動物農場 (角川文庫)

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  • 角川グループパブリッシング (1972年8月21日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (290ページ) / ISBN・EAN: 9784042334019

作品紹介・あらすじ

一従軍記者としてスペイン戦線に投じた著者が見たものは、スターリン独裁下の欺瞞に満ちた社会主義の実態であった……寓話に仮託し、怒りをこめて、このソビエト的ファシズムを痛撃する。

感想・レビュー・書評

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  • 角川文庫版では、タイトルの『動物農場』の他に「象を討つ」「絞首刑」「貧しいものの最期」の短編もおさめられている。「動物農場」は、動物に政治的課題を託しているため、面白さも感じながら読むことができる。

    しかし、本書に掲載された他の短編は、支配するもの、されるものの対立の中での人間のおぞましさを、内からえぐりだすかのように描ききっており、強烈である。描写力、すごいとしか言いようがない。ジョージ・オーウェルの内部にあるマグマのようなものが、吹き出したかのような作品だ。

    訳者解説が充実していて、ジョージ・オーウェルについて理解が深まった。


    以下、自分のためのメモ




    彼にとって「動物農場」は、自信作でありながら出版に至るまでは困難を極めた。理由の一つは、戦時下での用紙不足。主たる理由は、スターリン独裁下のソビエトに対する攻撃。刊行されたのは、第二次大戦の終結した2日後。イギリス、アメリカ(自由主義)VS ソビエトとその衛星国(社会主義)の対立により、タイミングのよい時期。

    「動物農場」が終わった後から「一九八四」の物語がはじまっていることになる。執筆中、彼の病状は悪化しており、「もしわたしの病気があれほどひどくなかったら、あの物語もあんなに陰うつなものにならなかっただろうに」というコメントを残している。

    彼は、小説より評論の方が圧倒的に多い。

    「動物農場」→はっきりとした自覚をもって、政治的目的と芸術的目的とを融合させようとした最初の作品。ソビエト的ファシズムの実態を、さらに広く世界に訴え、警告を与えたいという意図のもとに書かれた。

  • 笑えて、考えさせられて、絶望的に楽しい。
    血のにじむような、パンクで愉快でダークで知的なドタバタ物語。

    「動物農場」ジョージ・オーウェルさん。



    アメリカ大統領に就任したトランプさんへの不安?の御蔭で、ジョージ・オーウェルさんの「1984年」が全世界的に売れているそうです。
    その「1984年」と並ぶ、オーウェルさん不滅の代表作が「動物農場」だそうで。

    なんだけど、ここまで「いつか読もう」で未読でした。



    オモシロイ。

    「1984年」よりも、風刺物語な分だけ、楽しく読めます。
    (「1984年」は、終盤はもう、胃が重くつぶされるような悲しい感じが...)

    つまりは、人間社会を動物たちで戯画化した、「鳥獣戯画」の世界。

    そして、あまりにも有名なことですが、ロシア革命(1917)からスターリン独裁粛清の時代(1930年代)を経て、第二次世界大戦開戦(1941)に至る、ソヴィエト連邦がモデル。

    もっと言うと、スターリン批判のようなことになっています。

    それは、「ああ、この豚がスターリンなんだな」という具合に、なんとなくそのあたりの歴史の流れを知っている人はすぐに分かります。

    特段に知らない人でも、ウィキペディアレベルの知識で読めば分かります。

    なんですけれど。


    この本がすごいなあ、と思うのは。



    そういうソヴィエト史を全く知らなくても、楽しめる、っていうことですね。
    (僕はそう思います)



    とある農場。

    動物たちは、日々、人間に搾取されてばかり。
    人望のある指導者、勇敢な戦闘者などが集まる。
    (それは豚だったり、ロバだったりする)

