人間の運命 (角川文庫 シ 27-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (188ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042103134

感想・レビュー・書評

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  • ロシアのノーベル文学賞受賞作家による短編集。表題作は戦争の悲惨さを描きつつもヒューマニズムに溢れた感動作。一方で「子持ちの男」はかなり救いようのない、トラウマになるような作品。一冊の本の中に光と闇が混在してるよう。

  • 『人間の運命』は佳作。ショーロホフの文は読んでて心地よい。短い作品だが戦争とは人生とはと、考えされる作品。
    『ドン物語』は全て読んだが、こちらは初期の作品。一読の価値あり。

  • 短編集。5編ともに、戦争で何かを失った人間の悲劇を描いている。男性による問わず語り形式という点が特徴的で、小説として奇をてらうところは無い。
    命を助けた負傷兵に、戦争で死んだ息子の名をつけて養子に迎える話「他人の血」と、表題作が印象に残る。
    「夫の二人いる女」は体制賛美的で鼻白んだ。

  • せつない短編が5編収録されている。ドン河の描写が美しい。

  • 過去を克服するためには未来が必要なのではないか。アンドレイは愛する妻や子を失い、自身も捕虜としてドイツ軍に従事することで、人間として尊厳を徐々に失っていく。「p50しばらくの間、習慣で頭をすくめたものだ。殴られはしないか、とでも思うようにね。つまりドイツの収容所が、そんなくせをつけたわけさ…」過去に捉われた彼が出会った戦争孤児の少年。この少年がアンドレイにくっついて離れようとしないのもまた、彼もまた心に傷を負っているが故だろう。アンドレイも少年も、お互いがお互いに未来を見ていたのかもしれない。
    アンドレイは妻に対して辛くあたることもある。けれども心の奥底では妻を愛しく思う、この二面性。他の作品、『子持ちの男』(止むに止まれず息子を殺す父親)や『るり色のステップ』(孫が目の前で犠牲になった過去を語る老人)でも、描かれるのは妻や息子など肉親に対する激しい暴力性と、それとは真逆の優しさだ。戦争という非常事態でこそ、この二面性が強く現れるのだろうか。それともこの二面性こそが、ロシア人の本質を表しているのだろうか。
    ところで所々に出てくる「仕えただから」とか「飲むといいだ」とかは、方言を表しているのだろうか?(というか、田舎といったら何故東北っぽい言葉を使う?)原文は分からないが、仮に田舎であることが分かるような書かれ方だとしても、こんな言い回しは却って不自然でなんだかイマイチ。

  • ロシア人を知りたいならこの本を是非読んでください。
    優しい面と暴力性のある面が同居しているロシア人、それぞれ作品「夫の二人いる女」「他人の血」を読んでいくと随所にそれらが確認できます。
    ロシア文学、普段から読み慣れてないので、他にも読んでみたい。

  • 『ぼくらの頭脳の鍛え方』
    書斎の本棚から百冊(佐藤優選)70
    文学についての知識で、想像力、構想力を豊かにする
    国家や政府に頼ることはできず、信用できるのは具体的な人間だけだというロシア人の人生観をよくあらわしている。

  • 非常に感傷的で大きな優しさと、冷酷なまでに過激な暴力性、誰しも持ちえる二面性な気もするけど、ロシア人はそれがより剥き出しになっている感じかしら。。

  • これは嬉しい文庫の新版です。初版が1960年ですから、約50年ぶりと言うことになりますね。

    ナショナリズムとの関連で語られることの多いショーロホフ(旧ソ連の文豪。ノーベル文学賞受賞)ですが、社会科学と違って、文学には、流派はともあれ、人間そのものを見つめる姿勢があることを本短編集から感じました。

    共産主義や原理主義的宗教にありがちな人間に優越するイデオロギーは、微塵も感じられませんし、もちろん「断罪」もありません。決して繊細ではありませんが、ロシア文学に通底するごつごつとして素朴な人間像がそこにはあります。あのソビエトでよくぞこのような文章が書け、また、大衆や党執行部が受け入れたとしみじみ思います。

    人間は悪にも正義にもなりうること。良心の呵責はどこまでも背負わなければならないこと。決して読みやすい小説ではありませんが、体当たりする価値のある作品集だと思います。

  • ノーベル文学賞作家、ショーロホフによる短編5編。
    (ちなみに「静かなるドン」とか書いてる作家。残念なことに初めて聞きましたが)

    この本に行きつくきっかけは、

    「ぼくらの頭脳の鍛え方」 (文春新書)/立花 隆・佐藤 優
    で、佐藤優氏の推薦により。


    表題の「人間の運命」、

    「夫の二人いる女」

    「子持ちの男」

    「るり色のステップ」

    「他人の血」の5編。

    すべてがすべて、ハッピーエンドなわけじゃない。

    基本的に、きれいな描写でもない。

    でも、すべて読み終わった後に、きれいな爽快感。

    ・・・・爽快感というより、「うん。」ってうなずける、すっと入ってくる。


    中でも、「子持ちの男」が1番好きです。


    ロシアという国や、共産党といった特殊性は正直、わかりません。

    でも、この小説では、

    その土地を愛すること、

    何が自分にとって譲れないものなのかを、

    疑似体験とまではいかなくても、のぞくことはできることはできると思います。


    米川正夫氏、漆原隆子氏の訳も素敵です。




    無人島に、1冊持っていくなら、この本かもしれません。

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