阿Q正伝 (角川文庫 赤 204-1)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042204015

感想・レビュー・書評

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  • 狂人日記。悪夢のような自己暗示にかかっている。その時代、その状況によっては、ありえない思い込みとも言えない。
    故郷。親、子の第と重ねて描かれている。そんなさみしさに、次は出会わず済むといい。ずっと同じ目線で。
    阿Q正伝。うらやましくなるほどポジティブだ。しかしその楽観的な部分が彼に禍をもたらす。その気性により彼は混じり気なく彼らしく活き、そして終わりを迎える。ここまで一貫して活きられるなら、それもユニークで芸術的な生き方だ。

  • 4月30日読了。魯迅の名作だがはじめて読むことができた。態度は卑屈だが内面で「精神的勝利」をおさめる阿Qの栄光と転落の物語。無学で根拠もなく尊大な態度を取る阿Qもそうだが、周囲の顔色をうかがい自己保身のために偉い(と、自分が判断した)者にこびへつらう阿Qの周囲の人々も、中華人民の典型と言えるのではないか・・・?原文が中国語だからか、ウェットでない突き放したような文体が印象的。

  • 狂人日記、孔乙己、小さな事件、故郷、阿Q正伝、家鴨の喜劇、孤独者、藤野先生、眉間尺が載っていた。特にお勧めは故郷、孤独者、阿Q正伝、孔乙己である。訳本だからか、すごく読むのに時間がかかった。
    「阿Q正伝」:阿Qは村の社に住み、村人が忙しい時に手伝いをして、生計を立てる貧しい人であった。喧嘩は弱いが、プライドだけは高く、いつか村人達を見返してやろうと思っていた。ずいぶん投げやりな人生に感じ、言い訳をつけたりしながら、自分で自分を守る彼。しかし、彼は村の人はあまり外へ出ないのに対し、城下の町へ行ったりしていた。
     この本では改革だと、声を上げても、実体、中身のない改革で何も変わってはいない。という事も暗に述べている気がする。
     最後阿Qは泥棒の嫌疑をかけられ、死刑にされる。村人達は銃殺されたのは彼の悪い証拠だ、悪くなかったらどうして銃殺されることがあろうかとみんな言った。まるで御上の言う事は全て正しいのだ。と、何も疑問に思わない事も、問題視しているのではないかと思った。
     阿Qはどこか間抜けで、憎めないところがある気がする。彼は悪かったのであろうか。
     しかし、よく庶民を愚民にしたような作品を書いた魯迅は、当時よく処罰されなかったものだなと思う。
     

    「故郷」:大人になって子供の頃仲の良かった手伝いの子と、久しぶりの再会を楽しみにしていた。しかし彼は目から輝きが消えた大人になっていた。身分、立場の違いが、何も知らない子供の頃のように、無邪気に隔たりなくつきあう事を妨げた。しかし、彼らの子供は、彼らの子供の頃のように、隔たりなく仲良く遊んでいた。まるで自分達の子供の頃のように。そして、彼らの将来、時代の繰り返し、大人になってからの再会の失望を想像させられる終わり方だった。
     孤独者:
    09.05.13

  • 当時の中国社会の中ではかなり異色の小説であったと思う。
    綺麗事ではなく人間の本質のようなものを表現したかったのではないか。

  • 辛亥革命時代に生きた魯迅の啓蒙主義的小説のエッセンスが詰まっている。芸術性はともかく中国独特の面子や階級を重要視する散文的会話は面白い。ドロドロとした復讐心が表に出て革命当時のエネルギーを感じる。

  • 実家のボロボロの本を再読。中学の教科書でもじっくり読んでた「故郷」がやはり一番味わい深い。他の8編はおもしろいとは思えなかったが、20世紀初頭の中国の庶民の描写としては興味深かった。ジョイスがダブリン市民の暮らしを淡々と描いているのを思い出した。特に「孔乙己(クンイーチー)」の居酒屋の描写がいい。
     
    ・四文の銅貨を投げ出して、一杯の茶碗酒を買い・・・スタンドに倚りかかって立ち、熱いやつをひっかけて一息いれるのである。もしもう一文奮発するならば、筍(たけのこ)の塩漬を煮たものとか茴香豆(ういきょうとう)を一皿買って、酒の肴にすることができるし、もし十何文か出せば、肉か魚の生臭料理を一品買うことができる。

  • よき

  • 難しかった。日本語や表現が古いという事も若干あるが、それ以上に魯迅の置かれていた環境を想像する事が非常に難しいからだ。清朝から中華民国への民族革命(辛亥革命)、日本や西欧列強国による支配、思想解放運動等の混乱・流血の中での訴えに対して、それを正面から受け止められる資格や要件を自分は満たしていない。

  • この本は短編集です。
    学生時代以来、久しぶりに魯迅の小説を読みました。
    当時の中国の様子がわかります。
    「阿Q正伝」では運命の不条理や人の残酷さを読み取りました。
    時代や社会が変わっても人の振る舞いが大切であるということが変わりない事実である。

  • 自由気ままなその日暮らしを送る阿Q。後先考えずに好き勝手やった揚げ句、わけもわからぬまま時流に乗って「革命」を唱え、わけもわからぬまま処刑されてしまうという救いようのない愚か者の話。
    魯迅は1881年生まれの中国人だけど、マスコミや世論に流されやすい現代日本人への警鐘とも読める。

    中国現代史やに疎いので、どう読めばいいのか(革命翼賛?反革命?)戸惑ったりもしたけど、巻末の解説にある程度助けられた。

    表題作のほかには、「小さな事件」というエッセーと、「故郷」という短編がよかった。

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著者プロフィール

本名、周樹人。1881年、浙江省紹興生まれ。官僚の家柄であったが、21歳のとき日本へ留学したのち、革新思想に目覚め、清朝による異民族支配を一貫して批判。27歳で帰国し、教職の傍ら、鋭い現実認識と強い民衆愛に基づいた文筆活動を展開。1936年、上海で病死。被圧迫民族の生んだ思想・文学の最高峰としてあまねく評価を得ている。著書に、『狂人日記』『阿Q正伝』『故郷』など多数。

「2018年 『阿Q正伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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