マダム・エドワルダ (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042400011

作品紹介・あらすじ

これまでに出逢ったどんな娼婦とも違うマダム・エドワルダ。彼女に導かれ、陶酔と死とが絡み合った美の瞬間が繰り広げられる……エロティシズムの極限を描く啓示的な一夜の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 作中の最初、「マダム・エドワルダ」は「眼球譚」に劣らず美しい性描写で以て描かれていた。禁じられた領域への誘いから始まる、その背徳的で魅惑的なエロティシズムの概念が、その作品を何とも官能的に引き立たせている。
    心理描写を伺い見ても解るが、「性」に於いて人は「利己的」である事。此れは欠かせない要素であろう。後のエロティシズムに関する記述・対談に於いても窺い知る事が出来るだろう。
    「死者」でも同様に、バタイユの作中に出てくる女性は娼婦かそれに近しい淫靡さを備えている。男性はその肉体や挙動に誘惑されるが儘に貪る。或いはマゾヒズム性を有して。其処に女性への人間的配慮は見当らない。女性像から必要性を持たないのも勿論理由と成り得るが、それ以前に相手への色情に道徳的観念は一切不要である事を象徴している。
    性行為に於いて、男女各々が相手を「人間」としてではなく、「もの」として捉えなければ、其処に猟奇的官能美は見当らないだろう。

    バタイユの解釈・講演の中で、エロティシズムについての真理が余す事無く記されているが、当に「理不尽さ」や、「破廉恥」と「有罪感」、「死の魅惑」がエロティシズムを構成するのだと共感させられる。
    「連続性」と云う言葉を多用しているのも、利己的で自己中心的、言い換えれば「孤独」である事が本質的な土台となっている事を誇張しているように思われる。人間が互いに共有するものの中に、エロティシズムは含まれない。
    また、羞恥心無しに快楽が生じる事もなければ、有罪感無しに恍惚を感じ得る事もない事は、ごく当たり前で、且つ無意識故に気付かれない事を、バタイユは言葉として明らかにしている。
    死とエロティシズムについての文は理解出来たのか不明であるが、人間は例外無く死に対する憧憬を懐いている生き物であり、それ故に生きている事そのものにエロティシズムを見出す。そして誰かの死に依って、隔絶されていた(弾き合っていた)情慾を、初めてその対象に注ぎ込む事が可能になる。それは、視点や懐く感情全てが孤立した状態から、リンクされる事になるからだろう。勿論、上記の内容がバタイユの言いたかった事と必ずしも一致するとは言い切れないが、私はその様に解釈した。
    また、「言葉(表現)に因る死」と云うのも頷ける。小説を読む事そのものの行為がそれを象徴しているが、言葉として描かれたソレは個人の内から脱却して、他人(客観的)に認識され、また「客体」という「モノ(オブジェ)」となって仕舞う。そうすると、動態あってこその官能は流動性を失い、固定された状態となる。バタイユが性描写の内に動態的な心情を挿入しないのは、恐らくそうした理由があるのだろう。

    バタイユの概念を説明された章については、私が理解するには難しく、知識としても不充分過ぎるが、いつか自分の言葉として嚥下してみたいものである。

  • エロティシズムの文学は本質的に言語化不可能性にぶつからねばならぬものだという。然り。エロティシズムの本質は、言語化・意識化 i.e. 対象化の機制そのものを無化してしまう点にあると思う。しかしそれにも拘らず、所収「眼球譚」に於ける人間のエロティシズムに対する作者の想像力には戦慄を覚えた。

    エロティシズムとは、人間の自我(自己意識)の個別性が他者とともに溶解してしまうことだという。美的・性愛的・神秘的な陶酔・没入・合一への憧れ。それが個体としての非連続的な自我の消滅=死を伴う。「エロティシズムは死に到るほどの生の称揚である」というバタイユの有名な言葉には、納得させられるものがある。

    ところでバタイユの講演も収録されているが、そこでは登壇している他の専門家だけでなく聴講する市民も積極的に発言している。或る女性が、バタイユが専ら男の立場からエロティシズムを論じており、そこでは女が物化されていると批判。それに対するバタイユの応答はない。女のエロティシズムとは。そもそもエロティシズムに性差はあるのか。

    訳文はやや古風か。

  • 眼球譚目当てで買いました。
    馬の腹を裂く描写のあたりから馬がかわいそうになったので読むのをやめました。

  • 『眼球譚』が好きです。闘牛場のシーンが特に。
    モチーフの二重性とか、単純に冒涜的なところが面白いです。

    併録された講演録も、なかなか興味深いものでした。

    表題作は、エロティシズムの理論が開花した作品らしいけれど、その点については全く理解していないことを正直にゲロっておきます(笑)

    ただ分かることといえば、バタイユのエロティシズムについて基本的に理解していなければ、この作品の本質的な意図を見抜けないこと。エロい。グロい。マルセルかわいい。

    この作品は、おそらく、読者自身が作品についていく心構えがないといけない作品の典型なのかもしれないです。

  • 以前に『眼球譚』を読んでとんでもねぇ変態だなぁと思っていたのですが『死者』や『マダムエドワルダ』を読んで、やっぱりバタイユ大好きだと思いました。冒頭の「君はひとりぼっちか?君は寒気をおぼえるか?」という虚無感。陶酔と死。同時代に生きていたら、バタイユの淋しさにきっと惹かれてたろうな・・・と思った。

  • 純然たるロマン派小説のようだが、超越を立ち表せるために確実に推し進められる(が、叶わない)物語は、官能小説より長編哲学論文に近い構造だ。
    主人公の行動と語りに笑いそうになったが、初めに笑うことは理解から離れるという警句を思い出し、ほんとうにまじめな態度で読んだ。心の跳ね返りのようなものを見ていた。こういう読書をしていることに、笑えてくるのだが。。

  • 高校の頃、この本を紹介して貰いましたが私には早すぎました。
    今でも良さは分かりませんが、ドグラ・マグラを読んだ時と同じ気持ちになれる、不思議な作品です。

  • バタイユの美学や思想を堪能する前に「うわ~スカトロだ~~ッ!!」で逃げ腰になってしまった。ごめんなさい。

  • 4-04-240001-9 271p 1996・6・20 16版

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    カルヴァドス飲んでみたい。

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著者プロフィール

1987-1962。フランスの思想家、作家。世紀を超えて今も各分野に影響を与え続けている。『エロティシズム』『眼球譚』など著作多数。

「2022年 『内的体験 無神学大全』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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