再婚生活 私のうつ闘病日記 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 830
感想 : 69
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041970164

感想・レビュー・書評

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  • 人の日記を盗み見しているような気になるエッセイ。いや、こんな無茶苦茶な生活してるって書いちゃって良いものなの?!鬱病なのにお酒も煙草もやってていいの?!ただ、そのぶっ飛んでる分読んでいるのは面白かった。酷い時期を脱した後を読んでいると、やっぱり無茶苦茶な暮らしは体を痛めつけ、それは心にも通じていたのかな、なんて思ったりする。
    前半を読んでる間に話に引っ張られて自分自身がかなりウツウツとしてしまった。ある意味自分よりもっと酷い状態の人がいると救われていた部分もあるけれど、いつ読むのがベストなのか難しい。

  • 「再婚生活」の単行本を既に読了。文庫本には書き下ろしがあるとのことで再読。ゴールの見えない病と作家を両立させることは本当に辛かったと思います。著者の苦悩と叫びが痛く伝わりました。涙。

  • 「そしてわたしは一人になった」の続編。
    「再婚生活」という主題だけれど、実際は副題の「うつ闘病日記」の内容が濃いエッセイだった。
    かなり赤裸々に描かれているので、冒頭に筆者が書いている通り、精神状態がよくない人は要注意。引っ張られてしまうかも。

    わたし自身も7年ほど前にうつで退職した上、仕事でカウンセリングにも関わっているので身近な話題。

    よく言われることだけど、うつになりやすい人の特徴として、真面目に考えすぎる、人に頼るのが苦手というものがある。
    エッセイを読むと筆者の真面目さ、思慮深さや観察力が鋭いからこそ傷ついてしまう苦しみを感じる。
    また完璧主義で成果が出ない時間を待つことができない性質も、うつになりやすい人の特徴なのかもしれない。これも筆者に共感した。

    メンタルヘルスケアは世間的に身近になってきてるし、個人的にはもっと身近に気軽になって欲しいと思うけれど、目に見えないし必要な人こそまだハードルが高い行動だと思う。

    身近な人に頼る練習や、作中の最後にも出てくるように、日記を書いて客観視する、悪いことだけを考えない、というのはぜひ実践したい。

    また自分の身近な愛する人の心の健康にも目を向けたいし、必要な時に手を差し伸べて助けたいと思った。
    それが自立というものだ。たしかに。

    ■引用
    「手に入っているものが多ければ多いほど、人の気持ちは安定するのだと、私も昔思っていた。だからこそ、前の離婚直後、通帳の残高が赤字だったところから始めて約九年、誰かに何かを 貰うんじゃなくて、努力をして、私が私にコツコツと恵んできたのだ」

    「反感を買うかもしれないが、恵まれているんじゃなくて、私が私に多くのものを恵んできたのだ」

    「ほんとは自分の生活が王子に浸食されている部分があって、そのことに怒っていることを私は認めたくなかった。王子はいつだって優しい夫なので。でも、認めて、解決しなくては、体も治らないのかもしれない」

    「年齢的にも(四十代になった)環境的にも(中堅作家になった・再婚した)大きな変化があったので、それに伴って考え方も物事のやり方も、今まで通りでは通用しなくなっていて、新しいベクトルの方向を模索しないとならないという自覚がある」

    「私は時間において、王子を疑りはじめているんだと自覚。これからの長いはずの結婚生活、それを 諦めてゆくんだな、そして自衛してゆくんだなと思った。振り回されないように。気持ちを乱されないように」

    「ずっと私はうつになった原因は、なにか心因性のものだと思っていた。仕事上のいろいろなストレスや引っ越しや再婚で、感情のバランスが狂ったのだと思っていたけれど、そうじゃなかったと最近しみじみ思う。だいたいその「外から攻撃された」という被害者意識がまずいけなかった。  私の場合、悪い体が黒い心を生んだのだ」

    「人にショックや怒りや不愉快な感情を起こさせて物事を考えさせるという手段は有効なのかもしれない。けれど私はしたくない」

    「世の中に向かって表現をできる技術を持っている人間は恵まれている。だからこそ自重も含め慎重にならなければいけない気がする。偽悪的になったり、それを感情任せで論破したり、したり顔で分析したりすることは、ネットの2ちゃんねるで行われていることと大して変わらない気がする」

