猫楠 南方熊楠の生涯 (角川文庫ソフィア)

著者 :
  • 角川書店 (1996年10月22日発売)
3.91
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本棚登録 : 707
レビュー : 89
  • Amazon.co.jp ・マンガ (427ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041929070

作品紹介・あらすじ

博物学・民俗学・語学・性愛学・粘菌学・エコロジー……広範囲な才能で世界を驚愕させた南方熊楠。そんな日本史上最もバイタリティーに富んだ大怪人の生きざまを天才・水木しげるが描く。

感想・レビュー・書評

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  • 本書の主人公、粘菌の研究でイグノーベル賞を受賞していたらしい事実を知ったのは2年前。それも英語のリーディングの勉強をしてる最中でした。そこで南方熊楠という人物も知りました。
    彼について関心がなくならず、Wikipediaなんかを眺めてるとどこか共感を抱いていました。
    本書は、あまり業績については触れず(くわしくは巻末の参考文献にあたってネという感じ)、人間熊楠の生涯を描いています。
    奇抜な、あまりに飛び抜けた幼少期も、テスト対策に励む同級生をバカにしてとうとう退学した東大時代も、単身渡米しアメリカ大学に入学するも周りの学生の意欲のなさにげんなりして退学したことも書かれていません。
    ストーリーは帰国後からのスタートとなります。
    ところで、水木しげる先生はその前にも神秘家列伝シリーズで熊楠を扱っていたのでさぞかしお気に入りだったのかもしれません。
    なにせ熊楠は超人的な脳力を持つのに、助平で、「少年の心」を持っていて、癇癪持ちでキレるとゲロを吐きつけて、裏表もなく、定職にはつかず自分の楽しみのために没頭する、明らかに人間社会から逸脱した人物でしたから、ひときわ目を引いたのでしょう。
    熊楠の生涯を追っていくと、逸脱したようでいて人間くささを感じさせます(ちょっとヘンですよね)。
    1匹の猫が熊楠の人生を見つめる仕掛けのおかげで、奇怪な人物に見える熊楠が、読者に近づいてくれたように思えました。

    • 5552さん
      夜型読書人さん、こんばんは☆
      いつも私のつたないレビューを読んでくださってありがとうございます。

      南方熊楠さん、わたしも他のかたのレ...
      夜型読書人さん、こんばんは☆
      いつも私のつたないレビューを読んでくださってありがとうございます。

      南方熊楠さん、わたしも他のかたのレビューで存在を知って興味を持ち、著書を『読みたい』に登録してるんですよ。『人魚の話』という本です。
      彼の人となりは知らなかったのですが、夜型読書人さんのこの本のレビューを拝見させていただくと、どうやらかなり変人さんなご様子。
      いいですねえ、変人、大好きです(^-^)
      吐瀉物吐きかけられるのは嫌ですが...。
      描いてらっしゃるのが水木しげるさんというのがまた魅力的な組み合わせ。
      読んでみたいです。

      2018/07/19
    • 夜型さん
      5552さん、いらっしゃいませ。
      コメントありがとうございます。
      ぼくも熊楠の著作気になります。
      ぜひ、漫画を読まれてください。人物像...
      5552さん、いらっしゃいませ。
      コメントありがとうございます。
      ぼくも熊楠の著作気になります。
      ぜひ、漫画を読まれてください。人物像がありありと浮かぶようになるかもしれません。

      5552さんのレビューは、共感が中心に座っていて、無駄な言葉がなくてわかりやすいです。
      ぼくには書けないすごいレビューだと思って読ませていただいてます。
      2018/07/20
  • 南方熊楠は、慶応3年、和歌山に生まれた博物学者である。
    博物学者とひと言で言うが、その興味は広く、民俗学や生物学、人類学、生態学とさまざまなものに渡った。記憶力は驚異的で、よそで100冊の本を読んできて、家に帰ってから書き起こすほどであったという。語学力も抜きん出ており、18ヶ国語を操った。英学術誌、Natureへの論文掲載は51本あり、単著では最多という。
    これだけであれば、天才・秀才というところだが、熊楠の尋常ならざるところは、その学識だけではなかった。癇癪持ちで著しい奇行はおよそ凡人のものではなかった。一例を挙げれば自由自在に嘔吐ができ、気に入らない相手には吐瀉物を吹きかけることができたという。猥談も大好きで始終一物をぶら下げて歩くが、一方で意中の相手を目の前にするともじもじしてしまう。ある種、無邪気と言ってよく、子供がそのまま大人になったようであった。浮世離れしているというか、出世や金銭には興味がなく、自分の感覚に素直な人物であったのだろう。

