三万年の死の教え―チベット『死者の書』の世界 (角川文庫ソフィア)

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レビュー : 18
  • Amazon.co.jp ・本 (186ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041981016

作品紹介・あらすじ

誕生の時には、あなたが泣き、全世界は喜びに沸く。死ぬときには、全世界が泣き、あなたは喜びにあふれる。現代人は、死から遠ざかろうとするあまり、生の意味を見失っている。チベット仏教が伝える人類数万年の叡智をたよりに、生と死の境界線にわけ入った、生きるための思想的冒険。カラー版。

感想・レビュー・書評

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  • ユングが深い感動をおぼえ、ニューエイジにも影響をあたえたというチベットの『死者の書』に秘められた意義を、チベット仏教を修めた著者が論じている本です。

    死から新たな転生までの49日間にわたる中有ないし中陰のプロセスを説く『死者の書』についての文献的な知識についてもある程度の解説がなされていますが、著者自身の観点からこの書のもつ意義、とくに生と死をめぐるわれわれの知のシステムの配置転換をおこない、そこに実現される生動性に身を投げ入れるような体験について、著者らしい読者のイマジネーションを喚起する文章でつづられており、おもしろく読むことができました。

  • 人生の目的の一つはこの世の真実とも言える
    大自然の真理を知ることである
    死の前に悟り解脱できることは稀でしかないけれど
    煩悩から意識が離れる死の瞬間に自分の本心に気付き
    輪廻を終了するチャンスを得る強い可能性を持つ
    コレを逃すと更なる輪廻によって摩擦界を繰り返すか
    地獄の体験をすることになるという

    ここで疑問が湧き出す
    もしもクリヤーして解脱に成功したその先の意識はどうなるのか
    真理を卒業して終着駅である無に帰すのか
    極楽という調和の世界に昇格してナマヌルイ日向水に軟禁されるのか
    はたまた先を目指すのか
    実態のない無限に終点が在るはずものく
    どうやら肝心の所で尻り切れトンボのようでもある
    又相対界の他に地獄や極楽という別の階層が在るとも思えない
    すべては相対界の変化の中に在るのではないのか

    それでも面白い発見もいくつかある
    心を根城とする静寂な意識も頭脳に紛れ込むと
    憤怒な現象界に翻弄されることなるらしいということだ?
    本来の意識は善悪から離れた信頼故に謙虚であって
    相対間の距離を取る必要があるため手を出して干渉することを
    避けているだけではないのだろうかと思えるのだが?

    相対的なこの世はイリュージョンに過ぎないのに
    死というライバルだけは確かなもので
    これに勝てるかどうかが意味を持つ唯一の実態であるともいう
    医学もゲリラ戦のように対立することなく
    共生しながら棲み分けていく調節の役目を果たすものである
    それは陰陽であり生命現象におけるダンスのパートナーである

    悪の体験を手段として善と呼ばれる真理を理解することを
    目的としているのがこの世の存在理由である

    優しくアザトイ光に騙されずに
    自分の本心からなる強く率直な光を見つけ出せと言う

    経を紆余曲折に解釈しそれが一人歩きして蔓延し
    源を忘れてしまうことを避けるために
    まがりなりにも文字を使って
    いつでも戻れる原本という固定されたホームベースとして
    書き留めたのが《経》である

    その経の解釈も手段から目的として取り憑かれて
    物質化したモノが多くあり
    心理に近いと思われるモノは少ない
    意識は知識による部分感の体感から学ぶことで
    全体感を成長させることができる
    したがって善悪感はむしろ大事な作用であって
    否定するには当たらない

    つまり死を知ることで生命の意味を知る
    この本はおもに死者の書=バルド・トドゥルについての話である
    バルドとは中間・途中という意味で
    永遠にプロセスである無限性のことを示し
    トドゥルは「耳で聞いて解脱する」ことを意味する
    死に向かう時五感の内で最後まで残るのが聴覚で
    死んだ後もしばしの間魂とこの世はつながっているという

    死を前にして下世話なこの世のシガラミから解放された時
    最後に大きな解脱のチャンスが来る

    西洋ではチャネリングによって書かれたチベット密教だと言われる
    内容のものを神智学を通して広がり二度のブームを作ってきた
    最初は1930年代に降ろされたモノの出版時であり
    二度目はベトナム戦争後のヒッピー時代にもたらされた

    中沢さんはこの翻訳に伴う《誤訳》が大事な役割を生み出すという
    この場合も誤訳の効能によって西洋思想に受け入れられ
    ピチピチとした新しい解釈がシガラミのない解放された所で生まれた

    言語は存在そのもので「無意識は言語として構造化されている」
    という構造主義が常識になっている西洋文明に対して
    この世の現実は《言語の外》にあるという主張が魅力となったのだ