    そして、革命。

    動物たちが経営する「動物農場」が発足する。

    まず当然、外部から「そんなことを許してはいけない」という人間たちの攻撃がある。
    戦い。一致団結。祖国防衛戦争。勝利。

    勝利のあとに、政治がはじまります。
    リーダーが必要になる。リーダーは競合相手を批判し、破滅させる。
    そして、「メディアの操作」が始まる。

    「まだまだ、外敵が怖い。強い力、一致団結が必要だ」
    「我々は危機にある。リーダーのもとに結集しよう。非常時だ」

    徐々にリーダーの権力が強くなる。
    反対派は弾圧される。

    「それでも、祖国を守るためだから、仕方ないだろう?」

    そしていつの間にか、歴史が書きかえられる。

    「そもそもリーダーは昔からこうだった」
    「あいつは昔からいやな奴だった」
    「我々は残酷な事はしていない。あいつらがデマを言っている」

    そしていつの間にか。

    搾取しているのが人間ではなくて、豚のリーダーに変わっていた...。



    というお話が、実に生き生きと、様々な動物たちの個性豊かに、面白おかしく語られています。

    これは、現実のパロディだったり、風刺だったりするのだけれど、パロディとか風刺を超えた力を持つ寓話、という高みに達した素敵な小説でした。

    笑えて、考えさせられて、絶望的に楽しい。

    そして、長編というより中編クラスの長さ。読みやすい。



    ジョージ・オーウェルさんというのはとっても興味深い作家さんです。

    1903年に、イギリス植民地インドで生まれたそうです。お父さんは公務員だったそう。
    イギリス人さんです。資産持ち、ではなかったようですね。現代風にいえばサラリーマン的な階級の育ち。

    恐らく、ずっと物書き志望だったんだろうなあ、と思いますが、それなりの名門校を出た後に、「就職」として、植民地ビルマのやっぱり役人になります。警察官。

    なんだけど、20代のうちに退職して物書きを目指してパリ、ロンドンの底辺社会に身を投じます。

    最底辺の暮らしのルポルタージュを書く、という色気がはっきりあったようです。

    貧乏、乞食、ホームレス...みたいな日々の一方で、

    「ビルマで、俺は帝国主義の現場兵として、こんな不条理な体験しちゃったよ」

    みたいな文章や、狙い通りの、

    「パリ、ロンドンの最底辺どん底生活でこんなことを考えた」

    的な文章で、物書きとして売れてきます。
    一方で、普通の小説?も書きます。

    そして、1930年代、スペイン内戦。

    ナチ的な独裁政権、フランコ政府に対して、ソ連の支援などを受けた「人民戦線」などボランティア的な人も含むゲリラ的な反対勢力が戦いました。

    ヘミングウェイ、キャパ、なども参加した訳ですが、ここにオーウェルさんも一兵卒として現場に入ります。

    ここでどうやらオーウェルさんは

    「フランコもひどいんだけど、一方でソヴィエトも酷い...スターリン独裁政権、酷い...」

    という状況を嘗めたようです。

    ※確かに、後年分かるところでは、スターリンさんは、レーニン亡きあとに、政敵のトロツキーさんらを追放して、社会主義労働者の政権どころか、自分の独裁を強化。1930年代に、政敵やインテリや反対者やなんでもない人も含めて、未曾有の数十万人とかそういうレベルの粛清をしていたそうなんですね。当然、言論の自由なんてなかった。

    それで銃創を受けて帰国したオーウェルさんは、「動物農場」を1944年に書き上げます。

    ところが。

    1944年にはまだ、ヒットラー相手の戦争が続行中で。
    ソ連=スターリンは、アメリカイギリスの同盟国だったんですね。

    どう見ても「スターリン批判」であるこの本は、出版して貰えなかった。


    ところが。


    1945年4月30日、ヒトラー死す。

    原爆が8月6日、9日。日本の無条件降伏が8月15日。

    「動物農場」は8月17日に刊行されたそうです。

    今後は「冷戦」の時代になり、米英的にはスターリンは悪者に。

    繰り返しますが、「動物農場」は、単なるスターリン批判に留まらない素敵な小説です。
    スターリンだけではなく、あらゆる時代の強大な権力への疑問、知的な批判精神に充ち溢れた、何より愉快な小説です。

    なんですが、とりあえずは「ソ連は悪者だ」という風潮に乗って、ベストセラーになったそうです。

    その後、オーウェルさんは衣食住と名声の心配は無くなって。
    1948~49年に「1984年」を執筆。翌50年に46歳の若さで亡くなってしまいます。



    オーウェルさんの文章は、「1984年」「動物農場」に留まらず、ルポやエッセイ的な文章にも文明批評や社会の仕組みへの洞察が溢れていて、読ませるものが多いです。

    この角川文庫版の「動物農場」には、表題作以外に

    「象を撃つ」=植民地ビルマでの警察官時代。脱走した象を住民に囲まれて見物されながら撃ち殺した話。

    「絞首刑」=やはりビルマ時代に、政治犯?の絞首刑に立ち会った話。

    「貧しきものの最期」=マルセイユだったか?どこかの最底辺の病院で最底辺の治療を受けた時の話。

    の三篇が収録されています。なんだかんだで、やはり有名な「象を撃つ」は白眉。一読の価値。



    読んで思ったのは、

    「広い窓口を持って、愉快でオモシロク、そして読み継がれるべき価値が毛穴から噴き出すような、反体制、権力批判の漲る作品」

    という意味では、恐らくオーウェルさんの作品の中で、異次元の完成度を誇る小説だなあ、という感想でした。

    血の涙が滲むような、パンクな面白さ。
    時代を超えています。

    安部政権、日本の僕らにとっては、ひとごとであってほしいのですけれど。

    共謀罪とかって...

