真珠 (角川文庫 赤 157-8)

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  • Amazon.co.jp ・本 (102ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042157083

感想・レビュー・書評

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  • 98ページで終わるのだが、82ページまで読んでいる。でもどうなるのかまったくわからない。この凝縮された話しはスリリングだと思う。

  • 漁師のキーノは妻のフアナ、赤ん坊のコヨティートと共に雑木小屋で真面目に質素に暮らしていた。
    ある日漁で牡蠣の中から巨大な真珠が出てきた。この真珠を手にした事で周囲が俄にざわめき、家を燃やされ命まで狙われるようになる。
    ーーーーーーーーーーーーーーーー
    スタインベックの作品中最も短い小説だそうです。思わぬ富を手にし、欲に翻弄される人間の姿を描いたわかりやすいテーマなんだけど、一種独特の表現で詩を読んでるような影絵を見ているような不思議な感覚がする。

    主人公のキーノが自身の心の動きや周りの人々の感情、それから自然の波動などを音楽や調べとして捉えている。貝を採っている時の希望を誘う調べ、真珠を得た後に感じる人々の悪の歌など、空気感をそんな風に表現している。

    悪の追手から逃げるシーンは、半端なホラー小説よりもずっと怖かった。

  • 翻訳の日本語が古いのかと思ったが、原文が散文的な書き方なのでその雰囲気を出したということが解説に書いている。
    意図的にこのような書き方ができるのは、技術が高いということか。

  • (2011.02.03読了)(1971年ころ購入)
    お正月に田舎に帰ったとき、神さんの本棚から持ってきました。神さんが大学生の頃に読んだのでしょう。「赤い子馬」「二十日鼠と人間」等もあったのですが、「真珠」だけ持ってきました。海外文学のうち、ノーベル文学賞受賞者を優先して読もうということですが。
    覚えているうちに読んでしまわないと積読の山の中に行方不明になってしまうので、図書館から借りてきた本を読む合間に読みました。
    現在ではあまり使われることのない漢字が結構使われていたり、翻訳文が硬かったり、(1950年代ぐらいの日本文学の文章もこんな感じだったとしたら、日本語の文章が、現在と大分違うということでもあるのですが)、読み進むのに難渋してしまいました。
    半分過ぎたあたりから、文章に慣れたためか、ストーリー展開のためか、どんどん引き込まれてドキドキハラハラしながら読ませてもらいました。
    50歳過ぎぐらいからの、学校で、古文・漢文を履修した覚えのある方なら、面白く読めるように思います。
    舞台は、メキシコ(カリフォーニア湾)の貧しい漁村。金と権力のある人たちに思うように支配されている地域の話です。今でも、世界のあちこちにこのような地域がありそうです。
    漁師のキーノ、その妻フアナ、その嬰児コヨティートの物語です。
    ある日の朝、嬰児コヨティートがサソリに刺された。母親のフアナは、コヨティートの刺された傷の上に唇を押し当てて強く吸って、サソリの毒を吸い出し唾を吐いた。
    このままでは、子供は死ぬかもしれないので、医者に診てもらおうと、町の医者まで歩いて連れていった。医者は、お金を取れそうもない貧乏人は相手にしない。
    医者は、下男に患者からお金がとれそうもないことを確認させると、居留守を使って門前払いにした。
    フアナは、やむを得ず、海草を使った民間療法をコヨティートに施し様子を見ることにした。キーノは、カヌーを持っているので、真珠貝を採ることを生業としている。
    海に潜って牡蠣をとり、真珠が含まれていればそれを取り出し、仲買人に売って暮らしている。この日見つけた大きな牡蠣を開けてみると「月のように丸い、大きな真珠が横たわっていた」(24頁)
    キーノが世界一の真珠を発見したという噂はあっという間に、町中に広がった。医者もこの噂を聞きつけ、早速往診にやってきて、コヨティートに治療を施してくれた。
    医者は、真珠のありそうな場所を確認して帰って行った。キーノは、真珠の隠し場所を変えた。その夜、誰かが、キーノたちの小屋に忍び込み、真珠の隠し場所を探っていた。キーノは、そのものをナイフで刺したが、逃げられた。
    翌日、真珠の買い取りをする代理人の居る場所を訪ね、大きな真珠を見せた。真珠買い取りの代理人は、この真珠は大きすぎて買い取り手がつかないだろう、といい、骨董品として興味を持つ人か、博物館の収集品になるぐらいしかないものたいした値段は付けられないだろうと言う。1千ペソなら買ってもいいという。キーノは、5万ペソの値打ちがあると主張したが、相手にしてもらえない。
    代理人は、何人かいるのだが、お互いに買値を競って吊り上げるようなことはせず、貧しい漁師たちからできるだけ安く買いいれることを誇りにしている。
    キーノの考えている値段にはとてもなりそうもないので、首都に行ってでも売ってくると言って、そこでは売らずに帰ります。
    その晩また、不審者が小屋の外にいるので、キーノは、追い払ったが、自分も傷を負ってしまう。このままでは、自分たちの命が危ないと感じたフアナは、キーノの寝たすきに、真珠を海に捨てようとしたが、見つかって止められてしまう。
    キーノは、海からの帰り道で、男たちに襲われ一人は殺害したが、深手を負ってしまう。キーノの身体から真珠を見つけることのできなかった男たちは、小屋に向かったらしい。
    海岸から遅れてやってきた、フアナは、道に転がる真珠を見つけ、キーノと一人の死人を見つける。死人を藪に隠し、キーノを介抱し、家族で逃げることにします。
    コヨティートを連れに小屋に戻ったら、小屋の中は荒らされ、さらに小屋に火を付けられてしまいます。キーノは、海岸のカヌーのところに行ってみると、カヌーの底に穴が開けられて使える状態ではありませんでした。
    キーノは急いで、小屋に戻る途中でコヨティートを連れたフアナに出会い、小屋が焼かれたことを知ります。
    キーノ達は、キーノの兄のフアン・トマスのもとに行き、しばらくかくまってもらいます。
    人一人を殺しているので、いずれ逃げるしかありません。理由はどうあれ、権力者は、貧乏人の見方はしてくれないので。
    キーノ達三人は、一生懸命逃げるのですが、追跡者は、獣を負う専門の者たちを雇い、的確に追いかけてきます。
    結末を知りたい方は、ぜひ手にとって、読んでみてください。

    ●不吉な真珠(44頁)
    「この真珠は罪悪みたいなものです!これは私たちを滅ぼすでしょう」
    ●男(66頁)
    「おれは男だ」と彼はいった、それはフアナにとってある事柄を意味していた。それは、彼が半ば狂人で、半ば神であることを意味していた。

    著者 ジョン・スタインベック
    1902年、カリフォルニア生まれ
    スタンフォード大学中退
    1929年、『黄金の杯』で作家デビュー
    1937年、『二十日鼠と人間』で文壇的地位を確立
    1939年、『怒りの葡萄』でピューリッツァ賞を受賞
    1952年、『エデンの東』を発表
    1962年、ノーベル文学賞受賞
    1968年、心臓発作のため死亡、享年66歳

    ☆ジョン・スタインベックの本(既読)
    「怒りの葡萄(上)」スタインベック著・石一郎訳、角川文庫、1956.09.10
    「怒りの葡萄(中)」スタインベック著・石一郎訳、角川文庫、1956.09.20
    「怒りの葡萄(下)」スタインベック著・石一郎訳、角川文庫、1956.11.05
    「真珠」スタインベック著・大門一男訳、角川文庫、1957.08.15
    (2011年2月6日・記)

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