青の炎 (角川文庫)

著者 :
制作 : 角川書店装丁室 
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041979068

作品紹介・あらすじ

櫛森秀一は、湘南の高校に通う十七歳。女手一つで家計を担う母と素直で明るい妹との三人暮らし。その平和な家庭の一家団欒を踏みにじる闖入者が現れた。母が十年前、再婚しすぐに別れた男、曾根だった。曾根は秀一の家に居座って傍若無人に振る舞い、母の体のみならず妹にまで手を出そうとしていた。警察も法律も家族の幸せを取り返してはくれないことを知った秀一は決意する。自らの手で曾根を葬り去ることを…。完全犯罪に挑む少年の孤独な戦い。その哀切な心象風景を精妙な筆致で描き上げた、日本ミステリー史に残る感動の名作。

感想・レビュー・書評

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  • 1994年刊行の作品で今更ながらの感が無きにしも非ずだが、「日本ミステリー史に残る感動の名作」との謳い文句に、初読み。
    倒叙推理小説に分類されるだろうが、いまだ少しも色褪せない青春小説の趣もある(主人公と彼の同級生の女生徒との関係)。
    そして、かつてこれほど切ない殺人者もいないだろう。
    人を殺害することは最大の犯罪であり、決して許されるものではない。
    しかし、真相が明かされることなく、何とか逃げおおせてほしいと願わずにはいられない程、主人公に感情移入した読者も多いことだろう(勿論読み手も)。
    対象者は、家族にとって忌むべき存在で、何よりも彼は、その行為を愛する家族のために計画したものであり、けっして自己満足や己の欲望から発した行動ではないからだ。
    ただ、第二の行為は自己保身が垣間見られ、汚点となっているが。
    中島敦の『山月記』や、夏目漱石の『こころ』が、巧みに引用され、文学性の薫りさえ漂う作品になっている。

  • 平成29年4月

    なんとなく手に取り、読んでみる。

    超、面白かった。映画になってたんだね。
    一気読みです。

    主人公と母と妹の楽しい生活に母の元夫が住み付き働きもせず、酒ばかり煽って、主人公たちの生活を一変させた。
    いろいろとあって、その元夫を主人公が殺すことを計画する。罪と罰で、殺す側、殺さない側の人がいて、殺す側の人間になる。そして、殺した後は、殺したことを生きている間葛藤する。それを分かっている中で、罪を犯す。
    そして、その後二度目の罪を…。
    そして、その後、それしかないよねって感じで完。

    しかし、二度目の罪は、ちょっと手抜きだね。
    でも、二度目ってそんなもんなのかな。一線を越えた後ってね。

    無敵の大門さんの言葉
    一度火をつけてしまうと、怒りの炎は際限なく燃え広がり、やがては、自分自身をも焼き尽くすることになる。怒りだけはどんなことがあっても抱いちゃいけない。
    悪い人にいいように扱われても、自分の怒りで自滅するよりは、ずっとましな人生だと。

    日本人は、罪と罰のような強迫観念とは無縁だから、完全犯罪の殺人を行うには適しているのではないか。そんなことを考えていたが、殺人者の心を抉るのは、神へのおそれでも、良心でもない、心を締め付けるのは、単なる事実だ。自分が人を殺したという記憶。その記憶からは、一生逃れる事ができない。

    だから人を殺してはいけないとは言えないけど、人を殺すってことは、それだけ自分に返ってくるんだよね。人を殺す事によって、自分をも殺してしまうってこと。

  • なんとなく見つけて買った本

    殺人を犯す側からの視点で書かれた内容だった。

    殺人を犯す高校生の心理描写が細かく書かれていて、だんだん暗く重い気持ちにもなるが、状況がわかりやすく読みやすかった。

    「一度火をつけてしまうと、いかりの炎は際限なく燃え広がり、やがては、自分自身をも焼き尽くす」
    このセリフが印象に残った小説でした。

  • 読んでいる間中ドキドキして、ページを捲るのが怖くてたまらなかった。

    一人称が犯人パターンはヤキモキしてドキドキして心臓に悪い(^_^;)
    なのに読むことを止められない勢いのようなものがあり、没頭してしまう。

    この作家さんの小説は妙に感情移入してしまって危険(^_^;)

