海のある奈良に死す (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店
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本棚登録 : 2827
感想 : 217
  • Amazon.co.jp ・本 (402ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041913024

作品紹介・あらすじ

半年がかりで書き上げた長編が、やっと見本になった!推理作家・有栖川有栖は、この一瞬を味わう為にわざわざ大阪から東京へやってきたのだ。珀友社の会議室で見本を手に喜びに浸っていると、同業者の赤星学が大きなバックを肩に現れた。久しぶりの再会で雑談に花を咲かせた後、赤星は会議室を後にした。「行ってくる。『海のある奈良』へ」と言い残して…。翌日、福井の古都・小浜で赤星が死体で発見された。赤星と最後に話した関係者として、有栖は友人・火村英生と共に調査を開始するが-!?複雑に絡まった糸を、大胆にロジカルに解きほぐす本格推理。

感想・レビュー・書評

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  • 有栖川さんのミステリの魅力は、アリス・火村コンビの掛け合いやロジックはもとより、時折不意に顔を見せる、有栖川さんの知的な面であったり、文学的な雰囲気もあるような気がします。この『海のある奈良に死す』は、そんな有栖川さんの側面が発揮された作品のようにも思います。

    「行ってくる。海のある奈良へ」そう言い残し取材旅行に出かけた、アリスと同業の作家、赤星。彼が死体で見つかったのは、福井県の小浜。アリスは火村と共に調査を開始するも……

    今回は旅情ミステリの側面も強かったかなあ。赤星が次作に取りかかる予定だった『人魚の牙』と「海のある奈良」という言葉の謎を追って、アリスたちは小浜に行くのですが、この辺の知識量がなかなかのもの。
    小浜の歴史や寺社、様々な伝説や地域への言及と、アリスのガイドっぷりは、火村も思わずうなるほど。この辺の二人のやり取りも、ファンにはたまらないのではないかなあ。

    赤星の目的地はどこだったのか。この謎に迫る過程が「そこから迫るのか」と思わされるもので面白かった。この辺は鉄道が大好きな有栖川さんの知識もあるのかな。さらにはアリスの仕事面での相棒、編集の片桐も活躍を見せるのも面白い。

    事件の容疑者の一人として出てくるのが、映像会社の女性社長である穴吹。年齢は40代半ばらしいのですが、アリス曰く20代にしか見えないそう。彼女と作中に出てくる人魚との伝説の絡め方も印象的。
    下手すると味気なくなってしまいがちな、本格ミステリの人間関係部分ですが、ここまで伝説や伝承の部分をしっかりと描いているので、不思議な余情が生まれます。

    そして終章のアリスの独白も、有栖川さんらしいセンチメンタルさがあります。赤星が書くはずだった小説をめぐる旅が、事件解決につながる、その思いをアリスはどこかセンチに、そしてロマンをのせて言葉にします。
    このスッとでてくる文章の言葉選びが、良い意味で本格ミステリぽくなくて、有栖川さんやっぱりいいなあ、となるのです。

    事件のトリックの一部分に関しては、どうしても時代を感じる部分が出てきてしまうのですが、旅情ミステリの面であるとか、アリスのセンチな部分であるとかは、まだまだ当分通用するのではないでしょうか。

    余談ですが、作家アリスの初期作だからか、シリーズではちょくちょく出てくる登場人物が、この作品ではがっつり容疑者の一人だったのが、ちょっと可笑しかった。たぶんこれが初登場作品なのかな。

    なので「いやいや、あんたはちゃうやろ」と心の中でツッコみながら読んでいました(笑)でも、こうやって読んでると、あのキャラはやっぱり容疑者メンバーの中でも濃いなあ。そりゃシリーズでもちょくちょくだしたくなるよなあ。

  • ビデオテープという懐かしい単語が出てきて年代を感じたけれども、充分楽しめた!

    今回はアリスの同業者が殺されたということで、黙ってられずに首を突っ込んでいく。
    タイトルからして土地の蘊蓄があって色々な伝承が知れた。
    だけど海のある奈良、か…
    初っ端からこっそりとトリックを仕込まれていて、アリスたちと一緒に右往左往した。
    まさかこんな真相だったとは…
    また、彼らの関係にも衝撃だった。
    最後は何となく物悲しい余韻がある。

  • 作家アリスシリーズ。
    旅情ミステリー。
    2時間ドラマみたいな内容だった。
    技術より頭を使ったトリック。
    犯人の手の平で踊らされた被害者。
    殺害現場は?
    海のある奈良とは?
    がテーマかな。
    ラストはなんかパターン化してきたな。

  • 火村英生と作家・有栖川有栖のシリーズ。
    久しぶりに本格推理物を読んだ。
    フロッピーディスクに原稿を保存したり、レンタルビデオがダビングできたり(コピーガードが入る前は普通にできました)、懐かしさを感じる部分もあるが、作品の面白さは少しも損なわれていない。

    『海のある奈良に行ってくる』と、取材旅行に出かけた、作家仲間・赤星学が小浜で遺体で発見された。
    確かに小浜市は歴史的遺産の多さから「海のある奈良」と呼ばれるが、東京を出た赤星が小浜で仏になる間の足取りが全く掴めない!

