Yの悲劇 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042507161

作品紹介・あらすじ

大富豪ヨーク・ハッターの死体が港で発見される。毒物による自殺だと考えられたが、その後、異形のハッター一族に信じられない惨劇がふりかかる。ミステリ史上最高の傑作が、名翻訳家の最新訳で蘇る。

感想・レビュー・書評

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  • 何の予兆もなくいきなり照明が落とされたかのような第三幕の幕切れ。しかし、ドルリー・レーンだけには見えていた。悪魔に魂を売ってしまった犯人の燃えるような目を。殺人への欲望を抑えることが出来なくなった犯人が、レッドラインを越えてしまったことを。一人苦悩するドルリー・レーン。彼の下した鉄槌は、彼自身にも生涯に渡って暗いものを背負わせることになるのだろう。

    狂気に満ちた屋敷、悪名高き異形の一族ハッター家、そして姿形の見えない犯人のおぞましい衝動。クールなロジックによって導き出された犯人の真のターゲットに思わず唸り、犯人の行動に戦慄を覚える。同時にハッター家の面々が醸し出す異常なオーラに引き寄せられ、なかなか逃れることが出来ずにいた。

    悲劇の真相に薄ら寒さを感じながらも、哀しみに満ちた余韻が後をひくミステリである。

    • 地球っこさん
      nejidonさん、こんにちは!
      コメントありがとうございます(*^^*)
      nejidonさんの20歳の頃、そうなんですか!
      私はその...
      nejidonさん、こんにちは!
      コメントありがとうございます(*^^*)
      nejidonさんの20歳の頃、そうなんですか!
      私はその頃、なぜか警察小説にはまってました。あとは自己啓発本。
      今とは全然違います。
      読書の傾向も年とともに変わっていきます。nejidonさんもそうでしょうか?

      エラリー・クイーンは初めて今年読み出しました。昔から人気のあるミステリって、いつのまにか読んだつもり、知ってるつもりになってるんですよ、私。
      たぶんブックガイド好きなので、そこであらすじとか読んで……って感じです。
      今年はエラリー・クイーンたくさん読んじゃおうと思ってましたが、あっという間に師走が近づいてます。
      年々、時間が経つのが早い!
      でも、本を読むのは遅い!

      今年読んだ本を見返すと、私の本棚ってバラバラですね(^o^;)
      これからも、古今東西問わずお気に入りの作家さんの本は全部読んでみたいです。現代作家さんは迷っちゃうので『この作家この10冊』『この作家この10冊2』を参考にしてます。
      まだ本棚に載せてませんが、山本淳子さん『源氏物語の時代』があまりにも面白くて、この時代のことももっと読みたいな。
      nejidonさんの書かれたレビュー齋藤孝さん『なぜ本を踏んではいけないのか』のおすすめも読みたいし、そうそう井上靖、辻邦生、庄野潤三作品も!
      もうどうしましょう〰️?

      長々とまとまりのないことを書いてしまいました。
      nejidonさんの本棚は、私の知らない世界が広がっていて、いつもほわぁー( 〃▽〃)となります(なんという語彙力のなさ!)
      これからもnejidonさんのレビュー楽しみにしてます♪
      2019/11/29
    • nejidonさん
      地球っこさん、こんばんは(^^♪
      丁寧なお返事をくださって、ありがとうございます!
      はい、それはもう、年代と共に読書傾向は変化してきてい...
      地球っこさん、こんばんは(^^♪
      丁寧なお返事をくださって、ありがとうございます!
      はい、それはもう、年代と共に読書傾向は変化してきていますとも。
      膨大な時間があった10代・20代の頃は、大作にずいぶんチャレンジしました。
      今は読書時間そのものが貴重なので、本当に読みたいものだけ選り分けています。
      エラリー・クィーンを今から読んだら、寝不足になってしまうので、
      昔読んでおいて良かったですよ・笑

      XYZの次は国名シリーズでしょうが、私のお勧めは「災厄の町」かな。
      「配達されない3通の手紙」というタイトルになって映画化もされました。
      お好みに合うかどうかは分かりませんが、入手されましたらぜひぜひ♫

