青い城 (角川文庫)

著者 : モンゴメリ
制作 : 谷口 由美子 
  • 角川グループパブリッシング (2009年2月25日発売)
4.07
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  • 本棚登録 :591
  • レビュー :83
  • Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042179092

作品紹介

貧しい家庭でさびしい日々を送る内気な独身女、ヴァランシーに、以前受診していた医者から手紙が届く。そこには彼女の心臓が危機的状況にあり、余命1年と書かれていた…。悔いのない人生を送ろうと決意した彼女がとった、とんでもない行動とは!?ピリッと辛口のユーモアで彩られた、周到な伏線とどんでん返し。すべての夢見る女性に贈る、心温まる究極のハッピー・エンディング・ストーリー。

青い城 (角川文庫)の感想・レビュー・書評

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  • モンゴメリ後期の単発作品。
    大人の女性向けのロマンスもので、「赤毛のアン」シリーズではありません。
    楽しみにとっておいたんですが~ついに読みました。
    面白かったです☆

    29歳の独身女性に巻き起こる事件。
    内気でぱっとしない外見のヴァランシー・スターリングは、愛称でドス(本人は大嫌いな呼び名)と呼ばれています。
    父を早く亡くしたつつましい家庭で、高圧的な母親にきつく束縛されながら育ちました。
    口うるさい親戚に囲まれ、一つ年下の従妹オリーブが美人で明るい人気者だったために、割を食ってもいました。
    これから結婚が出来る望みを捨ててはいないけれど、これまで恋人が出来たこともないのは、苦にしています。

    いつも怯えていて、逆らうことも出来ず、言いなりになっているヴァランシー。
    ヴァランシーの楽しみは二つだけ。
    自分で夢に描いた空想の世界に入り込むこと。
    図書館で借りてくる本を読むこと。
    小さい頃から目をつぶれば、青い城を思い浮かべることが出来たのです。
    ありとあらゆる美しいものがあるお城で、夢のような恋人と暮らすお姫様という自分を思い描いていました。

    最初のほうは嫌なことばかりが書き連ねられ、「モンゴメリ、本気?」と思わずその嫌な文章を読み返してしまったほど。
    それほど、ばしっと書かれていて猶予がないのですが、それもどこか透徹したユーモアが。
    切れる寸前の心境だったことをうかがわせ、「あと1年の命」と医師に宣告されたヴァランシーが思い切った行動に出る前哨となります。
    親戚の集まる祝いの席で、これまで言えなかったことを言い放つヴァランシー。驚愕する一同に苦笑。読者は内心、快哉を叫ぶ?

    子供の頃の級友シシイが、看病する人手も足りない状況で重い病の床に伏していると知り、家政婦として働くことを決意、シシイに寄り添うのです。
    スターリング家の社会的地位としては明らかに格下の仕事で、家族は勘当同然の態度に。
    しだいに自分らしく生きるようになるヴァランシー。
    シシイのことを気にかけてくれていたバーニイ・スネイスと親しくなり、あるとき「結婚してくれない?」と自分から申し込みます。自分はあと1年足らずの命だからと。
    バーニイは森に一人で住み、身元もはっきりしないので、街での評判は悪い男でしたが、ヴァランシーは惹かれていたのです。
    街から離れた森はとても美しく、これこそ青い城だと思うのでした。
    ところが‥?

    面白おかしく、はらはらさせる展開で、大逆転のハッピーエンド。
    良く出来た喜劇なので、ミュージカルにしたら面白そうだなと思ったら、やはり舞台化されたそうです。
    モンゴメリ自身が祖父母に厳しく育てられたのもありますが~牧師夫人として世間を見ていて、おとなしい女性が不当な目に遭うのを見てきたからじゃないのかな。
    苦労の甲斐あってお似合いの恋人に出会い、個性を花開かせるヒロインに嬉しくなります☆

    原著は1926年の発行。
    ルーシー・モード・モンゴメリは、1874年プリンス・エドワード島生まれ。36歳で結婚後、牧師の夫の赴任先で暮らす。
    この作品の美しい森のモデルは、トロントの北バラにあるマコウスカ湖周辺だそう。

