見知らぬ乗客 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042518020

作品紹介・あらすじ

新進建築家ガイは、妻と離婚するため故郷へ向かう列車の中で一人の青年と出会う。チャールスと名乗る男は、富豪の息子で、父を偏執的に嫌悪していた。狂気じみたように父を語る彼に、ガイはふと、妻とのトラブルに悩んでいると打ち明ける。彼の妻ミリアムは、他人の子供を身ごもりながら、離婚に応じようとしない、と。ガイに同情したチャールスは、驚くべき計画を持ちかける。彼がガイの妻を殺すかわりに、ガイに自分の父を殺してくれと言うのだ…。特殊な状況に置かれた人間たちの心理と行動を綿密に描き出した、ハイスミスの処女長編、待望の復刊。

感想・レビュー・書評

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  • アメリカの作家パトリシア・ハイスミスの長篇ミステリ作品『見知らぬ乗客(原題:Strangers on a Train)』を読みました。
    パトリシア・ハイスミスの作品は、7年前に読んだ『太陽がいっぱい』以来なので久し振りですね。

    -----story-------------
    妻と離婚するため故郷に向かう新進建築家のガイは、列車の中でチャーチルと名乗る富豪の息子と出会う。
    偏執的に父を嫌悪するその青年にガイは、自分の妻と彼の父との交換殺人を持ち掛けた!!
    -----------------------

    1950年(昭和25年)に刊行されたパトリシア・ハイスミスのデビュー作… 1951年(昭和26年)にアルフレッド・ヒッチコック監督により映画化されていることで有名な作品です。

    新進建築家ガイ・ダニエル・ヘインズは、妻ミリアムと離婚するため故郷へ向かう列車の中で一人の青年チャールス・アンソニー・ブルーノーと出会う… ブルーノーは富豪の息子で、父を偏執的に嫌悪していた、、、

    狂気じみたように父を語る彼に、ガイはふと、妻とのトラブルに悩んでいると打ち明ける… 妻のミリアムは、他人の子供を身ごもりながら、離婚に応じようとしない、と。

    ガイに同情したブルーノーは、驚くべき計画を持ちかける… 彼がガイの妻を殺すかわりに、ガイに自分の父を殺してくれと言うのだ、、、

    当然ガイは断るが、すでに二人は運命のレールの上にいた…… 。

    列車で出会った見知らぬ人物から交換殺人をもちかけられるという独特のプロットや、ひとりが殺人を犯し、もうひとりがその罪を背負い込むことになるという前半の展開は映画とほぼ同じでしたが… 後半はブルーノーの異常性に感染したガイが精神的に追い込まれ、壊滅していく心理サスペンスだったので、映画とは随分印象が異なる描き方になっていました、、、

    『太陽がいっぱい』と同様、救いようのない悲劇的な結末や、男と女・男と男の愛憎の描き方にパトリシア・ハイスミスらしさを感じました… 元祖イヤミスかな。

  • 交換殺人というジャンルを創造した作品。ミステリーというよりも、犯罪者の心理描写がとても繊細に描かれ、悩みや葛藤自暴自棄になる様がとても面白かった。私立探偵のアーサー・ジェラードはコミカルな風貌でありながら鋭くしつこい男。この人のキャラクターがあってこそ、このストーリーは面白いのではないかなと思った。他の作品も読んでみたい!

  • パトリシア・ハイスミスの処女長編。
    映画の方が有名だろうか(案の定というか何と言うか、映画は観たことがない……)。
    『交換殺人』を主題にしたサスペンス小説。圧巻は主人公が相方(?)に追い詰められていくところ。
    救いがあるような無いような、はっきりしないラストシーンも良かった。

  • 期待してたけど、さっぱりでした。
    まず、列車のパーサー、ホテルのウェイター、タクシーの運転手が、そろいもそろって二年も前のことを覚えてるわけないじゃないか。
    次に、ブルーノーの狂気って、ただのアル中でしょう。もっと凝った表現にして欲しかった。
    最後に、なんか訳がへん。暖炉の灰受けに寝そべって、って違う気がします。
    空港の手荷物預かりに靴を預けた、って鞄だろ。大正時代のデパートじゃあるまいし。
    以上、私にはさんざんな内容でした。

  • 興味のあったパトリシア・ハイスミス。
    こちらはヒッチコックによって映画化もされているらしいが、残念ながらまだ観ていない。
    最初は映画を観て知っていた「太陽がいっぱい(リプリー)」を読んでみようと思っていたが、売っていなかったのでこちらを読んでみた。