      私も読みたい本がますます増え続けています。
      以前お話した「読書ノート」には、読みたい本のタイトルがズラリと・・
      不思議なもので、少し時間をおくとそれも変化するのです。 
      そしたら、消去したり付け加えたり。山本淳子さんも入っていますよ!
      地球っこさんのレビューは作品への愛があふれていますよね。
      そこがとても好きです。私も真似たいのですが、どうも無理みたいで(;´・ω・)
      こちらこそ、これからも楽しみに読ませていただきます。
      また興味深い本がありましたら教えてくださいね。
      2019/11/29
    • 地球っこさん
      nejidonさん、ありがとうございます!
      『災厄の町』タイトルだけは知っています。ミステリのガイドブックにも載ってました。ぜひとも読んで...
      nejidonさん、ありがとうございます!
      『災厄の町』タイトルだけは知っています。ミステリのガイドブックにも載ってました。ぜひとも読んでみます(*^^*)
      本当に読みたいものに出会えたときは、心が震えます。そんな読書体験があとどれくらい出来るのだろう。
      私もnejidonさんの読書ノートのお話からはじめましたよ♪
      読みたい本のタイトルを消したり付け加えたりすること自体が、とても楽しい時間ですよね。
      2019/11/29
  • ドルリー・レーンシリーズ第2弾!
    レーンにとって、とても辛い事件…。
    私はどちらかと言うと『X』より『Y』の方が好みです。どちらも面白いですが^ ^

    裕福な一族の主人、ヨーク・ハッターの死体が発見される。遺書があったので自殺と思われる。
    その後、聾唖の長女ルイーザを狙った毒殺未遂事件がおこり、ヨークの妻、エミリーが何者かに撲殺される。
    変わり者ばかりの集まる一族で、誰もがあやしい。
    行き詰まったサム警視は、ドルリー・レーンに捜査の協力を依頼する。

    今回は風変わりな一族が特徴です。
    自殺したヨークは化学者で引きこもり。
    妻エミリーは横柄で傲慢。
    先夫との子ルイーザは聾唖で盲目。
    長女バーバラは奇才の詩人。
    次女ジルは美人の不良娘。
    長男コンラッドは遊んでばかり。
    etc…

    事件の真相が明らかになっていくうちに、レーンは己の推理力を過信していたこと、真実に対する恐れを抱いて葛藤していきます。
    後半はすごく辛い。
    レーンの気持ちが痛いです。

  • なるほどなぁ……!
    ミステリーはあれこれ読んでいたつもりだけど、こうした展開はお目にかかったことがない。そしてこんなプロットが1930年代に生まれていたことが驚きです。
    『Yの悲劇』が映像化されたとしたら、きっとエンドロールは早送りで流れる演出になるでしょうね。

    前作はなかなか物語に入り込めなかったものの、今作は序盤から不穏な空気なのでとても面白く感じました。ミステリーは早めに殺人事件が起きてほしい派です。笑
    「犯人の頬がすべすべして柔らかかった」という証言が出た時点で、最近スキンケアにお熱な私としては「犯人は子供では?」と思ったものの、まったく容疑者候補には上がってきませんでした。
    X,Yと読んで感じるのは、真剣に犯人当てをしようと熱心に読んでいた読者ほど痛快に思うのではということ。根っからの文系の私には、少々目が滑る場面もありました。。
    それにしても、捜査上の行き詰まりとなる数々の矛盾点を、「犯行計画を理解していない者がなぞっているだけだから」という点で決着させるのはなんともお見事。そんな行動に走ってしまう環境上の要因を描くのも忘れません。今読むと「偏見が過ぎるのでは?」と感じる部分もなくはないですが、まあずいぶん昔のお話ですからね。
    そしてあれこれ飲み込んだうえで、苦いラストを締めるブルーノのセリフが沁みます。
    「行こう、警視。レーンさんはお疲れだ。そろそろニューヨークへもどったほうがいい」

    ミステリー好きを語るなら、一度は読まねばと思っていたエラリー・クイーン。
    やっぱり私はアガサ・クリスティーが好きだと再認識することになりましたが、精巧な謎解きの世界を味わうことができてよかった。いつか「探偵エラリー・クイーン」の方も読んでみたいです。