    こわいこわい。

    • くにちゃんさん
      先に、新訳の方を読んだので、レビューを拝読して、角川文庫版に他の作品も入っていることを知りました。ありがとうございます!

      角川文庫は、図書...
      先に、新訳の方を読んだので、レビューを拝読して、角川文庫版に他の作品も入っていることを知りました。ありがとうございます!

      角川文庫は、図書館の書庫にあり、登録画像の表紙絵と違っていました。かなり古くて、本を開くと古い匂いで、咳が出そうでした。それはともかく、読めて良かったです。
      2025/09/28
  • 表題作はもちろん、短編もとても良い。
    1984年は読むのに苦労したが、こちらは読む手が止まらなかった。
    象を撃つ、貧しい者の最期、には生が絶えていく描写があるが、経験していなければ決して描けないようなインパクトがあった。

  • ロシア革命を風刺した寓話。現代の日本に当て嵌めても面白い。自分たち(権力者)にとって良いように解釈される法。そこになんとなく違和感を感じつつも抵抗しない国民...。愚直に信じ続けることで自己肯定感を醸成して思考停止。表題作他、超短編3作も当時の状況を把握できる内容で満足の一冊。初読は中学生ぐらいだったかな...。改めて著者の先見性を垣間見れる。

  • 『動物農場』は旧ソ連のスターリン政権を痛烈に皮肉った作品である。スターリンの「集団農場」から捩ったのだろうか。同じスターリン批判でもディストピア的な『1984』よりこちらのほうが個人的には寓話的で面白い。本来1944年に出版できたはずが英国としてソ連をドイツ帝国の防波堤として利用したい思惑から発売見送りになったのも、それだけ的を得たスターリン批判になっていたということであろう。

    主人公?のナポレオンをスターリンにしても毛沢東にしても亡国のカリアゲ氏に代えても成り立つ話というのが面白い。いつの時代も恐怖政治を織り成すのは結局人間であるので根っこは一緒ということか。

  •  とある荘園農場で起きた動物達の革命とその顛末を通じ、スターリニズムや全体主義体制に蔓延する欺瞞と恐怖を描き出したジョージ・オーウェルの傑作。擬人化された動物の類型は寓話的でありながら、当時のソビエト連邦における権力者達(レーニン、スターリン、トロツキー)や秘密警察による支配構造をモチーフとしている。作中で語られる出来事の多くは二月革命からテヘラン会議までのソ連、さらにスペイン市民戦争における著者自身の体験に着想を得ているが、出版から半世紀以上経った現在でも『動物農場』の恐ろしさは色褪せることがない。本作は『一九八四年』のように管理統制社会の構造批判を物語展開の主軸に置くのではなく、むしろ管理統制社会が形成される過程を革命前夜から段階的に描き出すことで、ソ連共産党の実態を知らずWWIIの同盟国と認識していた当時の大衆に「全体主義は他人事ではない!」と警鐘を鳴らそうとしているように見える。その背景には、民主社会主義者だったオーウェルがカタロニア地方で体験したPOUMに対する共産党の激しい弾圧行為やデマゴーグがあり、産業革命以降の英国帝国主義・国家社会主義を掲げたナチスのファシズム・そして二月革命以降の共産主義などに対する深い失望があった。左右問わず権力を握った者は「社会的平等の追求」という理念を腐敗させ、情報統制や政敵排除や民衆奴隷化によって全体主義的傾向を帯び始める。『動物農場』では当時のソ連を個別具体的事例としてモデルにしながら、オーウェルの危惧する支配-被支配構造が浮き彫りにされる。社会に対する民衆の不満を回避すべく存在しないスノーボールが「見えざる敵」として槍玉に挙げられる様は『一九八四年』のゴールドスタインにも当てはまるし、被支配階級の動物達(民衆)は七戒を書き換えられたことに気付かず明らかに道理が合わない虚偽さえ「ナポレオンは常に正しい」と歪曲して思考停止に陥っていく。利権を貪る豚達は革命によって自らが排除した人間と同化するように二本脚で歩き始め、やがて確定的かつ客観的事実を「事実である」と公言することさえ不可能になる……こうした悲劇はこの世に権力が存在する限りーー人間が滅びない限り何度でも繰り返されることになる。オーウェルは作中でたびたび「いつの日にか権力主義的独裁体制はプロレタリアートによって打破されるだろう」といった趣旨のことを述べているが、口調は読者を鼓舞するものでなく、むしろ消極的な希望的観測のようだ。例え民衆が権力者を打ち倒したところで、民衆の中から再び第二第三の「ナポレオン」が現れないとも限らない。いつの世も動物達は権力を欲する豚に扇動され、愚かな革命に身を投じることになる。そして再び『一九八四年』が始まるのだ。
     同時収録されている短編ルポルタージュ『象を射つ』『絞首刑』では警察官だった著者がビルマで経験した英国帝国主義への失望と困惑が語られる。また『貧しいものの最期』では浮浪者に身をやつしてパリを放浪していた頃の経験から当時の医療に対する不信感が顕わにされる。いずれも「人間を人間と見なさない支配者」への非難であり、後に『動物農場』『一九八四年』の源流となる。訳者によるオーウェルの伝記的解説も興味深く、作品の寓意を紐解く鍵として大いに役立ってくれた。