    交換殺人を扱ったサスペンス。
    ただ単に交換殺人を行って、捕まるのかどうなっちゃうのかというだけではない。
    交換殺人を持ちかける男ブルーノーと列車で出会ったガイ。
    ブルーノーは精神的に不安定な男で、ガイが交換殺人を正式に受け入れていないのに勝手にガイの別れた妻を殺してしまう。そしてガイに殺人を迫る。
    ブルーノーに振り回され、戸惑いや嫌悪を感じながら次第に精神の均衡を失っていくガイ。
    こういった心理をガイとブルーノーの側から描く。

    きっとヒッチコックなら上手く映像化させるのだろうなと思わせる。
    派手さはないが、ジリジリとした恐怖というか焦燥といったものが味わえる。
    大きなトリック(小さなトリックもない)もなく、犯人はわかっているので、ふたりの男の心情を読んで楽しむ作品。

    こちらを読んで更に興味を持ったので、最初の予定通り「太陽がいっぱい(リプリー)」を探して是非読んでみたい。
    こちらの映画も観てみたい。

  • 列車の中で建築家のガイ・ダニエル・ヘインズと富豪の息子チャールス・アントニー・ブルーノーが出会う。ガイは別居中の妻との離婚協議のため、チャールスは嫌悪する父から距離を取るため移動中だった。お互いの秘密を知った時、チャールスは殺人のアイデアを話しだす。それは、チャールスがガイの妻ミリアムを殺し、ガイがチャールスの父を殺すという交換殺人という方法だった。ガイはその場ではチャールスの言うことを全く取り合わなかった。

    十日後、チャールスが本当にミリアムを殺し、そのニュースをガイが知り、チャールスがやったのではないかと疑う。しかし、ガイは警察には知らせなかった。

    ガイは恋人のアン・フォークナーとの結婚を決めるが、ニヶ月後、チャールスから手紙が届く。手紙の内容からチャールスがミリアムを殺したと確信したガイだが、チャールスとの接触を絶とうとする。しかし、チャールスの感情は日増しにエスカレートし、交換殺人を実行するようにガイを脅迫する。

    ガイはチャールスからの脅迫とアンの不信の眼にさらされ、精神を蝕まれていく。そして遂にチャールスの父を殺してしまう。

    罪の意識に苛まれるガイのもとにチャールスがたびたび訪ねてくるようになり、それがチャールスの父に雇われていた私立探偵ジェラートにも知られてしまう。チャールスのつきまとい、アンの不信、ジェラートの尋問と板挟みに会うなか、ガイ、アン、チャールス、ガイの友人二人でボートに乗ることになる。そこで泥酔したチャールスが溺れて死亡する。

    すべてを白日の下にさらす決意をしたガイは告白文をアンに書き、一連の犯罪の中で最も傷つけたと思われるミリアムの恋人オーエンに会いに行く。オーエンをホテルの部屋に呼びすべてを告白するが、彼はミリアムを愛してなどいなかったと言う。すべてを見なおしたガイは告白を取りやめ日常に戻ろうと決心する。しかし、部屋の受話器がはずれていて、ジェラートがすべてを聞いていた。ガイは言う。「ぼくを逮捕してくれ」

  • 列車の中で出会ったガイ・ヘインズとチャールズ・ブルーノー。自分を苦しめる妻ミリアムと離婚を考えるガイ。他の男の子供を妊娠したと告げるミリアム。ガイに付きまとうミリアム。ガイがメキシコに住む恋人アンに会いに行っている間にミリアムを殺害したブルーノー。自分の父親を殺害するように要求しガイに付きまとうブルーノー。ついに殺人を犯すガイ。殺人後もガイに執着するブルーノー。ブルーノの父親の殺害事件を調査する探偵ジェラード。徐々に狂気を帯びてくるブルーノー。

  • ハイスミスの処女作だが、処女作からすでにハイスミスらしさ全開である。たまたま列車で乗り合わせた相手に友達になろうと持ちかけられ、最終的に交換殺人の共犯にされてしまう男の話だが、怖いのはそんな話を持ちかける人間の狂気ではなく、受け入れてしまう人間の弱さである。錯乱した男の描写がすばらしい。中指が内側に折れたまま掌にくっついて離れなくなる、っていうのは読んでいて思わず自分の指の動きを確かめたくなるほど。

  • ハイスミスの著作1冊目。これから彼女の作品をいっぱい読んでいきたいと思う!主人公ガイの心理描写の巧みさにただただ圧倒されるばかり。十分面白かったけど、これから読む彼女の作品群に期待を込めて今回は星4つで。

  • 読んでいくうちに、どんどん引き込まれていく感じがしました。大きな波が来るわけじゃないが、小さな波が頻繁に訪れて読んでる側を飽きさせない作品だと感じました。

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著者プロフィール

1921-1995年。テキサス州生まれ。『見知らぬ乗客』『太陽がいっぱい』が映画化され、人気作家に。『太陽がいっぱい』でフランス推理小説大賞、『殺意の迷宮』で英国推理作家協会(CWA)賞を受賞。

「2022年 『水の墓碑銘』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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