ブルース (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店
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本棚登録 : 550
感想 : 59
  • Amazon.co.jp ・本 (566ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041898048

作品紹介・あらすじ

巨大タンカーの中で、ギタリスト村上の友人、崔は死んだ。崔を死に至らしめたのは監視役の徳山のいたぶりだった。それは、同性愛者の徳山の崔への嫉妬であり、村上への愛の形だった。濃密で過剰な物語。

感想・レビュー・書評

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  • タンカーのスラッジ清掃を請け負う村上は、船内で仲良くなった崔を、ボスである徳山に殺される。それは面白半分や恨みではなく、村上をめぐる嫉妬からであった。横浜に戻り、ドヤ街からふとしたきっかけで、ライブバーMOJOで実力はシンガー綾と出会うが、綾もまた徳山の可愛がる1人であった。

    花村萬月だねえ。ボリュームがあり、畳み掛ける知識とバイオレンスを覚悟していたが、予想通り最初から最後まで、花村萬月だった。しかし、読みやすい。

    ヤクザで下のものに恐れられ、嫌われているが、容赦なく暴力を振るい、仕事を与える徳山という存在が、敵になったり味方になったりと揺れ動くさまは非常に面白い。主人公は村上であり、準主人公は綾なのだが、結局徳山の手の中にいるのだ。徳山は神であり、環境であろう。

    暴力シーンは、のっけから日本刀で指を落とされる作業員、スラッジに叩き込まれ、看板で頭を割られる。いつもの花村萬月よりは、ペースが緩やかなので、苦手な人でも割と大丈夫なんじゃないかと思う。

    それよりは、後半に進むにつれて、章のタイトルで何が起こるかがわかってしまい、そうだよね、そうなっちゃうよねと思いこんで読んでしまう。読むのが辛いが読ませる文章である。

    他の作品よりも、ちょっとマイルドに感じるのは、初期の作品ということもあろうかと思う。だからといって完成度は全く問題なく、初めて花村萬月を読むひとにもおすすめできる作品だ。

  •  ブルースを聞くと、晴れた空の下で何もない大地にいる気分になる。それは気持ちの良い陽気なイメージだが、ブルースの根底に流れる青色は、大空の青さではなくて、蒼穹に似た黒さを感じる。本書で見える色も、爽快感のある青ではなくて、夜の海の重油のようなほとんど黒い青だ。
     村上と綾と徳山の三角関係が描かれるが、ストーリーは素直な話だ。登場人物の強い想いが物語の色を作っている。
     綾と徳山は一途に村上を想っている。徳山はそれがいき過ぎて、村上の周りの人物を殺すことで、村上自身を手に入れる間接的な関係を持ちたいのかもしれない。
     一番複雑で、少年のような青さを見せるのは村上だ。初期の衝動を忘れられずに酒に溺れて、自分に似た人物を眩しそうに見る。徳山が自分に向ける想いを理解していても、強がって無視している。崔やサチオを殺した徳山に怒りを向けて、徳山を殺そうとするが、ここ一番でビビって失敗する。徳山に殺される事も出来ずに、自分で殺す事も出来ずに、徳山は他のアンコに海に投げられる。村上の悲しみは消えずに、綾の喪失感も消えることはないだろう。ブルースに囚われた人は、そこから逃れることが出来ないのか。 
     私は、村上の失敗を、重要なところでの失敗を笑う事は出来ないし、徳山の死に方も、綾の喪失感も、全てが現実だった。条件や場所が違えど、あり得る現実を強く書いている小説だ。

  • テクニックは関係なく伝えたい衝動があるならそれがブルース。

    格好良すぎる。
    猥雑でめちゃくちゃな展開だけど
    すらすらと一気にのめり込んで読んでしまいました。

  • これは、魂の奥底をくすぐるような秀作(すごい表現)。一気読み。
    これでまた、花村萬月という作家が解らなくなった。というよりも一層のファンになってしまったとでも言おうか。
    エログロがないのもいい。何よりも、タイトルの通りの、殺風景な街角からブルースが流れてくるようなイメージと、巨大タンカーの船底から響くエンジン音と、荒れ狂う海の咆哮を感じる事ができるのだ。そして、村上と徳山のお互い惹かれつつも、距離をおいていく絆、最後のシーンでは涙、涙だった。
    久しぶりに感動本に巡り会えたような気がする。草葉の虫の声にも、じっと耳を傾けることができた、いい秋の夜長だった。

  • 読み終えて何だかすごい世界に連れて行かれてたような感覚。危なく切なく悲しい物語。とにかく徳山のキャラが強烈だよね。笑 また男なら村上の欲望を体と心で受け止める綾は魅力的に感じるんじゃないかな。これを読んでタンカーの仕事ってどんなか少し知りたくなった。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    南シナ海の烈風。眼下で砕ける三角波。激しい時化に呻く25万トンの巨大タンカーの中で、村上の友人、崔は死んだ。仕事中の事故とはいえ、崔を死に至らしめた原因は、日本刀を片手に彼らを監督する徳山の執拗ないたぶりにあった。徳山は同性愛者であった。そして村上を愛していた。村上と親しかった崔の死こそ徳山の嫉妬であり、彼独自の愛の形であった―。横浜・寿町を舞台に、錆び付いたギタリスト村上とエキセントリックな歌姫綾、そしてホモのヤクザ徳山が奏でる哀しい旋律。芥川賞作家が描く、濃密で過剰な物語。

  • 読んで損はなし。

  • ブルースを読んだ。花村萬月さんは、シカゴでのことを行って書いたのかな?同じ街に住んでるが、会わない。今度知り合いのブルースマンに聴いてみようと思う。ブルースの面白みは、そういうところなのか?と疑問に持つことがある。シカゴのブルースフェスはタダで見れるという。指でリズムを取る、大物ブルースマンが普通にいたりするらしい。一度行ってみたい。
    今年はジェイムズコットンが亡くなった。花村萬月さんは、コットンの話、してるかな?

  • BLUESをよく調べたな〜

  • まさかこの、
    暴力と性欲と、血と垢と愛憎と、まぁとにかく色んなものにまみれた小説を再読する日が来るとは思ってもみませんでした。

    でもこれぞ正に“名は体を表す”な小説。
    ブルースという音楽を物語で記すとしたら、これ以上にその実体を捉えたものはないんじゃないかと。そんな気もします。
    ドぎつい描写も、そりゃ必要な訳です。
    ブルースは決して陽気で穏便な音楽ではないのです。

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著者プロフィール

1955年東京都生まれ。1989年『ゴッド・ブレイス物語』で第2回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。1998年『皆月』で第19回吉川英治文学新人賞、同年「王国記」シリーズの序にあたる「ゲルマニウムの夜」で第119回芥川龍之介賞、2017年『日蝕えつきる』で第30回柴田錬三郎賞を受賞。その他の著書に『ブルース』『笑う山崎』『二進法の犬』「百万遍」シリーズ、「私の庭」シリーズ、『浄夜』『ワルツ』『裂』『弾正星』『信長私記』『太閤私記』『花折』などがある。

「2020年 『帝国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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