天保悪党伝 新装版 (角川文庫 ふ 12-1)
- 角川書店(角川グループパブリッシング) (2011年5月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041905036
感想・レビュー・書評
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松林伯圓創作の講談「天保六花撰」がもとになる。
「蚊喰鳥」(天保六花撰ノ内・直侍)
蚊喰鳥とは蝙蝠のことだそうです。御家人である直次郎、勤めを放り出し悪い遊びに耽る。自ら武家でも町人でもなく、またそのどっちでもあって、昼寝て夜町に出て暮らす蚊喰鳥かと思う。
惚れた花魁三千歳を足抜きさせながらも、大名相手の大きな商売をする森田屋清兵衛に日限を切って妾に差し出しまだ自分の物に仕切れない切なさが辛い。
「闇のつぶて」(天保六花撰ノ内・金子市)
なんとこの話にも三千歳と森田屋清兵衛が出現する。
剣術道場の道場主でありながら花魁三千歳に入れ上げて食い詰め、辻斬りまで働く金子市之丞は昔馴染みの丑松の妹で女郎屋に売られたお玉を救い出すが。
「赤い狐」(天保六花撰ノ内・森田屋)
p119
また江戸の町にに夏の終わりの、少し荒びた感じの暑熱が残っていたころからである。
森田屋清兵衛の顔が明らかになってくる。
鷹狩りでのほんの些細な不手際の仕置きで父親を殺害され、それがもとで母親も病死。
藩を藩主を仇と思い生きてきた男の復讐の幕が上がる。
「泣き虫小僧」(天保六花撰ノ内・くらやみの丑松)
暗闇の丑松。
心惹かれる奉公先の料亭の女将のために命懸けで仇を打つ。
男の純情。
「三千歳たそがれ」(天保六花撰ノ内・三千歳)
美人で愛嬌もあり高飛車な所のない花魁、三千歳。
そんな花も歳は取り、贔屓にしてくれていた客も離れゆくとこれからの行く末に心が閉ざされていく。
心根が優しいだけに惚れた客には尽くしてしまう。客もその心根を知りながら各々の事情を抱えて離れていかざるを得なくなる。
客と花魁の関係を超えた時から始まる悲しい定め。
「悪党の秋」(天保六花撰ノ内・河内山宗俊)
さてどん尻に控えていた河内山宗俊の出番。
水戸藩相手に脅しをかける。
すごいですよね。
とは言え、やはり大名には敵わなかったのだろうか?
水戸藩主徳川斉修にしてみればオイタをした小僧っ子のようなものなのかもしれず、二百両を脅し取ったと言うものの宗俊一体その後はどうなるのか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
小悪党たちが主人公の連作短編。
シリアスなようでシリアスでないような、不思議な作品群で、スラスラ読める。
達者な筆遣いというしかない。 -
『天保六花撰』を元にした連作6編。
個人的に「赤い狐」「泣き虫小僧」の2作が印象的でした。どちらも悲しく、重い背景の話なのですが、味わいのある読後感に仕上げてあるのが、流石だと思いました。 -
悪党たちの、全く胸がすかない生き様が面白い
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悪人がんばれ