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Amazon.co.jp ・本 (112ページ) / ISBN・EAN: 9784042126010
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ケルト神話を題材にした戯曲集は、アイルランドの詩人イェーツによる幻想的な物語が詰まっています。全体を通じて、1幕の構成で展開される物語は、深いテーマとシンプルな台詞運びが特徴です。特に表題作では、枯れ...
感想・レビュー・書評
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19世紀末から20世紀にかけてのアイルランドの詩人・劇作家イエーツ(1865-1939)による戯曲三篇。彼の作風は神秘主義や象徴主義の傾向をもつ一方、ケルト文芸復興と呼ばれるアイルランドの民族運動にも関わっていく。本書の「あとがき」にはイエーツの略年譜があるだけで、解説の類は付いていない。そのため、各作品が発表当時に置かれることになった時代の文脈等については、各自で調べる必要がある。
□「カスリイン・ニ・フウリハン」1902年
背景には1798年にアイルランドで起きた対英独立を目指す叛乱があるというが、それを知らないとこの作品が発表された当時の社会の中で帯びていた文脈を理解できない。謎の老女の言葉によって、青年が民族意識に覚醒し自分の人生を捨てて独立闘争に駆り立てられていく過程には、狂気にも似た不思議な趣きが感じられる。
「老 女 いつまでも忘られず
いつまでも生きて
いつまでも口をきく
その人たちの聲を國民はいつまでも聞く」
□「心のゆくところ」1894年
異教の存在が少しずつ自分の世界と内面に入り込んでいく過程が、静かにかつ神秘的でどこか禍々しく描かれている。これが象徴主義の雰囲気なのか。キリスト教とケルト信仰の相克が背景にあると思われる。若い花嫁は、抑圧されてしまった生と世界をひとつの遊戯にしてしまいたい、と願ったのか。
「メリイ わたしは世界を持つて
それをわたしの兩手でこなごなに碎いて
そのくづれて行くのを眺めてあなたが微笑ふのを見たい」
「子 供 ここにゐてあたしと一緒においで、花嫁さん
お前があの人のいうことを聞けば、お前もほかの人たちと同じやうになるよ
子供をうみ、料理をし、乳をかき廻し
バタや鶏や玉子のことで喧嘩をし
やがてしまひには、年をとつて口やかましくなり
あすこにうづくまつて顚えながら墓を待つやうになるよ」
「子 供 あたしはお前を連れて行つて上げるわ、花嫁さん
誰も年をとつたり狡猾になつたりしない
誰も年をとつたり信心ぶかくなつたりしない眞面目になつたりしない
誰も年をとつたり口やかましくなつたりしないところへ
そして親切な言葉が人を捕虜にしないところへ」
□「鷹の井戸」1921年
生と世界の虚無の深淵を覗いた者は、一生その呪いに苦しめられるしかない。自己の生の意味を追求せずにはおれない者は、そしてそれが不可避的な敗北に終わることを自覚していながら、にもかかわらず/それでもなお/それゆえにこそ、追求の徹底性を中途で放棄することができない者は、無際限の追求の裡に終に身を破滅させるしか在りようがない。世界から、自己意識の否定作用・対自作用により、虚無の距離で隔絶されてしまった者は、世界に埋没する即自的な在り方に返ることは不可能である。ただただそうした「痴かさ」を、到り得ぬ理想として外部から羨むしかない。
「智慧あるものぞにがきいのちを生くる」
これは、ドストエフスキーの「安っぽい幸福か、高められた苦悩か」にも通ずる主題ではないかと思う。或いは、ベケット『ゴドーを待ちながら』との関連ではどうなのだろうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
訳:松村みね子、原書名:At the Hawk's Well(Yeats,William Butler)
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読めない漢字多し^^;
さすがに言葉の選びが綺麗です。 -
シンプルなのに飛び飛びで深い。やはりこの時空操作感は日本の能に傾倒した作者の芯の部分だろう。ケルトのことはわかりきらないが、短い内容に宇宙を表した、真面目な人にのみ許される表現。一生ものの謎々感覚を内包した作品。
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518夜
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アイルランドの詩人、イェーツがケルト神話を題材にした戯曲が3編収められている作品集です。もう、絶対上演されない(と思っている:笑)、すべて1幕の戯曲です。表題作は楽人を舞台に置いて語らせるなど、日本の能に想を得た舞台趣向です。時代はアイルランドの英雄時代。不死の水が沸くという枯れ井戸を見つめ続ける老人と、そこに偶然行き着いた若者の問答です。いつ湧き出るとも知れない水を待ち続けることができるのか…動きの少ない、台詞だけで進むお芝居です。「カスリイン・ニ・フウリハン」は「フウリハンの娘のカスリイン」という意味です。一見、婚礼を目前にした男女の前に現れた老女の言うことには…という幽霊めいた話ですが、「カスリイン・ニ・フウリハン」はフランスの「マリアンヌ」と同じく、祖国アイルランドを擬人化したものということで、根っこのところに愛国運動がダイレクトに入った作品でもあります。予備知識がないと、日本人には絶対伝わらねぇ(笑)。「心のゆくところ」もたぶん、上演の機会はない作品(笑)。妖精物語を読みふける新妻と、それを快く思わない舅(古来の伝説だから理解はしている)と姑。妻を愛する夫と、「その本は悪魔の本だから捨てておしまい」という神父。ケルトの信仰とキリスト教が交錯する劇です。そこにある子どもが現れて…という幻想的なお話です。訳も端正で美しく、どれも幻想的な物語運びで好きなのですが、作品が作品なので、読んで台詞運びを楽しむか、脳内演出するしかないという悲しい現実です(苦笑)。☆3つ半くらいなのですが、切り上げてこの☆の数とします。あまり難しくないので、ペーパーバックなどでも読んでみてもいい作品集です。
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2007/5/10購入
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