恋愛中毒 (角川文庫)

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レビュー : 650
  • Amazon.co.jp ・本 (415ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041970102

作品紹介・あらすじ

もう神様にお願いするのはやめよう。-どうか、どうか、私。これから先の人生、他人を愛しすぎないように。他人を愛するぐらいなら、自分自身を愛するように。哀しい祈りを貫きとおそうとする水無月。彼女の堅く閉ざされた心に、小説家創路は強引に踏み込んできた。人を愛することがなければこれほど苦しむ事もなかったのに。世界の一部にすぎないはずの恋が私のすべてをしばりつけるのはどうしてなんだろう。吉川英治文学新人賞を受賞した恋愛小説の最高傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 悪気があってやったわけじゃないし、おかしいと思われるのは、周りの人間が理解を示さないからーと、いつまでも被害者意識を持った、主人公の歪みが伝わってくる本だった。

    この本の魅力は、主人公が少しずつ壊れていくのに読者がいつ気づくか、という点である。
    そしてそれは、日常生活でも同じことが言えるのではないか。
    自分とは合わないと思わせる人間は、もちろん初対面で嫌いになることもあるが、少しずつズレを感じて、それが違和感になり、やがてそれが大きくなる。
    後味の悪くなる別れ方をした時に思うのは、あの時に気づいていれば、である。
    どんどんおかしくなるのにやめられない、自分が正しいと思ってする、行き過ぎた行動。
    周りの人がいくらそれを否定したところで、本人には都合のいい情報しか届かない。
    人間の怖さは、意外と身近に潜んでいる。そして気がつけばそれに片足を突っ込んでいたりする。

  • ある女性の結婚と離婚、その後に関する話。
    翻訳の仕事をしつつバイトで生活費を稼いでいた女性があることから有名人の運転手兼愛人になり、相手に尽くしていくがそれに応えてもらえない葛藤がエスカレートしていく様子が描かれる。
    見返りを求めているわけではないのだが、心の底ではやはり求めていて無自覚であるがゆえにおかしな行動となっていく。
    読後感はあまり良くないが、救いがあるのは見捨てずにいてくれる友達がいること。

  • 主人公水無月が創路のオンナになってからの行動と描写される自己評価との間に違和感を感じながら読み進める。お互いの存在を認識しながら踏み込まず、創路との関係を続けたいのなら距離を取るようにアドバイスする羊ちゃんたちが次々と去っていく理由が、徐々に明かされる水無月の過去とリンクし出す。と言ってもはっきりと書かれたわけではないので私が想像しただけに過ぎない。羊ちゃんたちは誰も創路との関係が切れたわけではなく、水無月から避難しだしただけ。彼女たちが自らそうしたのだろうか?それとも創路が避難させていったのだろうか?なぜ娘を残してしまったのだろうか?
    一度関わってしまったら、完全に関係を断ち切ることができない。自らを小心者で献身的と評価する水無月から被害にあわないために萩原や創路のように関係していくしかないのだろうか?水無月は離婚してもなお、元をつけて呼ばない夫の居場所をこれからも探そうとするのだろうか?
    恐ろしい。

  • もう会わないと決めた人とはちゃんと会わないでおこう、ができる人とできない人の差は何なんだろうか?

  • ほぼホラー

  • 初、山本文緒作品。本作は吉川英治文学新人賞を受賞したこともあり、存在は前々から知っていて、やっと読めた。タイトルからして、若い男女の甘すぎる恋愛話だと半ば鷹をくくって読み始めたら、見事にいい意味で期待を裏切られた。「他人を愛しすぎないように」なんてバカバカしい文句だと思っていたけど、読んでいくうちにどこか水無月にのめり込んでしまう自分がいた。この世の女性はすべて、自分のなかのどこかに水無月の部分をもって生きているのだと思う。それをうまく昇華させたら幸せな結婚に結びつくだろうし、消化できずにいたら愛ゆえに相手を傷つけストーカーに至ることもあるのだろう。人を好きになる感情は、言葉とすごく似ていて、使い方や出し方次第で救うこともできるし傷つけることもできるのだと、実感させられた。井口視点の三人称から入って、最後は水無月の一人称で終わるという形式も見事だ。

  • 先が気になってあっという間に読みきったけど
    とりあえず自分的にはノルウェイの森以来の重さです
    たぶんもう二度と読めません

    内容を一言で表しとタイトル通り「恋愛中毒」

    恐ろしいけど、まったく遠い世界の話じゃない
    むしろ日常のどこかで、まるで氷河の裂け目のように
    存在しているのだろう

    この本はすごく理解できる部分があって怖くなる人と
    まったく理解できない人に二分されそうな気がします

    下は一番有名なフレーズ
    この言葉の真意とは一体

    「どうか、どうか、私。
    これからの人生、他人を愛しすぎないように。
    愛しすぎて、相手も自分もがんじがらめにしないように。
    私は好きな人の手を強く握りすぎる。
    相手が痛がっていることにすら気がつかない。
    だからもう二度と誰の手も握らないように。」

  • 共感しすぎて死にたくなった。
    人が人を求める姿は滑稽で哀しくて純粋だ。
    ホラー染みているということさえ
    恋愛中に吹き出す自己嫌悪をよく描いてる。

    恋をすると自分を抑えてしまう。

    だけど、自分を発揮しないとどんどんおかしくなる。

    醜くても汚くても
    良い恋がしたい。
    そう思わせるリアリティを追及した尖った作品。
    人間だ。

  • 読み始めは様々な人のオムニバス作品かと思いましたが、そのような安直な物では無かった。
    あちこちに"???"な部分があり、少しずつそれらが明らかになる。
    最後の最後まで飽きさせない。
    程度の違いこそあれ、誰にでも恋愛中毒になる可能性があるのだろう。
    ストーカー被害が社会問題になっている今にあって、ますます現実的にあり得る事だと言える。
    心情描写、物語の発展性、どれをとっても文句のつけようがない。
    まったく非の打ち所がない、完全無欠な作品だと思いました。

  • おそらく男性には共感されないであろう、女性の怖い一面が描かれている。重いんだよな~。これでは嫌われても仕方ない。
    山本文緒氏の文章は時々どきっとする表現が出てくる。「とっくに女を捨ててしまったように見える中年女性の、女だった頃の話なんか聞きたくなかった」「とりあえず世間の常識通り一度結婚してみたものの、その馬鹿馬鹿しさに呆れ、男という生き物に自分の人生を搾取されるぐらいなら一人で生きていくほうがよっぽどマシだと感じているように見えるのだろうか」「捨てたものをごみ箱をあさって探している」「なのに、つらいこともあったけど、今は幸せだったことばっかり思い出すなんて言うんだぞ」「掻かない方がいいことは分かっているのに、私は絶対それを我慢できないことを知っている」
    冴えなくて生真面目な女性が、少々強引な男に、警戒しつつも気づけばのめり込み、見失って狂気の状態に陥るというのも、分からなくはない。でも自分の経験上、しつこくしてうまくいったことなんかない。
    終盤、予期せずミステリータッチに。
    作者は骨の髄まで女性だな・・・と思いました。

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著者プロフィール

1962年11月13日横浜生まれ。 神奈川大学卒業後、OL生活を経て、87年「プレミアム・プールの日々」でコバルト・ノベル大賞、佳作受賞。 99年「恋愛中毒」で第20回吉川英治文学新人賞、 2001年「プラナリア」で第124回直木賞受賞。

「2019年 『シュガーレス・ラヴ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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