  • 嫌だなあ

    どれだけ人に絶望したらこんな小説が書けるんだろうと思う
    でも、この小説を読んでいてこの上なく不快な理由は、ひとえに、自分にも身に覚えのある人間の業深さを突きつけられてるからに違いない
    こういう露悪的なものは大好きだ
    でも、風刺されている業深さについて心当たりがある自分、重視している小説として評価してしまう自分は、嫌いなんだよなあ

    みなを


  • 社会主義を寓話化して批判している本であるが、解説にもあるように、全ての権力体制にこれが当てはまるほどに昇華されている。

    権力は、ついた瞬間に腐敗が始まる。

    象の話も印象深い。支配者は被支配者に支配者として振る舞うように支配されている。

    解説や作者の生い立ちも詳細に書かれ、何重にも楽しめる本。

  • 「1984」に比べるて断然読みやすい。が、話が進むにつれどんどん憎らしくなってくる。

    ライバルを貶める為には手段を選ばないナポレオン、話を自分達に都合よく少しずつ変える話術をもつスクィーラー、都合が悪くなると騒ぎだすヒツジ達。

    今の日本にピッタリと当てはまる構図。

  • じんわりと湧き上がる底知れぬ恐ろしさ。
    「動物農場」 ジョージ・オーウェル

    今年に入って、長く手が出せなかった同著者の「1984」をようやく完読しました。
    その勢いのあるうちにと、こちらの有名な寓話も入手。
    タイトルどおりに農園で筋が展開していきます。
    擬人化された動物たちが、人間の圧政にクーデターを起こし自分たちで農園を維持していくその顛末を描いた物語。

    私が在住しているフランスでは、中学生の推薦図書となっています。確かに中編小説といえるほどの、それほどページ数の多い話ではありません。動物が擬人化されているので子供たちにも読みはじめるのは難しくないのかも。
    しかし、この話の根底に流れる得体のしれない恐ろしさったら。
    独裁政権を批判する内容を、動物を擬人化する手法で少し和らげて書いています。
    けれど、人間のフリをする動物たちの行動は怖い!!

    著者は社会不信、人間不信だったのだろうなあと推測しています。
    文章で読んでも背筋が凍る場面があるので、この話は映像化、アニメ化できない、してはいけないと思います。
    特に子供向けとしてはとんでもない。

    最初の方で出てきた動物たちの戒文の内容が、最後になって変わってしまうというシーンで、驚いて思わず唸っていました。

    日本でも、この話の対象年齢は中学生くらいなのでしょうか。
    民主主義国家の国民として、このような話は成長期に一度は読んだ方がいいかもしれません。
    批判精神を育てるためです。
    そして自分たちが享受している「自由」というものは実は別の国に行けば必ずしも当たり前に存在しているものではないと知ることができるかもしれません。
    それにこのような本が発行禁止にもならずに読めるという自由。

    けれど、中学生で読むのはちょっと早いかもしれないなあと考え込んでしまいました。
    昨今の世界情勢の中、遠い世界の寓話としてだけ動物農場を読めたらいいなあと願っています。

