苦しいよね。

  • 鷺沢 萠 著   角川文庫

    人を信じるということはそれほど難しいことなのだろうか。愛する人を信じて生きるということは、

    それほど難しいことなのだろうか。この作品はそんなことを深く考えさせてくれる小説である。

    主人公の男「勝利」は、祖父が言った「人間なんで、信じるもんでねえぞ。」という言葉が忘れられず、

    それ故に人を心から信じることが出来ずに生きてきた。人に嫌われることを恐れ、相手を喜ばせることが

    自分の居場所を確保する唯一の方法だと悟り、人の顔色を伺い、相手が求めることを瞬時に理解して、

    求められたものを完璧に提供してきた。それが勝利にとっては生きる術であり、当たり前のことだった。

    誰に対してもいい顔をしてしまう。誰からも好かれたい、嫌われたくないという気持ちが、言動判断基準に

    なる。仕事だけに限った話ではない。女性関係も・・・。

    と、小難しい言葉で説明してみるとそんな内容の話だが、ざっくばらんに説明すると、三股を掛けている

    最低な男の話である。そんな最低な男の話のどこに深く考えさせられるところがあるのかというと、

    そこは天才・鷺沢 萠である。単なる好いた惚れたの恋愛小説ではない。見事な人格描写と心理描写で、

    登場人物たちの心の闇と光を引き出していくのだ。

    この三股を掛けている勝利という男は、けして悪巧みをもって三股を掛けていたわけではない。根本的

    には「嫌われたくない」という自己中心的な思想のもとに「誰にも優しく接している」うちに、そういう

    関係になってしまったのだ。この手の優しさは世間では優しさとは呼ばないのだろうが、僕には共感でき

    る部分があって、ちょっとばかり心が痛んだりする。『優しさだけじゃ、人は愛せないから』なんて、

    ブルーハーツの歌じゃないけど、そうなんだよな、なんて思ったりもして、余計に心苦しくなる。

    勝利という主人公の深層心理は僕の深層心理と共通する部分が多々あるのだ。

    すべての糸が切れたり解けたりしたとき、三人の女性の行動が三者三様で興味深いのだが、これほどの

    修羅場を越えた後での「人を信じる」という行動はかなり重たいものがあって、信じるという行為その

    ものが純真ではなく呪縛に思えてならない。僕的には、人を信じるということはもっと明快で単純で

    いいのではないだろうかと思う部分もある。

    『愛する人を信じて生きる。それでいいじゃねぇか、人はよぉ』って、THE・茶番ってバンドが昔

    歌ってたけど「それでいいじゃねぇか」って言葉に含まれる部分が大切なんだと思うわけで。

    考えすぎたり、背負い込みすぎたりすると、だいたい碌な事がない。人生なんてそんなものだと思うわけ

    です。

  • 2010年2月12日購入。

  • 読後感最悪。本読んでこんなにムカついたの久しぶり。なんでこんな気持ちになるか理由はちゃんとわかってる。
    この主人公「勝利」が私と似てるから。自分の裏側を見せつけられてるみたいだったから。
    優しいふりして、その実身勝手でわがままで自分のことしか考えてない。他人に嫌われることを何より怖がる臆病者。自分が嫌われない為なら恋人にだって嘘ついて、傷つけても平気な顔してる。あー最低。
    でも・・・、そこまでしなきゃならない、そうまでしなきゃいられない人間の寂しさ辛さ罪悪感に押しつぶされそうな気持ち・・・。そういうの突き付けられて苦しくて、それでムカついてたんだ。
    鷺沢さんはこういう気持ちを知ってたのかな?自分も経験していたのかな?もし鷺沢さんの内側にもあった気持ちだとして、ここまでまっすぐ見つめて細部まで描き出すのは辛い作業だったと思う。だから・・・なんて勝手な想像だけどね。

  • 辛い幼少時代を送ってきた勝利は、「人間なんて、信じるもんでねえぞ」という祖父の言葉を胸に、他人を決して信じず、同時に他人に嫌われることを極端に恐れている。付き合う女性に「バイバイ」と言えずに、勝利は現在三人の女性と交際している。

    恋愛小説は本当に難しい。選び方を間違えると、ひどく心をえぐられる。今回もまさにそうだった。
    これ以上書くと暴言を吐いてしまいそうなので、やめておきます。

  • 朱美が目の前で泣いている。今までに見たこともないくらい激しい泣き方で、真っ赤に染まった小さな顔はまるで猿みたいだ。

  • わたしが、
    きみを、
    しんじる。

  • 主人公に絶対感情移入できないし、
    読後感も悪いけど、
    なんかすごく心にひっかかった本。

  • 一番共感出来た登場人物が二股どころか実は三股をかけていた最低男の主人公だったんだが…。
    男じゃなくて本当に良かった…女って怖いし面倒くさいと思ってしまった私は本当男ではなくて良かった…。まぁ、主人公が女でその逆もある気もするが。

  • なんだか軽い感じがした。

  • 人の顔色を窺いながら生きる主人公につい自分を重ね合わせてしまう本です。嘘を重ね、自分の本当の気持を失っていることにすら気づかない。現実を直視できます。

  • 私はその"やさしさ"を知っている。私はそれを"やさしい"と言う。("残酷"と"親切"を並べながら、それでも)

  • これもまた、恋愛が終わったときに読んだ本。
    一人に決められない男。読んでる時、このヤロー!ハッキリしろよ!!なんて思ってたけど、年とって、今自分がそんな感じ。年取ると嫌でも慎重になっちゃうんだよね…。

  • 二股、三股をかけていた男とかけられていた女の話。表紙がきれいで手にとって読み始めた。鷺沢作品には大きく2通りあって、それは作品の内容も文章の力の入れ具合も老練していて、とてもとても30代の女性が書いたとは思えないようなものと、そうじゃないものに分けられる。
    これはそうじゃないものに入るんだけど、この「バイバイ」は何ていうか、わざとに若い女性受けするような作品を書いているんじゃないかしらって思わせるような作品。「スタイリッシュ・キッズ」「大統領のクリスマス・ツリー」なんかもそうなんだけど。こんな作品も書けます、みたいなね。で、恋人の心が離れていくっていうのにこだわって書いているのが若い女性受けするだろうと思われるこの人の作品群の特徴なんだけど。
    どうもそれがイマイチなんだよね。いつも離れていく過程を描くでもなく、離れた後を描くでもなく、一緒にいた二人が結局離れた、で終わるんだ。
    わたしが見たいのはそこじゃない。

  • 切ない。

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著者プロフィール

鷺沢萠(1968.6.20-2004.4.11)
作家。上智大学外国語学部ロシア語科中退。1987年、「川べりの道」で文學界新人賞を当時最年少で受賞。92年「駆ける少年」で泉鏡花賞を受賞。他の著書に『少年たちの終わらない夜』『葉桜の日』『大統領のクリスマス・ツリー』『君はこの国を好きか』『過ぐる川、烟る橋』『さいはての二人』『ウェルカム・ホーム!』など。

「2018年 『帰れぬ人びと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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