ブラック・ティー (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 2601
感想 : 243
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041970041

感想・レビュー・書評

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  • ふと出来心でしてしまった、人には言えない自分の小さな罪(大罪ではない)。正直読むのが恐かったです。
    過去にした些細なそれら、年月が経っても、その時の心情は甦り、胸が痛むと思ったから。
    地道な日常に潜むささやかな罪を引っ張り出し、心の闇に入り込む10話の短編。頭ではやってはいけないと認識していても、少しくらいならとか、誰も見ていないからとか。歯車が狂って意図的にしてしまうものまで。きっかけがあり、一歩間違えば、大罪になりかねない危うさを含んでいる。「はずみ」ってのは恐い。
    例えば自分が理不尽な(辛いことが)目にあったりすると、あの時のあれが返ってきたのか…なんて後悔に苛まれることがあるから、やはり真面目に、できることは精一杯するのがいちばんだと思いました。
    あとがきを読みどれだけ救われたかわからない。
    おそらく(大抵の人は)そういう思いを抱えてますよね。と、一安心…。
    「百年の恋」この男女は全てをさらけ出し、結果とても幸せそうで、素敵。
    「誘拐犯」と「夏風邪」は何とも後味が良くはないが、少しぞくっとする感じが結構すき。

  • 上手いな〜どうして人の心の底にこんなに上手く入っていけるのだろう。
    短編集でどの話も身近にある事だったり似たような気持になった事あるよな〜と。
    でもそこはあまり触れられてほしくないとこなんだけどと思う場所。
    人が今まで犯した事のある軽犯罪にまつわるお話です。
    現実離れしていない誰にでも1つはありそうな軽犯罪の話にドキリとしてしまうかも。
    山本文緒さんらしいちょっとチクリと刺してみたり、暖かかったり、人ってそうだよねって思える小説でした。

  •  山本文緒「ブラック・ティー」、1997.12発行。テーマと展開が新鮮で味わい深い10話。ベスト3は「ブラック・ティー」「百年の恋」「ニワトリ」。面白いのは「寿」「ママ・ドント・クライ」「夏風邪」。いただけないのは「少女趣味」「誘拐犯」「留守番電話」。「水商売」は面白くなかったです。

  • 4.2

    たまに無性に読みたくなる山本文緒さん作品。
    軽犯罪がテーマの短編集。

    出てくる行動はびっくりするものもあるけど、
    そこに至る過程や、人物の心情は、
    いかにもありそうなものばかりで身近に感じる。

    なんなら私が行ってしまったこともある。
    忘れてたような小さな出来事も思い出されるんだけど、やっぱり消せないんだなと在ることを実感した。

    無くなることはない。
    でも、生きてる。
    生きてる限りは日常は続く。

    心の奥に眠らせて見ないようにしてもいいけど
    思い出させられた時はあまりに辛い
    向き合うことができない気がする

    あぁ、在るな。って思いながら生きるのも良いのかも。

  • 軽犯罪短編集。サクッと読める短さで良かった。
    法を犯したって捕まらなければ、見つからなければ前科はつかないし世の中にはいっぱいいる。
    あっという間に読めて楽しかった。短いからかどれもさっぱり淡々としている。
    運悪く罪が重くなることもあるし話によっては主人公がすごく可哀想に思った。

    特に誘拐の話は辛い内容だったな。DVも気味が悪かった。

    好きなのはタイトルのブラックティーとニワトリかな。日常に馴染んでる感じがリアルだった。借りパクする人多いし。信頼簡単に失くすからやらないように気をつけよう

  • 少しずつ常識とずれた人々の物語。
    ちょっとした日常の罪の物語。
    「誘拐犯」がなんか悲しかった。
    「夏風邪」 は痛々しく怖い。

  • 短編集。小さな罪について。弱くて嫌な普通の人達が多数出てくるんだけど、別れた恋人に執着してしまう元彼の話『留守番電話』、が1番キタ、、、アドバイスしてあげたい、気持ちはひじょーにわかるが、今すぐそんなことやめて連絡先を消し次に行け、と。。。とにかく筆者の描く人間像がホントにリアリティ溢れていていつも唸らされる。

  • 2024.03.09
    「間違わない人間なんていないよ」この言葉が自分を救うため、あるいは自分を慰めるためなのか、それとも、相手のことを真に思いやっていっているのか、その解釈はあなたにお任せします。と山本先生は言っているようにわたしは受け止めている。
    軽く読める一冊だが噛み締めるべきフレーズも多い。こうした一語一語を紡ぎだしたからこそ、寿命を削られて早くに天に召されたのかなと思う。もう先生の新作は読めないのだと改めてその事実を噛み締める。

  • すぐに読めちゃう短編集。
    常識に囚われない、はみ出ている人物たちが印象的でした。
    非難されても、傷つけたとしても、生きているならいいと思う。

  • 初読みの作家。
    10編の短編は軽犯罪をテーマにしている。

    短歌の集まりでお薦めされたので読んでみた。
    これは面白い。
    しかし、本が古い、20年前の作品だもんねぇ。
    修理してからの貸し出しって・・
    新しいの見つけたら買って
    図書館に寄付しようかと思ったよ
    いい作品だしね。
    20年前の作品とは思えない。

    確かに、ツールはポケベルで家電で留守番電話。
    でも、人が抱える闇は今も変わらない。

    読んだ後に自分の中の
    ドロリとした部分が見え隠れする。

    表題作の「ブラック・ティー」が一番よかったかな。
    山手線に乗って忘れ物の鞄の中から現金を盗む。
    それが、彼女の生活。
    なんというどんよりさでしょう。

    10篇の全体にグレーのフィルターがかかっているようで
    最後に一つだけ色が差し入れられる。

    それは、もう、なんというか
    人の抱える闇を差し出している感じがする。

著者プロフィール

1987年に『プレミアム・プールの日々』で少女小説家としてデビュー。1992年「パイナップルの彼方」を皮切りに一般の小説へと方向性をシフト。1999年『恋愛中毒』で第20回吉川英治文学新人賞受賞。2001年『プラナリア』で第24回直木賞を受賞。

「2023年 『私たちの金曜日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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