猫楠―南方熊楠の生涯 (角川文庫ソフィア)

著者 :
  • 角川書店 (1996年10月1日発売)
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本棚登録 : 586
レビュー : 78
  • Amazon.co.jp ・マンガ (427ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041929070

感想・レビュー・書評

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  • 本書の主人公、南方熊楠が粘菌の研究でイグノーベル賞を受賞していたらしい事実を知ったのは2年前。それも英語のリーディングの勉強をしてる最中でした。そこで南方熊楠という人物も知りました。
    彼について関心がなくならず、Wikipediaなんかを眺めてるとどこか共感を抱いていました。
    本書は、あまり業績については触れず(くわしくは巻末の参考文献にあたってネという感じ)、人間熊楠の生涯を描いています。
    奇抜な、あまりに飛び抜けた幼少期も、テスト対策に励む同級生をバカにしてとうとう退学した東大時代も、単身渡米しアメリカ大学に入学するも周りの学生の意欲のなさにげんなりして退学したことも書かれていません。
    ストーリーは帰国後からのスタートとなります。
    ところで、水木しげる先生はその前にも神秘家列伝シリーズで熊楠を扱っていたのでさぞかしお気に入りだったのかもしれません。
    なにせ熊楠は超人的な脳力を持つのに、助平で、「少年の心」を持っていて、癇癪持ちでキレるとゲロを吐きつけて、裏表もなく、定職にはつかず自分の楽しみのために没頭する、明らかに人間社会から逸脱した人物でしたから、ひときわ目を引いたのでしょう。
    熊楠の生涯を追っていくと、逸脱したようでいて人間くささを感じさせます(ちょっとヘンですよね)。
    1匹の猫が熊楠の人生を見つめる仕掛けのおかげで、奇怪な人物に見える熊楠が、読者に近づいてくれたように思えました。

    • 5552さん
      夜型読書人さん、こんばんは☆
      いつも私のつたないレビューを読んでくださってありがとうございます。

      南方熊楠さん、わたしも他のかたのレ...
      夜型読書人さん、こんばんは☆
      いつも私のつたないレビューを読んでくださってありがとうございます。

      南方熊楠さん、わたしも他のかたのレビューで存在を知って興味を持ち、著書を『読みたい』に登録してるんですよ。『人魚の話』という本です。
      彼の人となりは知らなかったのですが、夜型読書人さんのこの本のレビューを拝見させていただくと、どうやらかなり変人さんなご様子。
      いいですねえ、変人、大好きです(^-^)
      吐瀉物吐きかけられるのは嫌ですが...。
      描いてらっしゃるのが水木しげるさんというのがまた魅力的な組み合わせ。
      読んでみたいです。

      2018/07/19
    • 夜型読書人さん
      5552さん、いらっしゃいませ。
      コメントありがとうございます。
      ぼくも熊楠の著作気になります。
      ぜひ、漫画を読まれてください。人物像...
      5552さん、いらっしゃいませ。
      コメントありがとうございます。
      ぼくも熊楠の著作気になります。
      ぜひ、漫画を読まれてください。人物像がありありと浮かぶようになるかもしれません。

      5552さんのレビューは、共感が中心に座っていて、無駄な言葉がなくてわかりやすいです。
      ぼくには書けないすごいレビューだと思って読ませていただいてます。
      2018/07/20
  • 南方熊楠は、慶応3年、和歌山に生まれた博物学者である。
    博物学者とひと言で言うが、その興味は広く、民俗学や生物学、人類学、生態学とさまざまなものに渡った。記憶力は驚異的で、よそで100冊の本を読んできて、家に帰ってから書き起こすほどであったという。語学力も抜きん出ており、18ヶ国語を操った。英学術誌、Natureへの論文掲載は51本あり、単著では最多という。
    これだけであれば、天才・秀才というところだが、熊楠の尋常ならざるところは、その学識だけではなかった。癇癪持ちで著しい奇行はおよそ凡人のものではなかった。一例を挙げれば自由自在に嘔吐ができ、気に入らない相手には吐瀉物を吹きかけることができたという。猥談も大好きで始終一物をぶら下げて歩くが、一方で意中の相手を目の前にするともじもじしてしまう。ある種、無邪気と言ってよく、子供がそのまま大人になったようであった。浮世離れしているというか、出世や金銭には興味がなく、自分の感覚に素直な人物であったのだろう。

