旅涯ての地 (下) (角川文庫 12019)

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  • 角川書店 (2001年6月22日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (416ページ) / ISBN・EAN: 9784041932070

作品紹介・あらすじ

夏桂が手にしたイコンは、キリスト教の異端・カタリ派のものであり、それはキリストの「聖杯」でもあった。夏桂は、謎の女伝道士に導かれ、信者達の住む「山の彼方」へ。しかし、「聖杯」がもたらした真実とは・・・

みんなの感想まとめ

物語は、キリスト教の異端・カタリ派に焦点を当て、信仰と人間の生き方について深く考察します。登場人物たちが厳しい戒律に縛られ、生き地獄のような現世で生きる様子は、時に苦しくもあり、また心に響くものがあり...

感想・レビュー・書評

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  • (上巻の感想からの続き)
    物語の核となる「マリアの福音書」には男女が交わる事の神聖さ、尊さを謳っていた。これは肉の慾を穢れと忌み嫌う<善き人>の信仰を根本から覆す物であった。
    しかしこれは全く以って当然のことである。全ての生きとし生けるものは子孫繁栄を第一義としておいてあるからだ。しかし信仰が過剰すぎるとそういう万物の原理そのものが目くらましになり、汚らわしい所のみクローズアップされ、歪められる。
    マッダレーナが末期に述べるように、男女が交わる事は決して穢れではなく、それを淫らに、奔放に娯楽として楽しむ事こそが穢れなのだ。

    読中、人は生まれたその瞬間から死に向かっている、という言葉をふと思い出した。
    だからこそ人はいかに生きるかが大切なのだが、ここに出てくる<善き人>たちはいかに生きるかよりもいかに死ぬか、死んだ時に救済が得られるよう、信仰の教義に従って己を殺して生きている。しかし、それが実は己の欲望を際立たせ、強く自覚させている事に他ならない事を最後に気付くのだ。
    生きる事は欲望の闘いの連続である。だからこそ自分を正当化するためにごまかしたりもする。それを他人から知らされた時に人は自分の信じていた基盤を失う。
    信仰というものが人が生きる支えであると同時にいかに脆い物かをここで作者は語りたかったのだろう。これは土俗的な信仰が根強く残る村社会で起こる悲劇を描いてきた坂東氏にとって新たなる展開であると思う。

    しかし作者は信仰に囚われない夏桂その人も自由人としては描かない。むしろ自分で気付かない何物かに縛られて、流されてきた人物として描く。
    教義に従って欲望を抑圧して生きる者たちを嘲笑しながらも、完全に否定出来ない、むしろ何故これほどまでに真摯なのかと思い惑うのだ。

    そして彼も最後には囚われの身として彼の地<山の彼方>に帰ってくる。マッダレーナの遺言を全うする事、それこそ彼が唯一得た信仰だったのかもしれない。そしてその信仰は、やはりマッダレーナへの愛情だったのだろう。

    惚れてはいないが魂の尻尾が縛り付けられている。

    それは恋ではなく愛であったことを彼なりに不器用に表現していると私は思うのだ。

  • 読むのに苦戦・・しかし、気づくと物語の中に自分がいるような錯覚を覚えるくらい細やかな描写は、時にはっとして読む手を止めるほど。

    死んで天の国に逝くことを渇望し、生き地獄のような現世で厳しい戒律の信仰に身を捧げ生きる人びとは・・・死ぬために生きるみたいで読んでて苦しかった。

  • 良い意味の裏切りがなかったなぁ。。。
    色んな知識を要求される小説だと推察しますし、その前提を当方が全くクリアしていないことは百も承知ですが、ストーリー展開がかったるい。
    その原因は書き過ぎ、詰め込み過ぎかと。良い小説の条件の一つに適度な余白の有無があるのではないか、と最近頓にそう思うのですが、本作、残念ながらそれをクリアできていないかな。

  • 【本の内容】
    <上>
    13世紀、イタリア。

    元王朝クビライ・ハンに仕えたマルコ・ポーロ一族がヴェネチアに帰郷した時、一行の中に宋人と倭人の血を引く奴隷がいた。

    名は夏桂。

    密貿易に失敗した彼は奴隷に身を堕とし、マルコたちに買い取られたのだった。

    その運命は、偶然手にした一枚のイコンによって大きく変転する。

    イコンは当時、邪教と呼ばれたキリスト教・異端カタリ派の所有するものであり、それはキリストの「聖杯」でもあったのだ。

    そして夏桂は謎の女伝道師マッダレーナに導かれ、信者たちの隠れ住む“山の彼方”へと旅立つが…。

    荘厳な歴史ロマン大作。

    <下>
    “山の彼方”に辿り着いたマッダレーナと夏桂は司教ベルナルドを訪れ、イコンを差し出した。

    その中には、『マリアによる福音書』が隠されていた。

    これこそ、カタリ派が探し求めていたものだった。

    イエスの真の言葉がヘブライ語で書き記されているこの書が、ローマ教会の手に渡り、闇に葬りさられる前に、司教はラテン語への翻訳を急がせた。

    しかし、その衝撃的な内容を知った司教は倒れ、大子ジュリアーノまでが、異端審問官への密告で火刑に処される。

    夏桂がもたらしたイコンが、一つの村を、揺るぎないはずの信仰を、崩壊させてゆく…。

    荘厳な歴史ロマン大作。

    [ 目次 ]
    <上>


    <下>


    [ POP ]
    最近会社でいろんな事をしているせいか、外に出ていない。

    もちろん旅行なんて行ってない。

    その寂しさを少しは紛らわせてくれたのかなと思う。

    マルコ・ポーロなんかがいる時代の、西の涯ての国に来てしまったなと、素直に感じてしまった。

    オモシロイのが、当時の人々が居ると思っていた悪霊、悪魔、神様なんかが、当たり前のように出て来ちゃう所。

    平気で手がある魚が捕れたり、バジリスクなんて化け物もいるし、しかも結構さらりと書いてたりもする。

    そんな風に様々な生活様式、宗教、人種なんかをごっちゃごちゃと鍋で煮て、飲まされた感じがした。

    しかも後味も不思議と良かった気がしている。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • (借.新宿区立図書館)
    「山の彼方」編。キリスト教異端信仰~人間の生き方について。必ず性的なものを交えるのはこの著者の得意とするところなのか。

  • 面白かったけど、如何せん長かった。結局、皆なんだかんだ欲求不満だったのかな(?_?)キリスト教でも女性の地位は低い。

  • 上巻参照

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著者プロフィール

高知県生まれ。奈良女子大学卒業後、イタリアで建築と美術を学ぶ。ライター、童話作家を経て、1996年『桜雨』で島清恋愛文学賞、同年『山妣』で直木賞、2002年『曼荼羅道』で柴田連三郎賞を受賞。著書に『死国』『狗神』『蟲』『桃色浄土』『傀儡』『ブギウギ』など多数。

「2013年 『ブギウギ 敗戦後』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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