    だんだんと明らかになってくる情報を登場人物たちと一緒に推理し、容疑者たちを吟味する、楽しいひと時でした。

    ーーーーーーーーーーーーーーー
    令和元年11月20日発行の、32版
    図書館の蔵書の有栖川作品の文庫がみんな汚されていたり折られていたりした(同じ人間の仕業と思われる)のを新しく入れ換えたようです。
    本はきれいに読みたいですね。
    特に、公共の物は。

  • 火村とアリスの掛け合い、小浜の観光など、楽しめはするのだが、少し中弛みしてしまっている印象。

    ミステリーとしてもトリックは小粒。
    犯人を特定するための手がかりは、確かにフェアではあるものの、『ダリの繭』と特定の仕方がかなり似ている。まぁそれでも気づかなかっただろ、って言われればそれまでなんだが...

    といっても、小粒なトリック、少しありきたりなストーリーながらも「海のある奈良」という謎を絡めるなどしてこのレベルまで持っていく、というのはやはりプロの作家だなぁと感じる。
    それにしても有栖川さんの文章は読んでいてどこか心地良いな...

  • 地名がなかなか覚えられなかった。準不動に読んでいるけど、相変わらず面白かった。合間合間のクスっと笑わせてくらる二人の掛け合いのタイミングば抜群。最後まで、えー?!っていう推理で、楽しめた。

  • タイトルが印象的な作家シリーズ長編。
    あとがきで有栖川先生がおっしゃっているとおり移動の多い作品だが、その地理描写の多さと歴史蘊蓄に中弛みしてしまった。
    二回目の殺人のトリックと『海のある奈良』の真相、いつもは魅せてくれる犯人の動機絡みなどのオチがいまいちだったので、評価は低め。
    しかし、本作を読みながら「携帯のない頃は大変だったんだなー」と、しみじみ思った。

  • 久々の有栖川さん、火村英生シリーズでした。安定の面白さで安心して読めました。各地に残る伝説などは、色々と異なっていることもあって、違いを調べるだけでもミステリーになりそうです。

  • この作品を読むまでに二作、同じシリーズの作品を読みましたが、一番読みながらわくわくしていた作品です。
    土地の風習とか伝説とか、位置とかがすごく凝らされた作品だったように思います。何度も見直して頭の中で想像しながら読んでいましたが、自分が全部把握できたかはちょっと自信がないです。
    やっぱり自分の目でみたことないところを想像するのはなかなか至難の業だなあと再確認。

    火村自身の生活環境がしっかり描写された回でもあったように感じます。
    前回の『ダリの繭』ではアリス自身の過去の出来事(トラウマ)が、そして最初の『46番目の密室』でもちらほら火村の抱える「何か」に関して、薄々何かを感じ取ってはいるものの触れてこなかったアリスの話の深掘りがきたな、と気合を入れて読んだ記憶があります。
    夜中に飛び起きるといった経験、自分にも身に覚えがあって、直前に自分の中で最も恐怖するものの想像をしてしまう感じなんですよ。想像できない恐怖の限界に達した時に飛び起きるんですね。
    火村もそんな恐怖する「何か」があるのか、それが明かされる時はくるのか?とこれから先のシリーズ作品が気になってしまうところ。

    今回はいろんなところに行ったり来たりする上に色んな人間関係が絡みに絡んだミステリーだったのですが、今回はアリスの編集者の片桐さんだったり、今後も出てきそうだなって感じの登場人物がちょこちょこ登場したから更に面白かったのかもなあ、と感じます。
    結末も絡みに絡んだ末の悲しい結末になっていてどこか哀愁を感じてしまいます。

  • 火村とアリスの関係性やらは楽しめるけど事件の内容的には「ふーん」という感じ。
    大阪人なので西が舞台で色々知らないことが書かれていたのは興味深かった。あの人魚も検索した(笑)

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著者プロフィール

1959年大阪生まれ。同志社大学法学部卒業。89年「月光ゲーム」でデビュー。「マレー鉄道の謎」で日本推理作家協会賞を受賞。「本格ミステリ作家クラブ」初代会長。著書に「暗い宿」「ジュリエットの悲鳴」「朱色の研究」「絶叫城殺人事件」など多数。

「2022年 『濱地健三郎の呪える事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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