ガラス玉遊戯 (上巻) (角川文庫)

  • 角川グループパブリッシング (1995年9月15日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784042079132

感想・レビュー・書評

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  • 本を読む幸せはこういう本に出会う為にあるのではないだろうか。そう思わせられる程深い感銘を受けた読書体験だった。
    インド、支那の思想が作品にちりばめられている事も自分の学生時代からの関心とリンクして主人公の成長への共感を深めてくれていた。
    東洋と西洋の思想がヘッセの中で結晶し集大成となったこの作品の時代背景は、今の時代と似ている様にもう感じた。
    大戦を経て産み出された理想的な「精神の王国」というモチーフを人間の「自然な生活」と絶えず対峙させ、その中で自らの使命を問い続け、変化を恐れず、内なる声に耳を澄まして行動する個人の伝記的体裁の物語。

    これを読む現代は、分断が深まり混迷を極めている。

    歴史への洞察がこの物語の白眉ではないか。
    戦禍の反省から王国は精神と知性に偏重し、歴史から離脱する。しかしその王国の内部で彼は自らが歴史の一部である事を、様々な外部の人間との交流から自覚し、いずれにも偏らず、分断ではなく統合を志して行動する。

    結末は呆気ない。
    けれどその意義が解説に訳者が引用した、ある読者の少女とヘッセの手紙の交換(訳者が直接ヘッセに写を譲られた)によって豊かに語られる。
    この解説を含めてこの角川版のやや色褪せた文庫本は自分にとってかけがえの無い宝物として書棚で輝き続けていくことになるに違いない。

  • 挫折

  • ヘッセ最晩年の小説

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著者プロフィール

1877年ドイツの南部カルヴに生まれ、スイス・バーゼルの牧師館で育つ。「詩人になるか、でなければ、何にもなりたくない」と神学校を中退、町工場や書店で働くかたわら、独学で文学の勉強を続ける。1902年、後に『青春詩集』と増補改題された『詩集』を発表。1904年『郷愁』を書きあげ、一躍人気作家となる。同年に結婚、ライン河畔の寒村に移り、長編『車輪の下』(1906)、『春の嵐』(1910)を発表。両大戦に対しては平和主義を表明する。その間、『デミアン』(1919)、『ガラス玉遊戯』(1943)などの小説を書く。1946年、ノーベル文学賞、ゲーテ賞を受賞。1962年、85歳で死去。

「2025年 『ヘッセ詩集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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