    そんな「怪人」を、妖怪を描かせたら右に出る者がいない水木しげるが描くのだから、濃くならないはずがない。
    水木は怪人・熊楠を描く狂言回しとして、1匹の猫を配す。熊楠は実際、猫好きであったことが知られており、どんなに困窮しても、手元には常に猫がいたという。食べ物は自分がしゃぶった残りかすを猫に与え、布団代わりに猫と寝たというから恐れ入ったものである。
    物語は熊楠がアメリカ・イギリスへの外遊後に和歌山に戻ったところから始まる。熊楠は野良猫を飼い、これを「猫楠」と名付ける。実は猫語も操れる熊楠は、それまでの体験を語って聞かせたり、研究に伴ったりする。猫はこの後、熊楠の半生をじっくり見ていくことになる。

    熊楠が熱心に取り組んだ粘菌の話もあれば、自身の結婚にまつわる逸話もある。遠野物語のように、妖しのものとのエピソードもある。大小さまざまな事件に熊楠が奮闘する様を、猫楠と仲間の猫たちがゆるりと見守る。猫であるだけに、必要以上に熱くなったり立ち入ったりしない。暑苦しくはないが、さりとて無関心でもない、「猫目線」の距離感が、熊楠ほどの大変人を扱うには、意外にちょうどよいのかもしれない。

    全般にこの人は、常人とは違う透徹した目で周囲を見ていたように思われる。同じ世界にいても、他の人と見えるものがまったく違う。それはさながら、ユクスキュルの『生物から見た世界』で、種の違うもの同士がまったく違うものを見ているかのようだ。

    晩年、熊楠は昭和天皇に粘菌に関して進講をする栄誉に浴する。それは大きな喜びであったが、一方で、その数年前には、かわいがってきた長男の発狂というショッキングな事件もあった。
    粘菌だけでなく、植物や菌類の標本も数多く、熊野の自然を愛し、時代に先駆けて森を守る運動に奔走した。
    孫文や柳田国男、ディキンズ(『方丈記』の英訳者)など、多彩な人物との交流もあった。
    よく笑い、よく怒り、よく学んだ、密度の濃い一生。
    熊楠という複雑な巨人を知るには恰好の1冊だろう。

  • 汚い。汚すぎる。ち●こ、ゲロが出まくりである。だから信頼できる。やべぇ奴すぎて、漫画にピッタリだ。猫可愛い。

     読んでて身体がかゆくなりました。



     はっきりいって、南方熊楠が何をやったかについてはよくわからない。それは他の本で読め。

     でも熊楠の人間味がよくわかる。そういうところがいい。彼の人間性に迫るために、猫の視点にしたのだから。猫の動きが愛嬌があっていいなぁ。

     「タクト」の話が、その部分だけが急激にまじめだったな。
     自然の摂理のような意味でタクトという言葉を使っていたが、鶏の卵を例に挙げている。鶏の卵は外敵に割られないように固いが、中から雛が出てこれるだけの固さでもある。絶妙なバランスで硬さがきまっている。これがタクトだという。
     人間もまた、外圧と内圧のはざまでバランスをとっている。世間体を演じる自己統制てきな自分と、内面世界の本能に忠実な自分。
     建前と本音ってやっぱり大事なんね。天衣無縫の熊楠もやっぱり建前はわかっていたんだもなぁ。

     あと、マラにフマキラーを突っ込むところも好き。

  • 猫だわ熊楠だわ水木しげるだわでもう言葉になりません。

  • 史実に沿っているとのことですが、いまいち偉大さが伝わってこない。。もっと粘菌の話を。

  • 博覧強記の大変態、南方熊楠。その伝説の数々は今更自分の語るところではない。英語、フランス語、ドイツ語はもとよりサンスクリット語に至るまで19の言語を巧みに操り、科学雑誌『ネイチャー』に掲載された論文、記事51編は、未だ世界で最多を誇る。柳田国男をして「日本人の可能性の極限」と言わしめた大天才。無類の酒好き、女好きにして、40歳まで童貞。ついには昭和天皇に進講する際、標本をキャラメルの空き箱に入れて献上したことは、あまりにも有名。なお、そんな南方熊楠に敬愛を表して、さる水木しげるは紫綬褒章受賞の際、その時と同じ燕尾服にシルクハットの出で立ちであったという。

