狼の時〈下〉 (角川ホラー文庫)

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レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (484ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042661030

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  • 1989年発表作。スパイ・スリラーとホラーをクロスオーバーさせた快作で、当時絶好調だったマキャモンがパワー全開で突っ走っている。

    第二次大戦末期、連合軍はノルマンディー上陸作戦に向けた準備を秘密裏に進めていた。そんな中、ドイツ占領下のフランスに潜伏する英国スパイが重要な情報を掴んだ。起死回生の反撃に転じるためのナチスの極秘作戦らしいが、詳細は不明。諜報員は常時敵の監視下にあり、接触出来ない。この困難な任務を遂行できる者は限られていた。陸軍少佐マイケル・ガラティン。かつて北アフリカ戦線の攻守を逆転させる機密書類を敵陣から盗み出し、破竹の勢いにあった砂漠の狐ロンメルの牙を抜いた男。だが、ナチスに寝返った米国人の工作員サンドラーに愛人を殺されたことで、一戦を退いていた。マイケルは一旦渋るが、現地でサンドラーが暗躍していると知り承諾。己の身体を流れる〝狼の血〟が、復讐の機会を逃すはずはなかった。

    物語は、対ナチスの戦いを追う「現在」と、主人公の少年期を振り返る「過去」のパートを交互に展開していく。
    王朝滅亡後のロシア。貴族の末裔ガラティノフ一家が、訪れた避暑地で因縁を持つ元兵士に惨殺された。生き残ったのは、まだ十代の長男ミハイルのみ。少年は深い山林へと逃がれたが、狼の群れに遭遇。ミハイルを追ってきた兵士らは、次々に餌食となり、遂には少年も噛み付かれて昏倒する。後刻、目覚めた場所は森の中にある古い邸宅だった。そこでは、常人とは違う殺気を放つ老若男女がひと目を避けるように暮らしていた。間もなくミハイルは知る。……人狼。彼らはその〝群れ〟であり、野獣の血を受け継ぐ者として自分を選んだことを。すでに、身体は変化し始めていた。

    感情を持つ人間であり、血肉に飢えた獣でもあるという人狼の設定を、劇的な物語の中で違和感無く生かしている。特に、多感な少年が成長していく〝青春期〟は読み応えがある。かつてはミハイルと同じく、〝人間〟だった仲間たち。変貌する心身に対する絶望の克服。友の死という痛切な経験。今は〝敵〟となった人間との熾烈な戦い。徐々に追い詰められ、殺されていく呪われた種族。その悲愴な末路に至るまでを、数々のエピソードを通して記録。皮肉にも、貴族のみならず、人狼としても最後の生き残りとなったミハイルは、僅かな光明を求めてイギリスへと旅立つ。時を経て、英国諜報部の工作員となったミハイル=マイケルは、自らに備わった力を〝悪〟を粉砕する手段として行使することとなる。

    ナチスとの戦いを繰り広げるパートでは、人狼を〝正義〟の側に立つ超人として造形。昨今流行の「スーパーヒーロー」に通じるアレンジを施し、スピード感に溢れる活劇で埋め尽くす。敵は不遜にも「狼」を標榜するヒトラー/ナチス。マイケルは、英国壊滅を目論む第三帝国の策謀を探りつつ、その心臓部へと迫っていく。
    終盤での死闘は凄まじく、ボルテージが最高潮に達したままにラストを迎えるのだが、人狼という人ならざる者の戦いを、極めて映像的に活写するマキャモンの力量には圧倒された。長大な小説だが、読み手を一気に引き込む優れた筆力によって、ページを捲る手を止めさせない。

    キングの影響が色濃いと言われているマキャモンだが、あくまでも人間心理の闇/恐怖を底流に置くキングとは違い、マキャモンはホラーのテイストを娯楽小説創造のための一要素として割り切り組み込んでいる。また、勧善懲悪やハーレクイン的なロマンスを重視するクーンツとも違い、一瞬の光芒に全てを懸ける刹那的な〝滅びの美学〟を謳い、そのスタイルは骨太で男性的だ。
    異形の者として生きるヒーローの実存を〝冒険〟を通して表出。超人的な力を持ちながらも決して不死身ではない宿命を背負った孤独な男の哀感と、己の弱さを克己し強大な敵に立ち向かう熱きロマンを謳う。本作のカテゴリーをホラーではなく、冒険小説に選んだ理由もそこにある。

  • マキャモンの中でもお気に入りの作品!

  • なかなかに壮大な物語。まさに満身創痍の手負いの狼。改めてマキャモンはすごいな~

  • 2008/1/7購入

  • 狼男が情報部員をやってます。無敵ですね(笑)大人な彼の活躍ぶりと、彼がいかにして狼男になったのかという少年編が交互に語られます。どっちも面白くってスリリングです。

  • 00mmdd読了

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