審判 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042083023

作品紹介・あらすじ

ある朝、アパートで目覚めた銀行員Kは突然、逮捕される。理由は判らない。正体不明の裁判所と罪を知らないKのはてしない問答がつづく……『城』『アメリカ』と長編三部作をなす未完の傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 『審判』カフカ
    100分で名著。
    これで取り上げて欲しい1冊となりました。

    1.購読動機
    筒井康隆さんの読書の極意と掟のなかの一冊です。プロが影響を受けた書物に関心が芽生えたからです。

    2.本書の内容
    主人公は銀行エリートです。
    30歳の誕生日に逮捕をされます。
    それが物語の始まりです。

    なぜ逮捕されたのか?
    結末は?

    読者の関心を引っ張りながら物語は淡々と展開します。

    無実を信じる被告。
    それがゆえの楽観。
    しかし、時の経過とともに、無実を証明する戦いに体力、神経をすり減らす日々。

    証明するために、自ら情報をとりにいき認識できる現実。

    裁判所なる組織。
    裁判官の上級、下級。
    弁護士の役割と現実。
    そして被告の結末。

    3.読み終えて
    やりきれない感覚と表現したら良いでしょうか?

    40歳と少しで生涯を閉じたカフカ。
    独り身であったカフカ。

    彼が未完といわれながら描いた作品は、法治国家への警鐘というレベルに留まらないと考えます。
    人間の尊厳とは?
    社会そして己でどのように守るのか?

    #読書好きなひとと繋がりたい


  • カフカの未完の長編。同じく未完の長編『城』と同じように、Kという銀行員が理由もわからぬまま逮捕され審判にかけられる不条理を描いたストーリー。Kが何を犯し、逮捕されたのかもわからないし、その辺は『城』と似たような感じ。カフカの小説を読むといつも出口がわからなくて抜け出せない。2012/701

  • 不条理というカテゴリーが適切かどうかという疑問はあるけれど、やはりカフカはおもしろい。

    カフカ本人がモデルであろうKが、ある日突然訴訟に巻き込まれる。わけのわからないまま、Kは現実に対応しようとするが、そもそも理屈のわからないではじまった事態に、現実的に対応できるわけもない。

    大雑把な骨組みをみると、これは「変身」や「城」にも似た構造なのがわかる。
    カフカにとって現実は得体の知れない不気味なものだったのかもしれない。

    彼の文学は個人的なものであったが、たくさんの人に受け入れられている。
    人は現実にたいして、得体の知れない脅威を感じるものなのだろう。それはおもに、自分と違う人間で、自分を攻撃したり、排除しようとする人間たちにたいしてだ。

    カフカはきっと、そんな現実にたいして抵抗を試み、徒労感、敗北感を覚えたのだろう。しかし、彼の文学を愛する人々は、残された作品に触れて、心地よい鬱とでも呼びたいメランコリックな空気に包まれて、思い通りにはいかない現実から束の間の休息を得るのだ。

  • カフカは代表作「変身」だが不条理小説としては「審判」のほうが好み。ある日突然訴状不明の罪により逮捕され、不毛な問答と有罪回避を模索した挙句、しまいには処刑されてしまう。権限と責任の所在が不明な官僚組織の迷路に迷い込み、しかし権威と執行は断行される。、なんという不条理!突然女性からの誘惑やアバンチュールが挿話されるのも理解不能で面白い。事象や事柄を緻密かつ厳密に描写しながらも何ら本質的・実質的なことに触れない文章は見事。ストーリーやレトリックよりただただ紡がれていく不条理な文章を存分に楽しむ作品である。

  • 最初から最後まであまりよくわからなかった

  • 訴訟という蟻地獄に落ちてしまった蟻の話。

    途中の章が途切れて全体としては未完だけど、話の最後まで一応書いてある。
    最後は急ぎ足で終わる。

  • 不条理小説と言われているけど、えっ!こんなん当たり前だなぁ~マジありそうな感じがした。
    すごくリアル。

    まぁ…これもわたしが引退しちゃったせいなのかも知れないんだけど…

    Mahalo

  • 再読。Kの罪は最後まで明かされない。誰も理由など分かっていない。ただシステムがあって動いてるだけ。あっけない最期に呆然ショック。人間の尊厳などあったものじゃない。この不条理は現実にも存在するから。恐ろしい。裏返しの暗黒寓話。カフカすごい。

  • <逮捕されたけど自分の罪状が不明…★不条理サスペンス劇場>


     ここ最近、カフカの迷宮小説について随分書いてますが、飽きずにまたしてもカフカで、今回は『審判』なのです★

     最も人口に膾炙した作品『変身』と似た構成で、特に出だしがそっくりな点は多くの人に気づかれていそうで、わざわざ書くのも痛いかなぁと知りつつも、自分の言葉で表しますと、

    『変身』も『審判』も、「ある朝、目が醒めたら○○になっていた」というパターンで書かれています★
     ある朝、目が醒めたら虫になっていた話が『変身』。
     ある朝、目が醒めたら容疑者(?)になっていた話が『審判』。
     変身はちょっとホラーっぽくて、審判はちょっとサスペンスっぽい。

     しかし、なぜよ。誰が自分に対する中傷を言ったのか、自分は何のかどで逮捕されたのか、ヨーゼフ・Kには一切説明が為されません。仮にも自分のことでありながら、自分が何したことになってるか分からない★ 周囲は自分を理解しようとしないし、自分も周囲を理解できないのです。

     ヨーゼフ・Kが陥った状況は確かに異常で異様だけど、その不条理きわまりない感覚なら、おなじみのもの。
     放置される問い、得られぬ返答。話が通じない苛立ち、伝わらないことの虚しさ。他者への嫌悪感、徒労感……。この果てなき繰り返しが日常を構成しているのです。周りが追いつめるより先にヨーゼフ=Kは自滅しかかっている節があるのも含め、ああ日常だな★ と思います。

     なんか身につまされる。だからかな、読んでて胃の辺りがむかむかしてくるのは。この世はきっと、繊細な人を胃潰瘍にするために回ってる。

     それでも、時には彼のように「ある朝、目が醒めたら自分の中に抵抗する力が満ちているような気がした」なんてことが起きるかも……!

     そういえば「ある朝、目が醒めたら○○になっていた」がこんな風にポジティブに使われたことには、驚きましたね。いいじゃん。やるじゃんカフカ。と思いました。

  • 誰もが持っている感覚を、さも特別なことかのように長々と書いたお話

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著者プロフィール

1883年プラハ生まれのユダヤ人。カフカとはチェコ語でカラスの意味。生涯を一役人としてすごし、一部を除きその作品は死後発表された。1924年没。

「2022年 『変身』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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