カポネ 下 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 88
レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042365051

作品紹介・あらすじ

保険調査員として鬱々と日々を送っていたエリオット・ネスに、チャンスが訪れた。義兄の伝手で、司法省禁酒局の特別捜査官に採用されたのだ。折しも、アル・カポネがライバルを一掃した「聖ヴァレンタインデイの大虐殺」を受けて、FBIがカポネ逮捕に動き始めた矢先だった。改造ショットガンを片手にカポネに迫るネス。果たして攻防の行方は…?西洋歴史小説の雄が、暗黒街の帝王を活写した傑作ピカレスク。

感想・レビュー・書評

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  • 本書は、2部構成となっています。第1部はアル・カポネの立志から栄華をカポネの視点で描く。取るに足らない(しかし才はある)貧民街のイタリア系移民が、如何にして、不俱戴天の仇であるアイルランド系移民と闘争し、裏社会に身を投じそして頂点を極めるに至ったか。そして、多くの映画、劇、活字のイメージと異なるありのまま"人間"としての彼が、人々に好まれ羨望の眼差しを向けられるように至ったかが綴られています。

    "イタリア人の誼でな" (引用:『カポネ 上』角川文庫、p.149)
    "なあ、マーク、この俺も言わせてもらうぜ。「俺のために、いつか力になってくれとな」おまえの父ちゃんが力になってくれたように、おまえも俺を助けてくれとな" (引用:『カポネ 上』角川文庫、p.152)
    極悪非道なイメージの帝王は、その実家族や仲間、地域市民の味方だった。敵対するオドンネル・ファミリーが、アル・カポネ属するトリオ・ファミリー傘下のソーダ・パーラー(禁酒法制下であるためソーダと冠しているが、酒を扱うバーである)を蜂の巣にしました。上記は様子を見に来たアル・カポネがその惨状を見、怪我をした店主の息子であるマークとの会話での台詞です。店の修理や治療費をアル・カポネが全額支払うと約束し、マークはさすがに申し訳ないからと断るのですが、アル・カポネは、イタリア移民は助け合うべきだという信念から、半ば強引に彼を説得するというシーン。アル・カポネの大人物ぶりがよくわかる印象的なシーンだなあと思います。
    ※このマークという人物、その後あるキーポイントで現れるが、ここでは割愛。

    第2部はアル・カポネの向こうを張った、禁酒法取り締まり連邦捜査官であるエリオット・ネスの視点で彼の生涯を描いています。世人の言う何物にも屈しない"アンタッチャブル"の像から程遠い傲岸不遜なエリオット・ネスというもう一人の"人間"が、帝王を誰より憎み、また崇拝する複雑な心境の中で、彼と如何にして対峙するのでしょうか。

    エリオット・ネスという人物、これがまた曲者で、幼い頃から一貫してわがまま放題。自分を中心に世界が回っているかのような傍若無人っぷりです。有名になりたい、自分は尊敬されるべきだ、、、etc。有能ではあるようなのですが、その性格が災いすることが多い。物語終盤で彼が立ち寄るバーのバーテンダーの台詞ですが、彼は、"せっかくの幸運を自分で捨てているところがあり"(引用:『カポネ 下』角川文庫、p.253)ます。また、次の台詞もちゃんと聞いていれば、もう少しマシになっていたのではないかと思うほど。
    "どんな仕事も楽しいばかりじゃありませんからね。つらいことも我慢して、それでも真面目に働いてこそ、ようやく認めてもらえるんです"(引用:『カポネ 下』角川文庫、p.254)

    【総評】
    まさか佐藤賢一作品で思わず涙が零れるなんてことは想定していませんでした。これは決して彼の作品がつまらない、という意味ではありません。私は、『ジャガーになった男』『傭兵ピエール』『カエサルを撃て』のような、血沸き肉躍る英雄譚が佐藤賢一の唯一無二の得意技だと考えていました。しかし、この傑作をエピローグまで読むに至り、"人間の泥臭さをテーマにした歴史小説"であるという点は一貫しているものの、それ以上に人間の繊細な心情を表現していると思います。その対象が理解しがたい悪人や変人であっても。

  • エリオット・ネスの言行が中心。
    兎にも角にもカポネを意識していたネスの姿が描かれている。

  • 話が冗長すぎる

  •  下巻の主人公はカポネにとっては敵役、特別捜査官のエリオット・ネスだ。

     ものすごく勘違いしていたことがあった。「アンタッチャブル」というのはカポネのことを指すのではなく、特別捜査官チームの名前としてネスが付けたものだった。カポネの力が強すぎて、手が出せないって意味かと思ってた。映画も観てたのに、全く頭に残ってなかった。


