黒い家 (角川ホラー文庫)

著者 :
  • 角川書店
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本棚登録 : 13701
感想 : 1569
  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041979020

作品紹介・あらすじ

若槻慎二は、生命保険会社の京都支社で保険金の支払い査定に忙殺されていた。ある日、顧客の家に呼び出され、期せずして子供の首吊り死体の第一発見者になってしまう。ほどなく死亡保険金が請求されるが、顧客の不審な態度から他殺を確信していた若槻は、独自調査に乗り出す。信じられない悪夢が待ち受けていることも知らずに…。恐怖の連続、桁外れのサスペンス。読者を未だ曾てない戦慄の境地へと導く衝撃のノンストップ長編。第4回日本ホラー小説大賞大賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    物語の序盤から中盤にかけては、「日常に潜む人間の怖さ」がテーマでした。
    菰田重徳が何を考えているのか全然わからず、また不気味さも相まって、「もしかすると自分も運が悪ければこのようなトラブルに巻き込まれてしまうのでは?」といった身近な恐怖を感じました。
    狂っている人間ほど怖いものはないなと、読んでいてガクブルしていました。

    ただ終盤は、もはや人間ではなく、モンスターと化した菰田幸子との戦いに。
    物語のジャンルも、もはや「ホラー」ではなく「モンスターパニック」になりました。
    こうなったら、もはや読んでいて怖くも何ともありません。だって、コメディですもの。笑
    (余談ですが、菰田幸子の垣間見せるタフネスさは、RIKAを彷彿とさせますね。)

    警察の無能さ、無関心も、少々オーバーすぎるだろとツッコミながら読んでいました。
    あれだけ証拠が出揃っていたらいくら何でも動くだろう。笑
    主人公を孤立無援にさせるための演出ではあると思いますが、「犯罪に対して、さすがにここまで無能で無関心な警察なんかいねーよ!」とツッコミました。

    物語自体の構成はかなり面白かったのですが。。。
    作中のホラー要素を訴求するあまり、終盤は一気に安物のホラー作品になっちゃいました。
    コメディ要素がなければとても面白かった作品でしたが、、、残念です。



    【あらすじ】
    顧客の家に呼ばれ、子供の首吊り死体の発見者になってしまった保険会社社員・若槻は、顧客の不審な態度から独自の調査を始める。 それが悪夢の始まりだった。 第4回日本ホラー小説大賞受賞。

  • 第4回日本ホラー小説大賞 作品ですが、呪力とか魔物とか超常現象によるところなく、日常生活を侵す恐怖を堪能できます。
    生命保険会社で保険金請求の査定業務を担当する若槻。彼が対応した一本の電話が、その後の恐ろしい経験の始まりとなります。
    彼は、指名され向かった顧客の家で、子供の死体の第一発見となります。そして、その子供の保険金請求の担当者となります。
    毎日、窓口に通う子の父親。自宅に続く無言電話。日常生活に沮止が出るほど、追い込まれていきます。保険金請求に潜む企み。子供の死因に疑いを持つ若槻は、この企みの真の首謀者にたどり着きます。
    ギリギリのところで、解決を見るのですが、日常に潜む恐怖なのでエンドレス仕上げになっています。
    生まれつき邪悪な人間なんていない、という考えが、一番危険なんでしょうねえ。

    • おびのりさん
      私は、羊たちの沈黙を思い出しましたよ。
      私は、羊たちの沈黙を思い出しましたよ。
      2023/03/30
    • みんみんさん
      虎狼の血2じゃなくて?
      リングとかは?
      ちょっとムリではないかと( ̄▽ ̄)
      虎狼の血2じゃなくて?
      リングとかは?
      ちょっとムリではないかと( ̄▽ ̄)
      2023/03/30
    • ゆーき本さん
      リングは大丈夫!
      虎狼の血2なんて話し聞いただけで観るの諦めてるー!( 'w' )
      リングは大丈夫!
      虎狼の血2なんて話し聞いただけで観るの諦めてるー!( 'w' )
      2023/03/30
  • 愛着のある本。ホラーに目覚めたきっかけでもあるし、オカルトが苦手な事を気付かせてくれた恩師改め恩本でもある。

    保険金殺人がテーマ。脳内再生は大竹しのぶで間違いないし、その流れで是非映画も見てもらいたい。
    彼女の演技が本当に怖い。

    人の闇って計り知れない。ひょんなきっかけで、自身もその闇に飲み込まれてしまうのやもしれない。考えるだけでぐずってしまいそうだ。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      NORAxxさん
      人は自分に都合が悪いコトは気付かない振りをする。外側のコトは時代の所為にしたり、内側のコトは棚に上げたり。。。
      手に負えな...
      NORAxxさん
      人は自分に都合が悪いコトは気付かない振りをする。外側のコトは時代の所為にしたり、内側のコトは棚に上げたり。。。
      手に負えない闇が広がっている。と思っていますが、あちこちで小さいかもしれませんが、灯も。。。

      スミマセン猫の戯言です
      2022/04/23
    • NORAxxさん
      猫さん
      いえいえ、戯言とは思いません。本当に仰る通りだと思います。闇の存在を認知しておく事は何かの盾になってくれるやもしれないですね^ ^
      ...
      猫さん
      いえいえ、戯言とは思いません。本当に仰る通りだと思います。闇の存在を認知しておく事は何かの盾になってくれるやもしれないですね^ ^
      暗黒には暗黒を..な書物を求める時は是非一声かけてください(笑)
      2022/04/23
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      NORAxxさん
      > 暗黒には暗黒を..な書物を
      心強いお言葉ありがとう御座います。その時は是非短めのを、、、
      NORAxxさん
      > 暗黒には暗黒を..な書物を
      心強いお言葉ありがとう御座います。その時は是非短めのを、、、
      2022/04/23
  • サイコパス犯による保険金殺人。