  • 貴志作品では一番と思ってる。罪を犯した後の苦しみがリアルに感じられる。「ようやく実感を持って理解することができた。人を殺すというのはこういうことなのか」眠っている間だけ忘れる事ができるが、目覚めた瞬間から悪夢が始まる。人を殺めてしまった事が夢ではなく現実だと悟ってから。

    切ない。

  • 秀一の気持ち、紀子の気持ち、遥香の気持ち、母親の気持ち…。
    誰の立場になってもみんな、辛く切ない。
    もう少し待っていれば…。そんな後悔もツラい。
    ストーリー自体は暗めだけど、青春要素と湘南の情景が、少し緩和してくれます。
    これまでいろいろ読んだけど、ミステリー小説で泣けたのは初めてでした。

  • 今年読んだ本で一番!!ゆれ動く主人公の心の描写に引き込まれる。タイトルの青い炎って、本人をも燃えつくす怒りの炎だったんだ!蜷川監督×二宮君主演の映画も小説の世界感を全く裏切ってなく心に残る映画だったが、原作は、登場する文学作品の引用文も物語とリンクして心に染みて、断然いい。全編暗く、切なく、途中息苦しくなるが、一気読み。貴志祐介さん、おどろおどろしいホラーのイメージが強かったけど、ほかにも読んでみようと思った。

  • 高校生が家族を守る為、完全犯罪の殺人を企てる倒叙推理小説。
    主人公のストレスを濃密なまま体感できる、稀有な作品。
    湘南の海岸線をロードレーサーで通学する爽やかな面とは裏腹に、その心には青い炎が燃えたぎる。

    私も同じ年齢の頃、家族や級友に憎悪を覚えたことはあっただろう。だが、さすがに殺意は芽生えなかった。ではなぜ、17歳少年は実行に移そうとしたのだろうか。その経緯で明らかになる事実に、彼は困惑せざるを得ない。

    主人公の心理が、読者の心理に置き換わる錯覚に囚われる一冊。映像化された作品ですが、キャストを知らずに読めたのが想像力の妨げにならず幸いした。

  • H28.12.20 読了。

    映画版をずっと観たくて興味があった作品。
    映画版を観るなら、その前に原作を読んでみたくて購入。

    このやりきれなさ。
    スカッとするかと思いきや、逆に不安になる日々。
    このリアルな空気が良くも悪くもたまらない。
    タイトルの「青の炎」、まさにその通りで納得。

    他の貴志先生の作品も集めたい。

  • こんなに知力、体力、応用力、計画性、しかも思いやりまで兼ね備えた17歳が今の時代に果たしているのか。私は知らない。見たこともない。そう思いながら読み進めたけれども、人を殺すにいたる心情、殺してからの心境がすごく丁寧に描かれていて、いつのまにかすっかり引き込まれてしまった。これ読んだら人殺そうと思ってた人も思いとどまるんじゃないか、それだけの重みと切実さがあった。『山月記』や『こころ』と重ねて描くのも効果的。だって、主人公はそういう名作を国語の教科書とかで知るんだよ?もっといえば人殺しのトリックだって物理の授業の応用なの。ああやっぱりこの子は高校生の子どもなんだな、それなのにこんな重いものを背負わされて、そう思うと、泣けてしまうじゃないか。ここ数年、YAとかミステリとかをちょこちょこつまみ読みしてきたけれども、そういうのに求められるすべてが端正にそろってる圧巻の1冊なのではないでしょうか。

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著者プロフィール

1959年大阪生まれ。京都大学経済学部卒。96年『十三番目の人格-ISORA-』でデビュー。翌年『黒い家』で日本ホラー小説大賞を受賞、ベストセラーとなる。05年『硝子のハンマー』で日本推理作家協会賞、08年『新世界より』で日本SF大賞、10年『悪の教典』で山田風太郎賞を受賞。

「2017年 『ダークゾーン 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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