    そんな「怪人」を、妖怪を描かせたら右に出る者がいない水木しげるが描くのだから、濃くならないはずがない。
    水木は怪人・熊楠を描く狂言回しとして、1匹の猫を配す。熊楠は実際、猫好きであったことが知られており、どんなに困窮しても、手元には常に猫がいたという。食べ物は自分がしゃぶった残りかすを猫に与え、布団代わりに猫と寝たというから恐れ入ったものである。
    物語は熊楠がアメリカ・イギリスへの外遊後に和歌山に戻ったところから始まる。熊楠は野良猫を飼い、これを「猫楠」と名付ける。実は猫語も操れる熊楠は、それまでの体験を語って聞かせたり、研究に伴ったりする。猫はこの後、熊楠の半生をじっくり見ていくことになる。

    熊楠が熱心に取り組んだ粘菌の話もあれば、自身の結婚にまつわる逸話もある。遠野物語のように、妖しのものとのエピソードもある。大小さまざまな事件に熊楠が奮闘する様を、猫楠と仲間の猫たちがゆるりと見守る。猫であるだけに、必要以上に熱くなったり立ち入ったりしない。暑苦しくはないが、さりとて無関心でもない、「猫目線」の距離感が、熊楠ほどの大変人を扱うには、意外にちょうどよいのかもしれない。

    全般にこの人は、常人とは違う透徹した目で周囲を見ていたように思われる。同じ世界にいても、他の人と見えるものがまったく違う。それはさながら、ユクスキュルの『生物から見た世界』で、種の違うもの同士がまったく違うものを見ているかのようだ。

    晩年、熊楠は昭和天皇に粘菌に関して進講をする栄誉に浴する。それは大きな喜びであったが、一方で、その数年前には、かわいがってきた長男の発狂というショッキングな事件もあった。
    粘菌だけでなく、植物や菌類の標本も数多く、熊野の自然を愛し、時代に先駆けて森を守る運動に奔走した。
    孫文や柳田国男、ディキンズ(『方丈記』の英訳者)など、多彩な人物との交流もあった。
    よく笑い、よく怒り、よく学んだ、密度の濃い一生。
    熊楠という複雑な巨人を知るには恰好の1冊だろう。

  • 汚い。汚すぎる。ち●こ、ゲロが出まくりである。だから信頼できる。やべぇ奴すぎて、漫画にピッタリだ。猫可愛い。

     読んでて身体がかゆくなりました。



     はっきりいって、南方熊楠が何をやったかについてはよくわからない。それは他の本で読め。

     でも熊楠の人間味がよくわかる。そういうところがいい。彼の人間性に迫るために、猫の視点にしたのだから。猫の動きが愛嬌があっていいなぁ。

     「タクト」の話が、その部分だけが急激にまじめだったな。
     自然の摂理のような意味でタクトという言葉を使っていたが、鶏の卵を例に挙げている。鶏の卵は外敵に割られないように固いが、中から雛が出てこれるだけの固さでもある。絶妙なバランスで硬さがきまっている。これがタクトだという。
     人間もまた、外圧と内圧のはざまでバランスをとっている。世間体を演じる自己統制てきな自分と、内面世界の本能に忠実な自分。
     建前と本音ってやっぱり大事なんね。天衣無縫の熊楠もやっぱり建前はわかっていたんだもなぁ。