    保険会社に勤める主人公が巻き込まれ、徐々に追い込まれていく展開は、リアリティがあって恐怖を感じた。

    一方でリアリティの追求によるものなのか、生命保険のしくみや、サイコパスに関するプロファイルなどの解説シーンが長くて、途中自分の感情がストーリーから脱線してしまったことで読了感が薄れてしまった。

  • 私たちはお金がないと生きていけない。お金と命は、常に天秤に掛けられている。誰が正気で、誰が狂っているのか。保険金を巡る事件は、日頃のニュースやドラマの中で多数の人にとっては、あまりにも非情に映るものだ。

    眉間に皺を寄せずには居られない。不気味で不愉快な執着と憎悪。
    物語の進行に合わせて、登場人物達が抱えるトラウマや、心の闇の輪郭が見えては消えてゆく。

    ホラー要素がたっぷり。怖っ!気持ち悪っ!ゾワッ。
    素晴らしく恐ろしい描写に鳥肌が立つ。
    私は読書の最中に、玄関、窓、浴室、壁、トイレ、照明、家鳴り。色んなものがいつもと違うという妄想に飲み込まれしまいそうで、何度か本を閉じて呼吸に集中するという時間を設けていた。

    個人的には金石の述べた思想には、深く同意する部分があった。あまりに割り切った考えである為に、全てに頷くことはできないが、読んでいてどこか安心感がある。

    決して救いのある物語では無いし、読者としても深く傷を負った気持ちになる。人はどこまでも、欲深く得体の知れない目的意識に、救済や犠牲を織り交ぜて個人や大衆を操り、また操られる。

    不足の事態に人々を金銭的に守り、支援するための制度が人を傷付け、殺したのである。
    保険金にまつわる物語の一つだ。

    読了。

  • 生保の支払い査定してる若槻さんが、お客に呼び出されて行ったら、死体の第一発見者になった‼︎
    その件の保険請求がされるけど、若槻さんは保険金殺人を疑って請求者と...な、お話。

    怖い...ひたすら怖い(´༎ຶོρ༎ຶོ`)
    現実味はあまりないですけど、追い詰められ感半端なく、ドキドキしながら読みました!
    ガタブルでした((((;゚Д゚)))))))

  • 日々雑多な仕事に追われている保険会社勤務の若槻。
    ある一本の電話をきっかけに、子供の首吊り死体の第一発見者になってしまう。

    子供の父・菰田重徳の挙動に不審な点があり
    彼が子供を殺したと確信を深める若槻。

    一方重徳は子供に掛けていた生命保険の支払いの催促で毎日彼の元へ訪れるようになる。
    蜘蛛の巣に絡め取られるように、彼の圧力に追い詰められていく若槻。
    およそ常人とは思えない、感情がないというサイコパス。遂には殺人事件まで引き起こす。

    ---------------------------------

    包丁を持って追いかけてくる精神異常者を恐ろしく描いているのは言わずもがな

    だけどさすが貴志さんだなぁと思うのは
    精神異常者という決めつけで犯罪を片付けてしまう危険性などにも触れられており、物語に厚みを出している。
    若槻の恋人、恵がその語りを担う。
    彼女と正反対の思考を持つペシミストの研究者・金石との対比も面白い。

    恵の最後の語りも面白かった。
    厭世的な考えの人物は決して他の人間と心を通わせたりしない。
    自分に不利なものにはレッテルを貼り、自分が傷つきそうになれば容赦なく排除。

    精神を病んでいる者より、そう言った普通の人の方が社会に大きな害を及ぼしていると。

    そしてそんな人間が急激に増えてきた現代社会、どう彼らと向き合っていくかというメッセージも含まれている。



    「人間が一番怖い…」というレビューをよく見かける本書。
    そうですね、他人の心だけはどうしたって分からないものね…

    ギャーッ怖い怖い、血塗れーーー
    ていうサスペンスだけならまだ良かった
    バックグラウンドの部分が余計にゾッとさせました!

  • 想像以上に怖すぎた!後半は展開が気になって頁を捲る勢いが加速。人の執着心とはこんなにも恐ろしいものか。人の闇を垣間見た。鬼気迫る情景の描写が鮮明で血の臭いがこちらにまで蒸し返してきそうで気持ちが悪くなった。現実ではこんなことが無いことを祈る。

  • 正直な感想を言うと、微妙。
    情景描写や登場人物の掘り下げなどは丁寧だが、そこまで怖さは感じなかった。
    同作者の天使の囀りも読んだことはあるが、そちらもそこまで恐怖感は感じなかったので、多分相性の問題もあると思う。

  •  1997年第4回日本ホラー小説大賞で大賞を受賞した昨品。
     ホラー小説ではありながら、保険金のためなら何でもしてしまうという一種の保険金搾取がテーマになっており、現代に暗い影を落とす作品になっている。
     20年以上前の作品だが、現代でもこのテーマは褪せることなく存在しているので、そういった意味でも十分に読み応えのある作品と言える。
     生活を守るための保険が、かえって殺人や傷害を助長してしまっているのではないかという現代社会の矛盾点に切り込んだ本格長編。

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著者プロフィール

1959年大阪生まれ。京都大学卒。96年『十三番目の人格-ISOLA-』でデビュー。翌年『黒い家』で日本ホラー小説大賞を受賞、ベストセラーとなる。05年『硝子のハンマー』で日本推理作家協会賞、08年『新世界より』で日本SF大賞、10年『悪の教典』で山田風太郎賞を受賞。

「2023年 『梅雨物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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