  • 第一章の老僧と見習い君のやり取りドラマがとてもわかりやすかった。(これがテレビで放映されたドキュメンタリードラマなのかな?)
    全編を読む前の導入にうってつけだと思います。

  • なかなか素敵でした。

  • カラフルな図像と共にチベット仏教の死生観(というよりも、死後のイメージ)を第一部で、エバンツ・ウェンツの偉大なる『チベット死者の書』誤訳とより具体的な位置づけを第二部で、『死者の書』もとい『バルド・トドゥル』の<発見>について第三部で。

    内容にあまり馴染みがないせいか、著者の語り口は柔らかいが理解には時間がかかった一冊。(特に第二章)
    頻繁に挟み込まれるカラーの図像が見ていて楽しい。

  • かなり昔に買い、難しくて読破できなかったが、この度、やっと読破できた。

    用語や表現の仕方など、やはり難しい内容だった。でも読んでみて、この手の本の中では、比較的わかりやすい内容なのではないかと思った。

    読書中は、なんとか流れを見失わないようについて行く感じで、ちょっと流れがわからなくなったら、同じ箇所を読み直す事により、流れに戻る。その繰り返しだった。

    内容的には、とてもインパクトがあり、これも真実の一つなんだと思わされた。バルドの考え方は、ある価値観からは全否定されるものなのだろうけど、妙に納得のいく内容であった。

    話にのめり込んで読んでいるのに、急に客観的な表現になったりと、あくまで一方からのみの見解に固まらないような配慮も感じる事ができた。

    三万年と言う、仏教以前のシャーマニズムの頃から蓄積、進化、融合して続いている教えには、我々が予想だにしない確定的な事象が起こっているんだと思わされた。これを否定する資格は、我々にはないだろう。そして思想は「創造」ではなく「発掘」...深い話である。

    本書は、おそらく「チベット死者の書」ほど理解困難ではないと思うが、特に一般人は、軽く読んだくらいでは理解が及ばないと思う。でも頑張って読破した後には、想いが立ち込めてくる。

  • 中沢新一著「三万年の死の教え」角川ソフィア文庫(1993)
    現代人は、死から遠ざかろうとするあまり、生の意味を見失っているという。チベット仏教が伝える人類数万年の叡智をたよりに、生と死の境界線に分け入った、いきるための思想的な考えが示されている本。個人的には非常に奥深く興味深い本です。

    *死はインゲンにとって悲しみの時ではなく、おおいなる解放の時だと言うのです。生きている苦しみから解放されるからではありません。死後にやってくるバルドの体験をとおして、未だに未熟だった人も、生命のもっとも深い心理を理解することができる。だから死はすべてを奪う物ではなく、ほんとうの豊かさを与えてくれる機会だと言うのです。

    *インド人が考えた言葉に下記の言葉があります。「誕生のときにはあなたが泣き、全世界は喜びに沸く。死ぬときには全世界が泣き、あなたは喜びにあふれる。かくのごとく、生きることだ。さあ行こう。」

  • 誕生の時には、あなたが泣き、全世界は喜びに沸く。
    死ぬときには、全世界が泣き、あなたは喜びにあふれる。
    現代人は、死から遠ざかろうとするあまり、生の意味を見失っている。チベット仏教が伝える人類数万年の英知をたよりに、生と死の境界線に分け入った、生きるための思想的冒険。

    死の書「バルド・トゥドゥル」では輪廻転生について驚くほどリアルに解説している。ゆえに、死期が近い老人たちは人里離れ、その悟りを得る(解脱する)ため青空を見て瞑想する。日本の三途の川やお花畑といった空想レベルとは比較にならない。

    チベットと言えば、
    北京オリンピック開催直前に起きたチベット騒乱。スティーブン・スピルバーグが開幕式の芸術顧問を辞退したり、EUでもボイコットが検討されるなどの事態があった。チベット・中国間のセンシティブな人権問題を考える上でも参考となる一冊。

  • チベット仏教の世界を紹介する本です。チベット仏教では死者はどういう世界へ行くのかその理論が語られます。日本で発達したいろいろな宗派の仏教に違和感を感じながらも仏教には親しみを持ちたい方は、このチベット仏教の世界に触れてみるのもいいかもしれません。著者の中沢さんが体当たりの取材をして書いておられます。

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著者プロフィール

中沢新一(なかざわ・しんいち)
1950年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。現在、明治大学野生の科学研究所所長。思想家。
著書に『アースダイバー』(桑原武夫学芸賞)、『大阪アースダイバー』、『カイエ・ソバージュ』(小林秀雄賞)、『チベットのモーツァルト』(サントリー学芸賞)、『森のバロック』(読売文学賞)『哲学の東北』(斎藤緑雨賞)など多数ある。

「2018年 『精霊の王』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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