     あと、マラにフマキラーを突っ込むところも好き。

  • にゃんにゃんにゃん。明日2/22は猫の日です。猫の視点から描く、南方熊楠の半生とは。

  •  その昔、中一コースの付録、文庫サイズの冊子『知られざる大天才』で熊楠の名を知った。確か「くまくす」とルビが振られていたように思う。
     その後、稲垣足穂『少年愛の美学』や水木しげる短編『快傑くまくす』でさらに親しみを覚え、神坂次郎『縛られた巨人』にも手を伸ばした。
     バートン版『千夜一夜物語』の該博かつ下がかった訳注に接した時は「イギリスの熊楠!」と思ったものだ。
     
     『猫楠』の自由闊達な展開、これぞ八十代にして到達する境地(幽仙境)に外ならず。
     惜しむらくは、後年の昭和天皇が南紀白浜を訪れた際、熊楠を偲んで詠んだ御製が紹介されなかったこと(御製に個人名が詠み込まれることは極めて珍しい)。『猫楠』は『快傑くまくす』との併読が望ましい。

  • 破天荒な天才、南方熊楠の伝記。
    十四か国語を習得した上に、猫語も解したという熊楠を、飼い猫となった「猫楠」の視点から描く。

    奇才ぶり、ひとたび戦うことになれば徹底的な戦いぶり、心を病んだ息子への愛情など、どれをとっても規格外。
    それでも支持者を得て、やっていける。
    私のような凡人には理y解が及ばない。

    興味の赴くままに研究した彼が魅了されていたのが、生と死が混在する命の有様で、それを最も感じさせるのが粘菌だった、ということはよく理解できた。
    死んだ後の世界がそんな結構なところなら、人間はみんな死にたがるはずだ、というのも、虚を突かれた気がする。

    ついでに、猫又踊りが楽しそう。
    ちょっと参加してみたい気がする。

  • 博覧強記の大変態、南方熊楠。その伝説の数々は今更自分の語るところではない。英語、フランス語、ドイツ語はもとよりサンスクリット語に至るまで19の言語を巧みに操り、科学雑誌『ネイチャー』に掲載された論文、記事51編は、未だ世界で最多を誇る。柳田国男をして「日本人の可能性の極限」と言わしめた大天才。無類の酒好き、女好きにして、40歳まで童貞。ついには昭和天皇に進講する際、標本をキャラメルの空き箱に入れて献上したことは、あまりにも有名。なお、そんな南方熊楠に敬愛を表して、さる水木しげるは紫綬褒章受賞の際、その時と同じ燕尾服にシルクハットの出で立ちであったという。

  • 猫だわ熊楠だわ水木しげるだわでもう言葉になりません。

  • 熊楠を水木しげるが描くというだけでわくわくするじゃないですか。怪物と怪物の共演。
    基本的には史実にとても忠実だけれど、水木しげるならではの注目ポイントや人物の描きかたがあり、生々しさが良かった。
    素晴らしい功績と頭脳やその哲学は知っていたが、パワフルで横暴な熊楠、研究に一途な熊楠、家庭での熊楠。いろんな面を感じることができて面白かった。

  • 気にはなっていたけど、学者の一側面しか知らなかった南方熊楠という人は、こんなに痛快な人だったとは。それを水木しげるが描いて、猫が解説してる、なんて凄い漫画。終始、変態(ほめ言葉)しか出てこなかった。とても深く面白く人間を感じる内容でした。

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著者プロフィール

水木しげる(みずき しげる)
1922年3月8日 - 2015年11月30日
大阪で生まれ、鳥取県境港市で育つ。従軍経験で左腕を失いながらも生還。終戦後より紙芝居、貸本漫画などを執筆。1964年に『ガロ』にて商業誌デビュー。2007年、『のんのんばあとオレ』によりフランス・アングレーム国際漫画祭で日本人初の最優秀作品賞を受賞。2010年、文化功労者に選出される。代表作に『ゲゲゲの鬼太郎』『河童の三平』『悪魔くん』『劇画ヒットラー』『総員玉砕せよ!』『のんのんばあとオレ』『日本妖怪大全』など。

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