  • 町で有名なハッター家は不思議の国のアリスに出てくる奇天烈な帽子屋(ハッター)になぞらえてきちがいハッター家と称される変わり者の一族。そこである時聾啞盲の娘の飲む卵酒に毒が盛られる事件が起こる。犯人がわからないまま二ヵ月がたち、今度はその娘と同じ部屋で寝起きしていた母親エミリーが殺害された。サム警視はドルリー・レーン氏に援護を願い出る。
    凶器はマンドリン、ひっくり返されたタルカム・パウダーの箱、古い運動靴の足跡、遺体のそばで発見された注射器、果物鉢には毒入りの梨。数々の物証にも関わらず糸口がみつからない・・・。

    こういうお話でした。日本では一作目のXの悲劇よりもこのYの悲劇のほうが人気だとのこと。欧米では逆らしいです。
    わたしも幼き頃になぜか「Yの悲劇」を読んだことがあったのですが、この機会に「X~」を初めて読んで、比べると、謎解きそのものは「X~」が上じゃないかと感じました。

    相変わらずドルリー・レーン氏の推理がさえまくっていましたが、きっちり犯人をあげるような作りになってないのが、ちょっともやっとする。でもこの感じって発表当初は新鮮だったのかもなーとか思いました。

  • かなり期待して読んだのだけど、その期待が裏切られることはなかった。
    すごいと思った。
    まさかの連続だった。
    そして、気が滅入る結末。まさに悲劇。
    犯人が誰かを知ったらもう一度読む気にはなれそうもない。

    最後のサム警視の疑問に納得出来る答えが用意出来ない。
    この薬は大丈夫だと思ったの?
    でもそれならわざわざ飲まないよね。
    でも何か細工したような気配は見つけられず…

    私も最後まで計画通りにやってほしかったよ。

  • ミステリー小説を読んでいると何度か目にするこの作家とこの題名。

    いつか読んでみたいと思いつつ、外国人作家ということで少し敬遠してしまっていたがやっとAmazonでX,Y,Zの3冊をてにいれた。

    Xの悲劇はハードボイルド感漂う私の苦手分野っぽかったが、こちらはハッター家で次々と起こる謎の事件。私の好みの展開。

    現代の小説家たちが手本にしているだろう推理小説だから、きっとどこかで見たことあるトリックで、当たり前の人が犯人なのだろうと読み進めると、しっかり騙され、しっかり楽しまされてしまった(^_^;)


    登場人物に慣れたというのもあるが、、、
    Xの悲劇よりも夢中になって読むことができた(*^^*)

  •  あまりに風変わりな一族の面々が揃うヨーク・ハッター家。ヨーク・ハッターの自殺体が見つかり、その二か月後にはハッター家で毒殺未遂事件が起こる。警察は元俳優であり過去、殺人事件を解決した経験を持つドルリー・レーンとともに事件の真相解明を試みるが…

     ミステリ史上屈指の名作との誉れの高い作品ですが、自分はなかなか読んできませんでした。というのも、エラリー・クイーンの作品はロジック重視のイメージが強かったので、ミステリに人間ドラマとか社会性がプラスされてる作品の方を読んでるうちについつい後回しになってしまっていたからです。

     しかしいざ『Yの悲劇』を読んでみるとかなりの面白さでビックリ! ヨーク・ハッター家の設定がとてもゴシック的で気に入ったという点もあると思いますが、
    不可思議な凶器の謎、殺人事件後も起こる事件、明らかになるハッター家の真実と、ロジックや証言一辺倒にならない展開が面白かったからだと思います。

     ロジックという点では前作『Xの悲劇』が上な印象ですがインパクトと物語性ではこの『Yの悲劇』が上の印象です。

     事件の真相もまた奇怪です。きちんと論理で事件自体は解明されるものの、奇怪と論理、この二つが見事に合わさっているからこそ、この作品は名作として名を残したのではないかと、と思います。

     そして何と言ってもレーンの下した最後の決断…。ハッター家の事件の真相や犯行に至るまでも悲劇的かもしれませんが、彼がこの事件に関わってしまったこと自体がまた悲劇だったのかもしれません。そうした寂寥感もこの作品が名作として語られる所以ではないでしょうか。

