第五の山 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042750048

作品紹介・あらすじ

混迷を極める紀元前9世紀のイスラエル。指物師として働くエリヤは子供の頃から天使の声を聞いていた。だが運命はエリヤのささやかな望みをかなえず、苦難と使命を与えた……。

感想・レビュー・書評

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  • 旧約聖書に出てくる預言者エリヤの話。パウロ・コエーリョが、彼の想像で物語を膨らませている。神託を受け、アクバルという町を訪れたエリヤ。苦難や絶望を乗り越え、自らの使命を果たそうと奮闘する話。本当にあった話のように、よくできたストーリーである。宗教色の強い小説ではあるが、信仰が必要かどうかというより、自らの力によって人生を切り拓くことの大切さを教えてくれている。

  • 自分の人生を生きたい人に力を与えてくれる本。

    キリスト教色がつよくて
    少し難しくも感じるが困難と再建の物語として
    生きるヒントがちりばめられている。

    ストーリー…

    混乱したイスラエルで
    イゼベルが王妃に即位すると、
    主の信仰(イスラエル信仰)から
    レバノンの神々への信仰(バアル信仰)に
    変えるように迫った。

    そんな折、エリヤは天使の言葉をきく。
    「イスラエルの神は生きている。
    私の言葉が守られない間は、
    雨も露も一滴の水も降らないであろう」
    この預言を王に伝えると、王妃イゼベルは
    改宗に従わない者を処刑し始めた。

    エリヤは殺されるはずだったが
    弓矢が逸れて助かることに。
    逃れた砂漠でどうにか命を繋ぎ
    預言者として生きることを覚悟すると
    また天使の声をきく。
    ザレパテに行くようにと。

    天使の言葉どおり
    信じる神の異なるザレパテ(アクバル)へ行き
    やもめ女に養われる。
    商業国であるアクバルは、いつの日か
    イゼベルとの高額な交渉材料にできる
    と考え、エリヤを受け入れる。

    しかし、やもめ女の息子が死ぬ。
    災いをもたらしたとして
    神の火が彼を処罰するように
    エリヤを第五の山に登らせる。
    火がふりかかることはなく
    山ではまた、天使の声を聞く。
    神の御威光として、
    息子を生き返らせる奇跡を授かる。

    息子を生き返らせ、市民に受け入れられ
    アクバルに馴染み暮らしていくが…。

    神からの命令、忠実に従うエリヤ。
    それに報いるどころか非情な試練。
    これを繰り返していく。

    この上ない試練を与えられ
    エリヤはついに神と決別を宣言し
    新たな自覚を持って自身の命を生きていく。

    感想…

    物語を全体を通して描かれるのは
    ・人生の目的には自らの意志で向き合う
    ・時には神に挑むことも必要
    ・困難は自己の再建のチャンス
    など。

    災害や病や死別など
    立ち上がれないほどの困難に
    見舞われることは誰しもある。
    そこでもう一度
    立ち上がる方法を見せてくれる本。

    崩壊→再建の際、
    自分が生まれ変わるための
    新たな名前をつけるというのが
    すごく印象的だった。

    神はあまりに厳しいが、慈愛もまた深い。

  • 旧約聖書をもとにイスラエルを追われた預言者の苦悩と再生を描いた物語。異教を信ずるイスラエル王妃を非難するような預言をしたために国を追われた預言者が、神に与えられた試練に悩み、苦しみ、時に神を呪いながらも、その試練の意味を知り、自分の意思で自分の人生を生きていく姿勢を勝ち取っていく。
    時に理不尽な神の振る舞いを、自然災害と置き換えれば日本人にも気持ちがわかるかもしれない。本作では場面によっては明確に神(主)や天使が姿を現すけれど、姿を現さずに彼の意思を預言者が読み取ろうとする姿、これが宗教の根源かなとも思う。

  • 『アルケミスト』のパウロ・コエーリョによる、旧約聖書の預言者エリヤに題材をとった試練と再生の物語。

    寓話的な物語のなかに深い学びのある言葉の数々がしみるコエーリョの作風。しかし本作は、単純に物語として面白い。預言者ではあるがまだ若者のエリヤが過酷な運命に翻弄される姿は冒頭から目が離せない。絶望的な展開から、自己の再生のみならず、自分の住む世界の「再建」に挑む姿は勇気づけられる。そのとき、失われた愛と信仰が蘇る姿に感動した。聖書をまったく知らなくても、キリスト教に興味がなくても、この物語から汲み取れる学びは大きいものがあるだろう。

