旅涯ての地 (上) (角川文庫 12018)

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  • 角川書店 (2001年6月22日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (416ページ) / ISBN・EAN: 9784041932063

作品紹介・あらすじ

13世紀イタリア。元王朝クビライ・ハンに仕えたマルコ・ポーロ一族が、ベネチアに帰郷したとき、一行の中にチャイナとジパングの血を引く奴隷がいた。名は夏桂。密貿易に失敗した奴隷に身をおとした男だった・・・

感想・レビュー・書評

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  • 13世紀、イタリア。元王朝クビライ・ハンに仕えたマルコ・ポーロ一族がヴェネチアに帰郷したとき、一行の中に宋人(チャイナ)と倭人(ジパング)の血を引く奴隷がいた。名は夏桂(カケイ)。彼が手に入れた一枚のイコン(神を描いた板絵)が、やがてカタリ派と呼ばれる異端信仰の村に大きな波紋を投げかけ、一つの村が、揺るぎないはずの信仰が音を立てて崩壊していくのだった……。

    「傑作」の一言です。
    綿密な心理描写はもちろんのこと、坂東さん独特の「空気を描く」手法が存分に発揮された作品です。
    読むうちに13世紀のイタリアにタイムスリップしてしまったかのような錯覚に何度も襲われました。

    信仰とは何か。
    生き抜くとはどういうことか。
    何度もハッとするような言葉に出会えます。

    ちなみに私の中では、主人公の夏桂=ジェット・リーでした。
    あの寂しげで、いつも何か物言いたそうな雰囲気が…

  • 上下巻820ページ弱の本書は、13世紀の日本、中国、モンゴル、ペルシア、イタリア、そしてアルプスの村落と舞台は移りゆく。日本の古き因習に囚われた業の深い人間とその怪異現象を村や町といった閉鎖空間で物語を紡ぎ出してきたこの作家にしては珍しい作品である。

    13世紀の街並みを匂いすら感じさせるほど緻密に描いた本書はしかし、当初私はなかなかその物語世界に没入できなかった。
    似たような名前が多いのと、外国の街並み・生活風景がなかなかイメージと結びつかなく、特に第1章は正直、字面を追うような感じだった。また夏桂の人物像、特に物事の考え方に共感しがたいものがあったのも一因だったのかもしれない。
    しかし物語が急転する第2章以降はそんな事は気にならなくなり、のめりこむことが出来た。特に第3章からはアルプスの麓の村落での生活という閉鎖空間での話になったのが大きな要因だったように思う。

    特に第1,2章を合わせたヴォリュームで語られる第3章の印象は強烈で、第1章で出て来た主要人物は吹っ飛んでしまった。梗概を書くために紐解いた時にああ、こういう人物もいたなあと思ったくらいだ。実際、坂東氏もここから筆が乗ってきたように思う。

    本書の時系列は第1章→第3章→第2章という構成になっている。
    第2章では<善き人>たちの安住の地<山の彼方>が今や廃墟になり、そこに一人、老人となった夏桂が住んでいる様子が描かれ、つまり事が起こったその後が語られる。そこではかつて異端審問者として<善き人>どもを排除しようとしたヴィットリオが現れ、マルコ・ポーロが逃亡した夏桂たちの追跡行が書簡の形で語られる。
    ここでの結末を読んだ時、私はこの小説が上下巻ではなく、1冊のみだと錯覚してしまった。上巻のみで物語は完結してもいいぐらいだった。しかし下巻で語られる逃亡した夏桂の<善き人>の里<山の彼方>での暮らしぶりと、何故のこの里が退廃するに至ったかが語られるに至って、最後の隠された謎、何故夏桂が老後にこの地に戻ってきたのかが解るのだ。

    この上手さには参った。私の中でここで俄然評価が高まった。しかし、個人的にはここで夏桂が何を待っているかを述べて欲しくはなかった。読者に悟らせる形を取って欲しかった。その方が心に深く残る。これが惜しかった。

    (下巻の感想に続く)

  • 初めて読んだ時、いままでなかったぐらいに衝撃的で
    深く印象に残った。今でも、たまに夢に出てくるほど…

  • 俺、この人のやったこと、それについての考え方、絶対に許せないし、納得できないんだよね。でも、別の作家の本読んだときに、この作品の方が面白いという声を聞いて、気になった。
    一体この人がどんな作品を書くのか?てことも含めて。
    で、読んでみて、、、、、ヤラレタナァ・・・。今年読んだ中では一番かも。。。
    うーん。。。おかしいなぁ・・・・・。途中からは『罪と罰』『赤と黒』なんかと比較したりもしてたけど、ぜんぜんこの作品のが共感できるんだよなぁ。
    なんか悔しいけれど、この作品はかなり
    いい・・・。