  • 「動物農場」はスペイン内戦が背景となって書かれた、『1984年』の寓話版とも言える作品だという予備知識ありで読んだけれど、それにとどまらない普遍性をもった小説だと思った。
    ソ連、ロシア、中国、北朝鮮。
    打倒したはずの権力者を民衆自らが再生産し、しかもそれに無自覚なまま虐げられる「ユートピアからのディストピア」という構図を、戯画化することで一般化している。
    そういえば、イタリアの終戦記念日だったっけか、「ファシストになるくらいなら、豚になる方がマシ」という、紅の豚のセリフがさかんに流れるらしい。けれど、この「動物農場」では、豚こそがファシストということになっている。しかも、それは他より多少優れた知性をもつことによる。ということは、そこには能力主義がもつ歪みも当然反映されているわけで、そうなればさっき挙げた共産圏(元共産圏を含めて)だけではなくて、民主主義を標榜する国全部が当てはまるということになる。
    頭のいい人、カリスマ性のある人に任せておけば大丈夫。難しい政治のことは優秀な人に預けておいて、自分は日々の暮らしに埋もれていられるのが幸せ。
    そういう気分で暮らしている人が大半の国に自分は暮らしているし、自分にも多少なりともそういう気分は共有されている。
    自分が当たり前だと思っていることが、自分自身にとっていかに危険なことなのか。
    そういうことにハッと気づかせてくれるオーウェルは、やっぱりすごいと思う。

  •  かなり衝撃を受けた『一九八四年』を書いたジョージ・オーウェルのヒット作。表題作を含む短編4編が収録されているが、どの短編にも共通するテーマは「支配」。100%ORANGEさんの描く表紙の可愛らしい動物たちとは裏腹に、内容は残酷。だが雰囲気は明るく、不思議な感覚。どんな人間も動物でさえも、権力の頂点に君臨すると独裁者になってしまうと風刺している。馬のボクサーが不憫でならない。ナポレオンを始めとする豚たちよりも、シュプレヒコールを声高に唱える羊たちが怖かった。
     オーウェルは小説より評論が主らしいが、既読の2作がとても面白いので他の作品も読んでみたい。

  • そうなのか…という落胆が最後を飾る。
    傲慢な管理者になった豚たちは、人間と見分けがつかなくなる。無知な他の動物たちは、ただ為すすべなく 搾取されるだけ。
    隷属から解放されるための革命だったはずなのに、なぜ理想は現実にならないのだろう。

  • 風刺は面白い。ソ連にせよ、現代のいかなる組織でも同じことが言えるかな。管理と支配の本質を動物世界で例えるセンスはお見事としかいいようがない。

  • ソビエトのスターリン制を批判した作品で、ナポレオンはスターリン、スノーボールはトロツキー、革命を焚きつけたメージャー爺さんはレーニンだそうだ。民衆のために人一倍働いた馬のボクサーが、病院に搬送するとされながら屠殺場に送られ、その酒でどんちゃん騒ぎをする豚たちのくだりが生々しかった。共産主義も右翼も度を過ぎればファシズムであり独裁である。こんな社会になってはいけない、しかし今の社会そのものではないか?最後に人間のピルキントンが二足歩行のナポレオンと宴会をしているが、うちは下層階級、おたくは下層動物というやっかいものがいる、というようなことを言っている。これは共産主義の話か、資本主義の話か?どちらにしても、社会主義のオーウェルは、そのどちらも憎んでいたんだろうと思った。

  • 初オーウェル読了。
    こういった社会・体制批判的小説は、普段読まないのですが、ひょんな理由から本書を知り読み始めました。

    多くの理不尽と欺瞞に満ち溢れた物語でした。無知な動物たちが雄弁な豚に言いくるめられ働かされる状況に、憤りを感じるとともに、こうして民衆は洗脳・統制されていってしまうのかと戦慄させられました。
    私の心に残ったシーンは、働き者のボクサーが過労で死にかけ、豚たちによって密かに屠殺屋へ引き渡されていく場面です。強欲な支配者たちは、一番称賛されるべき者に報いるどころか、最も残酷で無残な最期を与えたのです。動物主義の本来の理念は、すべての動物が平等で幸福に生きることであったはずなのに…。そして、動物たちはこの事実に気付くことも、反論することもできないのでした。