  • たぶん高校生のころ、単行本で読んで、赤毛のアンよりおもしろい!!と思い、かなり感動した記憶がある。再読して、だいたいの展開は覚えていたので驚きはなかったんだけど、やっぱりおもしろかった。ジェイン・オースチンみたいな感じ。上品なハーレクインって感じもあるけれど。なにもかもを恐れてびくびくと不幸に生きていた主人公が、うってかわって自分の生きたいように、どころか、型破りな生き方をはじめるのはやっぱりわくわくしたし。
    モンゴメリはすごく風景描写がきれいで好き。風景にわくわくするってところもあって。こんな風景が見られたらそれだけでも幸せだろうなあという。

  • こんなにも
    喜怒哀楽という人の心の感情すべてを
    めいっぱいに引き出してくれた
    物語がかつてあったでしょうか...

    苛々と怒りにムカついて、ソワソワして
    ドキドキして、嬉しくなって微笑んで
    可笑しくなって大笑いして。
    哀しみに泣き、喜びには感極まって涙して
    そして予想外の展開には目を丸くして驚いて。

    それがどんなことかと語ればきっと
    きりなく永遠と、それこそアン・シャーリーのようなおしゃべりが
    止めどなく続いてしまいそうです。(笑)
    なのでここではほんの一部を...

    これまでずっと自分の殻の中に閉じこもって、誰に対しても
    口答えなど一切したことがなかった主人公・ヴァランシー。
    ほぼ初めて母親に立ち向かう姿勢を見せた時
    母親は驚いてこういいます──

    "おとうさんがそれを聞いたらお墓の中でひっくり返るでしょうよ"

    それに対しするヴァランシーの切り返しの一言がもう!
    ツボにはまって大爆笑しちゃいました。
    しばらく笑いが止まらなかったくらい...^^

    29歳にして独身のまま、家族親戚身内の柵に縛られ、"自分らしい"ことなど
    もってのほかのヴァランシーでも、図書館で借りた本を読むことは大好きで
    お気に入りの作家・ジョン・フォスターが語る言葉を引用しては
    自分の正直に思う気持ちのうちを当てはめて、心の拠り所にしている
    ヴァランシーですが、ジョン・フォスターの引用された言葉のそのほとんどが
    ヴァランシーだけでなく、私自身の心にまで深く響いて、それが
    あまりにも身に染みるので、ジョン・フォスターって....どんな人??と
    実は検索をかけて調べてみたりしました。
    マジでです。(笑)

    それがいくら調べても出てこない。
    小説の中では古典文学などが引用されることはよくありますから
    てっきり~とは思いつつ、注釈がついていないことも気になってはいましたが...

    それがあぁ...なんと!!

    最後まで読み終えて、改めて
    私はモンゴメリという作家さんに惚れこんじゃっているのだなぁと
    つくづく思いました。はい♪私も好きですジョン・フォスターさん。(笑)

    ヴァランシーが暮らす森の
    移ろう季節の木々や花々の、風景描写の美しさはさることながら
    惨めで哀れで横暴で、憎くて醜い、情けない、それでいて
    どこかに優しさが隠れていて、揺れていて傷ついて哀しんで
    なのに倖せを感じている...前向きな....
    人の心の内に潜む感情を、巧みな筆致で最大限に引き出して感じさせてくれる
    モンゴメリさん。大好きです。