  • 小生もベネツィアでゴンドラなぞに乗ってはきたが、確かにベネツィアの運河は臭かった。

  • 私は坂眞砂のホラー小説が大好きだから、歴史ロマン大作ということで、なかなか読むきにならなかったのだが・・・。父を宋人(中国)、母を倭人にもつ主人公・夏桂の数奇な運命の物語。マルコ・ポーロ一族の奴隷になり西の涯てへ。これってミステリ?なんて言わないで〜。人間、そのものがミステリ〜っていうことで・・・。

  • 【本の内容】
    <上>
    13世紀、イタリア。

    元王朝クビライ・ハンに仕えたマルコ・ポーロ一族がヴェネチアに帰郷した時、一行の中に宋人と倭人の血を引く奴隷がいた。

    名は夏桂。

    密貿易に失敗した彼は奴隷に身を堕とし、マルコたちに買い取られたのだった。

    その運命は、偶然手にした一枚のイコンによって大きく変転する。

    イコンは当時、邪教と呼ばれたキリスト教・異端カタリ派の所有するものであり、それはキリストの「聖杯」でもあったのだ。

    そして夏桂は謎の女伝道師マッダレーナに導かれ、信者たちの隠れ住む“山の彼方”へと旅立つが…。

    荘厳な歴史ロマン大作。

    <下>
    “山の彼方”に辿り着いたマッダレーナと夏桂は司教ベルナルドを訪れ、イコンを差し出した。

    その中には、『マリアによる福音書』が隠されていた。

    これこそ、カタリ派が探し求めていたものだった。

    イエスの真の言葉がヘブライ語で書き記されているこの書が、ローマ教会の手に渡り、闇に葬りさられる前に、司教はラテン語への翻訳を急がせた。

    しかし、その衝撃的な内容を知った司教は倒れ、大子ジュリアーノまでが、異端審問官への密告で火刑に処される。

    夏桂がもたらしたイコンが、一つの村を、揺るぎないはずの信仰を、崩壊させてゆく…。

    荘厳な歴史ロマン大作。

    [ 目次 ]
    <上>


    <下>


    [ POP ]
    最近会社でいろんな事をしているせいか、外に出ていない。

    もちろん旅行なんて行ってない。

    その寂しさを少しは紛らわせてくれたのかなと思う。

    マルコ・ポーロなんかがいる時代の、西の涯ての国に来てしまったなと、素直に感じてしまった。

    オモシロイのが、当時の人々が居ると思っていた悪霊、悪魔、神様なんかが、当たり前のように出て来ちゃう所。

    平気で手がある魚が捕れたり、バジリスクなんて化け物もいるし、しかも結構さらりと書いてたりもする。

    そんな風に様々な生活様式、宗教、人種なんかをごっちゃごちゃと鍋で煮て、飲まされた感じがした。

    しかも後味も不思議と良かった気がしている。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 登場人物の名前が似たり寄ったりで覚えるのに一苦労(>_<)ベネチアの風景描写が良かったo(^-^o)(o^-^)o

  • (借.新宿区立図書館)
    ヴェネツィア編とでもいったところか。日本の特に四国を舞台にしたどろどろの習俗ものとは違った感じの作品だが下巻ではどうなるのだろう。
    最初の方はポーロ家の人物の関係性とか結構めんどくさくて読みにくいのだが、途中主人公が捕まりさらに逃亡したあたりからは一気に読めた。

  • ★評価は読了後に。
    序盤、これは面白いかな?と楽しみに進めていたのですが、遅々として進まないというかストーリー展開(読ませるということですね。)に難ありで読み進めるのが辛くなってまいりました。。。
    原因は書き過ぎなんでは、というのが当方の戯言的感想です。

  • 上下巻、読了。

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著者プロフィール

高知県生まれ。奈良女子大学卒業後、イタリアで建築と美術を学ぶ。ライター、童話作家を経て、1996年『桜雨』で島清恋愛文学賞、同年『山妣』で直木賞、2002年『曼荼羅道』で柴田連三郎賞を受賞。著書に『死国』『狗神』『蟲』『桃色浄土』『傀儡』『ブギウギ』など多数。

「2013年 『ブギウギ 敗戦後』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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