     ネスはなんだかプライドが強くて、ヒーローになりたい願望が強く、正義漢とは程遠い人物として描かれている。実際はどうだったのか知らないが、このあたりの描写をみても著者がカポネに肩入れしているのがわかる。


     物語としては下巻の方がいろんな事件が起きるので面白いが、人物へ感情移入ができるかどうかというと、あまりできない。カポネ頑張れ!負けるな!と応援したくなる。 もうちょっとネスを格好良く描いてもいいんじゃないだろうか。


     しかしまあ、この時代の警官というのは汚職ばかりしていて、金でいくらでも不正を働く。痴漢とか万引きとか、証拠品なくしたとかで日本の警察がたまに騒がれるが、こんなことで騒ぐのは日本だけじゃないかと思えたりする。最近アルゼンチンで警察がストライキをして、略奪行為で街が破壊されるのを傍観していたし、日本の警察はなんだかんだいっても優秀だと再認識した。


     話がずれたので戻す。


     カポネは禁酒法では逮捕できなかったので、脱税で逮捕された。はっきりいって微罪だし、普通は追徴課税分を支払えば有罪でも執行猶予だ。カポネには有能な弁護士がついていたわけだし。でも、なんだかんだうやむやにされて刑務所にぶち込むこまれ、最後はアメリカ一厳しいアルカトラズへ放り込まれた。さすがアメリカ、強引だ。個人の権利や法より国家が優先される。ある意味天晴れ。


     アルカトラズでは希代のギャングスターも看守や囚人にいじめられ、最期は梅毒の菌にやられたために、気が触れてしまったらしい。梅毒のことを知らなかった人たちのなかには、このときの不当な扱いでカポネが気が狂ってしまったと思っていた人もいたらしい。出所後に治療したものの手遅れだった。


     カポネの最期の姿にセントヘレナのナポレオンの背中が重なる。
     カポネの人生、哀れだ。

  • 上巻のレビューで「作者の主義主張がやかましくない」点を評価していたが、この下巻ではそれこそやかましいくらいに作者の声が聞こえてくる。

    下巻では司法省禁酒局の特別捜査官、エリオット・ネスの視点で物語が進んでいく。上巻とは対照的な視点ということになる。そしてそこで取り上げられるのは、「正義とはなにか」「悪とはなにか」「アメリカン・ドリームとはなにか」である。

    それらの問いには答えを示しているのだけど、ここでは伏せておく。

  • 題名もそうなら、上巻もそうだったので、当然下巻もカポネが主役…と思ったら
    まったく違う人が出てきました。

    読んでなるほど、と。
    今世の中にきれいに定着しているアル・カポネのイメージは
    こうして作られたのか、と。

    しかしすごい人ですね、下巻の主人公は。
    好きになれない人種、です。
    自分勝手なわがまま、と言えばまだ聞こえがいいんじゃないでしょうか?
    子供がでかくなった物体、としか思えません。

    どう考えてもカポネの方が、生き方に納得できます。
    反してこちらはまったく。
    こうはなりたくない、と思うような見本品。
    とはいえ、こちらの一方的な考えですがw

  •  上巻はアル・カポネの話でしたが、下巻はほとんどエリオット・ネスの話でした。正直に申し上げますと、おもしろくないと感じました。どうやら、エリオット・ネスについて描かれた他の作品を観たり読んだりしていれば、おもしろかったのでしょう。
     この下巻を読んで、アル・カポネに立ち向かった男といっても、なんだかあまりぱっとしない男だったんだな、という印象を受けます。

     読むのを辞めてしまおうか、と思ってしまったこともあります。それでも、そこは佐藤賢一さんの書き方がおもしろいので読み上げました。過去の、しかも日本ではない国の人が、今私たちが考えていることと全く同じなので、興味をもって読むことができます。そこにつまらなさを感じることもありますが、単に知識が加わると思えば読むの辞めてしまうのも残念かと思ってしまいます。

    2009.3.14. 17:30 机にて読了

  • カポネ(上)の続きで、こちらはエリオット・ネスが主役。これもまたケヴィン・コスナーの正義感みなぎるネスとは違って、目立ちたがりの若造ネス像に驚きでした。過去の栄光にしがみつく姿は、なんだか切なくもあり滑稽でもありました。

  • 下巻は、エリオット・ネスの目からカポネを描く。
    カポネ像は、ドラマ「アンタッチャブル」の影響が強いが、実像はそうではなかったと著者は言っているのだろう。
    カポネは、当時のアメリカという時代を写した鏡なのである。
    エリオット・ネスは決してヒーローではなかったし、カポネも決してアンチ・ヒーローではなかった。むしろ、カポネこそ時代の英雄だったのかもしれない。

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著者プロフィール

作家

「2021年 『覇権帝国の世界史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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