    意外などんでん返しが待ち受けているシンデレラ・ストーリー。
    読んでよかった♪心洗われました。

  • 傑作。主人公が29歳の「みっともない」オールドミスで、心臓病といったら、ハッピーエンドになりようがないと思うが、読後感は非常に爽快である。主人公ヴァランシーに襲いかかってくる精神的圧殺は、19世紀英国上流階級社会(舞台はカナダだけど)の恐ろしさを思い知る。こういった社会的圧力は東洋も西洋もないんだなと思う。だが、死を覚悟した主人公がほんとうに生きるために、行動を起こしてからは、これらの精神的圧殺をはねのけ、ついに理想の夫を見つけていく所は痛快にして美しい。ヴァランシーとバーニーの間の関係は、一種の夫婦の理想なんじゃないだろうか。人間の「再生」というテーマでは、ゲーテの『ファウスト』とか、黒澤明の『生きる』などと言った作品が思い出されるが、注目すべきは、モンゴメリーが哲学や政治の文脈ではなく、「生活」の中で、この人間の再生を描いていることだ。表面的にはロマンス小説のように読めないこともないが、文学的テーマも深いものがある。何かにしがらみを感じている人は読めば、得るところがあるであろう。読み出したら止まらない、ストーリーテリングや自然描写は魅力的、美しい自然の中で紡がれる静かな愛情の描写にも心を打たれる。惹句には「すべての夢見る女性に」と書いてあるが、男性が読んでも十分楽しめた。

  • ヴァランシー・スターリングは、29歳のオールド・ミス。

    彼女は、実家で一族の者たちを顔色を窺うように生きているような女性だった。

    具合の悪かった心臓を診てもらいに医者に会いに行ったのだが、
    なんとその時は、医者の息子が事故に遭ったと連絡があったところ。

    彼はすっかり動転してしまっていて、ヴァランシーはちゃんと診てもらえない。

    医者にすらきちんと相手にされないのだと落ち込むヴァランシーだったが、
    その後衝撃の手紙が彼女のところに届く。

    そこには、狭心症のために余命1年と書かれていたのだ。

    だが、彼女は、ここで大きく変わるのだ。

      死を恐れていないといっても、それを無視するわけにはいかない。
      ヴァランシーは、死を恨んでいた。
      生きてきたという実感もないのに、もう死ななくてはならないとは、いかにも不公平だ。
      暗闇の時間がすぎていくにつれ、彼女の心の中には反抗の炎が燃えあがってきた。
      それは、彼女に未来がないからではなく、過去がなかったからだ。
      (中略)
      あたしは、いつも、ぱっとしない、取るに足らない者だった。
      そう言えば、こんなことを何かで読んだことがあるわ。
      女には、それで一生幸福だと感じる一時間がある、
      それは、見つけようと思えば見つけられるものだ。
      でも、あたしには見つけられなかった。
      もう、決して見つけられないんだわ。
      ああ、もしその一時間があたしのものになったら、いつ死んでもいい。

    この燃え上がるような気持ちに強く強く共感する。

    私は、決して、抑えつけられて生きてきたわけではないのだが、
    生きたい、生きたいと思ってしまうのだ。

    この思いは何なのだろう。

    彼女は、家を出て、「がなりやアベル」と呼ばれる老人の家に住み込み、
    アベルの娘で、胸の病で余命いくばくもなく、また、過去の心の傷により、
    ほぼ人づきあいをしなくなっていたシシィの看病をするのだ。

    彼女自身も死を意識しながら、同じく死に臨もうとするシシィを看病する。

    ふたりは心を開いていき、そして、ヴァランシーはシシィを看取る。

    彼女が幸せそうに死んでいく姿をヴァランシーは「なんと美しい!」と思う。

    実家に住んでいる頃から、なぜか気になる存在だったバーニイ・スネイスに、
    彼女は病のことを打ち明け、自ら結婚を申し込む。

    なぜなら、彼女は気づいてしまったから。

      今や、ヴァランシーは自分がバーニイを愛していることをはっきりと知った。
      きのうまでは、彼女は自分だけのものだった。だが、今はもうこの男のものだ。
      しかし、彼が何をしたわけでもない―何を言ったわけでもない。
      彼女を女と見てくれもしない。だが、それはどうでもいいのだ。
      彼女は無条件に彼を愛しているのだ。彼女の中のものすべてを彼に捧げるのだ。
      もはや、この愛をおさえつけたり、否定したりすまい。
      ヴァランシーは自分があまりにも完全に彼のものだという思いがして、
      彼以外のことを考えること―彼のことを考えずして物事を考えること―すら
      不可能な気がしていた。

    もし、自分の命があと1年しかないのだとしたら、いったい自分は何をするだろう。

    いや、自分の命が1年しかないとして後悔しない生き方を自分は今しているの?

