- 本 ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784042520078
感想・レビュー・書評
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刑事マルティン・ベックシリーズ第7作。 銃剣で腹部を刺され、喉を切り裂かれて殺されたのは、主任警部ニーマンだった。コルベリによれば「唾棄すべき男」。 警官としては市民にも部下にも酷薄な振る舞いに及び恨みも多く買っていたが、家庭では良き夫で父という一面も持っていた。 ベックとルンは睡眠不足と闘いながら、ニーマンに恨みを抱く人物を探し始めた。
警察組織という存在が持つ、陰の部分に焦点を当てた作品。 1970年代初めのスウェーデンが抱えていた社会問題が浮き彫りにされる。 -
一作目から順に読んでるマルティンベックシリーズだが、これまでとはずいぶん趣が違っていた。残虐な方法で殺された警官は暴力的な悪徳警官だった。比較的簡単に容疑者が浮かぶが、そこからの展開がスリリング。ベック始め個性的な刑事たちが、それぞれのやり方でこの事件を受け止めて行動する。特に悪徳警官を産み出した原因の一端は自分にもあると感じて行動に移すベックには胸が打たれる。でもまさかあの人が死んじゃうなんて。毎回登場を楽しみにしてたのにな。
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もっと長編になる予定だったのでしょうか。
著者の息切れ感があります。 -
被害者も加害者も、そして捜査にあたる人間もすべてことごとく〝警官〟ばかりという徹底ぶり。それも当然、警察という〝組織〟こそが、ここでの主役なのだから。シューヴァル=ヴァールー夫妻が、〝警察小説〟という形式によって10年の歳月をかけて現代社会を描きつくそうと挑んだモニュメンタルな作品であるこの〝刑事マルティン・ベック〟シリーズもこれで第7弾である。
組織とそこに属す人間が、個と公(©アアルトコーヒーの庄野さん)のはざまで見せるさまざまな顔。職務上、自我を抑圧することが求められる日々ゆえ、ときにはほんとうの自分の顔すらわからなくなってしまうようなことさえある彼ら。無関心はまた、そんな爆発しそうな自我を押さえ込むためのいってみれば〝処世術〟ともいえる。公>個の日本では、同じように組織を描けば硬派な社会派ドラマになるが、個>公、あるいは個と公がおなじレベルで拮抗しているスウェーデンでは、組織を描いてもけっきょくは泥臭い人間ドラマになるのが面白い。そのちがいが興味深い。
ちょっとした会話やふるまいから、水と油と思われていたコルベリとラーソンのあいだの関係に変化の兆しが窺われるのがうれしいところ。これは続刊でのお楽しみ。いつになくド派手な展開ゆえ、映画化に際してこの作品が選ばれたのも納得!? でも、ラストはそこで終わっちゃって本当にいいの?!
著者プロフィール
マイ・シューヴァルの作品