    青少年にはまず『アルケミスト』だが、大人には本作を強くオススメしたい。

  • まだ僕の戦いは終わってないなと思った。生きている限り戦いは続くかもしれないけど、戦おうと思う。そして勝利して、祝福されなくちゃいけないなって。

  • キリスト教に通じていないとなかなかに辛い本でござる。
    しかし何でこういう形式になるんですかね?決して翻訳のせいではないと思うので、口伝を書き物に落とすとこういうことになるのかな?本筋と関係のないことばかりが気になりましたわい。

  • 読み始めは物語の中に入るのに少し苦労した。最後までとても安定している小説。紀元前九世紀という、イエスキリストより昔の話、旧約聖書の数少ない資料を元によく作られている。

    当時の人々の文化、信仰、思考は、現代の我々にとっては突拍子が無く、無知であるという印象もあるが、同時に人間の本質は今でも全く変わらない。物が溢れテクノロジーの発達した現在や未来でも、環境が変わっても、人間そのものは変わらないということだ。災害や戦争、死が起こってしまうのは決められていたので止められない。しかし、そこから学ぶこと、常に自分で選択して戦っていくことをやめてはいけない。そこで諦めて屈してしまったら、そのまま過去を捨てないで先に進めない人間になってしまう。
    余計な明かりがない方が星が良く見えるように、余計な物事がなくシンプルな当時の生活から、真の人間の姿と自然の摂理、起こるべきして起こることの前には何もできないこと。それをどう乗り越えていくかを伝えている。

    また、後書きで触れているように、小説はひとつの国の再建の物語である。
    国の再建といえば、日本の戦後。復興から世界一の経済大国になるまでに、私たちの祖先は皆、絶え間ない努力と明るい未来を想像し、ここまで平和で幸せな国を残してくれた。わたしたちがもしこのことを忘れ、感謝を怠るようになったとしたら、盲目なわたしたちを目覚ませるよう、万能な神が試練を与えることになるのか。

    宗教色が濃いところで、好き嫌いが分かれそうだけど、壮大な過去の記憶を思い描くことができる小説。

  • "アルケミスト"で知られるブラジルの作家。豊富なキリシタン知識を盛り込みつつ、青年が夢を追うお話を語ります。

    古代イスラエル。フェニキアからやって来た王妃は時の王をたらしこみ、古来の信仰を捨ててフェニキアのバアル神を信仰するよう説き伏せる。やがて弾圧は下々にも及び、のちの預言者エリヤは首を狙われることに。

    支援者とともに馬小屋に潜むエリヤであったが、外からは他の信者たちの断末魔。想像の中で何回も死んだというエリヤはついに外に飛び出し…

    少年マンガならここで戦いになるところですが、キリシタン説話の世界では教訓が語られます。


    ○エリヤは自分の冷静さに驚いていた。馬小屋にひそんでいた間、彼は何度も死を想像した。今になって、自分が不必要に苦しんでいたことがわかった。一、二秒ですべてが終わってしまうのだ。

    ○「ここで今、やってくれ」とエリヤは言った。「今は、私は冷静だ。もし、お前がぐずぐずしたら、私は自分が失うものについて、また思い苦しむだろう」


    なにやら良寛禅師の教えに通じるものを感じます

  • 列王記は読んだことがなかった。よもう。創世記と出エジプトを読みなおしてからかな

    とかく生きる意味とかを見失っては絶望する性質なので、ほんとうに絶望したとき、死にたいとき、パウロ・コエーリョの本を読むようにしている。
    迷ったときはアルケミスト、死にたいときはベロニカ、努力の意味を見失いかけたときには第五の山というかんじ。

  • すべては単純でシンプル。

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著者プロフィール

1947年ブラジル、リオデジャネイロ生まれ。現代において最も影響力のある作家の一人といわれている。2002年よりブラジル文学アカデミー会員。著作の多くが世界的ベストセラーとなり、88か国語に翻訳され、これまで170以上の国々で3億2000万部以上を売り上げた。多くの名誉ある国際的な賞を受賞しており、そのなかにはフランスのレジオン・ドヌール勲章がある。2007年には国連ピース・メッセンジャーに任命された。

「2021年 『弓を引く人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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