     ミステリ好きなのに『Yの悲劇』を読んでいないという胸のしこりがようやくとれたのにホッとするとともに、早く読んでおけば良かったなあ、と心底思いました。

  • まず、1932年の小説だということを念頭に置いたほうがいいなと思った。
    現代人の我々からすると、「刺激の強い」言葉や表現、思想が散見された。
    とはいえ、上記の内容は本質から離れた些事であるというのもまた事実。その時代ならではの”味”というべきだとも思う。
    本書の本質的な部分で取り上げたいのは、探偵役であるドルリー・レーンだ。
    推理小説における探偵役は、犯人を見つける機能としての側面が強く描かれ、人間味が抑えられているものが多いと私は思っていたが、本作では少し違った。
    本作における探偵役のドルリー・レーンは、一人の人間として感性豊かに描かれている。そこに新鮮さがあり、とても楽しめた。

  • 2回目の通読。初めて読んだ時の犯人の意外性や小説全体に漂う不気味な雰囲気が印象に残って、また読みたくなった。
    犯人が誰か知っている状態で読むと、途中ではっきり犯人がわかるように書かれている。最初読んだ時に何で気づかなかったんだろう。勘がいい人が読むと、犯人は途中でわかるかも。
    ドルリー・レーンのとった最後の処置は後味悪いことこの上ない。でも、一度は読んで損なし。

  • ☆4.2

    前作よりドルリー・レーンがどんな人物なのかが少しだけわかった今作。
    探偵の苦悩を彼がどのように乗り越えたのか、そしてこの先のレーンがどんな探偵であるのかを見届けなければと強く思った。

    世間での悪評の多い一族は、物語に因んで"マッド・ハッター"一族と呼ばれている。
    このハッター一族に悲劇が襲いかかる。
    最初はヨーク・ハッターの自殺と思われる腐乱死体が発見されたこと。
    その次は三重苦を背負うルイーザを狙ったと思われる毒殺未遂事件。
    ついには老女傑エミリー・ハッターがマンドリンで撲殺されてしまうなど事件が続く。
    サム警視はこの難事件を解決するため、ドルリー・レーンの協力を得るべく彼の元を訪れた。
    しかしこの事件は、このレーンをも深く苦悩させる事件として彼らの前に立ちはだかることになるのだ。

    前作でもそうだったが、相変わらず目の前にある事実をありのままに認識し、事実を導き出す手腕がお見事。
    いつもレーンの説明になるほどなるほど、と納得してしまう。
    どこか奇妙なちぐはぐさや、収まりの悪い気持ち悪さがあったのに、それらが理解できるものに変わる経験はやはり心地よい。

    今作の私的な一番の衝撃は、もちろんラスト。
    ちょっとすぐには受け止めきれなくてもう一周読んでしまった。
    そういうことですよね?と誰にとも無く確認してしまう。
    レーンさん、やってしまいましたよね?

    ドルリー・レーンという人は、本当にブレない人だと思う。
    そして、実はあまりにも独善的な人なのでは。
    『Xの悲劇』の時には、心の強固なところが強みだな、なんて思っていたのに、今回とてもとても苦悩していた。
    それは、ブレないがための苦悩だったように思う。
    信じられないような、あり得ないような犯人だったとしても真実は真実、と割り切る苦悩も確かにあっただろうけれど、本当のところで苦悩したのは、手を下すかどうか、というところだったんじゃないだろうか。

    ちょっとこれ四部作全部読むまで落ち着けなくなってきた。
    はよ、はよ、読まな……

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著者プロフィール

エラリー・クイーン。フレデリック・ダネイとマンフレッド・B・リーの合作ペンネーム。従兄弟同士で、ともにニューヨーク、ブルックリン生まれ。1929年『ローマ帽子の謎』で作家としてデビュー。ラジオドラマの脚本家やアンソロジストとしても活躍。主な代表作に『ギリシア館の謎(32)、『エジプト十字架の謎』(32)の〈国名シリーズ〉や、『Xの悲劇』(32)に始まる〈レーン四部作〉などがある。また編集者として「エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン」を編集、刊行した。

「2021年 『消える魔術師の冒険 聴取者への挑戦Ⅳ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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