    「リンダの 旦那 さんはそっけないらしく、彼女が用事で外出から戻っても「どうだった?」とまったく聞かないそうだ。ああ、それってまさに私の前の夫もそうだったなと思う。昔、私は前夫に「なんでなんにも聞かないの?」と尋ねて「興味のないことを延々と聞かされたくないから」と答えられたことがある。きっと私の話がくどかったのだろう。でもヒドイ。王子はそんなことは言わない。それとも言う日がくるのだろうか」

    「調子の悪いときは誰でも多かれ少なかれ視野が狭くなってしまいますが、この頃の私は悪い材料ばかりに目がいっていたので、日記メモを残しておけば、夫が私に「ほら、具合のいい日もあるんだから大丈夫。ずっと悪い日が続いているわけじゃないんだよ」と説得できると考えたそう」

    「身近な人が、それまで貫いてきたであろう意志がぐらついてきているのに気がついたら、気をつけてあげて下さい。単に怠けているだけだと決めつけないで」

    「つまり自立とは、自分さえ良ければいいというわけでなく、弱った人を助けることができることだと知ったから」

  • 亡くなったニュースのあと、エッセイで鬱のことを書かれてると知り、読みました。
    あとがきに涙が出ました。。

  • 915.6
    うつ病闘病記
    旦那さんほかの助けがあってこそ
    蛙先生は斎藤学氏?

  • 自分が抑うつ状態と診断され休職することになり久しぶりに再読。今読むと、あー、わかる!わかる!の体調や思考のオンパレード。うつ仲間に出会えた気分です。文庫を手元において、めげそうになったとき、またそっと読み返したいです。

  •  山本文緒は元々好きな作家だったけれど、うつ病の話は暫く知らなくて、この病気にかかってから読んだ本。
     彼女はとても周りの人に恵まれたのだなあという事が良く分かります。
     本人も大変だけど、周りの人間はもっと大変だものね。
     優しいダーリンとお友達に囲まれて、少しずつ立ち直っていく筆者の姿は、私からしたら物すっごく羨ましい。
     私にはお金もないし、支えてくれる人もいないし。
     でも悪い事ばかり考えていてはいけないんだなあというのは頭のどこかで理解する。
     理解するけど納得しない辺りが私の性格の悪さを垣間見れるんだけれども(笑)
     私の病気は正確には鬱ではないけれど、立ち直れた人と何が違うのかなあっていつも考える。
     病気は人それぞれ違うから、正確な答えはないのだろうけれど。
     後がきにもあったが、ここまで冷静に自分の不調を書き止める事が出来た、作者の『作家』という職業が大きく働いた事に疑問の余地はない。

  • 追い詰められた精神状態の中で、公にできることとそうでないこと、読者に誤解されそうなこと、家族や友人への影響など考えつつの推敲は、ものすごくエネルギーを要する作業だったと思う。
    と同時に書くことがセラピーとして働いていた面もあるだろうし。
    プロとして、こんな客観視しづらいことに真正面から向かった著者に拍手。でも、読みつつ自分も精神的にどんどん落っこちていってしまったので、かなり危険な、取り扱い注意な本だと思う。二度と読まない。でも読んでよかった。

  • 作者の日記エッセイ。「うつ」とともに苦しみながら、時に楽しみながら日々を送る姿に共感を抱いた。気分的に落ち込むことはよくあるけれど、立ち直れるのは身近に救ってくれる、支えてくれる人がいてくれるからこそなんだと実感した。今の自分にとって救いのような本になった。

  • ちょうど自分が落ちていた時に読んだので、随分助けられる。山谷を繰り返しながらオブラート剥がすように、少しずつ良くなっていく様子が、訥々と記されているからだ。
    日記はだんだん良くなっていく様子に、ほっとしていくが、日記の後に書かれている丸三年間の回顧録が、実に興味深かった。ここには本当のところの状態が記されている。情緒不安定で死にたいと思う死ね死ね団に襲われているという日記には書けなかった事を知ることができる。こちらを最初に読んで、日記を読み返すと、興味深い心のうちを知ることができるかもしれない。

著者プロフィール

1987年に『プレミアム・プールの日々』で少女小説家としてデビュー。1992年「パイナップルの彼方」を皮切りに一般の小説へと方向性をシフト。1999年『恋愛中毒』で第20回吉川英治文学新人賞受賞。2001年『プラナリア』で第24回直木賞を受賞。

「2023年 『私たちの金曜日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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