ありがとう。 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041853115

感想・レビュー・書評

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  • マイミクさんのお薦めで読み始めた鷺沢萠さんの作品二つ目。
    どうしても「彼女がなぜ自ら命を絶たなければならなかったのか」ということを考えてしまいます。

    この作品は彼女が31歳の時にまとめたもの。
    そして、終わりのほうは亡くなる直前の未発表含むエッセイです。
    彼女は36歳目前で亡くなります。

    「海なんてものは」彼女は老後をどこで過ごすか考えます。
    連れ合いよりもずっと長生きするのではないかと思ったから。

    亡くなった時は鬱病かと思いますが
    彼女はそれまでも何度もそのような状態にあったと想われます。

    高校生の時。自分で自分のことを「ちょっと目を離すと自殺しそうだ」と思い、救い出すために読書をしました。
    その時の自分にいいたい。「いのちがちっぽけだからこそ、どれだけ大事かということは、そのうちきっとわかるはずだよ。」
    彼女は山川方夫の本に涙します。
    山川方夫は35歳目前に、二宮で交通事故死した作家です。

    20代半ば、「心が死にかけていた。」
    そんなある日「一本の電話」先輩にあたるある作家から。
    「すっごく良かったよ、感動しちゃったよ、オレ。」
    「それだけ伝えたかったんだ」とあっけなく電話はきれた。
    受話器をもどしたあと、彼女は大声をあげて泣きました。
    その一瞬を境にしてそれまでは気づけなかったことに気づいたのです。

    そして、30過ぎておそらく亡くなる直前。
    それまでも彼女は何度も沖縄に行っていますが
    ここで沖縄の旅行記がでてきます。
    なくなってから、文庫本で初めて収録されたものもあります。

    「沖縄は魔法を持っている島なのだ。
    それは『生きたくなる魔法』であり
    『死にたくなくなる魔法』である。」

    「私はこれからも沖縄に行き続けるだろう
    さまざまなものや人の通ってきた玄関をくぐって」

    その沖縄旅行では、彼女はなんとかまた
    死から逃れようとしていたのでしょうか?
    死を覚悟して、最後の沖縄旅行をしたのでしょうか?

    非常に印象深いエッセイに「風呂桶の許容量」があります。
    風呂桶にボウリングの玉を放り込んで99個まではなんともないのに100個で突然瓦解するのです。
    彼女はそういう人だったそうです。
    つまり、99個まで、ぎりぎりまでへらへらしている。

    私ならたぶん、もっと早いうちに嫌な顔をしたり
    なんらかの意思表示をしてしまうと思います。

    彼女の作品を見て、彼女が死を選ぶとはとても思えなかった
    このボウリング玉の話はそんな彼女を表していると思いました。

    てーげーでよかったのに。

  • 何度も言うけど、鷺沢萌さん、好きです。<BR>
    エッセイ集なんですが、最後に収録されている酒井順子さんとの対談がおもしろすぎます。<BR>
    素敵すぎるコンビ。

  • (2023/04/08読了分)再読。今回ぐっと来たのは、この2つのフレーズ。◆やはり世の中には「正しいこと」などなく、あるとしたらそれは「やりたいこと」なのではないか。そう思った。(p.79)◆「あきらめるな」は他人に向かって言うことばではない。自分に向かって、黙ったまま言うことばだ。(p.106)◆「ほんとうの夏」「バイバイ」は読み返したくなった。山川方夫「愛のごとく」はこのエッセイ集の影響で読んだ記憶。「最初の秋」も読みたくなる。酒井順子との「負け犬の遠吠え」をめぐる対話もとてもおもしろかった。(2017/06/05読了分)何年ぶり何度目かの再読。このエッセイ読んで、「バイバイ」、「ほんとうの夏」も読み返したくなった。世の中には正しいことなんかなく、やりたいことしかないのでは、というフレーズ。一緒に住んでた人に、あんたは私の好きな花すら知らない、と罵った1年後の誕生日に届いたトルコキキョウの花束に頽れたシーン、が印象に残る。比嘉光龍(バイロン)の歌を聞いてみたい。対談での酒井順子さんの、いつもニコニコしていて、どうせ俺なんか、と言わない人ならいい、という基準。ネットをつないでくれた彼女は、のちの、サギサワ@オフィスめめのわたべさんだろうか、と思いをめぐらしたり。

  • 酒井順子との「負け犬」対談がおもしろい。エッセイ集。

  • 祖母が在日朝鮮人の著者からみた在日コリアン。沖縄、アメリカ。珠玉のエッセイ集

  • ほんとうにほんとうに、繊細でやさしい人。

    単行本で出たものに未収録エッセイを追加して解題したもの・・・とのことですが、この「ありがとう」のタイトルは、鷺沢さんがつけたものではないような気がする。

  • エッセイ集。
    図書館で見つけてなんとなく手に取った本。

    「ケロヨン人形」がとても印象に残っています。
    「あきらめる」ことは「あきらめない」ことよりずっと辛いことなのではないか、と。

    エッセイを読むと、何故だか筆者が近しい人のように思えてしまう…
    鷺沢さんの小説も読んでみようと思います。

  • 2010年1月20日購入。

  • 3年くらい前に読んだ本だけれど、まだ登録してなかった。
    あちこちから集めてきた文章のようで、内容はさまざま。でも旅の話がいちばん多いかな。巻末には負け犬対談も(笑)。文章は軽快で読みやすく、それでいて「ああ、そうなんだ。」と静かに納得したり同感できたりする。
    いちばん気持ちに響いたのは「ケロヨン人形」のくだり。ちょうどいろいろなことを「あきらめ」なくてはならず、つらい時期だったので、「あきらめないことが持てはやされるけれど、実はあきらめるほうがよっぽどつらいし難しい」旨を語っているこの章には、新しい気づきをもらった。

  • ただ、この人がすきだ。
    今、ここにいないことが、もうこの人の文章を読めないことが
    ただただ残念だ。


    私もあなたに贈りたい、ありがとうと。

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著者プロフィール

鷺沢萠(1968.6.20-2004.4.11)
作家。上智大学外国語学部ロシア語科中退。1987年、「川べりの道」で文學界新人賞を当時最年少で受賞。92年「駆ける少年」で泉鏡花賞を受賞。他の著書に『少年たちの終わらない夜』『葉桜の日』『大統領のクリスマス・ツリー』『君はこの国を好きか』『過ぐる川、烟る橋』『さいはての二人』『ウェルカム・ホーム!』など。

「2018年 『帰れぬ人びと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

鷺沢萠の作品

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