- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041932032
感想・レビュー・書評
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おっっもしろかった………。田舎の美しくも閉鎖的な雰囲気の描写がとにかく良かった。それに村人たちの、狗神筋の一族への畏れと憎しみが悪意となる様もおぞましくていい。
作品は違うんですが同著の死国って映画の(原作は未読)映像や雰囲気がとてもよかったんだけど、あの映画の田舎の雰囲気がこの本でもまざまざ感じられました。
それに、美希と晃のロマンスがとてもいい。誠一郎は幸せになってくれ…。
おぞましくて悲しく、でもどこか美しい話だった。すごく好き。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
坂東眞砂子による、犬神伝承を題材とした伝記小説。高知の山村で起こる「狗神筋」を巡る恐怖と悲哀を描く。
辛い過去から人生を諦め、唯一のやりがいである和紙漉きで平穏な日々を送っていた美希。ある日、隣村の小学校の教師として赴任してきた晃と出会い、交流を深めていく。惹かれ合う二人。しかし、晃との年齢は、四十路の美希とは20歳以上も離れていた。過去の辛い経験もフラッシュバックし、惑う美希。それと同時に、村では毎晩"悪夢"を見る者が続出し、不穏な空気が漂い始める。そして母・富枝より、坊之宮家の女筋にのみに伝えられる「狗神様」の秘密が明かされる―――。
閉鎖的な村社会、男を虜にする薄幸の佳人である美希、20歳以上も離れた美希と晃の恋、"血の交わり"で甦る「狗神伝承」。ドロドロとした伝記を描くための舞台装置が素晴らしく、作品の雰囲気に呑まれて一気に読了してしまった。
「血と血を交らせて 先祖の姿蘇らん」―――本作の主題となる、「狗神伝承」に関する、坊ノ宮家に伝わる謡の詞なのだが、これは伏線として中盤までには出しておいて、真相が分かるクライマックスで、読者をこれでもかという程に唸らせて欲しかった。それだけが残念でならない。 -
「人間の心とは、なんと変容するものだろうか。」
かつて穏やかだった人々が、狗神騒ぎによって坊之宮家に、恐れと憎しみの目を向けていく…。
たとえ災厄が、狗神筋によって引き起こされたものであったとしても、美希には幸せになってほしかった。 -
高知県山間部の牧歌的な風景と裏腹な忌むべき因習・差別、閉鎖的なムラ社会が醸成するドロドロとした人間関係。
ミステリー的な伏線回収、村を覆う悪夢の真相も含め、好みの作風だった。 -
引き込まれるような表現であっという間に読み終わってしまった。
地方の古い因習や、近親相姦を扱ったディープな話ではあるが、美しい文体によりおどろおどろしさよりも妖しげな魅力を感じる傑作。 -
善光寺も高知も何度か行ってるので情景が思い浮かべること出来た。
美希さんが不幸でかわいそうすぎる。悲しい話だなぁ。
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まあミステリというかホラー。夏だからってこともあって読んだけど、スーパーナチュラル系だから、そこまで肝は冷やされず。相変わらず、そっち系の感度は鈍いです、わたし。やっぱサイコ系ホラーの方が怖いと思うんです、どうしても。ただ本作は、人間の怖さも同時に描き出していて、村八分(ちょっとニュアンス違うけど)の悲劇みたいな部分もあります。と書きながら思ったけど、どっちかというとそっちがメインか(苦笑)。狗神はあくまで味付けで、魔がさした人の怖さが寧ろ中心かも。小野不由美「屍鬼」の圧縮版。そんな印象でした。
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読んでいる時、丁度気分が下がり気味の時だったので美希の気持ちがわかる部分もある気がした。美希の悲しみと苦しみを読んで何度も目が潤んだ。こんな苦労をする人はいるものなのだろうか。昂路の言うとおり晃が狗神に化けたのは錯覚で、生まれる子供も鵺だというのも思い込みだったのかもしれない。何食わぬ顔で読んでいた私は最後の昂路の考えで、確かにそうかもしれないとスッとした。
美希が交わる人がどれも近親相姦なのは、行き過ぎてるような気がして晃まで来ると面白いと思ってた気持ちが消えてしまった。面白いんだけど、もったいない気がして。そして、昂路が坊之宮の墓参りに来た時、あの終わり方は無理矢理感が否めないのだが。