オディサ・ファイル (角川文庫 赤 537-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (467ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042537021

感想・レビュー・書評

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  • 偶然の積み重なりやすれ違いはスリリングだけど、ちょっと私とはテンポが合わない感じ。車爆弾の成否にも疑問があるし、シモンらがミラーを簡単に見失ったのも拍子抜けな感じ。

  •  ストーリー展開に無理はないので小説としてはいいと思うが、今思うとフォーサイスはジーモン・ヴィーゼンタールに取材した割にはゲットーと強制収容所の区別がついていないので化粧をして若く見せようとして生き延びようとしてドイツ出身の老女が出て来る。そんなものがどこにあるのか?アウシュヴィッツで言うところの「カナダ」か?日記の書き手となったハンブルグ出身のユダヤ人がカポーになった設定が一体どういう意味を持っているのかも。カポーはユダヤ人にとってゲットーのユダヤ人評議会やユダヤ人警察と並んで「ドイツ人の手先」と忌み嫌われる存在なのに。
     ヒムラーが内務大臣でドイツ警察長官でもありハイドリヒがインターポール長官だったように第三帝国時代の警察はSSと一体化しているので主人公が見せられた「警察官の中のSS将校の経歴」は空々しい。それこそゲスターポ(秘密国家警察)長官だったハインリヒ・ミュラーは元々警察官だ。それに元武装SS将校が「零時」の後で警察官になった例もあるだろうし。
     何よりも主人公の年齢ではギリギリ小国民隊に入隊して英軍相手にパンツァーファウストを向けていた事になってしまうのに再軍備後に始めて徴兵で連邦軍に入隊して軍隊生活をした設定になっている矛盾に気がつかなかったようだ。
     「「ドイツ人全体」と個々の関係者は別」というのはヴィーゼンタールの個人的な経験に導かれた結論だが、フォーサイスにしてみればドイツ語圏で本を売る為には必要な設定だろう。

  • 1972年の世界である・・フォーサイスの視点、執筆は何処までが事実でどこからがフィクションか混然となっていることは重要なキーポイント。

    当時、アルツハイマーになって行った亡き父が「こんな面白い小説はない」と絶賛しており、20歳台で読んだ記憶がある・・がちんぷんかんぷんで私の孫綱頭では分析、玩味不可だった痛い記憶がある。
    今、読み返し「今年最高の読んだ本」になかにランク☆
    ページターナーと化した。

    21Cに入り、化学的分析も加わり、ナチス追及の手は再び鋭くなっているとか・・出版も相次いでいる。
    作品内の文に在るように「SSという特定の存在は独国民全体有罪論の陰に身を隠している。RSHA内の2つの部門が悍ましき世紀最大の責任を有している」とある。

    初読当時掴めていなかった「実は、エジプトがナチスに同情的であった」がメインテーマという事は明確な驚き!!
    南米がナチの主だった受け入れ先なようにエジプトもそうだったとは。
    それから半世紀以上過ぎ、世界は根底から覆りが連続している・・いや し続けている~南米はもとより、アラブ諸国はロシアと手を結んで行っているし、イスラエルとも交渉のテーブルに在る。

    そしてサブテーマであるロシュマンの存在。かくしてミラーは狂言回しだったという事、してラストがこういった形で読み手にとっては不消化感有るのは当然の成り行きだったという事も納得。 リガに収容所が有ったという事は知らなかった・・自ずとマンデルの「リガから来た女」の内容が思い出されたが。。。

    何かにつけて言われるWW2の敗戦側の戦争責任、裁いた側の裁判内容の詮議が言われて久しい。
    我が国の戦争責任もさることながら、独逸の在り様を見習うべきだという声も聞こえている‥そういうドイツの在り様は20C後半で「素早い保身と名誉ある地位への返り咲き」をした多くのSS幹部と彼らへの追及内容に温度差が混在してあったことは今後も解明が続いて行くに違いない。

    今度は同じく、今一つ不明な読後に終わった「ジャッカルの日」を読まないと。

  • ナチスの残党

  • ”オデッサ”とは、ナチス親衛隊(SS)のメンバーの救済を目的とする秘密組織のことである。
    ルポライター、ペーター・ミラーをオデッサと結びつけたのは、老ユダヤ人が遺した一冊の日記だった。それによればリガの殺人鬼と異名をとったナチ収容所長、ロシュマンは、今もドイツに生きているという。
    日記のある箇所がミラーの注意を惹いた。彼は憑かれたようにロシュマンの追跡を始めた。だが、それはタブーへの挑戦であり、組織の手はしだいにミラーの身辺に及び始めた…。


    奥が深くて、必ずしもラストに読者をスッキリさせる類の本ではないのですが、ペーター・ミラーを通して、SSのメンバーを追い詰めていくストーリーです。
    ヒトラー率いるナチス親衛隊がどれだけ残酷非道なことをしたのか、漠然と理解していましたが、戦後の混乱にまぎれて自らの保身のために国防軍をも時間稼ぎの駒として使ったことや、"オデッサ"を通じて行った行為は絶対に許せません。
    ペーターは父親の復讐のためにロシュマンを追い続け、陰でモサドからの支援を受けていましたが、そこまで危険を冒してまでも復讐をやり遂げたかったのでしょうね。

    ペーターを傀儡あるいは媒介者として、"オデッサ壊滅"への過程には十分すぎるほどの臨場感があり、冒頭で筆者が元SS隊員からの情報協力があったと述べていました。
    こういう潜在的な危険というのは、今現在も世界のどこかの地下でうごめいているはずです。

    戦争はいつになっても終わることがない…それが私の実感です。

  • 面白かったんだけど、お父ちゃんの敵討ち的な設定が不自然に思えて、横溝正史かよ!と。マスターピースなんだろうけど、ちょっと残念。

  • 冷戦化の雰囲気がピリピリ伝わってきておもしろい

  • ケネディ暗殺のニュースから始まって、ユダヤ系ドイツ人の老人の自殺、その日記のあたりでかなり凹んでしばらく放置してたけど、面白い。60年代が舞台で70年代初めに書かれた小説らしいけど、テンポがよくてさすが名作と言われる社会派ミステリー。実話や実際の人物も多くて、どこからどこまでが本当なのか、よくわからないが、ドイツの抱えていた戦後問題がかなりよくわかる。社会問題、差別問題、戦争、狂気、世界的に見て結局は同じような問題がまた起こるし、起こっているし、力のある者が生き永らえ、民がそのツケを払わされる、と言う矛盾に気付く者は、ことが終わってもどこの国でも少ないのかなあ、と感じた。

  • ナチとユダヤ人の対立が、根深く、二次対戦のその後を語ったものを読んだのは初めてだったので、興味深く読めた。

  • ジャッカルの日に続き、まるで現代の映画を見ているような早い展開で、面白かった。

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著者プロフィール

1938年イギリス生まれ。空軍のパイロットなどを経て、ロイター通信、BBC放送の記者を勤めた後、作家に。71年ドゴール暗殺をテーマに書いた長編『ジャッカルの日』で小説家としてデビュー。綿密な取材とストーリーテリングの天賦の才で世界をわかせ続けている。著書に、『オデッサ・ファイル』『戦争の犬たち』『神の拳』『アフガンの男』『キル・リスト』、小説のような半生を描いた自伝『アウトサイダー』など多数。

「2022年 『ジャッカルの日 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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