    そう考えずにはいられない。

    ヴァランシーに深く共感する点は、さらに2つある。

    ひとつは、タイトルにもある「青い城」の存在だ。

    現実がどんなに苦しくても、誰しも、自分だけの世界を持っている。
    たとえ、呼び名は違っても。

    そして、心の支えとして、本があったこと。

    彼女は、ジョン・フォスターの本の影響を受け、
    その本の言葉が、決断を促したり、
    過去のしがらみに戻りそうになってしまったときに気づかせてくれたりする。

    「世の中のほとんどすべての悪は、その根源に、
    だれかが何かを恐れているという事実がある」や

    「もしあなたがある人と、三十分間口をきかずに座っていられて、
    その上なんの気まずさもないのなら、あなた方二人は友達になれる」など。

    作中作家であるジョン・フォスターは、印象的な言葉を残している。

    自分にとってちょっと意外だったのは、
    本書の語り口がかなりの毒舌で辛口だったことだろうか。

    私は毒の強いものはダメだと思っていたのだがそうでもなかったらしい。

    身近なある友人に似ているこの語り口をにやりとしながら読了した次第だ。

    その友人とモンゴメリはどこか似ているのかもしれないと思ったのだった。

    自分の心の支えとしての自分だけの世界と本と本読み本語りを共にできる友だちの存在。

    リアルはいろいろなことがあったし、これからもいろいろなことがある人生だけれども、
    本当に必要なものはちゃんと求めてきたし、ここにあるんだと感謝したいと思った。

  • ハードカバーで出ていた時は触手が伸びなかった29歳のオールドミスが主人公の物語。結婚していないというだけで半人前扱いをされつまらないジョークのネタにされ不機嫌を振りまく実母や親戚の言うなりに生きているヒロインが、あるきっかけから他人のためではなく自分のために生きようとする一年間の出来事。
    ロマンス小説を読み慣れたスレた読者としては最後のたたみ方にもうちょっと情緒があってもと思わないでもないが、ヒロインが自分のために生きる日々の描写が素晴らしいので欠点を補って余りある。

  • 妄想番長ざるめ、空想の魔術師モンゴメリに完敗<(_ _*)>ちょうどアンを再読しようかなぁ( ̄~ ̄;)と思っていたところに、皆さまのレビューを拝読し、これは私好みに違いない!と本屋へ走った(^-^)そして、アンの世界と同じくらいヴァランシーの世界も好きに!(*≧∀≦*)特に自分の余命を知ってからのヴァランシー最高(^o^)

  • 恋愛ものは普段読まないが、アン以外のモンゴメリ作品に興味を持ち読み始めたらすぐにのめり込み一気に読んでしまった。
    余命宣告を受けたことにより、今までのしがらみだらけの人生から吹っ切れ自由に生きることを決めたオールドミス・ヴァランシー。彼女の一つ一つの言動が痛快。

  • 「本の雑誌」か「おすすめ文庫王国」のレビューを読んで買ったことまでは覚えている。
    アニメ「赤毛のアン」に出てくるような人たちが登場する世界。自分がどうしてこの本を読もうと思ったのか不思議に感じていたところ、ヒロインが突如豹変!見事なはじけっぷりを見せる。おお、こういうことでしたか。
    どなたかは存じませぬが、レビューを書いた方に感謝。なかなか心地よい読書ができました。

  • モンゴメリによるラブシーン無しの元祖ハーレクインとでも申しましょうか。
    ラブストーリーとしても面白いのですが、私としては主人公(29歳オールドミスで一族から軽く扱われている)が、ある切っ掛けで今までの生き方を変え、自分の内なる声に従って悔い無き人生を送ろうとする再生の物語として受け取りました。
    作者モンゴメリも多分こういった生き方が憧れだったのではないかな。
    主人公に翻弄される一族の姿が喜劇的でもありました。
    この時代に女性がのびのびと生きるって大変。読書すら罪悪だなんてねえ。

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