    この一つの寓話に、人間が繰り返してきた、そしてまた繰り返し続けるであろう歴史の過ちと人間の愚かさが詰まっていました。

  • 表題作だけだと思ったら短編集でした。
    『動物農場』はとても上等な寓話で、本当に面白かった。
    長年自分たちを酷使し、自分たちからあらゆるものを搾取してきた人間を農場から追い出した動物たち。自分たちだけで理想の農場を作ろう、とみんなが夢を持って再出発します。
    でもやがて誰かが権力を握り、それにおもねる派閥ができ、権力を持つ者が恣意的に理念をねじ曲げていく。そして権力者の取り巻きの中の口の上手い者が民衆をうまく言いくるめてそれが民意のように見せかけ、民衆はおかしいなと思いつつも、何となく大勢に流され…どんな優れた思想や崇高な理念をかかげた社会でも、結局はこうなる気がします。
    雄馬のボクサーのように、世がどうなっても「自分が働けばいいのだ」と誠実に体を動かせる者の存在が一番尊いな、と感じました。
    ナポレオンによる裏切り者たちの処刑のあと、雌馬のクローバーと他の動物たちが丘の上から景色を眺める場面が私の中ではこの作品のハイライト。それぞれの動物たちが胸に抱える悲しみや不安や疑問といった暗さと、景色の描写の美しさのコントラストがとても印象的でした。

    『象を射つ』の主人公はビルマで警察官をしているイギリス人。脱走して暴れる象を、銃を持って追わなければならなくなった彼は、民衆の期待を一身に受けているのを感じ、殺したくもないのに象を撃ち殺す羽目になります。主人公の銃の腕前が最悪で、象が苦しみ抜いて時間をかけて死んでいく描写が辛い。
    支配者は被支配者の前で毅然としていなければならないという意味で、支配者は被支配者にあやつられることになる。なるほど〜。

    『絞首刑』はとても短いお話。死刑執行に初めて臨場した主人公は、執行されるまでは死を目前にした死刑囚を見ていろんな複雑な思いを巡らせます。でもいざその刑が執行されると、そのまま食事をし、死刑執行あるある話で盛り上がって役人たちと談笑するのです。大仕事を終えた安堵感からか、みんなやたらと陽気になるのだと。複雑。

    『貧しい者の最期』はとても陰鬱とした雰囲気の作品。面白くもない。
    でも、病院で死を迎えることについて、「何かしら残酷でみじめなもの」「毎日人々が他人の中で死んでいく場所につきものの、あわただしさと、混雑と、非情さ」がある、と書いているところが印象的でした。オーウェルは現代みたいに病院で死ぬことが当たり前になった社会を想像できたかなぁ。

    解説がいくつかあったけど、開高健さんのものだけ読みました。

  • 偉大なリーダーが去った後、権威が堕落していく姿を寓話の形で書いている。農場で豚が独裁的になっていく、不満分子は排除していく。ルールはこっそりと変えられる。そして、理想社会の建設が道を踏み外してしまう様を風刺する。その有り様はロシア革命だけでなく、権力全てにあてはまる。

  • 不穏なタイトルだけど、中身もその通り不穏。
    この中身が指すところは、解説にもあるように社会主義体制への痛烈な批判。
    が、私がいちばん強く危険だなと思ったのは、「文字が読めないこと」です。
    文字が読めなければ、何かおかしいと感じたことも何がおかしいのかが具体的にわからない。
    書くことができなければそれがどのようにおかしいのかも伝えられない。
    読み書きができないことは、突き詰めれば自分で是非の判断が下せないということでもあると思います。

    独裁体制下で、本や新聞が禁止されるのもわかる気がする。
    文字を武器に自分の体制を批判されたら困るもの。

    でも、だからこそ私は文字を大事に、読み書きを大事に、ということを強く思ったのでした。
    文字・読み書きを大事にすることは、自由を守ることでもあるなと。

    だからこそ「民衆」は文字の必要性を知っていたのではないかとも思うけれども。

  • 風刺もきいているし、物語としての面白さもある。時代を超えて価値を有していく本。

    中学生だった時に読んで、ボクサーに感情移入してしまってとても辛かった。

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著者プロフィール

1903-50 インド・ベンガル生まれ。インド高等文官である父は、アヘンの栽培と販売に従事していた。1歳のときにイギリスに帰国。18歳で今度はビルマに渡る。37年、スペイン内戦に義勇兵として参加。その体験を基に『カタロニア讃歌』を記す。45年『動物農場』を発表。その後、全体主義的ディストピアの世界を描いた『1984年』の執筆に取り掛かる。50年、ロンドンにて死去。

「2018年 『アニマル・ファーム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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