  • グループのメンバーの壮行会で、本を贈ろうと思って代官山の蔦谷書店に行った。そのときに見つけた本。実は、贈る本の一冊だったのだが、自分もほしくなって買ってしまった。

    南方熊楠の生涯を水木しげるがマンガで描くという、なんともいえぬ世界観になっている。熊楠の生涯が良くわかるし、僕はお勧めしたい。熊楠は猫が好きだったらしい。このマンガの中にも出てくるが、猫が好きなので猫楠ということらしい。

    南方熊楠は和歌山の博物学の巨匠。だが、その範囲は広すぎて、どの本を読んだらいいのか分からなかったりする。ともすれば、奇行にフォーカスしすぎだったりもするけど、伝記として読めると思う。写真で見る熊楠は、意外とハンサムだ。でも、裸で過ごしたり、南紀の山奥に入り精霊を感じたり、その行動はとにかく破天荒。だが、今の東大を出て、米国に渡り、そして英国博物館で仕事をこなしながら雑誌ネイチャーに投稿するなど、とにかく、興味と好奇心の塊として何事にも取り組んだ。不思議な人だと思う。

  • 最近はまっている南方熊楠。。こないだ読んだ伝記本は、最後には涙が止まらないほど、その孤独を孤独として書いたドラマチックな本だった。子どもが生まれたなら、南方熊楠といつまでも肩を組んでいられるような子になることを願った。
    でもまあさすが水木しげる先生だこと。熊楠がかわいがった「猫」が見る熊楠は、どうしようもなくて、ひょうきんで、下のことばかり言っていて、学術的名声の反面にみる天才ゆえの孤独というよりは、「本当にどうしようもない人だった」というエピソードばかりの羅列と言うか、ロマンチックに浸りたい熊楠観をがつんと殴られるような気持ちであった。さすが。
    しかし更にすごいのはそれではなくて、この「本当にどうしようもない」奥に見え隠れするしんみりとした孤独がなんとも言えないいい味。というか、この人にしか書けないなあというなんとも人間臭くて、思わず愛してしまう熊楠が見え隠れしている。何を書いても水木しげるだなあとしみじみ感じるというわけです。

  • 猫たちがかわいい。水木先生の描く猫の手(足)大好き

  • 紀伊半島周遊旅行の際、南方熊楠顕彰館を見学した。
    そこで熊楠の生涯を描いた水木しげるのマンガがあることを知る。
    早速ネットで古本を注文。すぐに届いて、一気に読了。
    熊楠の好きだったという猫を狂言回しに使って、熊楠の生涯が上手くまとめてある。
    熊楠の怪人・変人・奇人・妖人ぶりが見事に描かれていて、こうした描写はマンガならではのものと感心する。
    明治という時代の面白さも伝わってくる。
    昭和という時代を懐かしむ人がいるが、私はやはり明治が好き。
    夏目漱石がいて、柳田国男がいて、南方熊楠がいて、そして、私の祖父母も明治の人。
    人間の理想とする原形が、この時代にはあったように感じられる。

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著者プロフィール

本名、武良茂。1922年(大正11年)生まれ。鳥取県西伯郡境町(現・境港市)で育つ。幼い頃から物語をつくる力に優れ、また天才的な画力を発揮。高等小学校在学中に個展を開き、新聞に絶賛される。しかし学業のほうは芳しくなく、一旦は上級学校への進学を断念するが画家になる夢は諦めず、仕事の傍ら塾や独習で画力を磨く。
やがて太平洋戦争の召集により、南方の激戦地に送られマラリヤと爆撃で左腕を失うが、九死に一生を得て帰還する。
戦後は様々な職業を経て、紙芝居作者、貸本漫画家となり、「別冊少年マガジン」に発表した『テレビくん』で講談社児童漫画賞(現・講談社漫画賞少年部門)を受賞。その後『ゲゲゲの鬼太郎』『河童の三平』『悪魔くん』とヒット作を続けて発表、日本を代表する国民的漫画家となる。
近年、夫人との暮らしぶりがNHKの連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」で描かれ、爆発的なブームを巻き起こした。
紫綬褒章、旭日小受章、文化功労者の栄を得て、世界各国の漫画賞も受賞し、漫画史に名を刻む存在となった。
2015年11月30日、逝去。享年93。

「2018年 『ゲゲゲの鬼太郎(5)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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